NISA(少額投資非課税制度)は投資の運用益が非課税になる制度です。非課税メリットがある反面、投資対象は元本保証ではないために損失を被る可能性もあります。この記事ではNISA・つみたてNISAの主な失敗例とその原因、非課税投資で失敗を避けるための対策を解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用・投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- NISA・つみたてNISAの主な失敗例
1-1.値下がり時に売却してしまう(つみたてNISA)
1-2.値上がりしたときに売却(つみたてNISA)
1-3.毎月分配型投資信託を買う(NISA)
1-4.株の値下がり時に損切りをしない(NISA)
1-5.頻繁に株取引をする(NISA)
1-6.株取引で売りのタイミングを逃す(NISA)
1-7.年末に非課税枠を埋めるためにあわてて買い付け(NISA)
1-8.余裕資金の範囲を超えて投資
1-9.投資対象をよく調べずに購入 - NISA・つみたてNISAで失敗してしまう原因
2-1.冷静な判断ができない
2-2.NISAの制度や投資の知識不足
2-3.リスク管理をしない
2-4.資金管理が甘い - NISA・つみたてNISAで失敗しないための対策
3-1.投資やNISAについて勉強する
3-2.理解できない商品は買わない
3-3.売買のルールを決める
3-4.少額から投資を始める
3-5.非課税枠を使い切ろうとしない
3-6.中長期で成長する投資対象を選ぶ - まとめ
1.NISA・つみたてNISAの主な失敗例
最初に、NISA・つみたてNISAでの投資の主な失敗例を紹介します。
1-1.値下がり時に売却してしまう(つみたてNISA)
つみたてNISAでよくある失敗例に、積み立てている投資信託が値下がりしたときにあわてて売ってしまうパターンがあります。
たとえば、2020年2月からの新型コロナウィルス感染症による市場の暴落時には、多くのつみたてNISA対象の投資信託も値下がりしました。それまで順調だった人でも資産が目減りしたり、含み損を抱えたりしてしまったのです。その状況で悲観的になり、積み立てた投資信託を売ってしまうと、運用益が非課税になるNISA制度のメリットが得られません。
積み立て投資は、値動きのある金融商品の買値を平均化する効果があり、値下がり時には数量を多く買えるメリットがあります。一時的な値下がりは気にせずに、積み立てを続けることが資産形成につながるのです。
1-2.値上がりしたときに売却(つみたてNISA)
同じくつみたてNISAの失敗例に、投資信託が値上がりしたときに売却してしまうケースがあります。買い付けた投資信託が値上がりしたときに、株式のように利益確定のタイミングが気になってしまうのです。
しかし、つみたてNISAは短期の値上がり益を狙うものではありません。投資期間中は値動きを気にせず、資産の積み上げに専念しましょう。
1-3.毎月分配型投資信託を買う(NISA)
NISAで毎月分配型投資信託を買うのは、中長期の資産形成では不利です。NISAはつみたてNISAより投資信託の選択肢が多く、毎月分配型投資信託も購入できます。NISAでは投資信託の分配金は非課税ですが、再投資をするには非課税枠を使ってしまうことがデメリットです。
中長期の投資では、複利投資という運用益を元本に組み入れる方法が効率的です。複利で資産を増やすには、分配金を受け取らないほうが効果的なのです(自動的に再投資されるため。非課税枠も消費しない)。そのため、NISAでは最初から分配金が支払われる頻度の少ない投資信託を選ぶのが賢明といえます。
1-4.株の値下がり時に損切りをしない(NISA)
NISAで株式投資をしていて、適切なタイミングで損切りができないのもよくある失敗例です。NISAの株式投資でもリスク管理は大切で、思惑が外れて値下がりしたときには損切りが必要です。
NISAでは非課税枠や非課税投資期間があるため、売買のタイミングに戸惑う人が少なくありません。その結果、「塩漬け」になってしまうと、NISAの非課税メリットが得られません。
