この記事では、「ヘッジ」という株式市場で一般的に使われる用語について解説します。ヘッジ取引は、主に現物株式の価格変動リスクを回避するための取引方法です。
知識や経験が必要なため、十分に理解したうえで取り組むことが重要です。本記事では投資のプロである筆者が、ヘッジ取引の具体的な手法や、利用できる証券会社について紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
※本記事は2023年10月6日時点の情報です。最新の情報についてはご自身でもよくお調べください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- ヘッジとは
- ヘッジに利用できる取引手法
2-1.先物取引
2-2.日経225先物取引の概要
2-3.CFD取引 - CFDができる証券会社2社
3-1.GMOクリック証券
3-2.IG証券 - 先物取引やCFDは現物株と損益通算ができない
- 先物取引の利用方法
- まとめ
1.ヘッジとは
ヘッジとは「回避 」を意味する英単語です。ヘッジ取引とは、現物株式の価格変動リスクを回避するために先物取引などを利用する取引のことです。
例えば、現物株を持っている投資家が、将来株価が下落すると予想した場合、現物株を売却する代わりに先物取引を売却することで、現物株の評価損を先物取引の利益でカバーできます。このような取引を「売りヘッジ」といいます。
現物株を購入する資金がなくても、近い将来に資金が確保できる見込みがあれば、株価が上昇する前に先物を買うことができます。このような取引手法を「買いヘッジ」と言います。
ヘッジ取引の主な目的はリスク回避です。しかし、先物取引などでは、相場の動向を予測したり、売買のタイミングを判断したりする知識が必要となるため、十分な知識と経験が身についてから利用しましょう。
またヘッジ取引はリスク回避の手段であるため、利益を上げることが目的ではありません。そのため、ヘッジ取引によるリスク回避が成功しても、先物取引等で発生した利益は現物株式の評価損で相殺されることに注意が必要です。
2.ヘッジに利用できる取引手法
2-1.先物取引
先物取引とは、将来の日付にあらかじめ決められた価格で商品を売買することを約束する取引です。商品先物取引は一般的に原油やとうもろこしを対象としていますが、株式市場でも将来の株価指数(日経平均株価やTOPIXなど)を取引する「株価指数先物取引」があります。先物取引は商品(コモディティ)だけでなく株式市場でも広く利用されています。
先物取引は株取引と異なり、取引できる期間が決まっており、買いだけでなく売りからスタートすることもできます。また、差金決済(売買により生じた差額での取引)を行い、証拠金を担保に取引を行います。
先物は個別株のような銘柄選択が不要で、倒産リスクの軽減が期待でき、相場水準の把握が容易である一方、レバレッジ効果による損失のリスクもあるため、適切な運用が重要です。
2-2.日経225先物取引の概要
先物取引でもっとも流動性が高いのが、「日経225先物」取引です。
日経225先物取引は、日経平均株価を対象とした株価先物取引です。価格を決める段階で売る約束もでき、株価下落を見込んだ取引も可能です。決済によって損益分のみが確定し、証拠金が必要ですが、元本部分の資金が不要なため、資金効率が高くなっています。
「ラージ」「ミニ」「マイクロ」があり、それぞれ取引単位が異なります。ラージは「日経平均株価指数×1,000倍(約3,000万円)」、ミニは「日経平均株価指数×100倍(約300万円)」、マイクロは「日経平均株価指数×10倍(約30万円)」です。「ミニ」や「マイクロ」は取引単位が小さいため、初心者にも始めやすいでしょう。
2023年10月6日時点では、取引に必要な証拠金は「ラージ(1,440,000円)」「ミニ(144,000円)」「マイクロ(14,400円)」となっています。たとえば、「マイクロ」では、14,400円の証拠金で30万円分の取引ができるのです(レバレッジ約21倍)。
日経225先物取引では、SBI証券が利用を検討してみてはいかがでしょうか。SBI証券の先物取引口座を開設すると、「HYPER SBI」というリアルタイムの取引ツールが無料で利用できます。
HYPER SBIは、取引に必要な情報収集から注文までまとめて行え、ドラッグ&ドロップで注文の発注・取消ができるため、先物取引経験が浅い方でもスムーズに取引ができます。また、最良気配を確認しながら最短ワンクリックで注文できるため、スピード発注にも適しています。
