不動産投資は現物不動産を購入して家賃収入を得る投資手法で、金融機関の融資を利用し、レバレッジ効果によって、大きな投資が可能となることから、将来に向けた資産形成の手段として活用されています。
しかし、現物不動産を購入するには多額の資金が必要になる上、空室の場合、家賃収入を得ることができず、金融機関への借入返済のために、自己資金の持ち出しが必要となる場合があります。また、固定資産税等の租税公課の負担、設備不具合による修繕・交換費用の負担など、現物不動産の所有権を有することによる負担と手間を強いられることがあります。
こうした中、不動産を所有することなくリスクを抑えつつ、1万円から手軽に不動産投資を行えるクラウドファンディングサービスの「i-Bond(アイボンド)」が募集額や利用者数を増やしています。
そこでこの記事では、i-Bondが気になっている方に向けて、メリットやデメリット、始めるための手順や実物不動産投資との比較などをご紹介します。資産運用に興味のある方や、不動産投資を手軽に始めたい方は参考にしてみてください。
目次
- i-Bondとは
1-1.コンセプトは、預貯金や投資に代わる第3の「お金の置き場」
1-2.東証JASDAQスタンダード上場企業が運営
1-3.すべての手続きが24時間365日Web上から可能 - i-Bondで不動産投資をするメリット
2-1.1口1万円から始めることができる
2-2.不動産経営のための時間やノウハウが不要
2-3.好きなタイミングで始めることができる
2-4.買取請求(現金化)が無料でスピーディー
2-5.優先劣後方式の仕組みを採用、出資者に優先して利益が分配 - i-Bondのデメリット・注意点
3-1.元本・分配率は保証されているわけではない
3-2.対象不動産は変更されることも
3-3.投資した不動産は個人資産にならない - i-Bondを始める手順
- まとめ
1.i-Bondとは
「i-Bond」は、株式会社マリオンが2019年から提供している不動産クラウドファンディングサービスです。i-Bondでは匿名組合契約をマリオン社と結び、出資金を支払うとそれを元手としてマリオン社が不動産運営を行い、事業収益を出資金に応じて出資者に分配する仕組みになっています。
サービス名 | i-Bond(アイボンド) |
URL | https://www.i-bond.jp/ |
運営会社名 | 株式会社マリオン |
本社所在地 | 東京都新宿区富久町9番11号 |
設立 | 1986年11月 |
代表取締役社長 | 福田敬司 |
資本金 | 13億8764万2720円 |
売上高 | 27億3568万円(2019年9月期) |
上場市場 | 東証JASDAQ上場スタンダード |
サービス開始年月 | 2019年5月 |
予定分配率 | 1.50%(税引き前)*2020年8月時点 |
投資金額 | 1口1万円(販売当初価格)から |
運用期間 | 無期限(買取請求は24時365日受付可能) |
※2020年9月時点の情報となります。最新情報に関しては上記サイトを御覧ください。
以下、i-Bondの詳しい特徴をご紹介していきます。
1-1.コンセプトは、預貯金や投資に代わる第3の「お金の置き場」
i-Bondのコンセプトは、預貯金や投資に代わる第3の「お金の置き場」です。「預貯金」を第1のお金の置き場、「投資」を第2のお金の置き場と位置づけ、i-Bondはリスクやリターン、現金化の高さからその中間の役割を担います。
第1の置き場である預貯金と比較すると、出資金の最低金額は1万円からと金額面のハードルは少し高いものの、予定分配率は1.50%(税引前)と預貯金の利率よりもずっと高いのが特徴です(※大手銀行の定期預金金利は0.002%程度)。
また、第2の置き場である投資と比較すると出資金の最低金額は安く、投資のためのノウハウや時間をあまり必要としません。首都圏を中心とした居住用の賃貸マンションを複数に分散することでリスクを軽減しているのが特徴で、現物の不動産投資の大きな課題であった現金化をスムーズに行える仕組みになっています。
1-2.東証JASDAQスタンダード上場企業が運営
i-Bondを提供している株式会社マリオンは、不動産賃貸を中心とした不動産事業を展開する企業です。1986年の創業以来、30年以上にわたって不動産に関わり続けており、ノウハウも蓄積されています。
