純資産総額は、投資信託の規模を示す指標の一つです。純資産総額の大きいファンドほど運用できる資金も多くなるため、投資信託の持つ一部のリスクが小さくなります。
この記事では、純資産総額の大きい投資信託について手数料や指数などを詳しくご紹介します。投資信託を取引している方、これから取引を始めたいと考えている方はご参考ください。
※この記事は読者の皆様への情報提供を目的としており、特定の商品や銘柄への投資を推奨・勧誘するものではありません。投資に関する最終的なご判断は、ご自身の責任において行っていただきますようお願いいたします。
※また、以下の内容は2022年1月14日時点で確認することができた、各委託会社(運用会社)が公表する交付目論見書や、最新の月次報告及びホームページ等に基づき執筆しています。最新の情報につきましては、ご自身にてご確認ください。
目次
- 純資産額が大きい投資信託10選
1-1.A・バーンスタイン・米国成長株投信D
1-2.GESGハイクオリティ成長株式F(H無)
1-3.eMAXIS Slim 米国株S&P500
1-4.ピクテグローバルインカム株式F(毎月分配)
1-5.netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)
1-6.ダイワ・US-REIT・オープンBコース
1-7.フィデリティ・USリート・ファンドB
1-8.G・ハイクオリティ成長株式F(ヘッジなし)
1-9.グローバル・プロスペクティブ・ファンド
1-10.投資のソムリエ - 純資産額が大きい投資信託の注意点
- まとめ
1 純資産額が大きい投資信託10選
投資信託の純資産総額とは、資産総額から負債等を除いた時価総額をあらわします。例えば、純資産総額が極端に小さい場合、十分な運用を期待できないため繰り上げ償還となる可能性も高くなります。そのため、純資産総額の規模は、銘柄を選ぶ際の基準の一つとなっています。
それでは、純資産額が大きい投資信託を具体的に確認してきましょう。
※下記のリターン(1年)とは、投資家が期間中に本ファンドを保有して得られた収益を年率換算したものです。
※シャープレシオ(1年)とは、運用のリスクに対してどれだけリターンを得られるかを示す指標で、値が大きいほど相対的に小さなリスクで大きなリターンが得られたことを表します。
※信託報酬と購入時手数料は目論見書に記載されている上限値のため、ファンドの運用状況や証券会社によって実際に負担する手数料が異なる場合もあります。
1-1 A・バーンスタイン・米国成長株投信D
運用会社 | アライアンス・バーンスタイン |
基準価額 | 11,593円 |
純資産総額 | 16,398億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.727% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +42.44% |
シャープレシオ(1年) | 2.39 |
基準価額騰落率(3カ月) | -3.74% |
世界的に資産運用業務を展開しているアライアンス・バーンスタイン社が運用する投資信託です。純資産総額は1兆6,398億円とダントツの規模で、米国の代表的な株価指数S&P500を指標として主に成長性が高いと判断される米国株式などに投資しています。
米国経済を代表する経済指標のS&P500指数を上回る成果を目指して運用されるアクティブ型のファンドとなっており、為替ヘッジのないタイプです。
信託報酬は1.727%、購入時手数料は3.3%となっており、アクティブ型の投資信託のコストとしてはやや高い水準です。一方、リターンは1年で+42.44%とハイパフォーマンスを示しており、シャープレシオは2.39とリスクに見合った成果を上げています。
過去3カ月の基準価額騰落率はややマイナスとなっているものの、株式市場の変動の範囲内に収まる下落幅となっており、順調に運用成果を出しています。
1-2 GESGハイクオリティ成長株式F(H無)
運用会社 | アセットマネジメントOne |
基準価額 | 11,722円 |
純資産総額 | 10,720億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.848% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +9.62% |
シャープレシオ(1年) | 0.58 |
基準価額騰落率(3カ月) | -6.62% |
日本と新興国を含む世界の上場株式に投資するファンドであり、「未来の世界(ESG)」の愛称で親しまれています。個別企業の競争優位性や成長力、ESGへの取り組みなどを加味して質の高いと考えられる企業の中から株価が割安と判断される銘柄に投資するファンドです。
ESGとは、企業の成長に重要な環境、社会、企業統治などに配慮することを指す単語で、ESGに配慮した企業に投資することをESG投資と呼びます。
信託報酬は1.848%とやや高めの水準ですが、1年のリターンは+9.62と手堅い運用成果を上げているファンドです。
