日本の証券会社ではさまざまな種類のETF(上場投資信託)を提供しており、なかには全世界の株価指数や債券指数などに連動するETFを購入することができます。
今回は、日本の取引所に上場していて全世界に投資できるETFのメリットやデメリット、リスクについて紹介します。実際のETF銘柄も紹介するので、ETFへの投資を考えている方はご一読ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年9月12日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- ETFとは
- 全世界に投資できるETFのメリット
2-1.投資信託と比較してコストが低い
2-2.分散投資効果がある
2-3.値動きがわかりやすい
2-4.リアルタイムで取引できる
2-5.成長国の勢いを取り逃さず投資できる - 全世界に投資できるETFのデメリット
3-1.自動積立投資ができないことがある
3-2.分配金が自動で再投資されない
3-3.取引のたびに手数料が掛かる
3-4.集中投資と比較してリターンは劣る
3-5.投資比率によっては投資国が偏る - 全世界に投資できるETFに伴うリスク
4-1.価格変動リスク
4-2.流動性リスク
4-3.上場廃止リスク
4-4.価格かい離リスク
4-5.為替リスク
4-6.カントリーリスク - 全世界に投資できるETF銘柄
- まとめ
1.ETFとは
ETF(Exchange Traded Fund)は、「上場投資信託」のことをいいます。日経平均株価や東証株価指数(TOPIX)、NYダウなどの指数に連動するよう運用される投資信託の一種で、証券口座があれば株式と同じように売買できます。
ETFが連動を目指す指数は複数の銘柄で構成されています。そのため、ETFの投資対象も複数の銘柄となり、ETFを購入することで分散投資が可能になります。
また、ETFは証券取引所に上場されているため、リアルタイムで取引できます。よって、ETFは投資信託と株式の特徴を併せ持った金融商品といえます。
2.全世界に投資できるETFのメリット
全世界に投資できるETFのメリットは下記の通りです。
- 投資信託と比較してコストが低い
- 分散投資効果がある
- 値動きがわかりやすい
- リアルタイムで取引できる
- 成長国の勢いを取り逃さず投資できる
2-1.投資信託と比較してコストが低い
日本の証券取引所に上場するETFのほとんどはインデックスファンドで、指数に連動するように機械的に運用されるのが一般的です。投資信託よりも運用コストが低い傾向にあり、投資家にとってのメリットとなっています。
2-2.分散投資効果がある
ETFが連動を目指す指数は、複数の銘柄によって構成されています。そのため、ETF銘柄を1つ購入することで、複数銘柄を購入するのと同じことになり、分散投資の効果を得ることができます。
2-3.値動きがわかりやすい
ETFが連動を目指す指数は、個別銘柄と比較して情報を得やすいというメリットがあります。値動きについて把握しやすいため、資産の運用状況についても把握しやすいといえるでしょう。
2-4.リアルタイムで取引できる
ETFは証券取引所に上場しており、取引所が開いている時間内であれば、リアルタイムで取引できます。1日に何回も取引でき、成行注文や指値注文も可能で、株式と同じように取引することもできます。
一般的な投資信託が、注文から購入が完了するまでに時間が掛かることと比較して、ETFは取引しやすい金融商品といえます。
2-5.成長国の勢いを取り逃さず投資できる
経済の成長や停滞は数年のスパンで発生するものであり、時代の流れとともに常に変化していきます。
しかし、日本などの先進国では成長が頭打ちになる国も見られる一方、まだ経済規模は小さいものの著しい発展を遂げている国は数多くあります。そうした国々の経済成長を享受しつつ投資できるのは、全世界に投資できるETFを購入するメリットとなります。
3.全世界に投資できるETFのデメリット
一方で、全世界に投資できるETFには下記のデメリットがあります。
- 自動積立投資ができないことがある
- 分配金が自動で再投資されない
- 取引のたびに手数料が掛かる
- 集中投資と比較してリターンは劣る
- 投資比率によって投資国が偏る
3-1.自動積立投資ができないことがある
ETFは投資信託の一種ながら、自動積立投資ができないケースが多いというのがデメリットです。
一部の証券会社では、株式累積投資(るいとう)の対象銘柄になっているため、自動での積立投資が可能ですが、それ以外でETFを積立投資したい場合は、投資家自身が毎月積み立てるための注文を行う必要があります。
3-2.分配金が自動で再投資されない
ETFの分配金は、組入れられた銘柄の配当金や利息、経費を差し引いたうえで、決算時に投資家に必ず分配されるようになっています。投資信託のように、分配金を再投資する仕組みになっていないため、複利効果を狙った再投資を行う場合は、投資家自身が買い付けを行わなければなりません。
また、分配された金額には税金が発生するため、この点でも再投資効果が薄れるデメリットがあります。
3-3.取引のたびに手数料が掛かる
ETFは購入するたびに手数料が発生します。手数料体系は原則として株式と同様で、証券会社によって購入手数料が異なるため、利用する証券会社については検討する必要があります。毎度の取引ごとに手数料が発生するパターンと、一日の取引金額の合計額に応じて手数料が発生するパターンがあります。
