超低金利に加えてインフレが進行しており、まとまった預金を運用したいと考えている方も少なくないではないでしょうか。1,000万円のまとまった資金があれば投資の選択肢も豊富ですが、「どのような金融商品があるのか」「どう分散するのが良いのか」など疑問に感じる方もいるでしょう。
そこでこの記事では、1,000万円を投資する場合の金融商品・サービスと始め方、投資する際の注意点について詳しく解説します。まとまった資金の運用を検討中の方はご参考ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・サービスへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は、2022年9月7日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。
目次
- インフレリスクによる資産の目減りと運用目標
- 1,000万円を投資する場合の金融商品・サービスと始め方
2-1.投資信託
2-2.株式投資
2-3.不動産投資
2-4.その他 - 1,000万円を投資する際の注意点
- まとめ
1 インフレリスクによる資産の目減りと運用目標
最近は原油高をはじめとした資源価格の高騰や、急激に進んだ円安などを背景に物価も上昇しており、将来のお金を目減りさせるリスク(インフレリスク)の一つとなっています。
例えば、日銀は2013年からデフレ脱却などを目的に消費者物価の対前年比上昇率2%を目標としていますが、2%の物価上昇が20年間続くと現在1万円で買えている商品は約1.5倍になり、現在1万円の価値は3分の2程度に目減りすることになります。
最近メガバンクの定期預金の金利は0.002%と超低金利で、1,000万円を預けても20年間で約4,000円しか利息が付かないため、預金のみでインフレリスクに備えるのは困難となっており、投資による資産形成の必要性がますます高まっています。
投資を行う際は、「いつまでに」「いくら貯める」という具体的な目標を立てることが重要になります。特に、過度なリターンを求めるとリスクも大きくなるため、1,000万円などのまとまった資金を投資する場合、取り返しのつかない損失が生じる可能性もあります。そのため、事前に投資の目的と目標金額を設定し、目標に合わせた投資方法の選択を行うことが重要です。
下表は、1,000万円を元手に複利で運用すると想定して、利回りごとに5年後、10年後、20年後、30年後にいくらになっているかを計算したものです。
利回り/年 | 5年後 | 10年後 | 20年後 | 30年後 |
---|---|---|---|---|
1% | 10,510,101円 | 11,046,221円 | 12,201,900円 | 13,478,489円 |
3% | 11,592,741円 | 13,439,164円 | 18,061,112円 | 24,272,625円 |
5% | 12,762,816円 | 16,288,946円 | 26,532,977円 | 43,219,424円 |
10% | 16,105,100円 | 25,937,425円 | 67,274,999円 | 174,494,023円 |
資産形成の目的は、老後の資金作りやマイホーム購入の頭金、教育資金など人によって異なりますが、例えば、現在35歳の方が老後資金のため年金の受給開始65歳に合わせて目標金額を2,000万円に設定して投資する場合、年利3%で運用できると30年後に2,400万円を超える資産が手元に残ります。
利回り3%の長期運用ならそこまで大きなリスクを冒す必要はないため、着実に老後資金を作ることが狙えます。
2 1,000万円を投資する場合の金融商品・サービス
ここからは、実際に1,000万円を投資する場合に検討したい金融商品・サービとその始め方について確認してみましょう。
2-1 投資信託
投資信託とは、資産運用のプロが投資家から資金を集め、集まった資金を一つのファンドとして様々な資産に投資する金融商品です。ファンドで得た利益は分配金などで投資家に還元される仕組みで、日々のファンドの基準価額(購入・換金する際の投資信託の値段)の値動きによって換金の際に売却益を得ることもできます。
