米国債券市場では「逆イールド」が発生しており、景気後退の可能性が指摘されています。
この記事では、米国株が下落しやすいタイミングと、リスク回避のための手法について解説します。
※本記事は2023年9月30日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
1.NYダウの13連騰は1987年のブラックマンデー以来
今夏、米株式市場のダウ工業株30種平均(NYダウ)は、2023年7月26日の取引で13営業日連続の値上がりを記録し、1987年1月以来の連騰記録を更新しました。この背景には、米連邦準備制度理事会(FRB)が同日、政策金利を22年ぶりの高水準に引き上げた一方で、パウエル議長が経済の力強さと金融システムの安定性に自信を示したことで、市場関係者は景気の大幅な冷え込みを回避する「ソフトランディング」への期待を強めたことが考えられます。
参照:ロイター「米国株式市場=ほぼ変わらず、ダウは13連騰 FOMC受け」
FRBは26日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を2会合ぶりに0.25%引き上げ、5.25-5.50%としました。これは2001年3月以来の高水準で、市場では今回の利上げがほぼ確実視されていました。
ダウ工業株30種平均は、13連騰の間に約5.3%上昇となっています。しかし、前回の1987年は10月に「ブラックマンデー」と呼ばれる世界同時株安が起きた年でもあり、連騰記録が市場の過熱感を表していないか、市場では警戒感が広がっています。
※図はTradingView[PR]より筆者作成
今後の株式市場の動向については、FRBによる利上げのペースや、米国経済の成長鈍化の程度など、さまざまな要因が影響するとみられています。
2.米債券市場では逆イールドが発生
2023年7月の米国市場では、逆イールドの拡大も話題になりました。7月3日、米国債市場の2年物国債利回りが10年物国債利回りを上回る逆イールドが、1981年以来42年ぶりの高水準に達しました。
逆イールドとは、短めの国債の利回りが長めの国債の利回りよりも高い状態のことです。一般的に、逆イールドは景気後退の予兆と見なされています。
参照:ロイター「情報BOX:米国債の42年ぶり大幅逆イールドが発するメッセージとは」
2年物国債利回りと10年物国債利回りは、2022年7月以降逆転しています。インフレ圧力が高まる中、米連邦準備制度理事会(FRB)が積極的に利上げを進めているためです。今回の逆イールドが景気後退の予兆となるかどうかは、まだ明らかではありません。しかし、逆イールドが広がっていることは、景気後退のリスクが高まっていることを示唆しています。
1978年以降の逆イールド発生から景気後退入りの期間は、以下の通りです。
逆イールド発生 | 景気後退入り |
---|---|
1978年8月 | 1980年1月 |
1980年9月 | 1981年7月 |
1988年12月 | 1990年7月 |
1998年5月 | 2001年3月 |
2005年12月 | 2007年12月 |
2019年8月 | 2020年2月 |
1978年以降、逆イールド発生から平均して約1年半後に景気後退しています。過去の逆イールドは、実際の景気後退の1~2年前に発生しています。たとえば、2000年代初頭のITバブル崩壊や2008年のリーマン・ショック、2020年のコロナショック以前にも逆イールドが発生しています。
参照:三井住友DSアセットマネジメント「米国における逆イールドと景気循環と株価の関係」
逆イールドは必ずしも景気後退を意味するわけではありません。しかし、景気後退の可能性を示す重要な指標の一つです。今回の逆イールドは2022年7月に発生しているので、過去の例を考えると2024年1~3月期に景気後退に陥る可能性があります。
3.10月は暴落が多い?
米国株式市場では10月に暴落することが多くなっています。NYダウが13連騰した1987年10月には「ブラックマンデー」が起きました。
1987年8月に就任したグリーンスパンFRB議長は、9月に利上げに踏み切りました。しかし、ドイツ連銀の利上げや日銀の利上げ観測など、政策の不協和音に嫌気がさした投資家は、株を売り始めました。株価は急落し、「ブラックマンデー」と呼ばれる暴落が発生しました。
また、2008年10月には「リーマン・ショック」が起こっています。米国株が急落すると日本株も下落する傾向にあるので、注意が必要です。
4.CFDでヘッジ売りを入れておく
株価下落対策には、CFDのヘッジ売りが有効です。CFD(差金決済取引)は、取引開始時から取引終了時にかけての差額を決済する取引方法です。CFD取引では、資産自体を保有することはありませんが、マーケットが予想通りに動けば利益を得ることができます。
CFDはデリバティブ(金融派生商品)の一種であり、原資産の価格に連動します。たとえば、IG証券のCFDでは、株式、株価指数、外国為替、商品(コモディティ)など17,000種類以上の銘柄を1つの取引システムで取引可能です。
CFD取引では、資産価格の上下予測で取引します。「買い」(ロング)は価格上昇の予測、「売り」(ショート)は価格下落の予測で取引します。相場予測によって利益または損失が発生し、「売り」から取引できるため下落相場でも利益を狙えます。ただし、「買い」取引と「売り」取引の両方で損失が発生する可能性に注意が必要です。
CFDは、米国株や日本株を保有している場合のヘッジ手段としても有効です。日本株を保有している場合は、日経平均株価に連動するCFDの売りポジションを持てば、日本株の下落に備えられます。
また、ヘッジだけではなく、今後、米国株が下がりそうだと思った場合は、NYダウに連動するCFDの売りポジションを持つことで利益を狙えます。
レバレッジ取引(ポジションに対して少額の証拠金で取引できる)であるため資金効率は良い反面、リスクもあります。仕組みを正確に理解し、リスクを最小限に抑えた取引をしましょう。
5.まとめ
米国の株式市場では10月に暴落することが多く、1987年には「ブラックマンデー」、2008年には「リーマン・ショック」と呼ばれる大暴落が起きました。最近では、米債券市場で逆イールドが発生しており、米景気後退の可能性が高まっています。
株価下落対策には、CFDのヘッジ売りが有効です。ただ、CFDは米国株や日本株を保有している場合のヘッジ手段として役立ちますが、リスクもあるため、正確な理解とリスク管理が必要です。
山下耕太郎
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