2-3.CFD取引
CFDもヘッジ取引に利用できます。CFDは、1つの口座で金、原油、株価指数先物、外国株式などに投資できます。差金決済取引を行うため、利益または損失が出た場合、利益分または損失分のみを支払います。
証拠金を預けることで、手持ち資金よりも大きな金額で取引でき(レバレッジ取引)、平日のほぼ24時間取引可能です。取引手数料の支払いは不要で、好きな時に自由に取引できます。
売りから取引を開始でき、先物取引のような期限はありません。日経平均株価を対象にしたCFDもあるので、先物取引の代わりに取引してもいいでしょう。株価指数CFDではレバレッジ10倍、商品CFDではレバレッジ20倍の取引が可能です。
「先物よりも幅広い銘柄を取引したい」「期限を気にせず取引したい」という投資家には、CFD取引の利用を検討してみてはいかがでしょうか。
CFDと先物、現物取引の違いは、以下の通りです。
CFD | 先物取引 | 現物 | |
---|---|---|---|
売買方法 | 買/売 | 買/売 | 買いのみ |
レバレッジ | 10~20倍(※) | 20~30倍 | なし |
手数料 | なし(スプレッドはあり) | あり | あり |
決済期限 | なし | あり | なし |
(※)株価指数CFD10倍、商品CFD20倍
3.CFDができる証券会社2社
3-1.GMOクリック証券
GMOクリック証券では、CFD一つの口座で、商品(コモディティ)、株価指数、外国株式など、さまざまな資産に投資できます。とくに、日経平均株価を対象にした「日経225」、NYダウを対象にした「米国30」、WTI原油先物を対象にした「WTI原油」、ロコ・ロンドン・スポット市場を対象にした「金スポット」が人気です。
3-2.IG証券
IG証券のCFD口座は、FX、株価指数、個別株、商品、債券先物など幅広い金融銘柄を取引できます。IG証券は世界第一位のCFDプロバイダーで、グローバル金融市場のトレード機会に簡単にアクセスでき、レバレッジ取引により効率的な投資が可能です。
24時間、世界の主要な株価指数を取引することが可能で、スポット金のスプレッドは0.3ポイントです。また、他の貴金属、エネルギー、穀物などのソフトコモディティも提供しています。
多くの銘柄を取引したい人にメリットのある証券会社です。
4.先物取引やCFDは現物株と損益通算ができない
先物取引やCFD利益が出た場合、確定申告の必要があります。税率は20.315%で、先物とCFDでは損益通算が可能です。しかし、現物株や投資信託とは損益通算できないので、注意してください。
現物株のヘッジについては、先物を利用することが一般的です。しかし、現物株のヘッジで先物を利用しても、損益通算ができず、税金の負担が増えるというデメリットがあります。
5.先物取引の利用方法
先物取引の具体的な利用方法について、具体例を用いて解説します。
Aさんは5銘柄の個別株を持っています。現在の時価総額は約2,000万円です。同じ5銘柄を長年保有しており、日経平均株価が変動すると自分のポートフォリオもだいたい同じくらい変動することを知っています。
相場の下落を予想したAさんは、将来の損失を防ぐために日経225ミニを価格30,000円で6枚(1,800万円相当)売建てて売りヘッジを行いました。その後、相場が下落したため、先物を買い戻してポートフォリオの損失を相殺しました。ポイントは、現物株と先物の金額をほぼ同じにすることです(約2000万円)。
このように、長期保有でも先物を利用することで、下落相場での損失の軽減を期待できます。
6.まとめ
この記事では、主に株式市場における「ヘッジ」という取引方法について解説しました。現物株式の価格変動リスク回避のために利用されるヘッジ取引には、先物取引やCFD取引などがあります。これらの取引方法にはリスクも伴いますが、適切な運用方法を学ぶことで、ポートフォリオ全体のリスクを軽減できる可能性があります。
また、ヘッジ取引の手法やおすすめの証券会社についても紹介しています。現物株を保有している方は、この記事を参考にして、自分にとって最適なヘッジ取引を行ってみてはいかがでしょうか。
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山下耕太郎
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