一般NISAは、毎年120万円までの範囲で運用商品を最長5年間非課税で保有できます。税制優遇は魅力的な反面、使い方がよくわからないという人も多いのではないでしょうか。
この記事では一般NISAのメリット・デメリットを紹介し、それらを踏まえた損をしない活用法を紹介します。これから一般NISAを始める人、すでに一般NISAで運用している人は参考にしてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年4月時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- NISAとはどんな制度?
1-1.一般NISAの概要
1-2.2024年からは新NISAへ - 一般NISAのメリット
2-1.NISA口座から発生した運用益に対して非課税
2-2.少額からの投資が可能
2-3.いつでも引き出せて目的も問われない
2-4.確定申告をしなくてもよい - 一般NISAのデメリット
3-1.損益通算ができない
3-2.すでに保有している運用商品は対象外
3-3.投資対象が限定される
3-4.非課税枠の再利用ができない
3-5.使わなかった非課税枠を繰り越せない - 一般NISAで損をしない運用方法
4-1.長期保有・分散投資を心がける
4-2.一時的な価格変動に一喜一憂しない
4-3.余裕資金で運用する
4-4.毎月分配型投資信託を購入しない
4-5.ポイントでの買付を利用する
4-6.ロールオーバーの活用
4-7.金融機関選びを慎重に行う - まとめ
1.NISAとはどんな制度?
NISA(少額投資非課税制度)とは、非課税口座内で買付けた金融商品から得られる運用益に対して非課税になる制度です。通常、株式や投資信託の売買で得た利益には20.315%の税金がかかります。しかし、NISAではいくら運用益が出ても課税されません。
1-1.一般NISA の概要
NISAのうち一般NISAの1年間の投資上限額は120万円で、最長5年間非課税で保有できます。その他、一般NISAの特色は以下のとおりです。
- 投資できる商品:上場株式・ETF・株式投資信託・REIT等
- 投資方法:通常の買付・積立投資
- 払い出し:理由を問わず随時可能
- 口座開設数:1人1口座
- 非課税対象:株式投資信託などの配当金・分配金および売却益
- 投資可能期間:2023年まで
なお2022年4月現在、NISAを利用できるのは日本在住の20歳以上の人ですが、成人年齢の引き下げにより2023年は18歳から利用できるようになります。
1-2.2024年からは新NISAへ
2023年をもって現状の一般NISAは廃止され、2024年からは2階建ての新しいNISAが始まります。新NISAの「2階建て」とは、以下のような内容です。
- 1階部分:つみたてNISAの対象商品での積立投資(年間非課税限度額20万円)
- 2階部分:今までの一般NISAの対象商品での通常の買付・積立投資(年間非課税限度額102万円)
新NISAでは1階部分の積立投資をしないと、2階部分への投資ができないルールとなっています。2階部分の対象商品からは、高レバレッジ投資信託や監理銘柄・整理銘柄などが除外されることになっています。また、非課税投資期間は現行と同様に最長5年です。
2.一般NISAのメリット
一般NISAで取引をすると、どんなメリットがあるでしょうか。
2-1.NISA口座から発生した運用益に対して非課税
一般NISAの最大のメリットは配当金・分配金や売却益などの運用益に対して、最長5年間非課税になる点です。たとえば、100万円で買付けた株式を120万円で売却すると、売却益の20万円(手数料等考慮せず)に対し、約6万円の税金がかかります。
しかし、一般NISAなら利益の20万円を全額受け取れるのです。得られた運用益を次の投資に回せば複利効果により、さらなる収益も期待できます。
2-2.少額からの投資が可能
一般NISAの1年間の非課税限度額は1人120万円ですが、その全額を使う必要はありません。金融機関にはそれぞれの最低購入金額があり、それ以上であればいくらからでも始められます。
運用初心者の方にとって、いきなり高額の投資をするのは不安も大きいでしょう。一般NISAでは損をしても影響のない程度の少額で始めて、リスクに慣れたら徐々に投資額を増やせます。
