欧米では株価が上昇し、5月に入って米国のNYダウやイギリスのFT100指数、ドイツのDAX指数などは、過去最高値圏にあります。しかし、日本の株価は上値が重くなっています。この差は、新型コロナワクチン接種率の差が原因の1つと考えられています。
日本株はワクチン接種によってどうなるのか、今後の展望について解説します。
※この記事は2021年5月31日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
1.欧米では新型コロナワクチンの接種が進む
米オックスフォード大学の研究者グループが運営する「アワー・ワールド・イン・データ」で、5月27日時点で少なくとも1回の予防接種を受けた人の割合を見ると、イスラエルが約63%でトップ。そしてイギリスが約57%、ドイツが約42%、米国が約49%となっています。しかし、日本のワクチン接種率は約6%と先進国の中で最低水準です。
接種率が上がると、経済正常化への期待が高まります。英国ではジョンソン首相が、夏までにイングランドの経済活動をコロナ前と同じに戻すことを目指しています。
また米国ではバイデン大統領が、米国の成人の70%が最低1回はワクチンの接種を受けることを目標としており、感染抑制のために導入された行動規制の緩和が進んでいます。フロリダ州は5月3日にコロナ関連の規制をすべて廃止しました。また、5月19日からニューヨーク、コネティカット、ニュージャージー州で集会や商業施設の人数の上限が撤廃されます。
そして、ニューヨーク市のデブラシオ市長は、7月1日に市内の経済活動を全面的に再開する方針を示しています。
2.日本株の出遅れ感が強まる
米国株に比べて日本株の出遅れ感が目立ちます。日経平均株価をNYダウで割った「ND倍率」は、5月11日時点で0.84と2020年11月以来の低水準となりました。2021年になってから0.95倍を超える水準まで上昇していましたが、3月以降に低下しています。
米国では新型コロナウイルスのワクチン接種が進む一方、日本国内では感染者数が増加していることが原因の1つと考えられます。NYダウは5月に過去最高値を更新し、一時35,000ドル台をつけましたが、日経平均株価は3万円を上回るのが厳しい状況です。
日本株の上値を抑えているのが、新型コロナウイルスの感染拡大です。4月には国内の新規感染者数が4,000人を超え、1月以来の水準まで増加しました。
ワクチン接種の進捗度合いによって、国際通貨基金(IMF)の実質国内GDPにも差が出ています。2021年に米国では6.4%の成長を見込むのに対し、日本は3.3%成長に留まるとの見通しをだしているのです。これはドイツの3.6%を下回り、先進国で最低水準。今後の経済や株価の回復は、ワクチン接種率が影響する可能性が高いのです。
3.緊急事態宣言で4月以降の株価は軟調
4月の日経平均株価は、新型コロナウイルス感染拡大によって上値の重い状態となりました。緊急事態宣言の継続と米国株(とくにハイテク株)が一時軟調だったことも影響しています。緊急事態宣言は5月末まで延長されたことに加え、福岡と愛知が新たに加えられました。このため、経済活動の停滞が懸念されています。
今後、株価が上がる要因の一つとしては、国内でのワクチン普及率の上昇があります。ただ、ワクチン接種率が上がらない要因の一つとして、日本ではワクチンを打つことができる医療関係者の数が圧倒的に少ないという点があります。イギリスでは一般のボランティアでも研修を受ければワクチンを打つことができます。また、アメリカでは薬局で薬剤師がワクチンを打つことができる。これがワクチン接種率の大きな違いとなっているのです。
また、脆弱な医療体制にも問題があります。人口当たりの病床数は世界トップレベルですが、新型コロナウイルスの感染拡大のような有事になると、公営病院の割合が低いことから医療がひっ迫してしまうのです。
4.ワクチン接種の出遅れが日本株に与える影響
緊急事態宣言による営業や外出の自粛で、もっとも影響を受けるのが個人消費です。これまでも緊急事態宣言がだされたときは経済状況が悪化しましたが、対象地域が拡大されたことや東京で休業要請が延長されたことで、悪影響が拡大しそうです。
日本の新型コロナウイルスのワクチン接種率が低いということは、集団免疫獲得にも時間がかかるということです。一方、ワクチン接種が進んでいる欧米諸国が集団免疫を獲得すれば、経済の正常化に向かうことになります。
英調査会社エアフィニティーが2020年12月に公表した集団免疫獲得時期の見通しでは、米国が2021年4月、英国が2021年7月、EUが2021年9月となっているのに対し、日本は2022年4月となっており、日本が集団免疫を獲得するには1年近くかかることになるのです。
まとめ
日本経済は新型コロナウイルスの感染が拡大する前から景気は悪化していました。大きな要因は2019年10月の消費税増税です。コロナショックからの景気回復は、「K字型」といわれています。飲食や宿泊などのサービス業での回復が遅れる一方で、人の接触や移動が減ることで恩恵を受ける情報・通信などの産業は大きく回復するので、二極化が進んだ回復になるからです。
ただ、日本でも5月に入るとワクチン接種が進み、ようやく接種率が6%の水準に達しました。10%を超えると株価上昇に弾みがつくとの見方もあるので、接種率の上昇とともに株価上昇が期待されます。
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山下耕太郎
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