2022年4月から高校で金融教育が始まりました。子どもが学校で金融教育を受けられるのはよいことですが、保護者世代は学校でお金について学ぶ機会がありませんでした。家庭でも子どもに金融教育ができるように、基礎知識を身につけたい人もいるでしょう。
この記事では、保護者が子どもにお金の教育をするために知っておきたい、「預貯金」「株式」「債券」「投資信託」の基本的な特徴を解説します。
※2023年11月時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 金融商品の3つの基準
1-1.安全性
1-2.収益性
1-3.流動性 - 保護者が知っておきたい各金融商品の特徴
2-1.預貯金
2-2.株式
2-3.債券
2-4.投資信託 - 金融商品とリスク・リターンについて
3-1.リスク0でリターンが確定している投資商品は無い
3-2.リスクが低い投資商品に集中させるとハイリスクになることも - まとめ
1.金融商品の3つの基準
投資経験のない大人が金融商品について学ぶうえで、比較の基準を持つことが必要です。金融商品を比較するためには、それぞれの特徴を決める「安全性」「収益性」「流動性」の3つの基準があります。
これらの基準のすべてが高い金融商品は、残念ながらありません。3つの基準を理解し、どの基準を重視するかが金融商品選びのポイントとなります。
1-1.安全性
金融商品の安全性とは、投資した元本や利息の支払いの確実性を意味します。また、金融機関の破たん時などに投資家を保護する仕組みがあるかどうかも、安全性を計るポイントとなります。
1-2.収益性
収益性とは、投資によって期待できる収益の大きさのことです。収益性と安全性はトレードオフの関係にあり、収益性が高ければ安全性は低く、安全性が高ければ収益性は低くなります。
1-3.流動性
流動性とは、金融商品の現金化のしやすさを表す要素です。金融商品には引き出せない期間が決まっていたり、引き出しに高い手数料がかかったりするものがあります。
また、株式や不動産のように売りに出しても買い手がつかないケースもあります。このような商品や状況を「流動性が低い」というわけです。
2.保護者が知っておきたい各金融商品の特徴
ここでは、金融教育をするうえで知っておきたい基本的な4つの金融商品(預貯金・株式・債券・投資信託)の特徴を解説します。それぞれの金融商品の上記の3つの基準は、以下の表のとおりです。
安全性 | 収益性 | 流動性 | |
---|---|---|---|
預貯金 | ◎ | △ | ◎ |
株式 | △ | ◎ | 〇 |
債券 | 〇 | 〇 | △ |
投資信託 | △~〇 | 〇 | 〇~ |
※出所:金融庁「貯める・増やす」
2-1.預貯金
預貯金とは「預金」と「貯金」の総称で、銀行や郵便局のような金融機関にお金を預けることです。お金を増やす目的以外に、給与や年金の受け取りや公共料金の引き落としなどでも利用されます。
預貯金のメリット
預貯金はお金を預けている間に定期的に利息を受け取れ、金融機関による元本保証があります。また、金融機関が破たんしても、預貯金は預金保険制度により元本1,000万円までとその利息は保護されます。
普通預金であれば、金融機関やコンビニエンスストアのATMなどで簡単に引き出せる点も預貯金のメリットです。
預貯金のリスク
預貯金には、以下のようなリスクがあります。
- 信用リスク:預け先の金融機関が破たんする可能性がある
- インフレリスク:金利以上に物価が上昇した場合、実質的な価値が目減りする
上記のようなリスク対策として、預け先の金融機関を分散する、株式や投資信託のような収益性の高い資産にも投資するなどが挙げられます。
預貯金の3つの基準
預貯金の「安全性」「収益性」「流動性」の3つの基準は、以下のとおりです。
- 安全性:高い(元本保証、預金保険機構による預金者保護)
- 収益性:低い(超低金利が続くため、非常に低い)
- 流動性:高い(普通預金は窓口や提携ATMなどで引き出しが自由にできる)
2-2.株式
株式は、株式会社が資金を出資してくれた株主に対して発行する有価証券です。債券と違い、企業は株主から出資を受けた資金を返す義務はありません。
上場株式は市場を通じて売買し、株価は企業の業績や景気動向などによって変動します。株式を保有する株主は、企業の収益に応じて配当を受け取れます。
株式投資のメリット
株式投資の魅力は、株価上昇によって大きな売却益を狙える点です。また、株主への配当を重視する企業の株式を保有すると、一定の配当金の受け取りを期待できます。魅力的な株主優待を実施している企業もあります。
株式投資のリスク
株式投資には、以下のようなリスクがあります。
- 価格変動リスク:さまざまな要因で株価が上昇したり下落したりする可能性がある
- 信用リスク:出資先の企業が破たんして株式の価値がゼロになる可能性がある
上記のようなリスク対策として買付のタイミングを分散する「時間分散」、複数の業種や企業に分散して投資する「銘柄分散」、長期保有して成長に期待する「長期投資」などがあります。
株式投資の3つの基準
株式投資の「安全性」「収益性」「流動性」の3つの基準は、以下のとおりです。
- 安全性:低い(株価が下がる可能性や投資先が破たんする可能性あり)
- 収益性:高い(短期で大きな値上がり益を狙える)
- 流動性:普通(市場で売買できる)
2-3.債券
債券とは国や企業が一般の投資家からお金を借りるために発行する、借用証書の性格を持つ有価証券です。投資家は発行体にお金を貸して利子を受け取り、決められた満期日(償還日)に額面金額を返してもらえます。
国が発行する債券を「国債」、企業が発行する債券を「社債」といいます。債券には株式のように取引する市場があり、満期にならなくても売却可能です。