また、投資信託では購入手数料が無料になる銘柄が多いのですが、ETFでは銘柄数がかなり限られるというのも懸念点といえます。手数料コストについてしっかり検討したうえで投資判断を下すようにしましょう。
3-4.集中投資と比較してリターンは劣る
全世界に投資できるETFを購入することは、平均的なリターンを期待できる投資方法ですが、すべての金融商品のリターンを上回るわけではありません。リスクが限定されるぶん、特定の銘柄に対する集中投資をした方が高いリターンを期待できるケースもあるということを理解しておきましょう。
3-5.投資比率によって投資国が偏る
全世界に投資できるETFを購入したとしても、全世界に万遍なく投資できるとは限りません。購入銘柄によっては投資国への割合が偏る可能性があります。
例えば「NEXT FUNDS 外国株式・MSCI-KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信」という銘柄の場合、投資する国や地域の実質的な投資比率は下記のようになっています。
順位 | 国・地域 | 投資比率(%) |
---|---|---|
1 | アメリカ | 70.5% |
2 | イギリス | 4.6% |
3 | フランス | 3.5% |
4 | カナダ | 3.5% |
5 | ドイツ | 3.0% |
このように、全世界に投資できるETF銘柄でありながら、実質的にはアメリカへの投資が7割以上を占めていることがわかります。ETF銘柄によって投資比率が異なるため、購入前に確認しておくといいでしょう。
4.全世界に投資できるETFに伴うリスク
全世界に投資できるETFを購入する場合、下記のリスクが伴うことを理解しておきましょう。
- 価格変動リスク
- 流動性リスク
- 上場廃止リスク
- 価格かい離リスク
- 為替リスク
- カントリーリスク
4-1.価格変動リスク
ETFが連動を目指す指数は、需要と供給によって常に変動しています。ETF銘柄にも価格が変動するリスクが伴います。下記する価格かい離リスクはあるものの、理論的には指数が1%上昇した場合、ETFも同じようにおおむね1%上昇し、1%下落すればETFも1%程度下落すると考えられます。
また、株価指数や商品指数に連動するETFよりも、債券指数に連動するETFの方が価格変動が小さくなる傾向にあるため、ETF購入時の参考にしてみるといいでしょう。
4-2.流動性リスク
ETFには流動性リスクが伴います。ETFは株式のように売買できるという特徴がありますが、取引が少なく流動性が低い場合、自分が希望するタイミングでの売買ができない可能性があります。ETF銘柄を購入する場合は、流動性について必ず確認するようにしましょう。
4-3.上場廃止リスク
ETFは上場廃止になるリスクがあり、その場合、想定しない金額での売買を迫られるケースがあります。
ETFの上場廃止は、運営会社の申請によるものと、上場規程を満たせなくなって機械的に上場廃止が決まる場合があります。いずれにせよ、上場廃止手続きによって監理銘柄・整理銘柄に指定されてしまうと大きな損失につながる可能性が高いため注意が必要です。
4-4.価格かい離リスク
ETFには2つの価格があり、それぞれの価格がかい離するリスクがあります。価格の1つは上場株式としての「市場価格」、もう1つが投資信託としての「基準価額」です。
市場価格は投資家が取引する際の価格で、常に変動しながら取引終了時に終値として当日の価格が確定します。基準価額はETFの1口当たりの価格のことをいいます。銘柄に組み込まれた有価証券などの時価評価額に配当金・利息などを加えた金額から、経費を差し引いた純資産総額を発行口数で割って算出し、当日の夜に発表されます。
それぞれの算出方法が全く異なるため、価格がかい離するケースがあることを理解しておきましょう。
4-5.為替リスク
外貨にて運用されるETFの場合、為替相場の影響を受けます。円安相場の場合は分配金や売却益は増加することがありますが、円高の局面では目減りすることになります。為替相場は常に変動するため、ETFを売却するタイミングはよく検討するべきといえます。
また、銘柄によっては為替変動による価格変動リスクを回避する「為替ヘッジあり」のものがありますので、購入を検討してみるのもいいでしょう。ただし、ヘッジコストがかかるぶん基準価額の上昇には圧力がかかる点に注意が必要です。
4-6.カントリーリスク
全世界に投資するETFの運用成績は、投資対象となる各国の政治・経済・社会情勢の影響を受けることになり、取引価格や基準価額、為替が変動する可能性があります。
特に、全世界に投資可能なETFの場合、関連する国の数が多くなります。特に投資配分の高い国についてはできるだけ情報を集め、場合によっては銘柄の売却を検討するなど、対策を講じる必要があります。
5.全世界に投資できるETF銘柄
東京証券取引所に上場する、全世界に投資可能なETF銘柄には下記のものがあります。
コード | 連動指数 | 銘柄名 | 信託報酬(税込) |
---|---|---|---|
2515 | S&P先進国REIT指数(除く日本、配当込み) | NEXT FUNDS 外国REIT・S&P先進国REIT指数(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 0.17%以内 |