投資信託は、手間のかかる投資対象や銘柄の選定、売買などは全てファンドでやってくれるため、難しい金融商品の知識がなくても簡単に投資できる点が特徴です。一つのファンドに投資するだけで分散投資の効果がある点も特徴の一つで、例えば、株式に投資するファンドでは運用方針に沿った複数の銘柄を選定して資金を分散しながら投資してくれます。
また、投資の対象となる資産は株式や債券、REIT(不動産投資信託)、金や原油などのコモディティなどファンドによって様々で、中には株式と債券といった複数の資産に投資する複合型のファンドもあります。
投資信託は実質的に様々な資産や銘柄への投資が可能なので、難しい専門知識がなくてもリスク軽減をしながら、分散投資で運用できる点がメリットです。
一方、投資信託はプロが投資家に代わって資産運用を行うため、信託報酬という管理・運用手数料が発生するだけでなく、購入時(購入時手数料)や売却時(信託財産留保額)にも手数料が都度発生することがあります。
そのため、投資信託は自分で運用する株式投資と比べてコストが高くなる点はデメリットです。コストが高くなると運用で得られる利益が目減りするため、ファンドを決定する際は信託報酬などの運用コストも考慮した上で、目標のリターンに合わせて銘柄選定することが重要です。
投資信託は証券会社や銀行に証券総合口座を開設すると取引を開始できますが、取り扱っているファンドは金融機関によって異なります。SBI証券、マネックス証券などネット専業の証券会社は多くのファンドを取り扱っている上、全ての取扱銘柄で購入時手数料が無料となる証券会社などもあるため、多くの選択肢からコストを抑えながら取引したい方に向いています。
2-2 株式投資
1,000万円というまとまった資金を投資できる場合、株式投資も有力な選択肢の一つです。株式投資は株価の値上がりによって得られる売却益と、株主に対する利益還元として分配される配当金が主な利益となり、投資信託などの投資方法と比べて大きなリターンを目指せるのが特徴です。
また、株式を保有している会社の製品やサービスの割引券などがもらえる株主優待制度を実施している企業もあるため、これらの制度も活用しながら投資できるメリットがあります。
一方、株式投資は個別銘柄を投資家が選んで購入するため、株を買った企業の業績や財務内容の悪化などのリスクに注意が必要です。また、株式市場は景気悪化などによって市場全体の株価が低迷することもあるため、日々の情報収集など手間と時間をかけながら投資を続けなければなりません。
しかし、1,000万円の元手があれば複数の銘柄や他の金融商品への分散投資も資金的に可能です。株式は通常1単位=100株の単元株で取引するため、1銘柄につき数万円〜数十万円以上を必要としますが、まとまった資金なら少し大きめのリターンを目指しつつも、値動きの異なる商品にも投資するなどしてリスク管理を行うことができます。
株式投資は証券口座で証券総合口座を開設すると始めることができます。株式投資は売買手数料が主な運用コストとなるため、取引手数料の安いネット証券などで口座を開設するとコストを抑えながら取引できます。
2-3 不動産投資
1,000万円を元手に投資するなら不動産投資も選択肢の一つとなります。不動産投資は、土地や建物など物件を購入し、入居者から得られる家賃収入や物件を売る際の売却益によって利益を得ることができます。
購入した物件を他人に貸し出せば毎月決まった家賃収入を得ることが可能で、所得税や住民税、相続税などの税負担を軽減できる場合もあります。
また、1,000万円を頭金として不動産投資ローンを利用できるほか、住宅ローンと同様に死亡や高度障害などの万が一に備えて団体信用生命保険に加入することで、自身に何かあった際のローン負担をゼロにすることもできます。
一方、不動産投資には、空室リスクや家賃滞納リスク、天災によるリスク、物件価格の下落リスクなどがあり、対処を怠ると大きな損失が発生する可能性もある点に注意も必要です。
なお、不動産投資では、物件を直接取得する以外の方法として、不動産を所有している企業に投資するREIT(不動産投資信託)という金融商品を買う方法もあります。実際に物件を購入するよりも少額から購入できる点や、間接的に複数の物件を所有できることによってリスクを抑えながら不動産に投資できるのが特徴です。
