米国のグロース株を見極める方法は?人気の銘柄と業界動向も解説

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グロース株とは、企業の成長期待が高いため予想PER等が市場平均を上回る水準まで買われている銘柄のことです。期待通り企業が成長する場合もありますが、期待が剥がれてしまうと株価が大きく下落するため、銘柄の見極めが需要です。

今回はグロース株をどう見極め、投資すればいいかについて解説していきます。

目次

  1. グロース株の特徴
    1-1.株価水準が市場平均より高い
    1-2.勢いがある
    1-3.無配企業が多い
  2. グロース株投資のメリット・デメリット
    2-1.メリット:株価上昇期待が高い
    2-2.デメリット:株価が暴落することも
  3. グロース株を見極める方法
    3-1.斬新さ
    3-2.売上成長率が高い
    3-3.ROEが高い
  4. グロース株の人気銘柄・テンバガー銘柄を分析
    4-1.アマゾン・ドット・コム(AMZN)
    4-2.テスラ(TSLA)
    4-3.ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)
  5. まとめ

1 グロース株の特徴

最初にグロース株の特徴をまとめます。

1-1 株価水準が市場平均より高い

個々の企業には、上場市場や業種・属性が定められています。皆さんも良く知っているアマゾン・ドット・コム(アマゾン)は米国ナスダック市場に上場しています。ナスダック市場には約3,000銘柄が上場し、指数の平均予想PERは2021年8月5日時点で約33倍、配当利回りは0.63%です。

一方、アマゾンの予想PERは約50倍、配当は支払われていないので配当利回りは0%です。指数と比較してアマゾンの株価水準は割高と言えます。これは、企業の成長期待が高く、将来の期待利益が株価を押し上げているためです。

1-2 勢いがある株が多い

グロース株の特徴として株価に勢いがあります。グロース株は多くの投資家から注目されているため、株価が上昇し始めると多くの投資家が参加することで株価が大きく上昇する傾向があります。

株価の勢いがある銘柄には仕手株も挙げられますが、仕手株は仕手筋と呼ばれる集団が値動きの軽い株を巨額の資金で意図的に操作する銘柄を指すのに対し、グロース株は将来の成長期待が高い銘柄を指します。

1-3 無配企業が多い

グロース株は利益が出ていても配当金が支払われない傾向にあります。それは、企業が成長過程にあるため、利益の大半は事業投資に使われるためです。事業のための設備や広告宣伝などに投資することで売上が増え、結果的に株価が上昇するため、企業成長とともに株価の上昇が期待できます。

2 グロース株のメリット・デメリット

グロース株に投資する場合の主なメリットとデメリットを挙げます。

2-1 メリット:株価上昇期待が高い

グロース株の最大のメリットは株価の上昇期待です。企業の利益が継続的に増加するため、株価が中長期的に10倍以上に上昇する銘柄も珍しくありません。

IPO価格を基準とし、主な銘柄の現時点の株価と倍率(2021年8月4日)を表にしました。

IPO価格と2021年8月4日の株価(一例)

銘柄 上場日 IPO価格(USD) 株価(USD) 倍率
アマゾン・ドット・コム 1997/05/14 18 3,354.72 186.37
アライン・テクノロジー 2001/01/26 13 708.01 54.46
テスラ 2010/06/29 17 710.92 41.82
ネットフリックス 2002/05/22 15 517.35 34.49
アルファベット 2004/08/19 85 2,702.51 31.79
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ 2019/04/18 36 400.58 11.13

2-2 デメリット:株価が暴落することも

グロース株のデメリットは、株価が割高に買われているため、株式市場の調整時や企業業績が悪化した場合に株価が大きく下落する可能性があることです。株価の予想PERや配当利回りなどの投資尺度が指数より割高な水準で推移しているため、株式市場の暴落時には水準訂正が起こるためです。

3 グロース株を見極める方法

以上のような特徴を持つグロース株へ投資する際に、どのような視点で銘柄を選べばいいのでしょうか。

3-1 斬新さ

グロース銘柄は、斬新な企業が目立ちます。テスラやFacebook、ズーム・ビデオ・コミュニケーションズなどの企業は、独自のビジネスモデルで業績が拡大しています。

3-2 売上成長率が高い

グロース銘柄は売上成長率が高い傾向にあります。売上が増えることで利益も増加し、結果的に株価が上昇するという好循環が期待できます。

次項にてグロース銘柄の一例と5年間の平均売上成長率などを表にまとめました。5年間の平均売上成長率は、どの企業も20%を上回り、なかには50%を超している企業も確認できます。

3-3 ROEが高い

グロース銘柄の特徴にROE(自己資本利益率)が高いことが挙げられます。ROEは資本の効率性を示す指数で、高い値ほど良い企業とされています。ROEは純利益を自己資本で割って求めます。

ROEは売上高純利益率、総資産回転率、財務レバレッジの3つの側面から分析することができます。ROEは、企業の中長期的な企業価値向上のため、株主との関係を重視する指標とされています。米国企業の多くは10%台~20%台となっており、日本企業の4%~10%と比較すると、米国企業が高い傾向があります。

企業がROEを上昇させるためには、①利益率を上げる、②売上高を上げる、③負債を増やす、という3つの方法が知られています。極度の負債増加は、信用リスク上昇を招き、格付けや株価を引き下げる可能性があるため注意する必要があります。

  • ROE=当期純利益÷((前期自己資本+今期自己資本)÷2)
  • ROE=売上高純利益率×売上高総資産回転率×財務レバレッジ
  • ROE=(当期純利益÷売上高)×(売上高÷総資産)×(総資産÷自己資本)