1-3 eMAXIS Slim 米国株S&P500
運用会社 | 三菱UFJ国際投信 |
基準価額 | 18,530円 |
純資産総額 | 9,567億円 |
ファンド区分 | インデックス型 |
信託報酬(税込) | 0.0968% |
購入時手数料(税込) | 0% |
リターン(1年) | +44.52% |
シャープレシオ(1年) | 3.09 |
基準価額騰落率(3カ月) | +7.98% |
「eMAXIS Slim 米国株S&P500」は、S&P500に採用されている米国株式に投資するファンドであり、信託報酬などコストの安さに定評のある「eMAXIS Slim」シリーズの一つです。
アクティブ型ファンドと異なり、指標として採用されているS&P500の動きと同じ運用成果を目指すインデックス型のファンドです。
信託報酬は0.0968%とインデックス型ファンドの中でも低水準です。また、購入時手数料のかからないノーロードの商品となっているので、運用コストを抑えた投資を行いたい方に適しています。
過去1年のリターンは+44.52%と高いパフォーマンスを示しており、シャープレシオは3.09、3カ月の基準価額騰落率は+7.98%と運用成果も良好です。
1-4 ピクテグローバルインカム株式F(毎月分配)
運用会社 | ピクテ投信投資顧問 |
基準価額 | 2,601円 |
純資産総額 | 9,092億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 実質1.81% |
購入時手数料(税込) | 3.85% |
リターン(1年) | +20.91% |
シャープレシオ(1年) | 1.69 |
基準価額騰落率(3カ月) | +5.22% |
「ファンド・オブ・ファンズ方式」と呼ばれる他の投資信託に投資するファンドです。おもに、電力やガス、水道などの日常生活に不可欠な公益サービスを営む国内外の公益企業株式に投資している投資信託を中心に運用されています。
信託報酬は1.21%ですが、投資先のファンドに支払う費用を含めると実質1.81%と高めの水準になります。購入時手数料の上限も3.85%とやや高めの設定です。
運用成績については、1年のリターン+20.91%、シャープレシオ1.69、3カ月の基準価額騰落率+5.22%となっており、各指標が示すように堅調な運用成果を上げているファンドです。
1-5 netWIN GSテクノロジー株式ファンド Bコース(為替ヘッジなし)
運用会社 | ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメント |
基準価額 | 24,320円 |
純資産総額 | 7,445億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 2.09% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +34.67% |
シャープレシオ(1年) | 1.62 |
基準価額騰落率(3カ月) | -5.10% |
「GSテクノロジー株式ファンド Bコース」は、テクノロジーの発展により恩恵を受ける米国企業株式を主要投資対象とするファンドであり、「為替ヘッジ無し」で運用を行うタイプです。
信託報酬は2.09%と高めの水準ですが、1年のリターンは+34.67%、シャープレシオは1.62と信託報酬に見合った好調な運用成果を上げています。
1-6 ダイワ・US-REIT・オープンBコース
運用会社 | 大和アセットマネジメント |
基準価額 | 2,750円 |
純資産総額 | 7,029億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.672% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +57.49% |
シャープレシオ(1年) | 3.31 |
基準価額騰落率(3カ月) | +6.22% |
おもに米国REIT(不動産投資信託)に投資し、配当利回りを重視した運用によってFTSE NAREITエクイティREIT・インデックスという指標を上回る運用成果を目指すアクティブ型ファンドです。
信託報酬と購入時手数料はアクティブ型ファンドとして平均的な水準ですが、運用成績は1年のリターンが+57.49%と高パフォーマンスを示しています。また、シャープレシオは3.31となっており、リスクに対する収益性も比較的高いファンドです。
1-7 フィデリティ・USリート・ファンドB
運用会社 | フィデリティ投信 |
基準価額 | 3,622円 |
純資産総額 | 6,928億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.54% |
購入時手数料(税込) | 3.85% |
リターン(1年) | +58.36% |
シャープレシオ(1年) | 3.31 |
