イギリスのリズ・トラス首相が就任からわずか44日で辞任を表明したことを受け、ナティクシス・インベストメント・マネージャーズ傘下のオストラム・アセット・マネジメント、ルーミス・セイレスの2社は10月21日、コメントを発表した。
オストラム・アセット・マネジメントのグローバル・ストラテジスト、アクセル・ボット氏はトラス首相の辞任は「与党・保守党にとってパンドラの箱を開けたようなもの。今後は、党内政治の崩壊に伴う早期の総選挙など、多くのシナリオが考えられる」と」と、スピード辞任と混乱ぶりを表現する。
保守党は1週間以内に次期首相の選出を目指しており候補者として、党首選の決選投票でトラス氏に敗れたリシ・スナク氏(党内分裂をもたらす可能性がある)、ベン・ウォレス国防相、ボリス・ジョンソン前首相の有力後継者と言われた元通商政策担当相のペニー・モーダント氏などの名が挙がる。ただし、当のジョンソン前首相が復帰を目指し立候補する可能性も取り沙汰されており、新党首は28日に決まる予定だが、混迷が続く。
市場の動きとして、ボット氏は「ギルト債のボラティリティは依然として高く、最近では1日の利回り変動幅は0.25%程度となっている。これは、年金基金や投資家が資金に奔走し、資産配分の見直しを図る上でマイナスとなる」と指摘。辞任の発表後、英ポンドは1.12ドルの水準まで上昇しているが、市場の関心は、今後のイングランド銀行の利上げ幅に向けられており、「1%以上でなければ英ポンドは反落する」とボット氏は予測している。
ルーミス・セイレスのポートフォリオ・マネージャー兼グローバル債券部門共同責任者スコット・サービス氏はトラス首相の辞任の原因となった予算案を「英国市場を混乱させた破壊的な案。辞任は当然」と批判。保守党が新しいリーダーを探す中、「市場が主導権を握っているのは明らか」と、動揺する政局に対し、主導権は市場にあると言及する。
そのうえで、英国の政治・経済は「財政政策の転換を受け、市場はある程度の落ち着きを取り戻したとはいえ、景気を悪化させることなくインフレを抑制するための最善策について合意を得るのは容易なことではない。エネルギーコストが高止まりし、労働市場がかなり逼迫していることから、市場は現在、今後1年間の大幅な利上げを織り込んでいる」と指摘。しかし、イングランド銀行の副総裁が「需要の鈍化がインフレを抑制するため、投資家が期待するほど大幅な利上げを実施する必要はない」との見解を表明したことを注視、「イングランド銀行が板挟みにならないことを願いつつ、今後の動向を見守りたい」という姿勢だ。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
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