投資信託の銘柄数は約6,000本もあるため、初心者の方には銘柄選びに苦戦している方も多いのではないでしょうか。そこで、今回は投資信託を選ぶ際のポイントや注意点について解説します。
目次
- 投資信託を選ぶ前に
1-1.投資目的を決める
1-2.リスクに許容度を知る
1-3.自分にあった金融機関を選ぶ - 投資目的別、投資信託の種類
2-1.老後年金資金に適した株式型
2-2.住宅資金・教育資金に適した債券型
2-3.銘柄次第のバランス型 - 投資信託の運用スタイルについて
3-1.より高い収益を求めるアクティブ運用
3-2.市場同様の収益を目指すインデックス運用 - 投資信託を購入する際に初心者が見るべきポイント
4-1.手数料
4-2.運用期間
4-3.純資産残高
4-4.過去の実積
4-5.シャープレシオ - 投資の考え方
5-1.分散
5-2.長期
5-3.積立 - まとめ
1.投資信託を選ぶ前に
投資信託を選ぶ際には、事前に以下の3点について確認しまししょう。
1-1.投資目的を決める
まずは投資信託に投資する目的を明確にする必要があります。
投資信託の価格は上昇したり下落したりするため、価格変動のリスクを伴います。老後に向けた資産形成を目的とする場合には、時間を味方につけることができるため、リスクをとることで高い収益が期待できます。
一方、投資目的が住宅購入資金や教育費などの場合には、必要時期や必要金額が明確なため、リスクの低い投資信託を選ぶようにしましょう。
1-2.リスク許容度を知る
投資信託は、価格が大きく変動する株式型と、元本割れリスクの小さい債券型、株式や債券など複数の金融商品に投資するバランス型に分けることができます。それぞれリスクの大きさが違うため、選ぶ際に自身のリスク許容度を知っておく必要があります。
元本割れが不安で仕事も手につかなくなってしまうという方は、株式型よりも債券型やバランス型に投資するようにしましょう。
1-3.自分にあった金融機関を選ぶ
投資信託は証券会社のほか、普段から利用している銀行や郵便局などで購入することができます。取り扱っている銘柄数はそれぞれの金融機関により異なります。証券会社はハードルが高いと思われる方は、銀行や郵便局で購入するのも一つです。
証券会社には、店舗型とネット型があります。店舗型は担当者からアドバイスを受けることができますが、ネット型の多くはアドバイスを受けることができません。そのため、手数料は店舗型の方がネット型よりも高く設定されています。投資が初めてで心細いという方や、アドバイスや相談が必要だという方には店舗型を、手数料の安い中から効率良く商品を選びたい方はネット証券を選びましょう。
2.投資目的別、投資信託の種類
投資信託は、リスクは高いものの将来大きな成長が期待できる株式型、元本割れのリスクが低い債券型、さまざまな金融商品に投資するバランス型に分けることができます。
2-1.老後年金資金に適した株式型
老後資金の形成が目的の場合、長期間の運用となるため、株式を中心とした投資信託が適当です。成長企業に投資することで高い収益が期待できるためです。また、配当金や分配金を再投資することで複利効果が期待できます。
2-2.住宅資金・教育資金に適した債券型
目的が住宅資金や教育費など必要時期や必要金額がある程度決まっている場合は、債券型が適しています。債券(特に国内債)に高いリターンを望むことはできませんが、元本割れのリスクが低いためです。特に、株式市場の暴落時において資金が株式市場から債券市場に流れます。
2-3.銘柄次第のバランス型
バランス型は、投資対象が株式、債券、不動産など複数の資産に分散投資され、銘柄により各資産への投資比重が異なります。そのため、債券の比率(特に国内)が高いほどリスクが低く、株式比率(特に海外)が高いほどリスクが高い傾向があります。
3.投資信託の運用スタイルについて
投資信託の運用スタイルには2タイプがあります。
3-1.より高い収益を求めるアクティブ運用
アクティブ運用とは、ファンドマネージャーやアナリストが銘柄を精査し、高いリターンを目指す運用方法です。そのため、運用にかかる経費が必要となり手数料率がインデックス運用と比べ、高くなる傾向があります。手数料に見合った運用成績ならば、アクティブ運用の投資信託に投資するのも良いでしょう。
3-2.市場同様の収益をめざすインデックス運用
