FinTech業界、2023年の展望と日米の注目銘柄は?

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FinTechとは、金融とテクノロジーを組み合わせた造語です。従来の金融システムにIT技術を組み合わせることで生まれた新しいサービスです。特に、キャッシュレス決済・送金、資産運用、融資・資金調達、保険などの分野で活用が進んでいます。FinTechは今後も多方面での活用が見込まれます。

今回は、FinTech業界における2023年の展望と日米の注目銘柄を解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2023年3月10日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. FinTech2023年の展望と分野
    1-1.キャッシュレス決済
    1-2.投資・運用
    1-3.ブロックチェーン
    1-4.クラウドファンディング
    1-5.ソーシャルレンディング
    1-6.オンライン融資
    1-7.送金
    1-8.保険
    1-9.個人財務管理
  2. 日米の注目FinTech銘柄
    2-1.(日)GMOペイメントゲートウェイ(3769)
    2-2.(日)マネーフォワード(3994)
    2-3.(米)ペイパル・ホールディングス(PYPL)
    2-4.(日)TIS(3626)
    2-5.(米)グローバル・ペイメンツ(GPN)
  3. まとめ

1 FinTechの活用分野と2023年の展望

FinTechが活用されている身近な例として、キャッシュレス決済が挙げられます。現在、スマートフォンがあれば、買い物や食事のほか、電車・バスやタクシーなどの交通機関を利用する際にも決済が可能です。

FinTechは、投資・運用やクラウドファンディングなどの分野でも活用されています。2023年も、IT技術の進歩などを背景に、さまざまな分野での活用が期待されています。

いくつかの分野での活用例、2023年の展望についてみてみましょう。

1-1 キャッシュレス決済

スマートフォンやウェアラブル端末があれば、買い物や食事、電車、タクシーなどでキャシュレス決済ができます。キャッシュレス化は導入店舗においても、決算処理が容易なことや、顧客ともトラブル回避にもなるためメリットがあります。

1-2 投資・運用

投資の分野においてもFinTechが導入されるようになりました。スマートフォンやパソコンがあれば、Webやアプリを通じて簡単に投資ができます。AIに運用を任せ、自動で資産運用ができるサービスも広がっています。

1-3 ブロックチェーン

仮想通貨(暗号資産)の決済や送金の際、取引データを管理するためにブロックチェーンが使われています。

ブロックチェーンは、中央サーバーを持たずに取引データのかたまりをブロックとみなし、仮想通貨取引を行うユーザーの端末上でブロックを共有し、管理する技術です。取引データの改ざんを困難にできる特長があるため、銀行の送金管理や不動産取引の管理など幅広い分野での活用が期待されています。

1-4 クラウドファンディング

クラウドファンディングとは、ネット上に新事業や商品、自分の夢や作品を公開し、それを応援したいという人から資金を募り、返礼としてサービスや商品を提供する資金調達の方法です。

コロナ禍では特に、経営に行き詰まった飲食店やライブハウスなどが、コロナを乗り越えるために資金を募っていました。

1-5 ソーシャルレンディング

ソーシャルレンディングとは、お金を借りたい人・企業と、お金を貸したい人・企業をネット上で結びつける融資仲介サービスです。

ソーシャルレンディングサービスを提供する会社は、ネット上で資産運用したい個人投資家から小口に資金を集め、集めた資金を、企業や事業主に貸し付けます。

投資家のメリットは、銀行の定期預金や国債金利よりも高いリターンが期待できる点です。デメリットは、デフォルト(債務不履行)リスクが高いということです。

1-6 オンライン融資

オンライン融資とは、申込から融資開始まで、すべての手続きをオンラインで完結する融資サービスです。みずほ銀行や三菱UFJ銀行のオンライン融資は、最短2営業日で融資が可能です。

一般的な融資の場合は、銀行からの審査を受けなければなりません。審査のために謄本や印鑑証明など複数の書類が必要で、融資が下りるまでには数週間から数カ月を要します。

1-7 送金

FinTechの活用で、送金手数料が低く抑えられ、送金期間も短くなりました。SBIレミットでは、一回の送金上限金額が定められているものの、海外送金手数料は460円からと低く抑えられ、かつ最短10分で送金できます。

1-8 保険

保険業界では、FinTechを活用した新しい保険商品が販売されるようになりました。

例えば、「テレマティクス保険」という自動車保険です。これは、自動車に設置した端末で計測した走行距離や運転速度、ブレーキのかけ方などの運転情報を保険会社が取得・分析して保険料に反映させる保険です。