値下がりしたときには追加購入する「ナンピン買い」という選択肢もありますが、初心者には判断が難しい方法です。早めに見切りをつけて、損失を最小限に抑えるのが得策といえます。
1-5.頻繁に株取引をする(NISA)
NISAの株取引は、デイトレードのような短期の取引には向きません。頻繁な取引をすると、非課税枠を早く使い切ってしまうからです。NISAの株取引に適した銘柄は、中長期で成長が見込めるものです。
成長段階にある若い企業は無配であることが多いのですが、値上がり益を狙うだけでなく、配当も受け取りながら長期保有できる銘柄を選ぶのもよいでしょう。
1-6.株取引で売りのタイミングを逃す(NISA)
NISAの株取引で売りの判断に失敗してタイミングを逃し、結局値下がりしてしまうのもよくあるケースです。NISAで買った株を売却しても、その分の非課税枠は再利用できません。できれば、じっくり成長する銘柄を選ぶことが望ましいのですが、急に値上がりする可能性もあります。
その場合にはすぐに売却して利益を確定したほうが、タイミングを逸するよりは得策です。通常の株取引の売りのタイミングと同様に判断して、運用益を確保しましょう。
1-7.年末に非課税枠を埋めるためにあわてて買い付け(NISA)
年末にNISAの非課税枠を使い切るために、値動きを見ずにあわてて買い付けてしまうのも、よく見られるケースです。ボーナスが出てから購入するという人も、事前に投資対象の値動きは追っておきましょう。
高値つかみになってしまいそうであれば、別の銘柄を検討する、複数回に分けて購入するなどの冷静な対策が必要です。
1-8.余裕資金の範囲を超えて投資
NISAやつみたてNISAの投資に生活費などを充ててしまい、当座のお金に困る失敗例もあります。NISAやつみたてNISAは中長期の資産形成に適しており、すぐには換金して使えないため、余裕資金を充てる必要があります。
投資をするのは将来のために有効ですが、そのために生活費が足りなくなっては本末転倒です。NISAやつみたてNISAを始めるにあたっては、家計を見直し、日常生活に支障のない範囲の投資額を決めましょう。
1-9.投資対象をよく調べずに購入
NISAやつみたてNISAの非課税口座を作り、投資対象をよく調べないで購入して損をしてしまうのもよくある失敗例です。NISAやつみたてNISAは投資の初心者にも利用されていますが、元本保証ではないことを意識しましょう。
金融機関の担当者から勧められた、証券会社のランキングで上位だったなどの理由だけで投資するのは危険です。必ず、投資対象の仕組みやリスク、好調の要因などを調べて納得してから購入しましょう。
2.NISA・つみたてNISAで失敗してしまう原因
NISAやつみたてNISAの失敗例に学ぶことは、自分の資産形成に大きく役立ちます。失敗例を知るだけでなく、失敗の根底にある要因を理解しておきましょう。
2-1.冷静な判断ができない
購入した金融商品が値下がりしてしまったら狼狽し、反対に大きく値上がりして平常心を失う人もいます。投資において人間の感情が冷静な判断の邪魔になり、失敗するケースは後を絶ちません。
特にNISAやつみたてNISAをきっかけに投資を始める初心者も多く、預貯金にはない値動きに驚いてしまう人もいるでしょう。経験を積むことで解決できる場合も多いのですが、投資では感情に流されてはいけないこと頭に入れておきましょう。
2-2.NISAの制度や投資の知識不足
NISAやつみたてNISAで非課税投資をするにあたり、制度の理解や投資の基礎知識なしに始めるのは避けましょう。運用益に対して課税されないことは大きなメリットですが、だからこそ運用益を出さなければ意味がありません。
何の予備知識もなしに始めて成功するビギナーズラックがあっても、長く続けるには最低限の知識が必要です。焦らず、少しずつ投資やNISAについての知識を学んでいきましょう。
2-3.リスク管理をしない
NISAやつみたてNISAでの非課税投資は、短期間で大きな利益を得る方法ではありません。基本的なリスク管理をしないと、資産を増やすことはできないのです。
