生物多様性なぜ重要?私たちの生活への影響や生物多様性に取り組む上場会社も

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地球上にはさまざまな生物が存在します。私たち人間も、その一種です。普段はあまり意識しないかもしれませんが、生物多様性はあらゆる生物にとって重要なものです。

生物多様性が私たちの生活にどう関係しているのでしょうか。また、生物多様性が失われていくと、地球環境にどのような影響が及んでくるのでしょうか。

今回は、生物多様性の重要性をはじめ、問題となる危機要因や対策となる取り組みなどについて解説していきたいと思います。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年10月20日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 生物多様性とは?
    1-1.生態系の多様性
    1-2.種の多様性
    1-3.遺伝子の多様性
  2. 生物多様性の恩恵である「生態系サービス」
    2-1.基盤サービス
    2-2.供給サービス
    2-3.調整サービス
    2-4.文化的サービス
  3. 生物多様性の保全が重要な5つの理由
    3-1.野生の生物について
    3-2.人間の健康を守る
    3-3.気候変動対策
    3-4.経済効果について
    3-5.文化やアイデンティティ
  4. 生物多様性に関する企業の取り組み事例
    4-1.イオンの生物多様性方針
    4-2.イオンの店舗や商品の取り組み
  5. まとめ

1.生物多様性とは

「生物多様性」とは、「すべての生き物の間に違いがあること」と定義し、「生態系の多様性」、「種の多様性」、「遺伝子の多様性」という3つのレベルがあるとしています。

地域により地勢・気候が異なるため、各地で様々な生態系が見られ、多種多様な生きものが生息しています。そして、それらは様々な関係でつながり合っています。

しかしながら、人間の不適切な社会活動等により生物多様性が損なわれ、生物多様性が持つ機能の低下等が懸念されているのです。

例えば、生物多様性が乱れて生態系が崩れると、農作物が育たなくなって値上がりする可能性もあります。食事を十分にとれない人も増え、健康を損なう人も現れるかもしれません。

引用:外務省「生物多様性条約(生物の多様性に関する条約:Convention on Biological Diversity(CBD))

詳細を見ていきましょう。

1-1.生態系の多様性

ある場所に生息する生物と、それを取り巻く環境を合わせて生態系と言います。生態系の中では、生きものたち同士とそのまわりの環境は、物質やエネルギーのやりとりなどで、お互いに深い関係でつながっています。

生態系の多様性とは、それぞれの地域に多様な生態系があることです。奥山の様々な森林、里山の雑木林、田畑、緑地、草原、湿原、湖沼、河川、海洋などに、それぞれ生き物の種の構成が異なる生態系があって、それらが山から海に至るまで、広域にわたる動物の移動や川の水の流れなどでつながっているのです。

1-2.種の多様性

種の多様性とは、森林に棲む動物や、空を飛ぶ鳥、川を泳ぐ魚、森林の樹木・草花など、いろいろな動物・植物が生息していることです。

例えば、秋に咲くコスモスも、オオハルシャギク、キバナコスモス、チョコレートコスモスなどいろいろな種が、それぞれ独特の形態と生態を持って生育しています。

1.遺伝子の多様性

遺伝子の多様性とは、同じ種内でも、個体によって遺伝子の異なっていることです。例えば、アサリの貝殻の模様が千差万別なのも、遺伝子の違いによります。ミナミメダカは、浜通りでも河川ごとに少しずつ異なった遺伝子をもっていることがあるとされています。

2.生物多様性の恩恵である「生態系サービス」

人間が暮らしていく上で、生物多様性が高く保たれていることは欠かせません。普段の何気ない生活においても生物多様性の恩恵を受けているためです。

たとえば、日本人の主食であるお米は、水や空気、田んぼで生きるたくさんの生物たちが存在しているからこそ成り立ちます。野菜や果物は、虫たちの受粉がなければ、実をつけません。

