目次
1 SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは?
SSBJ(サステナビリティ基準委員会)とは、日本のサステナビリティ開示基準の開発に取り組む委員会のことです。
SSBJは、財務会計基準機構(FASF)の下にある組織です。FASFは、経済団体連合会、日本公認会計士協会、全国証券取引所協議会等の民間10団体によって、2001年に財団法人として設立され、2009年に公益財団法人に移行しました。FASFは、以下の目的で活動をしています。
・一般に公正妥当と認められる会計基準及びサステナビリティ報告基準の調査研究及び開発
・国際的な会計基準及びサステナビリティ報告基準の開発への貢献
・ディスクロージャー及び会計に関する諸制度の調査研究
・上記事業の成果を踏まえた低減及び広報・研修活動
FASFの下には、SSBJに加え、企業会計基準委員会(ASBJ)があります。SSBJがサステナビリティ報告基準の開発を、ASBJが会計基準の開発を担っています。
(※引用:FASF・SSBJ「サステナビリティ基準委員会(SSBJ)の概要」)
2 SSBJが注目される背景
近年、サステナビリティに関する企業の取り組みに対する関心が高まる中、気候関連財務開示タスクフォース(TCFD)や国際統合報告評議会(IIRC)など、様々な団体がサステナビリティ情報に関する開示基準やフレームワークを開発してきました。しかし、基準間の相違点が明確に識別されないまま、複数の基準が混在してしまう状況が続いていたのです。
サステナビリティ開示基準の標準化が求められるようになり、国際会計基準(IFRS)の策定を担ってきたIFRS財団が、2021年11月に国際サステナビリティ基準審議会(ISSB)の設置を公表しました。ISSBは、包括的なグローバル・ベースライン(世界的に要求される包括的な枠組み)として、投資家に焦点を当てたサステナビリティ開示基準を開発しています。そして、各法域において、ISSBの基準を土台としたうえで、必要に応じて追加事項を設けることが想定されています。
こうした流れを受けて、ISSBによるサステナビリティ開示基準の開発に対して日本として意見発信を行ったり、国内基準の開発を行ったりする組織主体を求める声が、日本国内で高まりました。そして2022年7月、FASF内にSSBJが設立されたのです。
3 SSBJの主な活動
SSBJの主な役割は、以下の二つです。
・国内の開示実務や投資家の期待や意見を集約し、日本からの国際的な意見発信の中心となること
・ISSBによるサステナビリティ開示基準の策定動向を踏まえつつ、日本における開示基準の検討を行うこと
こうした役割を果たす上で、国際的なサステナビリティ開示基準策定の場で日本のプレゼンスを上げることが重要だと、SSBJは考えています。そのため、ISSBによる公開草案等に対しコメント・レターを提出したり、アウトリーチへの参加や意見交換を行ったりすることに加え、他の国や地域の基準設定主体との連携や、リサーチ活動を重視しています。
(※引用:SSBJ「サステナビリティ基準委員会の運営方針」)
4 SSBJの今後の取り組み
2023年8月にSSBJが発表した計画では、ISSBの取り組みに合わせて、2023年1月に開始された以下のプロジェクトに注力することが発表されました。
内容 | |
---|---|
日本版S1 プロジェクト |
ISSBのIFRS S1号「サステナビリティ関連財務情報の開示に関する全般的要求事項」に相当する日本基準の開発(日本版S1基準) |
日本版S2 プロジェクト |
ISSBのIFRS S2号「気候関連開示」に相当する日本基準の開発(日本版S2基準) |
日本版S1、S2プロジェクトの公開草案の目標公表時期は2023年度中、確定基準の目標公表時期は2024年度中の予定です。
基準の適用時期に関しては、公表後にただちに強制適用を求めることは予定されておらず、相応の準備期間を考慮した上で適用時期が決定される予定です。早期適用を望む企業については、上記の予定通り確定基準の公表が行われた場合、確定基準公表後の事業年度から早期適用が可能となる予定です。(2023年8月時点)
(※参照:SSBJ「現在開発中のサステナビリティ開示基準に関する今後の計画」)
5 まとめ
従来、複数のサステナビリティ開示基準やフレームワークが存在し、基準間の相違点や適用方法が複雑だという声が上がっていました。基準の標準化、各団体の協調を促すISSBに対し、日本として働きかけ、そして国際基準を土台に日本のサステナビリティ開示基準を策定するため、SSBJが設立されました。
2023年から2025年にかけて、日本版S1、S2基準の草案や確定基準の公表が予定されています、今後ますます、日本のサステナビリティ開示基準の議論が進むことが期待されています。

HEDGE GUIDE編集部 ESG投資チーム

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