プロが考える投資初心者におすすめの投資信託は?選び方や注意点も

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投資信託を始めるにあたっては、まず投資の目的を設定し、その目的に適した金融商品を選ぶ必要があります。投資目的は、老後の備え、結婚資金、家の頭金、子供の教育費、自家用車の購入資金などがありますが、その目的によってリスクの許容度が異なります。

20代、30代の方が老後に備えるために投資を始めた場合は、運用期間が30年以上と長期間となるため、より高いリスクを取ることが可能です。一方、同じ老後資金のために投資を始めた50代、60代の方は運用期間が短くなるため高リスクを避ける必要があります。

今回は、投資目的別に投資初心者が始めやすい投資信託の選び方や注意したいポイントを解説し、初心者でも運用しやすい10銘柄も紹介します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. 投資信託の種類(運用方法)
    1-1.アクティブ型
    1-2.インデックス型
    1-3.バランス型
  2. 投資信託の運用対象
    2-1.株式
    2-2.債券
  3. 投資信託の手数料を知る
    3-1.購入手数料
    3-2.信託報酬
    3-3.信託財産留保額
  4. 投資初心者の方にも運用しやすい投資信託10選
    4-1.インデックス型:三菱UFJ国際-eMAXIS Slim全世界株式
    4-2.インデックス型:ニッセイ外国株式インデックス・ファンド
    4-3.インデックス型:SBI・V・S&P500インデックス・ファンド
    4-4.インデックス型:三菱UFJ国際-eMAXIS NASDAQ100インデックス
    4-5.インデックス型:三井住友・日本債券インデックス・ファンド
    4-6.インデックス型:ニッセイJリートインデックスファンド
    4-7.アクティブ型:農林中金 長期厳選投資 おおぶね
    4-8.アクティブ型:コモンズ30ファンド
    4-9.バランス型:三菱UFJ国際-eMAXIS Slimバランス(8資産均等)
    4-10.バランス型:楽天・インデックス・バランス・ファンド(債券重視型)
  5. まとめ

1 投資信託の種類(運用方法)

投資信託を始めるにあたり、まずは投資信託の運用方法とリスクを理解することが必要です。運用方法には、アクティブ型、インデックス型、バランス型があります。それぞれみていきましょう。

1-1 アクティブ型

アクティブ型は市場平均を上回る運用収益を目指すため、運用には専門家であるファンドマネージャーやアナリストがあたります。銘柄を運用担当者が精査するため、人件費等がかかり、信託報酬(運用手数料)がインデックス型やバランス型より高めに設定されています。

1-2 インデックス型

インデックス型とは、日経平均株価やS&P500指数などの指数の動きと連動した運用を目指す投資信託です。それぞれの指数の構成銘柄や算出方法が開示されているため、指数と連動する投資信託を容易に再現することができます。銘柄を選ぶ必要がなく機械的な運用が可能なため、運用手数料が低く設定されています。

下記に日米独英の主要株式指数の騰落率を掲載しました。短期間では乱高下が激しくマイナスとなる場合もありますが、長期間ではプラスで推移しています。インデックス型は長期間保有すればするほど、高い成長が期待できる傾向にあります。

米国の株式指数は、30年間で10倍以上に成長しました。特に、ナスダック100指数は現地通貨で53倍、円換算でも42倍に上昇しています。

主な株式指数の6カ月、1年、10年、20年、30年の騰落率(%)

(基準日:2021年8月19日)

【現地通貨建て】

指数 / 期間 6カ月 1年 5年 10年 20年 30年
日経平均株価指数 -10.43 17.85 62.74 209.81 136.01 18.40
TOPIX -2.98 17.24 44.25 150.19 60.76 7.10
ダウ工業平均 11.41 25.74 89.53 224.65 242.94 1,083.28
S&P500指数 14.57 30.74 103.49 295.33 282.25 1,051.94
ナスダック指数 8.73 30.08 180.56 528.33 688.14 2,771.32
ナスダック100指数 14.13 30.61 213.86 640.47 895.17 5,299.65
DAX指数 13.31 23.84 50.63 188.46 202.71 856.13
FT100指数 7.19 18.09 3.79 40.61 32.68 170.42
ハイイールドETF 2.10 7.69 29.68 77.71
投資適格債ETF 3.37 1.51 27.63 67.17