食べ物に限ったことではなく、衣類や木材、水や医薬品まで、ほとんどのアイテムが生物多様性の恩恵を受けています。この状態が生態系サービスといわれるものです。

生態系サービスは、以下の4つに分類されます。それぞれ見ていきましょう。

  1. 基盤サービス
  2. 供給サービス
  3. 調整サービス
  4. 文化的サービス

2-1.基盤サービス

基盤サービスは、植物の光合成や昆虫や微生物が土壌を形成する状態を表します。たとえば、生きるために欠かせない酸素は植物による光合成でつくられ、豊かな森は水を貯えて水源を確保します。ミミズや微生物が落ち葉を分解することで、栄養豊かな土壌も形成されます。

2-2.供給サービス

供給サービスは、普段食べている米や野菜、肉、魚などの食材や、建材用の木材、衣類に使用される綿や麻など日常生活に必要な資源も、生物多様性による恩恵として供給されています。

2-3.調整サービス

調整サービスは、大気質や気候の調整、自然災害の制御、水の浄化作用など、自然は見えないところでさまざまな環境調整もおこなっています。たとえば、たくさんの木々がしっかりと根を張った斜面では、土砂崩れなどの災害も起こりにくいといわれます。

2-4.文化的サービス

文化的サービスは、大自然のなかをトレッキングしたり、ホタルを観賞するツアーを楽しんだり、豊かな観光資源としてさまざまなサービスを提供します。自然は、都会生活での体験とは離れた魅力をもたらします。

3.生物多様性の保全が重要な5つの理由

生物多様性を保全する動きには、自然界にとっても人間にとっても生物多様性は欠かせないものであるからという背景があります。その理由を5つに分類して紹介します。

  1. 生態系を支えている
  2. 人間の健康を守る
  3. 気候変動対策にもなる
  4. 経済的にも恩恵を受けている
  5. 文化やアイデンティティの根本である

3-1.生態系を支えている

まず、野生の生き物は生態系を支える主な要素です。種のひとつひとつが、繋がりあって構成されているのが生態系です。

食物連鎖というものがあるように、生き物は関係しあっています。生物多様性が高い状態というのは、その生き物同士のつながりが系の中に多く存在しており、どれか1つの種が欠けたとしても他の種がその役割を補うことができ、系の持続可能性が高い状態です。

逆に生物多様性が低下すると、どれか1種でもかけてしまうことが全体の生態系にゆらぎを与えてしまうというリスクの高い状態になってしまいます。

3-2.人間の健康を守る

豊かな生物多様性を維持することで、野生動物由来の感染症を人間界へ運ぶことを防ぐことができます。

昨今はウイルスによる感染被害が甚大になってきていますが、これは人間と自然界の距離が近くなっていることや生物多様性が低下していることも要因の一つとして考えられています。

たとえば、野生動物由来のウイルス感染において、野生動物の種類が多く生物多様性が高いほど、「希釈効果」と呼ばれるメカニズムが働くと言われています。野生生物由来のウイルスは野生生物を宿主として感染をしていきますが、中にはそのウイルスには感染しない野生生物もいます。生物多様性が高いと感染しない野生生物の種の数も多くなり、感染経路がそこで途絶えて人間に到達しないケースが増えるため、人間のウイルスの感染リスクを低く抑えることができる可能性があります。

このように、人間の健康を保護するためにも、生物多様性は守ることが大切です。

参考:WWFジャパン「生物多様性は世界を救う!?豊かな生物多様性が動物由来感染症を防ぐメカニズムとは

3-3.気候変動対策にもなる

地球温暖化の進行により、異常気象や海面上昇が顕著になってきています。これ以上の地球温暖化をとどめるためには、生物多様性の保全によって、森林や植物が持続可能である状態をつくることが必要とされます。

なぜなら、生物多様性を保全することにより広大な森林を持続させることが、二酸化炭素を吸収する生態系システムを保護することに繋がるからです。

このように、生物多様性を保全することが、地球温暖化や気候変動を防ぐ対策の1つに繋がります。

3-4.経済的にも恩恵を受けている

生物多様性により、例えば食品業界、林業、そして観光業界も恩恵を受けています。

なぜなら、人間は食材、燃料、医薬品などさまざまな物を自然界に頼っているからです。この状況で、自然が喪失することは、それに付随するビジネス機会まで損失することでもあります。

