ワクチン接種率と株価の連動性は?米日中欧の各市場を分析【2021年8月】

欧米などに比べ、日本の新型コロナワクチンの接種は遅れています。そして、過去最高値を更新している米国株などに比べ、株式の上昇も鈍くなっています。この記事では、ワクチン接種率が株価にどのような影響を与えているのか、欧米や日本、中国の株式市場の状況について解説します。

※この記事は2021年7月末時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. ワクチン摂取率10%が一つの目安に
  2. 物色の対象はバリュー株が優位に
  3. 中国ではワクチン接種が進んでいるものの、株価の戻りは鈍い
  4. デルタ株の拡大による影響
  5. まとめ

1.ワクチン摂取率10%が一つの目安に

イギリスのオックスフォード大学の研究者が管理する「アワー・ワールド・イン・データ」によると、日本の総人口に占めるワクチン接種率は、6月6日時点で10%を突破しました。

そして、ワクチン接種が日本よりも先行している欧米主要市場では、ひとつの法則があります。ワクチン接種率が10%を超えたあたりから、レジャーや外食、運輸などの経済再開(リオープン)銘柄が動意づき、株価の水準訂正が本格化するという法則です。

米国ではワクチン接種率が10%を超えた2月中旬から経済再開銘柄が上昇し、S&P500種株価指数に大きく迫るパフォーマンスとなっています。そして非製造業の景況感を知る際に参考になる、サービス業PMIが上向き始め、アメリカン航空や百貨店のメイシーズ、旅行会社のエクスペディアなどの株価が上昇し始めたのです。

米国のサービス業PMIは、ワクチン接種率が10%近くになった1月に57.5と大きく回復し、5月は70.1と過去最高を更新しました。そして、ユーロ圏でも5月のPMIが55.1と2018年6月以来の水準となり、好不況の境といわれる50を大きく上回っています。

しかし、厳しい都市封鎖(ロックダウン)を行ってきた欧米諸国に比べると、日本の行動制限は緩く、感染者数も欧米よりも少なくなっています。ですから、ワクチン接種が進んでも欧米ほどの回復は見込まれないという見方もあるのです。

実際、6月に入り米国のS&P500種株価指数やナスダック総合株価指数は過去最高値を更新しましたが、日経平均株価は3万円の節目を超えることができず、7月にかけて下落しました。

日本人は欧米よりも新型コロナウイルスでの恐怖を強く感じている人が多いといわれています。ですから、今後ワクチン普及率が上がってくるにつれ消費も回復し、株価もそれを織り込んだ動きになっていく可能性は高いと見られます。

2.物色の対象はバリュー株が優位に

経済の正常化を織り込むマーケットの動きとしては、「株高」「長期金利」の上昇に合わせて「バリュー株」が買われる動きがでています。新型コロナウイルス対策による大規模な金融緩和政策によって、これまでITやハイテク株などのグロース株が買われていましたが、ワクチン接種による経済成長が進めば、不動産や運輸などのバリュー株が優位になりやすいのです。

2020年11月に行われた米大統領選選挙以降、世界の株式市場は上昇を始めました。ワクチン開発に関する明るいニュースが流れたことで行動制限が解除に向かい、経済が徐々に正常化に向かうだろうという期待からでした。

経済正常化を睨んだ買いは日本株にも入り、日経平均株価は2月19日に30,714.52円の高値をつけたのです。しかし3月以降、日本株は伸び悩んでいます。欧米に比べワクチン接種が大幅に遅れているので緊急事態宣言などの行動宣言が長引き、景気がなかなか回復しそうにないと見られているからです。

3.中国ではワクチン接種が進んでいるものの、株価の戻りは鈍い

中国では、6月に新型コロナウイルスのワクチン接種が、累計で10億回を超えました。これは世界最多で、住民のワクチン接種率が80%を超えたとされる都市も複数でています。中国は感染をほぼ押さえ込んでいますが、ワクチンで封じ込めを強化しようとしているのです。

ただ、効果には不透明感が残るという指摘もあります。米モデルナや米ファイザーなどに比べると、中国のワクチンによる予防効果は、年齢によってバラツキがあるからです。ですから、中国では予防接種が進んでいるものの、日本同様、株価の戻りは鈍くなっています。

4.デルタ株の拡大による影響

世界保健機関(WHO)は、7月21日に新型コロナウイルスのデルタ株が、これまで124カ国で確認されたと発表しました。今後は、これまでより感染力の強いデルタ株が主流になると考えられています。ワクチン接種が進む米国でもデルタ株による新型コロナ感染者数が急増しており、ワクチン接種率が低い地域では病床不足になっています。

そして、米疾病対策センター(CDC)によると、6月20~7月3日の新規感染者に占めるデルタ株の割合は51.7%にものぼっているのです。米国では、5月13日にワクチン接種を完了した人は室内外でマスクをつけなくてよくなりました。 しかし、新型コロナウイルスワクチンの接種率が低く、感染者が増えている地域でワクチンを接種していない人は、マスクをするよう促されています。

ワクチンの接種には、デルタ株による重症化を防ぐというデータもあります。米国では新型コロナ感染症により死亡した人の99%以上がワクチンを接種していませんでした(同CDC発表、2021年1~5月に5~6州を対象とした統計による数値)。つまり、ワクチンを接種しておけば、重症化リスクを下げられるのです。

ただ、重症化リスクが低くなったとはいえ、今後もデルタ株などが感染拡大を続けるようだと株価の上値を抑える要因になりかねないので、注意が必要です。

まとめ

ワクチン接種が進む欧米では、株価の戻りが顕著になっています。ただ、日本はワクチン接種が欧米に比べて遅れているので、株価の上値が重くなってきています。また、今後はデルタ株の拡大によって、ワクチン接種が進んでいる国でも株価が軟調になる可能性があるので、注意が必要です。

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山下耕太郎

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011