【円換算】

指数 / 期間 6カ月 1年 5年 10年 20年 30年
日経平均株価指数 -10.43 17.85 62.74 209.81 136.01 18.40
TOPIX -2.98 17.24 44.25 150.19 60.76 7.10
ダウ工業平均 16.46 30.40 107.74 366.62 212.77 846.71
S&P500指数 19.77 35.59 122.72 468.21 248.63 821.64
ナスダック指数 13.65 34.91 207.07 803.11 618.81 2,197.26
ナスダック100指数 19.30 35.46 243.52 964.29 807.63 4,220.11
DAX指数 13.95 27.67 70.44 236.96 252.38 192.79
FT100指数 8.43 27.62 17.90 66.51 13.88 77.76
ハイイールドETF 6.73 11.69 41.93 155.42
投資適格債ETF 8.05 5.28 39.69 140.28

1-3 バランス型

バランス型の投資信託は、株式、債券のほか、リート(不動産)やコモディティなどの幅広い運用商品にバランス良く投資している投資信託です。多くの異なった金融商品に投資をしているため、大きな収益を期待するよりもリスクを一定水準に抑えて運用したい場合に適しています。

2 投資信託の運用対象

投資信託の主な運用対象は株式と債券です。それぞれの特徴を見ていきましょう。

2-1 株式

株式の運用は、元本を下回ってしまうこともありますが、大きな収益が期待できます。10年で10倍、20倍以上に成長する銘柄も存在します。

投資信託の銘柄は日本国内に特化したものから、米国や世界の株式を対象とする投資信託までさまざまです。運用目的が年金など長期にわたる場合には、日本国内だけではなく米国や世界の株式に投資する銘柄を選ぶことで世界経済の成長が享受できるようになります。

2-2 債券

債券は、債券を発行している国や企業がデフォルトしない限り、償還時に元本を下回ることはありません。しかしながら、一般的な債券は株式のように2倍、3倍に価格が上昇することもありません。

債券の組み入れが高い投資信託ほど元本割れのリスクが低い傾向にあります。先進国の国債や、格付けの高い社債ほどデフォルトリスクが低いため、利率が低く設定されています。

元本割れを回避するには、高い格付けの国内債券に投資する投資信託を選ぶようにしましょう。結婚資金や車の購入を目的とした資産運用の場合は、運用期間が比較的短くなるため、債券が多く組み入れられた投資信託を選択するようにしましょう。

3 手数料を知る

投資信託の手数料は、購入時に必要な購入手数料、保有している間必要な信託報酬、売却時に必要な信託財産留保額の3つです。手数料は安いほど良いのですが、それぞれをよく理解してから投資信託を購入するようにしましょう。

3-1 購入手数料

投資信託を購入する際に必要な手数料です。近年では、ノーロードと呼ばれている購入手数料がかからない投資信託が一般的です。

3-2 信託報酬

信託報酬は、投資信託を購入してから売却するまで毎日必要な手数料です。信託報酬は、日々の投資信託の価格である基準価額の算出時に差し引かれます。手数料を支払っているという感覚が薄れるため、投資信託を購入する際に注意が必要です。

信託報酬は各銘柄により異なり、0.1~3.5%程度と幅広く設定されているため、事前に確認することが大切です。インデックス型が低く、アクティブ型が高く設定される傾向にあります。

同じインデックスに連動している投資信託の場合でも、信託報酬は異なるため注意しましょう。アクティブ型については、手数料が高くても運用成績が高い商品も存在するため、過去の運用成績に照らし合わせ評価しましょう。

3-3 信託財産留保額

信託財産留保額とは、投資信託の売却時に徴収される手数料のことです。多くの銘柄では設定されていないため、事前に調べる必要があります。

4 投資初心者の方にも運用しやすい投資信託10選

インデックス型を6銘柄、アクティブ型を2銘柄、バランス型を2銘柄ピックアップして説明します。基準価額は2021年8月20日時点です。

株式インデックス型の投資信託は年金等の長期運用に適しています。日本が超高齢化社会を迎え高い経済成長が期待できないため、成長余力のある米国を中心とした世界の株式に投資する銘柄を中心に選びました。

ベンチマークとしてよく使われるMSCIとは、モルガン・スタンレー・キャピタル・インターナショナルが算出し公表する指数のことです。NOMURA BPIとは日本国内債券の代表的な指数です。

4-1 三菱UFJ国際-eMAXIS Slim全世界株式

三菱UFJ国際-eMAXIS Slim全世界株式の運用対象は、日本を含む世界の株式です。投資目的が年金や剰余金の運用といった長期の運用に適しています。ベンチマークはMSCIオールカントリー・ワールド・インデックス、信託報酬は0.1144%、基準価額は15,458円です。