さらに、植物由来の材料を必要とする業界だけでなく、美しい自然を観光資源としている観光業界も打撃を受ける可能性があります。

3-5.文化やアイデンティティの根本である

豊かな自然環境は、文化的、国の基盤となっており、人間の文化やアイデンティティの根本でもあります。たとえば、地域ごとの特産や旬の食べ物・料理を楽しむという食文化の面で生物多様性の保全は必要です。絵画や日本の伝統文化のひとつでもある俳句の季語などにも四季折々の自然風景や様々な生物が存在します。生物多様性が失われてしまうと、そういった文化的な面でも損失が大きく、文化の豊かさや多様性などが失われることになります。

自然とのつながりを守り、これまでの豊かな暮らしを未来へと受け継いでいくためにも、生物多様性は保全していくことが大切なのです。

生物多様性に関する企業の取り組み事例

以下では、生物多様性に関する企業の取り組み事例も詳しく見ていきましょう。上場企業のイオンを例に、生物多様性方針や営業活動の中での取り組みを見ていきたいと思います。

4-1.イオンの生物多様性方針

イオンは、事業活動が自然の恵みなしには成立しないという認識のもとで、生物多様性に対する危機感を抱いており、マテリアリティの一つとして「生物多様性の保全」を掲げ、以下の生物多様性方針を掲げています。

事業活動全体における、生態系への影響を把握し、お客さまや行政、NGOなどステークホルダーの皆さまと連携しながら、その影響の低減と保全活動を積極的に推進します。

わたしたちは、「生態系」について事業活動を通じ
1.「めぐみ」と「いたみ」を自覚します。
2.「まもる」「そだてる」ための活動を実行します。
3.活動内容をお知らせします。

出典:イオン「イオン生物多様性方針

4-2.イオンの店舗や商品の取り組み

また、イオンは店舗や商品を通じて以下のような様々な取り組みをしています。

  1. 店舗等の「イオンふるさとの森づくり」を積極的に推進し、森の重要性を伝える。
  2. 国内外における森の再生の植樹活動に積極的に参加。
    参照:イオン「イオンの植樹活動
  3. 全従業員の生物多様性に関する意識を高め、保全活動へ自主的に参加する従業員を育成するとともに、地域のお客さまと環境意識を共有。
  4. 建設資材のグリーン購入を更に推進。
  5. 店舗開設時の生物多様性評価を実施し、負荷の軽減。
  6. 従来型店舗に比べCO2排出量30%削減と、生態系保全と創出に配慮した店舗開発を目指す。
    参照:イオン「スマートイオン
  7. 持続可能性に配慮した生物資源の認証された商品を積極的に取り扱い、情報を発信する。
    参照:「天然MCS認証、養殖ASC認証」「FSC®認証」など

従業員や顧客だけでなく、店舗の設営の建材や、実際の商品のひとつひとつが、生物多様性を守るための取り組みに繋がっています。

5.まとめ

生物多様性を守るために、私たちは生物多様性についてよく知ること、関心を向けることが重要です。どこにどのような生物がいるのか、以前と比べてどれくらいの数が生きているのかなどを知ったり、地元でとれた旬のものをおいしく味わったりという何気ない日々の行動も、大切な第一歩となるのではないでしょうか。

また、日常生活で消費しているモノが、どこからどのようにして手元に届いたのか関心をもつことも、こうした取り組みへの道しるべとなります。環境に配慮した製品や水産物を選択することも、ひとつの取り組みです。

普段当たり前のように口にしている水や米、肉や魚、野菜や果物なども、豊かな大地に育まれて食卓に届いています。食事を摂るところで完結させず、料理に使用した食材がどこでどのようにつくられたかを知ることも、取り組みの一つです。ゴミを増やさないため、エコバッグ持参で買い物をするのがすでに普及したように、一人ひとりの関心・意欲・心がけが、いま求められているのです。

生物多様性を維持する取り組みは、地球に暮らす一人ひとりが取り組んでいかなければならない大切な課題です。まずは、身近なことに関心を向けてみましょう。

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