シュローダーは7月12日付で「もうそろそろ(底に)到達したのか?」と題したレポートを公表した。グループCIOでマルチアセット運用・グローバルヘッドのヨハナ・カークランド氏が、金利が上昇する市場環境で投資判断をするうえで、リスクをとるのに十分な程度に割安になったのか、現時点での考え方と過去の教訓について解説している。
金利が上昇している足元の市場環境は、量的緩和を継続してきた環境からの「局面変化」を意味する。これまでの量的緩和は、米国の連邦準備制度理事会(FRB)などの各国中央銀行が、大規模に債券を購入することで金利を低位に維持し、企業の借り入れ需要を喚起したり、市場を下支えする政策だった。したがって、利回りやリターンを求める投資家が、よりリスクの高い資産に投資する結果になったと考えられる。
こうした所以から、市場のボラティリティはある程度抑制され、伝統的なバリュエーションの概念に基づいた価格形成ではなくなってきた。しかし、今回は、中央銀行は高水準のインフレに対処するために金融引き締めに政策の舵を切ったことから「ゲームの流れが変わった。投資家は、より戦略が必要な局面に接している」と同氏は言う。
現時点で、中央銀行の政策の優先課題は市場を支えることではなく、インフレの沈静化にある。つまり、投資という観点から言えば、過去は機能してきた「ディスインフレ」下での魅力的な投資対象は、将来も機能し続けるとは限らないとして、新しい均衡点を見つけ出す必要がある。
好材料として、様々な資産のバリュエーション(割安度)が改善していることが挙げられる。特に債券は、金利が上昇してきたことから、債券利回りには投資価値が復活してきたといえる。また、債券は株式よりも景気後退リスクに対する効果があると考えられる。
同社が作成した景気サイクルの「定量モデル(景気循環(回復、拡大、減速、後退の4段階)を評価するモデル)」によると、足元景気は減速局面へ移行していることが示されている。景気の成長鈍化リスクが高まっていることを認識し、同社ではエネルギーセクターの需要減退懸念から、コモディティに対する強気の見方を引き下げた。また、株式の中で、スタイルとしてバリューを選好するとの見方を取っている。
同氏は、過去の下落相場からの教訓として、第一に、様々な資産のバリュエーションが大きく調整されてくると、ベアマーケットラリー(弱気相場にはあるものの、その中で反転上昇するような動き)に遭遇すると予想する。第二に、最も魅力的な投資タイミングは、「景気回復」局面ではなく、「景気後退」局面に往々にして出現する傾向があると指摘。「今後数カ月で成長見通しが暗くなったとしても、弱気になり過ぎないようにする必要がある。不安定な市場ではあわてて投資行動をするのではなく、より長期的な戦略の立案を沈思黙考し、チームで投資を行っている場合には、チームの英気を養う必要がある」と同氏は投資家の望ましい姿勢を説いている。
【関連サイト】シュローダー・インベストメント・マネジメント株式会社
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