資産運用は利益が保証されるものではなく、時には損失を被ることがあります。しかし、リスクを知り、損失を少なくすることを心がければ長期的な資産形成は可能です。
資産運用に失敗する人にはいくつかの傾向があります。失敗のパターンや原因を知り、投資行動に生かすことは成功のため欠かせません。この記事では、資産運用で失敗するケースや原因と、その対策を解説します。
目次
- 資産運用のよくある失敗
1-1.目的や目標を決めずに投資を始める
1-2.1つの投資先に集中投資する
1-3.生活費を運用に回す
1-4.勧められるままに投資する
1-5.いきなりハイリスク・ハイリターンな投資をする
1-6.損失を取り返そうと焦る - 運用に失敗してしまう原因
2-1.運用に対する知識不足
2-2.感情に流される
2-3.リスク管理をしない - 失敗しないための対策
3-1.運用の目的・目標を決める
3-2.分散投資を心掛ける
3-3.運用に回すお金を決める
3-4.理解できない金融商品に手を出さない
3-5.取引のルールを決める - まとめ
1.資産運用のよくある失敗
失敗の事例は、運用の実践的な学びにつながります。そこで、資産運用でありがちな失敗例を紹介します。自分にも当てはまることがないか、チェックしてみましょう。
1-1.目的や目標を決めずに投資を始める
資産運用の失敗例でよくあるケースに、目的や目標を決めずに投資を始めることがあります。何のための運用かを決めずに、「周りに運用している人が多いから」のようにあいまいな理由で運用を始めると、失敗しやすくなるので注意しましょう。
資産運用は目的によって適した方法が異なります。まずは、老後資金や教育資金など、運用の目的を明確にしましょう。そのうえで、いつまでにいくらという目標を立てることが大切です。
1-2.1つの投資先に集中投資する
運用資金を1つの投資先に集中させると、失敗したときのダメージが大きくなります。たとえば、資金のすべてで株式の1銘柄を買ったとします。その会社が業績不振で破産した場合、投資した資金はゼロになってしまうのです。このような失敗を避けるためには、投資先を分散することが重要になります。
分散投資とは、投資対象の資産の種類や投資する地域などを分散して、リスクを軽減する方法です。集中投資に失敗した場合、全資産を失うことにもなりかねません。分散投資は運用を長く続けるためにも積極的に取り入れたい考え方です。
1-3.生活費を運用に回す
資産運用にリスクはつきものであり、短期的には損失を被ることはよくあることです。そのため、運用に回すお金はすぐに使う予定のない余裕資金でなければなりません。生活に必要なお金を運用に回して失敗してしまったら、生活費が不足します。そのために運用中の資産を取り崩すようなことがあれば、本末転倒です。
生活防衛のためには、毎月の生活費の約6カ月分の預貯金が目安となります。その資金には手を付けずに運用するようにしましょう。
1-4.勧められるままに投資する
金融機関の営業担当などから勧められた金融商品を買って、期待外れな結果に終わってしまうこともよくあるケースです。他人が勧めるからといって、運用成果が保証されているわけではありません。運用は自己責任で、マイナスの成果も自分が負うことになります。
勧められた金融商品の購入を検討するなら、商品の仕組みやリスクの理解が欠かせません。言われたことを鵜呑みにして購入することがないようにしましょう。
1-5.いきなりハイリスク・ハイリターンな投資をする
投資の初心者がいきなりハイリスク・ハイリターンな投資をすると、大きな損失を被る可能性が高くなります。たとえば、株式の信用取引やFX(外国為替証拠金取引)は、証拠金という仕組みを利用して自己資金以上の売買ができる投資です。少ない自己資金で大きなリターンが期待できる反面、損失も大きくなるおそれがあります。
リスクに慣れない初心者は、最初からハイリスクな投資は避けたほうがよいでしょう。金融商品の仕組みを知り、値動きに慣れてからハイリスクな運用を始めても遅くはありません。
1-6.損失を取り返そうと焦る
運用に失敗して資金が減ると、なんとか取り返そうと焦り、冷静な判断ができなくなることがあります。そのような場合、合理的な投資判断ができず、さらなる損失を重ねる可能性に注意が必要です。
最終的に資産形成ができればいいと割り切り、短期的な値動きに一喜一憂しないようにしましょう。
2.運用に失敗してしまう原因
運用の失敗を避けて資産形成をしていくには、なぜ運用に失敗してしまうのかを知っておくことが重要です。ここでは、運用に失敗する原因を解説します。