2-3.いつでも引き出せて目的も問われない
一般NISAの資産は自分の好きなときに換金でき、利用目的も問われません。ジュニアNISAは子どもが18歳になる前に引き出しを行うと運用益に課税され、口座が廃止されてしまいます。一般NISAにそのような制限はなく、非課税期間内でいつ売却しても運用益に税金はかかりません。
2-3.確定申告をしなくてもよい
NISA口座内での運用で得た利益は非課税所得であるため、確定申告の必要はありません。ただし、NISA口座以外に特定口座などの課税口座で取引をしていて、運用益がある人は原則として確定申告が必要となります。
3.一般NISAのデメリット
一般NISAで運用益が非課税になるメリットは魅力ですが、制度がやや複雑なため注意すべき点もあります。
3-1.損益通算ができない
一般NISAでは、特定口座などの課税口座との損益通算と損失の繰越控除が適用されません。したがって、一般NISAでの運用は利益が出なければ意味がないことに注意が必要です。
損益通算
損益通算とは、運用の利益と損失を相殺することです。課税口座で発生した利益と損失は相殺できます。たとえば、株式を売却して10万円の損失が発生し、同じ口座で配当金を10万円受け取っていたとします。その場合、配当所得の10万円から売却損の10万円を差し引けるため、源泉徴収された税金が戻ってきます。
しかし、NISA口座で発生した損失は損益通算ができないため、トータルの利益はゼロでも税金は戻りません。
損失の繰越控除
損益通算をしてもなお損失が残る場合、引き切れなかった損失を繰り越し、翌年以降最長3年間、その年に発生した運用益と相殺できます(損失の繰越控除)。
ある年の株式投資で50万円の損失が発生し、配当金を10万円受け取っていた場合、損益通算により運用益はゼロとなります。引き切れずに残った40万円の損失は確定申告により、翌年以降の運用益から差し引けるようになるのです。
翌年50万円の運用益があれば、繰り越した40万円の損失を差し引き、課税される所得が10万円に減らせます。しかし、NISAでは損益通算ができないため繰越控除も適用されません。
3-2.すでに保有している運用商品は対象外
一般NISAで非課税となるのは、新規に買い付けた運用商品のみです。すでに保有している株式や投資信託をNISA口座には移せません。
3-3.投資対象が限定される
一般NISAの投資対象はつみたてNISAに比べて幅広いのですが、すべての金融商品が対象ではありません。債券や公社債投資信託などは対象外となっています。
3-4.非課税枠の再利用ができない
一般NISAでは資産の引き出しが自由にできますが、一度使った非課税枠は引き出し後に再利用はできません。資産のリバランス(売買により保有資産の割合を調整すること)で値上がりした商品を売りたい場合などには、注意が必要です。
3-5.使わなかった非課税枠を繰り越せない
一般NISAで使わずに残った非課税枠は、翌年以降に繰り越せません。2022年に一般NISAで50万円の投資をしたとして、残りの70万円を2023年に繰り越すことはできないのです。非課税枠を必ずしも使い切る必要はありませんが、残っても翌年の非課税枠は120万円のままというわけです。
4.一般NISAで損をしない運用方法
一般NISAのメリット・デメリットを踏まえ、なるべく損をしないで上手に運用する方法を解説します。
4-1.長期保有・分散投資を心がける
長期の運用では複利効果が期待できます。複利とは運用益を元本に組み込んで運用する方法です。利益が利益を生み、効率的に資産を増やせる方法として知られています。一般NISAにおいても可能なかぎり長期間運用できれば、複利効果による資産の成長が期待できます。
また、投資リスクを軽減する代表的な方法に「分散投資」があります。分散投資のパターンには以下があります。
- 投資対象の分散
- 投資先の地域の分散
- 投資の時間の分散(積立投資)
ある企業の株式に全財産をつぎ込んだとします。その企業が破綻した場合、全財産を失うことになりかねません。しかし投資する銘柄を分散しておけば、すべてを失う可能性は低くなります。
一般NISAで株式投資をするなら、なるべく複数の銘柄を買い付けるようにするとリスクの軽減につながります。また、投資信託やETFを用いれば少額でも分散投資が可能です。