4-2 ニッセイ外国株式インデックス・ファンド

ニッセイ外国株式インデックス・ファンドは、日本を除く世界の株式に投資している投資信託です。運用目的が年金や剰余金の運用など長期の運用に適しています。ベンチマークはMSCIコクサイ・インデックス、信託報酬は0.1023%、基準価額は23,931円です。

4-3 SBI・V・S&P500インデックス・ファンド

SBI・V・S&P500インデックス・ファンドのベンチマークは、円換算ベースのS&P500指数です。年金や剰余金の運用などが投資目的の場合に適しています。信託報酬は0.0938%、基準価額は15,409円です。

4-4 三菱UFJ国際-eMAXIS NASDAQ100インデックス

三菱UFJ国際-eMAXIS NASDAQ100インデックスは、円換算ベースのNASDAQ100指数の動きに連動した投資信託です。運用目的が年金や剰余金の運用など長期の運用に適しています。信託報酬は0.4400%、基準価額は15,409円です。

信託報酬が他のインデックス・ファンドより高めに設定されていますが、指数の過去推移から高い運用成績が期待できます。

4-5 三井住友・日本債券インデックス・ファンド

三井住友・日本債券インデックス・ファンドは、国内債券に投資する投資信託で、ベンチマークはNOMURA BPIです。国内債を対象とした債券インデックス・ファンドは、元本割れのリスクが小さいことが特徴です。そのため住宅資金の頭金積立や教育資金など高いリスクをとることができない場合の資産運用に適しています。

4-6 ニッセイJリートインデックスファンド

ニッセイJリートインデックスファンドは、東証REIT指数の動きに連動しています。REIT(不動産投資信託)は株式や債券の代替資産となりうる資産です。中長期の運用に適しています。

4-7 農林中金 長期厳選投資 おおぶね

アクティブ型の信託報酬はインデックス型と比較し高めの設定です。しかし、運用成績を考慮する必要があります。

農林中金 長期厳選投資 おおぶねは、北米株式に投資する投資信託です。信託報酬は0.99%とインデックス型を大きく上回っているものの、運用成績は3年間で1.6倍(2017年7月5日~2021年3月17日)に成長しました。

4-8 コモンズ ザ・2020ビジョンファンド

コモンズ ザ・2020ビジョンファンドは、日本株に特化したファンドで株価上昇の期待が高い約50銘柄に投資しています。投資評価会社モーニングスター株式会社による「ファンド・オブ・ザ・イヤー2020」国内株式部門において、同ファンドは優秀ファンド賞を受賞しました。

信託報酬率は1.27%とインデックス型と比較し高めですが、1年間の騰落率が約32%と日経平均(約19%)やTOPIX(約20%)を大きく上回っています。

4-9 三菱UFJ国際-eMAXIS Slimバランス(8資産均等)

バランス型は、投資する対象が銘柄により異なっています。投資対象としては、国内・先進国・新興国の株式、債券、REITなどです。資産が分散化されているため大きな成長は期待できないものの、分散効果により元本割れのリスクが低いといえます。

三菱UFJ国際-eMAXIS Slimバランス(8資産均等)のベンチマークはTOPIX、MSCIコクサイ・インデックス、MSCIエマージング・マーケット・インデックス、NOMURA BPI指数、FTSE世界国債インデックス、JPモルガンGBI-EMグローバル・ダイバーシファイド、東証REIT指数およびS&P先進国REITインデックスを12.5%ずつ組み合わせた合成指数です。

信託報酬は0.154%、基準価額は13,163円です。元本割れのリスクが低いため、使用使途が決まっている資金の運用に適しています。

4-10 楽天・インデックス・バランス・ファンド

楽天・インデックス・バランス・ファンドは株式重視型、均等型、債券重視型の3銘柄が設定されています。投資対象はバンガード・トータル・ワールドストックETFとバンガード・グローバルボンド・インデックス・ファンド(円ヘッジ)で、株式型は株式ETFが約70%、債券が約30%、均等型が株債券ともに約50%、債券型は株式ETFが約30%、債券が約70%という配分です。信託報酬はどの銘柄も約0.22%です。

株式の比率が高い銘柄ほど上昇期待が高く、債券比率が高いほど元本割れのリスクが低くなります。

まとめ

投資信託を始めるにあたっては、投資目的や期間を決めることが大切です。投資目的を明確にし、自身の年齢やライフスタイルにあった投資信託を選ぶようにしましょう。投資はなるべく早くから始めることが重要です。運用期間が長ければ長いほど高い運用収益が期待できるからです。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。