また、現物不動産賃貸だけでなく不動産証券化においても豊富なノウハウと実績があります。2004年から提供されている不動産証券化商品「マリオンボンド」や出資額を下げて利用しやすくした「サラリーマンボンド」など、16年間で約130億円の運用実績があります。
2017年9月には、インターネット金融大手である「SBIホールディングス」と資本・業務提携を行い、翌年の2018年9月には「東証JASDAQスタンダード」市場に上場しました。2019年にはそれまでの東京都知事の不動産特定共同事業法許可を電子取引業務を加えた金融庁長官・国土交通大臣の許可を受け、申込から契約までをWEBで完結できるi-Bondをスタートさせています。
1-3.すべての手続きが24時間365日Web上から可能
i-Bondでは、インターネット上ですべての手続きを行うことが可能です。これにより、運営の大幅なコストダウンを実現すると共に、ユーザーは24時間365日いつでも手続きを行うことができます。
そのため、普段忙しく、なかなか投資の相談や手続きができない方でも手軽に利用しやすくなっています。
不動産特定共同事業法では、対面でなくオンライン上でも、事業者による適切な審査や情報公開が行われることを目的として様々なルールが定められています。
2.i-Bondで不動産投資をするメリット
i-Bondでは預貯金や投資とも異なる、お金の第3の置き場を提供することで資産運用に新しい選択肢を提供しています。一般的なワンルームマンション投資などの現物不動産投資ではなく、i-Bondを選ぶことでどのようなメリットがあるのかを見ていきましょう。
2-1.1口1万円から始めることができる
i-Bondでは、1口1万円という少額から始めることができるのが大きなメリットです。不動産投資では、現物を購入する場合には数千万円から数億円の費用が必要で、不動産ローンを利用するケースがほとんどです。
一方、i-Bondでは、1万円から不動産投資に参加できることで、資金的な余裕のない方でもチャレンジしやすく、お金が必要になりそうなタイミングで資金を引き出すことができます。
出資金が1口1万円ということで、普段の生活の余剰資金で少額から投資を行うことができるのは、投資を始めたい人にとって大きなメリットと言えるでしょう。
2-2.不動産経営のための時間やノウハウが不要
i-Bondでは、物件取得や入居者の募集・管理や物件の維持・補修、売却などのいわゆる「不動産経営」を行う必要がありません。出資さえすればあとの不動産管理はマリオン社が行ってくれるので、手間もかかりません。
不動産の経営をプロに任せることができるので不動産投資の運用面に不安のある方でも検討しやすく、損失が出たとしてもマリオン社が優先的に損失を負担する仕組み(5%以内に限る)になっています。
不動産経営は、資金だけでなく学習のための時間や実際の事業活動のための時間も必要ですが、その時間やノウハウが要らないのは大きなメリットです。資金面よりも不動産管理を行うことに不安があったという人にも活用しやすい商品となっています。
2-3.好きなタイミングで始めることができる
株式や投資信託では、毎日、対象銘柄の価格が変動するため、投資を始めるタイミングが重要です。配当が入っても、含み損が大きくなれば最終的にはどこかで損切りを強いられることになります。
一方、不動産の価値は株式などと比べると毎日の値動きが少なく、投資家は元本の値動きを頻繁に確認しなくて済みます。
また、事業収益の分配は組合の決算のタイミングで決まり、日割りで出資金額に応じて行われます。投資を始めた時点の運用状況は分配にあまり関係ないため、始めたいと思ったタイミングで始めたほうが分配金の総額も増えるケースが多いでしょう。
2-4.買取請求(現金化)が無料でスピーディー
現物の不動産投資は現金化しようと思った時に、買い手がすぐ見つからず、契約にも時間がかかるのがデメリットです。
一方、i-Bondでは、買取請求(現金化のための手続き)を行ってから、受付後の5営業日後に投資家の指定口座に振り込まれます。
※買取請求が集中した場合は、対象不動産の全部又は一部の売却等が完了するまで、一時的に買取請求が留保となる可能性があります。
現物不動産の売買では、法的確認を含め多くの法的手続きも煩雑になるため、手数料や時間がかかりますが、i-Bondではシステム処理されるためスピーディーに行うことが可能です。また、買取手数料も無料(但し、金融機関の振込手数料は投資家負担)です。
24時間365日オンラインで買取請求サービスが利用できるので、現金が必要になった場合にも十分に対応でき、資産運用の柔軟性が高まります。この高い流動性もi-Bondの大きなメリットと言えます。