不動産投資は、投資用物件の検索サイトや不動産会社で物件を探すことから始められます。また、不動産会社や銀行などの主催する不動産投資セミナーで情報を直接収集することも可能です。一度に大きな金額を投資する手法となるため、時間と手間をかけて物件を選ぶことが大切です。
2-4 その他
1,000万円を投資する場合、以下のようなサービスや金融商品も選択肢の一つとなります。
ロボアドバイザー
投資家一人一人に合わせたポートフォリオ(資産配分)の提案などを行う資産運用サービスです。アドバイスを受けるだけの助言型と、運用なども行ってくれる投資一任型があります。前者は証券会社が多く採用しており、後者にはWealthNavi(ウェルスナビ)などのサービスがあります。
アルゴリズムを活用した客観的なアドバイスを受けることができ、投資一任型では運用まで行ってくれるため、初心者の方でも手間や時間を必要としないのが特徴です。助言型は無料で利用できるサービスも多い一方、投資一任型は概ね年率1%前後の手数料が発生します。
ロボアドバイザーは、サービスを提供している会社に証券総合口座などを開設することで取引を始められますが、投資一任型ではサービスによって手数料が異なるため、事前に各社の手数料なども比較してから利用するサービスを決めることが大切です。
FX/外貨預金
日本円を米国ドルや豪ドルなどの外貨に換えて運用する方法です。日本の預金よりも高金利で運用でき、円安になると換金時に為替差益も期待できる一方、為替手数料やスプレッドがかかり、円高になると為替差損が発生して元本割れのリスクがあります。
FXは証券会社経由で、外貨預金については銀行や信用金庫などで申し込むことができますが、取り扱っている通貨やスプレッドは金融機関によって異なるため、こちらも事前確認が必要です。
コモディティ投資
商品先物市場で取引されている金やプラチナなどの金属、大豆や小麦などの穀物、原油などの商品に投資です。物価上昇に連動して投資した商品も値上がりするためインフレリスクへの備えになる一方、ボラティリティ(価格変動)は高く、為替リスクもあるのが特徴です。
コモディティ投資は、証券会社で先物取引やオプション取引の口座を開設すると取引を開始できるほか、金地金などの現物を保有したい場合、地金商や宝飾店などでも購入可能です。
3 1,000万円を投資する際の注意点
投資はお金を増やせる可能性がある反面、投資した元本が減るリスクもあるため、リスク管理が重要です。特に、1,000万円の資金を投資する場合、異なる金融商品や銘柄への分散投資、長期投資による時間分散も必要です。
例えば、株や投資信託などの市場価格がある金融商品は価格下落によるリスクがあるため、一度に全てを購入するのではなく、毎月などの決まったタイミングで一定の金額分を購入するドルコスト平均法という投資手法などもリスクを軽減する効果があります。
短期間による投資でリターンを求めすぎるとリスクが高くなります。特に、FXや仮想通貨など価格変動の大きい金融商品はそのような傾向が顕著で、得られるリターンは大きい反面、大きな損失の発生する可能性も高いのが特徴です。
株式投資や不動産投資などもリスク管理を徹底していなければ大きな損失を被る可能性もありますが、過度なリスクを避けながら分散投資を継続することで、リスクを軽減することが可能です。
まとめ
低金利やインフレリスクに備えるため、資産運用や投資の必要性が高まっています。ただし、1,000万円などまとまった資金を投資する場合、運用の目的と目標金額を明確に定め、過度なリスクを避けた方法で投資することが重要になります。
投資対象は、投資信託、株式投資、不動産投資、外貨預金、コモディティ投資などの様々な金融商品やサービスがあるものの、各特徴とリスクを正確に把握した上で投資方法を決定することが大切です。
特に、分散投資や長期継続的な投資を実践することで元本割れのリスクを軽減することができるので、リスク管理をしっかり行いながら長期的に続けられる投資手段を検討してみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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