基準価額騰落率(3カ月) | +5.08% |
上記の大和アセットマネジメントの商品と同様に米国REITに投資するファンドです。運用方針も同様で、FTSE NAREITエクイティREIT・インデックスを上回る成果を目指して運用されます。
購入時手数料はやや高めの3.85%に設定されていますが、信託報酬は大和アセットマネジメントの商品より少し低い1.54%が上限です。運用成果は1年のリターンやシャープレシオも高い水準を示しており、高い運用成果を上げている商品となっています。
1-8 G・ハイクオリティ成長株式F(ヘッジなし)
運用会社 | アセットマネジメントOne |
基準価額 | 28,162円 |
純資産総額 | 6,742億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.87% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +10.56% |
シャープレシオ(1年) | 0.59 |
基準価額騰落率(3カ月) | -7.83% |
「未来の世界」が愛称となっているこのファンドは、おもに個別企業の競争優位性や成長力評価が高いと判断される国内外の上場株式に投資しています。
信託報酬は1.87%とやや高めの水準で、運用成績は1年のリターンが+10.56%と堅調な成果を示しています。
1-9 投資のソムリエ
運用会社 | アセットマネジメントOne |
基準価額 | 12,093円 |
純資産総額 | 6,453億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 1.54% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | +0.34% |
シャープレシオ(1年) | 0.12 |
基準価額騰落率(3カ月) | -1.37% |
おもに国内外の公社債や株式、REITなどに投資するファンドです。基準価額の変動リスクを抑えながら基準価額の上昇を目指すため、公社債などリスクの少ない商品も組み入れながら投資する点が特徴です。
信託報酬や購入時手数料などのコストはアクティブ型ファンドの平均的な水準です。1年間のリターンやシャープレシオ、基準価額の騰落率などは低めですが、2012年10月の設定以来、基準価額は順調に上昇しています。
1-10 グローバル・プロスペクティブ・ファンド
運用会社 | 日興アセットマネジメント |
基準価額 | 16,945円 |
純資産総額 | 5,999億円 |
ファンド区分 | アクティブ型 |
信託報酬(税込) | 実質1.658% |
購入時手数料(税込) | 3.3% |
リターン(1年) | -17.83% |
シャープレシオ(1年) | -0.28 |
基準価額騰落率(3カ月) | -28.21% |
「ファンド・オブ・ファンズ方式」を採用しているファンドであり、おもに劇的な生産性向上などのイノベーションを起こし得ると判断された企業の株式などに投資する投資信託で運用成果を目指します。
ファンド自体の信託報酬は0.858%と低めに設定されていますが、投資先のファンドに支払う費用0.8%を含めると実質信託報酬は1.658%となります。
一方、リターンやシャープレシオ、基準価額の騰落率などは全てマイナス圏での推移となっています。また、ここ1年ほどは資金流出が続いているため、慎重な投資判断が求められます。
2 純資産額が大きい投資信託の注意点
投資信託の運用規模が大きくなると、スケールメリットによって経費を抑えることができるため、純資産額の増加に連れて信託報酬が引き下げられる場合もあります。
また、純資産額は一定の水準を下回ると満期前に繰り上げ償還される可能性があります。繰り上げ償還になると新たな投資商品を見つける手間などもかかるため、純資産額の大きい投資信託は、繰り上げ償還されにくい点もメリットです。
ただし、純資産額の大きさは運用成績に直結するとは限りません。例えば、上記の「グローバル・プロスペクティブ・ファンド」の純資産総額は約6,000億円と大きいものの、直近の運用成績は冴えず、ここ1年ほどは資金流出が続いている状況です。
運用コストに関しても同様で、似たような投資対象に投資するファンドでも規模の大きなファンドほどコストが安くなるわけではありません。規模のあまり大きくないファンドでもしっかりと運用成果をあげながら低いコストで運用されているファンドもあるので、留意しておきましょう。
まとめ
純資産額の大きい投資信託は、繰り上げ償還などのリスクは低いものの、必ずしも銘柄の良さを決める基準になるわけではありません。そのため、投資信託を選ぶ際は純資産額の大きさだけでなく、投資対象や過去の運用成績、コストなどの情報も加味して判断することが大切です。

HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム

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