長期投資では利益を得るのと同じくらい、リスクを減らすことが大切です。大きな利益を得られないならば、大きな損失も避けなければならないのです。株式投資における損切りや分散投資などを心がけ、失敗を最小限にしましょう。
2-4.資金管理が甘い
リスク管理と関連して、NISAで失敗する人は資金管理がルーズな傾向にあります。1度の失敗で投資から撤退せざるを得なくなったり、生活に困ったりすることは避けるべきです。投資のお金と、生活費や使い道の決まっているお金は分別して管理する習慣をつけましょう。
3.NISA・つみたてNISAで失敗しないための対策
これまでのことを踏まえ、NISAやつみたてNISAで失敗を避けるための対策について解説します。
3-1.投資やNISAについて勉強する
知識不足による失敗を避けるには、投資やNISAについての勉強をすることが必須です。損をする可能性のある投資では、結果は投資家自身が負わなければなりません。他人が儲かった話に飛びつくのではなく、その投資の仕組みやリスクについて理解してから買うようにしましょう。
3-2.理解できない商品は買わない
NISAやつみたてNISAを始めても、どんな商品か理解できないものを買うのは危険です。たとえば、金融機関の担当者から勧められた金融商品を買いたくなったとしても、すぐに買わないようにしましょう。どのような商品かを調べ、どうしても理解できないようなら購入を見送る勇気も必要です。
3-3.短期的な値動きにとらわれない
NISAやつみたてNISAも、中長期の資産形成に適しています。短期で「当てにいく」投資ではないことを理解しましょう。投資対象には値動きがあり、時には下がることもあります。値下がりしたからといってすぐに売却せず、一旦は様子を見ましょう。
特につみたてNISAは、淡々と積み立てを続けることが大切です。値下がりが続く場合、原因を分析して、回復する見込みがなければ売却を検討します。
3-4.売買のルールを決める
NISAを使った投資で安定した収益を得るには、一貫したルールに基づいた取引を続けることが大切です。一時的な市場の高騰で運良く利益が出たとしても、それが続くとは限りません。1回ずつの利益が最大にならなくても、コツコツ利益を重ねるとやがて大きな資産形成につながります。
投資は行き当たりばったりでなく、ルールに則って行いましょう。
3-5.少額から投資を始める
NISAやつみたてNISAで特に初心者が始める場合、最初から大きな金額を投資しないほうが賢明です。購入したタイミングが悪く、いきなり資産が大きく値下がりすると、投資を続けたくなくなる可能性もあるからです。
100円程度の金額指定で投資信託が買える証券会社もあります。最初は全額を失ってもかまわない程度の少額から始め、徐々に金額を増やすとよいでしょう。ただし、少額すぎる投資を長期間続けても資産形成は期待できません。リスクに慣れたら、適正な金額の投資をしましょう。
3-6.非課税枠を使い切ろうとしない
NISAで一括購入をする場合、買い付けのタイミングが合わずに非課税枠が余ってしまうケースもあります。非課税枠はなるべく使ったほうが有利ですが、投資対象が高値であれば無理に購入すべきではありません。
もし、使い切りたいと考えるならば、あまり値動きの激しくない債券がメインのETFや投資信託を選ぶのも1つの方法です。
3-7.中長期で成長する投資対象を選ぶ
NISAやつみたてNISAは中長期の資産形成に適した制度なので、投資対象も成長性のあるものが向いています。一時的に値上がりするものより、過去の実績から着実に成長しているものを選ぶとよいでしょう。
過去の実績が堅調な投資対象が今後も同じ成長をする保証はありませんが、そうでない商品より可能性は高めと考えられます。特に一括投資の場合は定期的に値動きをチェックし、想定外のケースでは対策を考えましょう。
まとめ
NISAやつみたてNISAの非課税メリットを生かすには、着実に運用益を得ることが求められます。投資で運用益を継続的に得るためには、大きな失敗を避けるリスク管理や取引のルール作りが必要です。最低限の知識を身につけ、取引判断を自分でできるようにしましょう。
松田 聡子
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