2024年1月から新しいNISAが始まります。新しいNISAは非課税期間の無期限化や、投資金額の上限額が引き上げられるなどのメリットがあります。
新しいNISAを機に、株式投資を始めようと考えている方も多いのではないでしょうか。
そこで投資初心者の方向けに株式投資の中でもバリュー株投資について、投資のプロが解説します。
※本記事は2023年9月28日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- バリュー株とは
- バリュー株の特徴
2-1.PBRが1倍割れ
2-2.PERが低い
2-3.配当利回りが高い - PBR1倍割れ企業の注意点
- 投資すべき銘柄は?
4-1.企業業績をチェック
4-2.PBRだけを見て投資するのはNG - 銘柄の探し方
- まとめ
1.バリュー株とは
株式には、バリュー株(割安株)とグロース株(成長株)があります。
バリュー株とは、株価が同業他社や市場平均と比較し、割安な水準で取引されている銘柄です。一方、グロース株とは、バリュー株と相反する銘柄で、株価の水準が同業他社や市場平均と比べ、割高に取引されている銘柄です。
2.バリュー株の特徴
バリュー株はPBR(Price Book Value Ratio=株価純資産倍率)やPERが低く、配当利回りが高い銘柄を指します。以下ではPBR、PER、配当利回りについて解説します。
2-1.PBRが1倍割れ
バリュー株には、PBRが1倍を下回っているという特徴があります。
PBRは、株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを見る指数です。PBR1倍とは、株価と1株当たり純資産額が釣り合っている状態を示し、1倍未満は株価が純資産額を下回っている状態です。
PBRが1倍を下回っている状態は、株価が企業の解散価値を下回っていると言えるため、1倍割れの株価が割安な状態とあると言えます。
東京証券取引所がPBRの低迷する上場企業に対して改善策を開示・実行するように要請したことから、自社株買いや増配による株価上昇が期待されるため、PBR1倍割れ企業に注目が集まっています。
2-2.PERが低い
PERはPrice Earnings Ratioの略で、株価収益率と呼ばれています。この指標は、株価が一株当たり利益(EPS)の何倍まで買われているかを示し、数字が高いほど割高、低ければ割安とされます。PERは相対的な指数で、同業他社や、日経平均株価・TOPIXといった株式指数と比較し、株価が割高な水準か割安な水準かを判断します。
PERには、前期のEPS(一株当たりの利益)を基準に計算する方法や、来期の予想EPSを基準にPERを算出する方法があり、後者を予想PERといい、市場では予想PERがよく用いられています。
2-3.配当利回りが高い
配当利回りは、配当金額(税前)を株価で割って求めます。配当金額には前年の配当金額がよく用いられます。
配当利回りも相対的な株式指標で、同業他社や株式指数の配当利回りと比較し、判断します。配当利回りは過去の配当金がベースとなるため、投資する際には企業業績を精査し、配当金額を維持できるか分析することが大切です。
税引き後利益のうち、どれだけを配当金として支払うか(配当性向)にも注目しましょう。配当性向が高い銘柄ほど利益分配率が高い企業と言えます。
3.PBR1倍割れ企業の注意点
PBRが1倍を下回っている銘柄の中には、良い銘柄もあれば悪い銘柄もあります。良い銘柄とは、業績は順調に成長しているものの、なんらかの理由でPBR1倍を下回っている銘柄です。このような企業に投資すると、将来的にPBRが1倍以上に上昇が期待できます。
一方悪い銘柄とは、企業の売上や利益が鈍化傾向にある企業です。このような企業の株価がPBR1倍を下回っていたとしても、PBRが1倍を回復する見込みは低いと言えるため注意が必要です。
4.投資すべき銘柄は?
PBRが1倍を下回っているからといって株価が上昇し、PBRが1倍を上回らなければ投資する価値はありません。ここでは、どういった企業に投資したら良いのかを投資のプロが解説します。
4-1.企業業績をチェック
良い銘柄の例としては、企業業績が好調にもかかわらず、何らかの理由でPBRが1倍を下回っている銘柄があげられます。
東京証券取引所は、PBRが1倍を下回っている企業の株価に対し、危機感を強めており、1倍を割れている企業に対し、改善策を開示・実行するように要請しています。要請前の2023年3月末時点においてPBRが1倍を下回っていた業種(プライム市場)で、8月末時点で1倍を回復した業種は、建設業(0.8倍から1倍)、ゴム製品(0.9倍から1倍)、保険業(0.7倍から1倍)です。平均値は1.05倍から1.13倍に上昇しました。
2023年8月末時点でPBRが1倍を下回っている業種は、鉱業(0.6倍)、繊維製品(0.9倍)、紙・パルプ(0.6倍)、石油・石炭製品(0.6倍)、鉄鋼(0.6倍)、非鉄金属(0.7倍)、金属製品(0.7倍)、輸送用機器(0.9倍)、電気・ガス(0.7倍)、海運業(0.8倍)、倉庫・運輸関連業(0.9倍)、銀行業(0.4倍)、証券・商品先物取引業(0.8倍)の12業種です。一方、もっともPBRが高い業種は情報通信の2.3倍です。
これらの業種の中から、売上高や純利益が上昇傾向にある企業を見つけて投資することも選択肢の一つでしょう。
参考:日本取引所グループ「規模別・業種別 PER・PBR(連結)」
4-2.PBRだけを見て投資するのはNG
投資対象として魅力的ではない銘柄としては、売上高や利益が長期間にわたって低迷している銘柄があげられます。このような企業の株価は上昇余地が乏しくPBR1倍を上回る可能性は低いため、PBRが1倍を下回っていても投資対象として魅力的ではありません。
5.銘柄の探し方
最もシンプルな銘柄を探す方法は、PBR1倍以下の銘柄をみつけて投資する方法です。しかし、PBR1倍を下回っている企業ならどの銘柄でも良いというわけではありません。企業に成長力がなければ株価の上昇が期待できないためです。
そこで、PBR1倍未満という条件に加え、売上高や利益が上昇基調にあり、予想PERがインデックスよりも割安に推移しているという条件を加えて銘柄を絞り込むと良いでしょう。各証券会社が提供しているスクリーニングツールを利用すると銘柄検索を簡単にできます。
筆者がSBI証券の分析ツールでPBRが1倍以下、PERが10倍以下、売上成長率5%以上、配当利回り3%以上の条件で検索してみると、207銘柄(2023年9月22日時点)ありました。これらの銘柄の有価証券報告書や決算短信をチェックし、投資することも選択肢の一つでしょう。
6.まとめ
バリュー株は、PBRが1倍を下回っていること、PERが低いこと、配当利回りが高いことが特徴ですグロース株よりも下落リスクが低い傾向があります。
各証券会社が提供しているスクリーンニングツールを利用すると簡単に銘柄検索ができるため、売上高成長や利益成長もチェックしつつ、投資対象として検討してみてください。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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