インデックス運用は、各インデックス(指数)と同じ動きを目指す運用手法です。インデックスとは株式型の場合、日経平均株価やTOPIX、S&P500、MSCI指数などを指します。
4.投資信託を購入する際に初心者が見るべきポイント
次に、投資信託を購入する際、初心者が見るべきポイントを解説します。各ポイントについては、証券会社が提供している投資信託の検索ツールを使うと、簡単に対象銘柄を絞り込むことができます。
4-1.手数料
投資信託の手数料には、販売手数料、信託報酬、売却時の信託財産留保額の3つがあります。このうち、販売手数料は無料の投資信託(ノーロード)も多く販売されています。
信託報酬は、投資信託を保有している間、毎日自動的に引き落とされる手数料のため、銘柄選びの際に注意が必要です。手数料率は銘柄により異なりますが、概ね年率0.5%から2%程度(+消費税)です。手数料が引かれているにもかかわらず、投資家は手数料を支払っているという認識が薄くなりやすいため、できるだけ手数料率の低い銘柄を選択しましょう。同じインデックスを対象とした投資信託についても、手数料率が異なることがあります。注意しましょう。
売却時には、信託財産留保額が手数料として徴収される場合もあります。
4-2.運用期間
投資信託にも償還があります。投資信託において償還というのは、運用期間が終了し、信託財産を清算することを指します。信託期間が無期限の銘柄も多くあり、分配金を再投資することで複利効果を得ることができるため、長期投資の場合は最低でも償還期間まで10年以上の銘柄を選ぶようにしましょう。
4-3.純資産残高
純資産残高とは投資信託の規模を表す金額です。純資産残高がある一定規模を下回ると運用効率が悪化しコストが上昇するため、運用に支障をきたすことがあります。そのため、純資産額が一定水準を下回った場合、繰上償還される場合があります。最低でも50億円以上ある銘柄を選ぶよう心がけましょう。
4-4.過去の実積
投資信託に投資する際は、過去の実績(騰落率)を調べましょう。特にインデックス型は同じ指数を対象とした投資信託においても運用成績が異なる場合があります。また、運用成績に散らばりがある銘柄より、値幅が小さい銘柄を選ぶようにしましょう。
4-5.シャープレシオ
シャープレシオは投資信託を選ぶ際の重要なポイントです。この指数は、収益をあげるために、どのくらいのリスクを取ったかを示します。数字が大きいほど良いファンドといえます。
5.投資の考え方
投資をする上では、分散、長期、積立が重要キーワードとなります。
5-1.分散
ひとつの投資対象に集中的に投資した場合、運用がうまくいかなくなると悲惨な結果となってしまうことがあります。そのため、複数の資産に分散投資をすることでリスクを回避し、継続的に収益を得る可能性を高めることができます。投資対象、地域、時間(買うタイミング)などを分散することで実現します。
5-2.長期
長期間にわたり投資を継続することで、分配金の複利運用ができ、将来大きな資産を築き上げる可能性が高まります。分配金は受け取らずに再投資するように心がけましょう。
5-3.積立
投資信託は積立をすることもできます。ネット証券では月100円から購入することも可能です。少額でもコツコツと積み立てると、やがて大きな資産となります。
国が推進している“つみたてNISA”や“iDeCo”は、節税しながら投資信託を積み立てることができる制度です。税制優遇などもあり、投資信託の積立を考えている方にはお得な制度です。
まとめ
投資目的や自身の投資環境などにあった銘柄を、手数料、過去の実績、運用期間、純資産残高、シャープレシオの5つのポイントを参考にして選ぶようにしましょう。
銘柄選定には、ご紹介した5つのポイントを元に、証券会社が提供している分析機能を利用し絞りこむこともできます。不安な方は、対面型の金融機関で、銘柄選びや運用相談を担当者に相談するのも良いでしょう。
投資の基本は分散・長期・積立です。リスクを分散しながら、長期にわたりコツコツと積み立てることで大きな資産を築きあげる可能性が広がります。
藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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