4-2.一時的な価格変動に一喜一憂しない
投資に価格変動はつきものです。常に右肩上がりの運用ができるわけではないことを知っておきましょう。大きな経済変動が起きると、運用商品の値動きも大きくなります。一時的な値下がりなどにとらわれず、長期の視点で資産形成する意識を持ちましょう。
4-3.余裕資金で運用する
一般NISAでの運用は元本保証ではなく、損をする可能性もあります。そのため、生活費や近いうちに使う予定のあるお金は一般NISAには充てず、余裕資金の範囲で運用しましょう。
運用商品が一時的に値下がりしても、時間が経てば持ち直すのはよくあることです。使う予定のない資金でじっくり運用するようにしましょう。
4-4.毎月分配型投資信託を購入しない
一般NISAで投資信託を買い付ける場合、毎月分配型は避けるのが賢明です。一般NISAでは投資信託の分配金に対して課税されません。しかし、分配金を受け取ってしまうと複利効果が得られなくなります。分配金を出さないファンドは、利益を自動的に再投資するためです。
分配金は再投資が可能ですが、一般NISAでは「新規の投資」と見なされるため、非課税枠を使わなければなりません。
毎月分配型でなく、無配型の投資信託であれば非課税枠を減らさずに複利運用が可能です。一般NISAで投資信託を買うなら分配金の出るタイプは避けるか、あったとしても頻度の低いタイプを選びましょう。
4-5.ポイントでの買付を利用する
一般NISAでは少額から投資ができるので、運用初心者でも取り組みやすいといえます。さらに、一部の証券会社ではポイントで一般NISAの買付が可能です。お金を使わずにポイントで投資をすれば、たとえ損をしてもダメージは大きくならないでしょう。
また、ポイントの活用法としても有益です。ポイント投資で投資を経験してみて、慣れたら本格的にお金を投じるのもよいでしょう。
4-6.ロールオーバーの活用
一般NISAの非課税期間が終了したときの保有資産の対応には次の3つの方法があります。
- 非課税期間が終了する前に売却
- 課税口座へ移管
- ロールオーバー
ロールオーバーとは?
このうちロールオーバーとは資産を翌年の非課税枠に移管するやり方で、つみたてNISAにはないものです。ロールオーバーにより非課税投資期間は5年延長され、最長で10年間非課税運用が続けられます。
ロールオーバーが有効なケースは?
ロールオーバーが有利となるのは、非課税期間終了後に値上がりする可能性があるケースです。非課税期間中に利益が出ていた運用商品だけでなく、含み損のある商品にも効果があります。
含み損がある場合に注意
一般NISAで含み損のある資産を特定口座などの課税口座に移管すると、取得価格が移管時の時価となります。
一般NISAにおいて100万円で買い付けた株式が80万円に値下がりし、課税期間終了時に特定口座に移管したとします。その後、100万円に値を戻した時点で売却すると、損益はプラスマイナスゼロのはずです。しかし、移管時に取得額が80万円となるため、100万円との差額20万円が売却益となり、課税されてしまうのです。
非課税期間終了が近づいて含み損がある場合、値上がりの見込みがなければ売却し、値上がりが期待できるならロールオーバーを選ぶとよいでしょう。
4-7.金融機関選びを慎重に行う
一般NISAの取扱運用商品・最低投資金額や取引手数料は、金融機関ごとに決められています。口座を開設した金融機関に投資したい商品がなかったり、最低投資額が高かったりする場合、思うような運用ができなくなる可能性があります。
NISAの金融機関の変更は可能ですが手間がかかり、タイミングによってはできない場合もあります。NISA口座を開設するなら、変更しなくてもすむように、自分の希望に合う金融機関を選びましょう。
まとめ
一般NISAには年間120万円までの非課税投資からの運用益に課税されないメリットがあります。一方で損をした場合に損益通算ができないため、最終的にプラスとなるように運用しないと意味がありません。
一般NISAで着実に利益を出すには制度の特色を知り、手堅く運用することが大切です。この記事を参考に一般NISAを検討してみてはいかがでしょうか。
松田 聡子
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