経済協力開発機構(OECD)は6月8日、2022年の世界経済成長率見通しを引き下げた(*1)。ウクライナ侵攻と中国のゼロコロナ政策の影響が響く。物価上昇と景気後退が同時進行するスタグフレーションのリスクは限定的とみる。
OECDが公表した最新の世界経済成長率見通しは3%と、前回21年12月時点の4.5%から大幅に下方修正した。ロシアによるウクライナ侵攻が世界経済に深刻な影響を及ぼしている。また、中国はグローバルサプライチェーンにおいて重要な拠点であるとともに巨大な消費市場となるなか、ゼロコロナ政策により主要都市および港湾が閉鎖された影響もでた。
とくに、ロシアからの石炭と石油の輸入禁止を決めた欧州の成長率は、想定を上回って非常に低くなる見通しだという。欧州がロシア産の化石燃料に大きく依存するなか、ロシアからの供給を削減することは経済に与える影響が甚大なものになると予想される。ただし、欧州の経済成長率見通しが2.6%であるのに対し、米国は2.5%とさほど大差は見られない。
生活費危機に直面する英国は3.6%。労働力および供給不足にくわえ、エネルギー価格が高騰するなか、同国のインフレ率は上昇をつづけ、22年末には10%を超える見通しだ。また、多くの新興国がロシアとウクライナからの農産物輸出に依存していることに鑑みると、これらの国々は食糧不足に見舞われる可能性が高いという。
マティアス・コーマン事務総長はCNBCに対し「経済環境は厳しいが、インフレ率が上昇し、失業率が高まり、需要が低迷した1970年代のようなスタグフレーションの方向に向かってはいないだろう」と述べた(*2)。また「22年下半期から23年末にかけてインフレは沈静化する見通しだ」と付け加えた。
他の国際機関も相次いで成長予測を引き下げている。国際通貨基金(IMF)は4月、22年の世界経済成長率を3.6%と、1月の予測から0.8%ポイント下方修正した(*3)。世界銀行は6月7日、世界のGDP(国内総生産)成長率見通しを2.9%に引き下げた(*4)。1月時点は4.1%だった。また、スタグフレーションのリスクが高まっており、中低所得国に悪影響を及ぼすと警告した。
【参照記事】*1 OECD「OECD Economic Outlook reveals heavy global price of Russia’s war against Ukraine」
【参照記事】*2 CNBC「OECD slashes GDP prediction on Ukraine war and China’s zero-Covid policy」
【参照記事】*3 IMF「World Economic Outlook, April 2022: War Sets Back The Global Recovery」
【参照記事】*4 世界銀行「Global Economic Prospects June 2022」
HEDGE GUIDE編集部 ESG・インパクト投資チーム
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