1-9 個人財務管理

個人財務管理は、銀行や証券、保険など複数の口座情報を集約し一元的に管理できるオンラインサービスのことです。一例として、家計簿アプリなどがあります。

2 日米の注目FinTech銘柄

それでは、日米の注目銘柄をみていきましょう。

2-1 (日)GMOペイメントゲートウェイ(3769)

GMOペイメントゲートウェイは、クレジットカード決済サービスを提供している代行会社です。

日常生活でのオンラインショッピングの普及や、決済のキャッシュレス化が進んでいることを背景に、同社の年間決済処理金額は増加傾向にあり、2023年度は15兆円に成長すると見込んでいます。第29期(2021年10~2022年9月)の売上収益は271.3億円(前期比19.2%増、純利益は145.8億円(同112.6%増)と好調でした。

株価*は11,100円、予想PERが65.1倍、配当利回りが0.7%です。株価は割高感がありそうです。

*株価は3月10日時点

2-2 (日)マネーフォワード(3994)

マネーフォワードは、自動家計簿や資産管理、クラウド会計などのソフトを提供しています。

第11期決算(2021年12月~2022年11月)の売上高は、前期比37.3%増の214.7億円と大きく伸びたものの、広告宣伝費など販管費の増加から営業利益はマイナス80.46億円(前期マイナス10.6億円)、純損失がマイナス97.0億円(同マイナス15.8億円)でした。

同社ソフトは、中小企業だけではなく、中堅企業にも導入が進んでおり、法人向けが好調となっています。2023年は、10月からインボイス制度が始まるため、同社のソフトを活用する個人事業主が増加する可能性があります。

株価*は4,600円、時価総額が2,470億円です。SaaS(Software as a Service)というサービス期間に対して売上が計上されるビジネスモデルのため、黒字化までには時間がかかります。一方、解約率が低く、黒字転換すると利益成長が期待できそうです。

2-3 (米)ペイパル・ホールディングス(PYPL)

ペイパル・ホールディングスは、子会社を通じてオンライン決済サービスを提供しています。

購入者がクレジットカード利用時に、販売先とクレジットカード会社との間にペイパルが入り、販売先にクレジットカード情報を知られることがないため、利用者にメリットがあります。

2022年の売上高が275.1億ドルと前年比8.4%増、純利益は24.1億ドル(同42%減)でした。業績悪化に伴い、2023年1月末に全社員の7%(約2,000名)の人員削減を発表し、収益の改善を目指しています。

株価は73.43ドル、予想PERが15.04倍と株価水準に割高感はないと言えそうです。

2-4 (日)TIS(3626)

TISは、TISインテックグループ会社です。TISインテックグループは、企業向け総合IT企業として国内トップクラスの企業です。

TISは、金融包摂、スマートシティ、ヘルスケア、エネルギーの4分野を軸に多様なデータを取集し、リアルタイムに解析予測してフィードバックしています。

金融包摂では、IT技術によりアクセスや認証をスムーズにしたり、支払いをスムーズに行ったりできるよう、安心して最先端の技術が受けられる世界を現実化しています。

第15期第3四半期連結累計期間(2022年4月~2022年12月末)の売上高は3,703億円(前年同期比4.8%増)、純利益が321.5億円(同9.3%増)と好調でした。金融IT部門とオファリングサービス部門の売上が全体を押し上げました。

株価は3,535円、予想PERが17.06倍。株価に割高感はなさそうです。

2-5 (米)グローバル・ペイメンツ(GPN)

グローバル・ペイメンツは、世界中の顧客に決済テクノロジーやソフトを提供しています。

2022年度の売上高は89.7億ドルと、前年比5.2%増えたものの、のれんの減損を計上したため、純利益は同88%減の1.11億ドルでした。

日本におけるカード決済については、業界最安値保証サービスを提供し、新規顧客を開拓しています。

株価は100ドル、予想PERが9.6倍と割安感がありそうです。

まとめ

金融とテクノロジーを融合したFinTechは、スマートフォンの登場により活躍の場が拡大し、日々の買い物や食事などでの決済、資産管理、融資、運用など幅広く使われるようになりました。2023年は、インバウンド消費の再拡大に加え、キャッシュレス化が地方でも普及する年となりそうです。

FinTech業界は、参入障壁が既存の金融サービスに比べて低く、新興産業が参入しやすいこともあり、まだ拡大余地があるため、今後も既存の枠を超えたビジネスが生まれることでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。