2-1.運用に対する知識不足
運用に失敗する原因の多くに、基本的な知識の不足があります。運用には様々なリスクがありますが、リスクを抑える方法もあります。運用で最低限必要な知識を持たずに「なんとなくお金が増やせそうだから」と投資に対する知識もないまま始めてしまうと、失敗するリスクが高くなります。
投資をするなら、投資の基本的な仕組み、リスクやデメリットを知っておきましょう。そのうえで、個別の株式や投資信託などを詳しく調べることが大切です。
2-2.感情に流される
運用に失敗して損失を取り戻そうと焦ったりムキになったりすると、正しい判断ができなくなります。運用では大きく利益を得るよりも、損失を少なくすることが長続きさせるために重要です。そのためには感情をコントロールして、平常心を保たなくてはなりません。一時的な感情に流されないようにしましょう。
2-3.リスク管理をしない
資産運用で最も重要なことは、損失を最小限に抑えるためのリスク管理です。長期で運用するにあたっては、大きなリターンを追求するより、リスクを抑えてコツコツと資産を大きくしていくことが効果的といえます。
そのためには、資金の管理や損切りのルールを決めるなどのリスク管理が欠かせません。目先の利益ばかりを求めてリスク管理をしない人には、長期的な資産形成は期待しづらいのです。
3.失敗しないための対策
資産運用に失敗するパターンや原因について紹介してきました。ここまでの内容を踏まえて、将来の資産形成に向けて大きな失敗を避けるための対策を解説します。
3-1.運用の目的・目標を決める
資産運用を始めるなら、目的や目標を明確にして臨みましょう。運用の目的によって最適な運用方法は異なります。たとえば、5年後の住宅購入の頭金と、リタイア後の資金では準備できる期間も必要な金額も異なります。同じ方法での準備が適切だとはかぎりません。
運用の目的がはっきりしたら、いつまでにいくら準備するかも決めていきます。それにより、最適な運用方法も変わってくるのです。
3-2.分散投資を心掛ける
分散投資は、運用のリスクを軽減する代表的な方法です。投資の格言に「卵を1つの籠に盛ってはいけない」というものがあります。卵を1つの籠に入れてその籠が落ちてしまうと、中身の卵が全部割れてしまう可能性が高くなります。しかし複数の籠に分けて卵を納めれば、1つの籠の中身が全滅しても、他は無事かもしれません。
分散投資は異なる運用対象に投資することで、相場の急変などのダメージを軽減する考え方です。株式や債券、日本国内の資産と海外資産などの分散で、大きなダメージから資産を守りましょう。投資信託やETFなどを活用することで、容易に分散投資が可能になります。
3-3.運用に回すお金を決める
運用は決められた予算内で行うことを徹底しましょう。たとえば、市場が上昇傾向にある場合、投資家はより多くの機会を求めて資金を追加投入しようとする傾向にあります。
チャンスだからと使ってはいけない生活費や、借りたお金で運用して失敗した場合、その後に必要な資金を穴埋めするのは容易ではありません。運用は余裕資金の決められた予算で行うことを守りましょう。
3-4.理解できない金融商品に手を出さない
金融商品には仕組みが複雑なものや、リスクが高いものも多々あります。人が運用で利益を得た話を耳にすると、自分も試してみたいと思うこともあるでしょう。
しかし、商品の説明を聞いたり、調べたりしても内容が理解できない場合は、購入を見送るほうが賢明です。購入後の値動きが期待外れになり得るばかりか、大きな損失を被ることにもなりかねません。運用においては大きな損失を避けることが長期的にはとても大切です。
3-5.取引のルールを決める
一時的に損をすることがあっても感情的にならずに運用を続けるには、売買のルールを設けることが必要です。たとえば株式投資であれば「買値より1割下がれば損切り」「買値より2割上がれば売却」などのルールを決め、例外なく守るようにします。
このようなルールを守ることにより、感情に流されずに取引ができ、収益の安定が見込めるようになるのです。
まとめ
運用において失敗事例からの学びは、とても役立ちます。運用とは、時間をかけて資産を育てていくものです。一度の失敗ですべてを失うことがないようにリスクを抑えていきましょう。適切なリスク管理ができれば、時には損をすることがあっても長期的には資産を大きくすることができるのです。
松田 聡子
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