2-5.優先劣後方式の仕組みを採用、出資者に優先して利益が分配
i-Bondは、優先劣後方式を採用しており、出資の95%は投資家による優先出資、5%はマリオン社による劣後出資となっています。
この方式では、対象の不動産を運営する匿名組合が利益を出した場合、優先出資者に優先的に利益が分配され、匿名組合が損失を出した場合は劣後出資者のマリオン社が優先的に損失を負担します。
3.i-Bondのデメリット・注意点
投資商品を検討する際は、デメリットやリスクについても確認することが大切です。i-Bondの注意点について詳しく確認してみましょう。
3-1.元本・分配率は保証されているわけではない
i-Bondでは、優先劣後方式によって投資家のリスクは軽減されています。しかし、5%を超える事業損失が出た場合、元本割れする可能性もあります。
さらに、予定分配率は分配の上限額にもなっているため、匿名組合の事業収益が大きくなった場合でも、配当率が比例して大きくなることはありません。逆に収益が想定よりも低い場合は、予定分配率よりも低い配当になることがあります。
分配率の低さが気になる場合は、他の投資商品とのポートフォリオでバランスを図るなどの工夫をしましょう。
3-2.対象不動産は変更されることも
i-Bondは無期限の物件変更型の商品であるため、投資対象となっている物件が途中で売却されたり、追加されたりすることがあります。
対象不動産の売却に伴う収益・損失は基本的にマリオン社に帰属するものの、公開されている投資対象の物件内容はしっかりとチェックしておきましょう。
i-Bondの対象不動産(2020年8月時点)
投資物件名 | 所在地 | 戸数 |
---|---|---|
コンパルティア練馬 | 東京都練馬区中村北二丁目2番3号 | 13戸 |
LEGALAND参宮橋 | 東京都渋谷区代々木五丁目54番4号 | 15戸 |
AIFLAT dokanyama | 東京都荒川区西日暮里五丁目23番3号 | 14戸 |
マリオン桑園 | 北海道札幌市中央区北十二条西十六丁目1番5号 | 58戸 |
3-3.投資した不動産は個人資産にならない
i-Bondでは、投資対象の物件に投資しても個人の資産にはならず、不動産特定共同事業者であるマリオン社の名義になります。そのため、現物不動産で検討できる相続税対策や損益通算、減価償却などの税制度をi-Bondで利用することはできません。
なお、相続が発生した場合、i-Bondとの契約について名義変更手続きを行うことは可能です。
4.i-Bondを始める手順
i-Bondを始めるにあたっては、以下の準備が必要です。
- インターネットに接続したスマートフォンやパソコン
- メールアドレス(連絡用)
- 本人確認書類2点(運転免許証、健康保険証など)
- 銀行口座(登録完了後でも良い)
まずはi-Bondの会員登録ページにアクセスし、会員登録を行います。メールアドレス・パスワードなどを入力すると、入力したメールアドレスにログインIDが届くので、これで専用ページにログインできるようになります。
i-BondのWEBサイトからマイページにログインし、WEB上で会員登録の手続きを行います。個人情報の入力や本人確認書類のアップロードを行うと、マリオン社での審査の後、「本人確認キー」が登録住所にハガキで郵送されます。状況や地域にもよりますが、多くの場合は手続きから2~3日で送られてきます。
郵送された本人確認キーを会員登録ページに入力すると会員登録が完了となり、商品画面から出資申し込みが可能になります。
出資を行う場合、申し込み画面で希望する口数(1口は1万円)を入力します。その後、振込先が記載されたメールが届くので、10日以内に指定の振込先に振り込みます(この際の金融機関の振込手数料は投資家負担です)。マリオン社側の振り込み確認が行われれば、「契約成立時書面」がメールで送られ、契約完了となります。
5.まとめ
i-Bondはお金の「第3の置き場」として少額から手軽に不動産投資を行えるクラウドファンディングサービスです。実際の不動産投資よりもリスクを抑えながら1口1万円で運用できるため、新たな資産運用の選択肢の一つとして検討することができます。
i-Bondが気になっているという方は、この記事を参考に検討を進めてしてみてください。
HEDGE GUIDE 編集部 不動産投資チーム
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