1390 | MSCIパシフィック(除く日本) インデックス(ネットリターン) | UBS ETF MSCIアジア太平洋株 (除く日本) | 0.30% |
1385 | ユーロ・ストックス50® インデックス(ネットリターン) | UBS ETF ユーロ圏大型株50 (ユーロ・ストックス50) | 0.15% |
1386 | MSCIヨーロッパ・インデックス (ネットリターン) | UBS ETF 欧州株 (MSCI ヨーロッパ) | 0.20% |
1387 | MSCI EMUインデックス (ネットリターン) | UBS ETF ユーロ圏株 (MSCI EMU) | 0.18% |
1388 | MSCI EMU小型株インデックス (ネットリターン) | UBS ETF ユーロ圏小型株 (MSCI EMU小型株) | 0.33% |
1394 | MSCIワールド・インデックス (ネットリターン) | UBS ETF 先進国株 (MSCIワールド) | 0.30% |
1680 | MSCI-KOKUSAIインデックス | 上場インデックスファンド海外先進国株式(MSCI-KOKUSAI) | 0.24%程度 |
1550 | MSCI-KOKUSAIインデックス | MAXIS 海外株式(MSCIコクサイ)上場投信 | 0.15%程度 |
2513 | MSCI-KOKUSAIインデックス | NEXT FUNDS 外国株式・MSCI‐KOKUSAI指数(為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 0.17%以内 |
2514 | MSCI-KOKUSAI指数(円ベース・為替ヘッジあり) | NEXT FUNDS 外国株式・MSCI‐KOKUSAI指数(為替ヘッジあり)連動型上場投信 | 0.17%以内 |
1681 | MSCI エマージング・マーケット・インデックス | 上場インデックスファンド海外新興国株式(MSCIエマージング) | 0.24%程度 |
2520 | MSCI エマージング・マーケット・インデックス | NEXT FUNDS新興国株式・MSCIエマージング・マーケット・インデックス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 0.19%以内 |
1554 | MSCI ACWI ex Japanインデックス | 上場インデックスファンド世界株式(MSCI ACWI)除く日本 | 0.24%程度 |
2559 | MSCI ACWIインデックス | MAXIS全世界株式(オール・カントリー)上場投信 | 0.078%程度 |
1552 | S&P 500 VIX短期先物指数(円換算) | 国際のETF VIX短期先物指数 | 0.36%以内 |
1657 | MSCIコクサイ指数(国内投信用 円建て) | iシェアーズ・コア MSCI 先進国株(除く日本)ETF | 0.19%以内 |
1658 | MSCIエマージング・マーケッツIMI指数(国内投信用 円建て) | iシェアーズ・コア MSCI 新興国株 ETF | 0.23%以内 |
1349 | Markit iBoxx ABF 汎アジア指数 | ABF汎アジア債券インデックス・ファンド(アジア国債・公債ETF) | 0.18% |
1677 | FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース) | 上場インデックスファンド海外債券(FTSE WGBI)毎月分配型 | 0.25%程度 |
2511 | FTSE世界国債インデックス(除く日本、ヘッジなし・円ベース) | NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 0.12%以内 |
2512 | FTSE世界国債インデックス(除く日本、円ヘッジ・円ベース) | NEXT FUNDS 外国債券・FTSE世界国債インデックス(除く日本・為替ヘッジあり)連動型上場投信 | 0.12%以内 |
1566 | ブルームバーグ・バークレイズ自国通貨建て新興市場国債・10%国キャップ・インデックス | 上場インデックスファンド新興国債券 | 0.45%程度 |
2519 | J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス | NEXT FUNDS新興国債券・J.P.モルガン・エマージング・マーケット・ボンド・インデックス・プラス(為替ヘッジなし)連動型上場投信 | 0.19%以内 |
REIT指数(不動産投資信託指数)に連動するETFが1本、外国株価指数に連動するETFが17本、外国債券指数に連動するETFが6本、合計24本のETF銘柄があります。
まとめ
今回は全世界に投資できるETFのメリットやデメリット、リスクなどについて紹介しました。
全世界に投資できるETFを購入することで、ETF自体のメリットに加えて、さまざまな国の経済成長に乗って投資することができます。一方で、銘柄によっては投資国の比率が偏っている場合がありますので、投資銘柄を選択する際は確認が必要になります。
本記事も参考に、適切な投資判断を下せるよう情報を集めてみてください。
山本 将弘
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