売上利益率が高い企業は市場占有率が高い傾向にあるため、高いROEを維持することができます。成長率が高く、売上利益率が高いことが株価押し上げ要因となり、結果的に株価の水準が割高になる傾向があります。

グロース銘柄のROEや売上利益率(一例)

銘柄 ROE(%) 売上利益率(%) 売上高5年平均成長率(%) 予想PER(倍)
アマゾン・ドット・コム 31.23 39.57 30.30 49.74
アライン・テクノロジー 37.86 38.89 28.58 47.39
テスラ 28.29 53.58 25.14 25.34
ネットフリックス 20.56 55.18 26.54 65.92
アルファベット 22.42 71.33 47.59 64.31
ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ 34.23 69.00    — 85.98

4 グロース株の人気銘柄・テンバガー銘柄を分析

テンバガーとは10倍株で、株価が購入時価格の10倍以上に上昇した銘柄を指します。ここでは、株価がIPO価格の10倍以上に上昇した銘柄の例(IPO価格と2021年8月4日時点の株価を比較)をみていきましょう。

4-1 アマゾン・ドット・コム(AMZN)

アマゾン・ドット・コムの上場日は1997年5月で、IPO価格は18ドルです。現在の株価は3,354.72ドルで、株価はIPO価格の約186倍に成長しました。

新型コロナ感染拡大の影響で売上が急成長しました。しかし、2021年7~9月(第3四半期)の売上見通しが、市場予想1,187億ドル(利益:約81億ドル)を下回ったことから市場参加者が失望し、決算発表直後に株価は一時的に7%下落しました。メイン事業である電子商取引事業の勢いが鈍化してしまったことが要因です。一方、広告事業とクラウド部門であるアマゾン・ウェブ・サービス(AWS)は売上を堅調に伸ばしています。

全体の売上が頭打ちになってしまうと、株価の水準訂正が起きる可能性があります。今後の業績が注目されます。特に、アフターコロナの消費者行動がポイントとなりそうです。

4-2 テスラ(TSLA)

テスラは電気自動車メーカーで、時価総額は自動車メーカー1位の76.1兆円です。この金額はトヨタ自動車(32.1兆円)の2倍以上です。テスラの2021年上半期の新車販売台数は38.6万台(前年同期:17.9万台)、トヨタ自動車グループは約546万台です。

2021年7月26日に発表されたテスラの2021年第2四半期(4~6月)の売上高は、119.5億ドル(約1.3兆円)で前年同期比の2倍に達しました。一方、トヨタ自動車の2022年3月期第1四半期(2021年4~6月)の営業収益は約7.9兆円です。テスラの売上規模はトヨタ自動車の約16.5%ですが、時価総額はトヨタ自動車の2倍以上です。

テスラの上場日は2010年6月で、IPO価格は17ドルでした。現在の株価はIPO価格の約42倍の712ドルです。

株価の転機は、2019年第3四半期決算の黒字転換です。この黒字化が転機となり、50ドル前後(分割調整後)だった株価が躍進し、2021年1月下旬には900ドル台を付けました。この株価急伸により、CB(転換社債)42億ドル(約4,600億円)の株式への転換が進み、自己資本が増加しました。

CBは株式に転換されると社債を償還する必要がなくなるため、貸借対照表上では転換が進んだCBは負債額がそのまま資本金に移動する扱いとなります。つまり、CBの転換は自己資本に充当されるため、バランスシートの改善につながります。2019年度12月に19%だった自己資本比率は2020年12月には42.6%に上昇しました。自己資本比率が厚くなったことで、資金調達をする際にプラスに働きます。

足元では、世界中の自動車メーカーが電気自動車の生産にシフトしています。世界中が電気自動車製造・販売に力を入れ始めており、電気自動車販売台数1位のテスラが追われる立場となっています。今後、現在の優位的地位が維持できるかどうかが注目されています。

4-3 ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZM)

ズーム・ビデオ・コミュニケーションズ(ZOOM)は、ビデオ会議サービスのプロバイダーです。株価の転機は、新型コロナの感染拡大を背景とした世界的なビデオ会議需要の急激な高まりです。

中国の武漢市で新型コロナの感染が明らかになった2020年1月以前の同社の株価は、60ドル前半で推移していました。その後、世界中の都市でロックダウン等の各種規制が実施されたことで、ビデオ会議需要が高まり、2020年10月には株価が一時580ドルを上回りました。

同社の上場日は2019年4月で、IPO価格は36ドルでした。現在の株価はIPO価格の約11倍の400.58ドルです。

同社が2021年6月1日に発表した第1四半期(2~4月)の売上高は、前年同期比191%増の9.56億ドルでした。新型コロナ感染拡大を背景とした在宅勤務の拡大を受け、ビデオ会議の需要が高まったことが主因です。

現在のフリープランは40分までとなっていますが、最大100人が繋がることができます。有料プランは1つのIDにつき月1,600円からの設定です。コロナ禍でインフラとして利用する企業が増えています。今後の課題は、新型コロナ収束後も現在のような業績の伸びが期待できるかどうかという点です。

まとめ

グロース株に投資する際には、独自のビジネスモデルを持ち、売上成長率が高い銘柄を選ぶようにしましょう。

テスラやズームの株価には、はっきりとした転換点が確認できます。業績の黒字化やビデオ会議需要の高まりといった分かりやすい株価上昇のサインが、株価急騰の前に出ていました。普段からニュースを意識し、想像力をつけることで資産を大きく形成することが期待できるようになるでしょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。