債券投資のメリット
債券投資ではあらかじめ利子や元本の返還などが約束されているため、安全性が高めといえます。また、収益の見通しが立ちやすい点もメリットの一つです。債券は市場での売却も可能なため、状況によっては売却益も狙えます。
債券投資のリスク
債券投資には、以下のようなリスクがあります。
- 価格変動リスク:主に金利の動向によって債券の市場価格が上下する可能性がある
- 信用リスク:発行体の財務状況によって利子や償還金の支払いが遅れたり、債務不履行になったりする可能性がある
上記のようなリスク対策として格付けの高い発行体かを確認する、満期まで保有するなどが考えられます。
債券投資の3つの基準
債券投資の「安全性」「収益性」「流動性」の3つの基準は、以下のとおりです。
- 安全性:普通(発行体の信用力が高い場合は安全性も高くなる)
- 収益性:普通(預貯金よりは高いが、あまり高い利子は期待できない)
- 流動性:普通(個人向け国債の場合、発行後1年間は中途換金ができない)
2-4.投資信託
投資信託(ファンド)とは投資家から集めたお金を、運用の専門家が株式や債券などに投資し、運用成果を分配される金融商品です。投資家から預かった資金は、商品ごとの運用方針に則って運用されます。投資信託の価格(基準価額)は、ファンドの資産の値動きによって変動します。
投資信託のメリット
投資信託では個人の資金では難しい分散投資を、複数の投資家からお金を集めることで可能にしています。最近では100円程度から購入できるネット証券も多く、少額での分散投資ができる点も投資信託の強みです。
また、投資家から集めた資金をファンドマネージャーという投資の専門家が運用するため、投資経験の少ない方やこれから投資の勉強を進めて行きたい方でも始めやすいという点もメリットとなります。
投資信託のリスク
投資信託には、以下のようなリスクがあります。
- 価格変動リスク:ファンドに組み入れられる株式や債券の値動きによって、ファンド全体の価格が変動する
- 信用リスク:ファンドに組み入れられる株式や債券の発行体が破たんする可能性がある
投資信託は仕組みそのものが分散投資であるため、価格変動リスクや信用リスクは限定的といえます。上記のようなリスク対策として買付のタイミングを分散する「時間分散」、長期間保有する「長期投資」などがあります。
投資信託の3つの基準
投資信託の「安全性」「収益性」「流動性」の3つの基準は、以下のとおりです。
- 安全性:銘柄による(組み入れた資産の安全性が高ければ高く、低ければ低くなる)
- 収益性:銘柄による(組み入れた資産の収益性が高ければ高く、低ければ低くなる)
- 流動性:普通(通常、約定日の4~5営業日後に入金される)
3.金融商品とリスク・リターンについて
お金を運用した結果、得られる収益のことを「リターン」といいます。リターンはマイナスの場合もあります。一方、リスクとはリターンの振れ幅の大きさのことです。リターンの振れ幅が大きいことを「リスクが大きい」、小さいことを「リスクが小さい」といいます。
3-1.リスク0でリターンが確定している投資商品は無い
投資商品で利益が確定しているものはありません。運用商品には値動きがあり、タイミングによっては元本割れする場合もあります。損をしてしまったとしても元本は保証されず、自己責任であると知っておく必要があります。
しかし、運用商品の値下がりによって損失の体験を得るのは、投資経験を積むうえでマイナスではありません。少額資金などで投資の実践を通じ、リスクを減らす方法について学ぶとよいでしょう。
【関連記事】子どもから「投資を始めたい」と言われたら?おさえておきたいポイントや未成年口座の開設方法も
3-2.リスクが低い投資商品に集中させるとハイリスクになることも
金融商品のリスクとリターンは比例し、リスクが高いとリターンも高くなり、リスクが低いとリターンも低くなります。
たとえば、株式は大きな利益を期待できる反面、大きな損をする可能性もあります(ハイリスク・ハイリターン)。預貯金は1,000万円まで元本保証されていますが、2023年時点の低金利環境では、お金はほとんど増えません(ローリスク・ローリターン)。
ここで「低リスクの安全性の高い金融商品に資産を集中させておきたい」と考える方も少なくないでしょう。しかし、金融商品はそれぞれ相関関係にあり、特定の資産クラス(個々の資産の種類や分類)に集中させてしまうと、それ自体がハイリスクな状況にもなり得るのです。
例えば、インフレによって物価が上昇する際、資産を全て現金で所有していると実質的に資産を大きく目減りさせていることがあります。1,000万円の元本保証があっても、実質的に1,000万円で購入できる物の物価が上がっているため、価値を減損しているのです。
反対に、デフレによって物価が下落傾向にある場合、資産が住宅などの不動産に集中していると資産の損失が起きます。適切にリスクとリターンをコントロールするには、異なる資産クラスへ分散させることが大切です。
いくつかの資産クラスや投資商品に投資資金を分散させることを「分散投資」と言います。分散投資を行うことで、経済情勢の変化によって特定の資産クラスがハイリスクになっても、損失を限定して抑えることが可能です。
【関連記事】分散投資のやり方・ポートフォリオの決め方は?ベテラン投資家が解説
まとめ
預貯金・株式・債券・投資信託は、それぞれが異なる特徴を持つ金融商品です。投資を始めるにあたっては、対象についてよく理解する必要があります。そのうえで自分に合った金融商品に、まずは少額から投資を始めてみると良いでしょう。
松田 聡子
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