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Polygonとは?
「Polygon」は、イーサリアムのスケーラビリティの問題を解決する目的で生まれたイーサリアムのサイドチェーンです。
イーサリアムはブロックチェーンの中でも非常に人気があり、強力な開発者コミュニティと豊富なDAppsエコシステムが存在していますが、幾つかの大きな課題を抱えています。その1つが”スケーラビリティ問題”です。処理スピードとガス代の観点から、NFT・Dapps・GameFi・DeFi等でユーザー数と取引数が多い場合の利用が難しいとされ、イーサリアムを保管する形でスケーラビリティを確保するL2チェーンが誕生しました。
ここではL2チェーンの詳細を説明しませんが、その流れで誕生したものがPolygonです。なお、正確に言えばPolygonはL2チェーンと呼ばれることもありますが、Polygon自体が独立して存在する1つのチェーンであることからサイドチェーンと呼ばれることも多いので、この記事ではサイドチェーンとして表記させていただきます。では、そんなPolygonの特徴とここまでの変遷を簡単に説明します。
特徴
Polygonチェーンの特徴を簡単に見ていきます。
- 高速&低コスト
Polygonチェーンは、PoSを採用しており、トランザクションを非常に高速で処理する能力があります。Polygonscanによると、2023年4月時点でのポリゴンの手数料はイーサリアムの7分の1以下とされています。 - セキュリティ
Polygonは自身のPoSベースのセキュリティアーキテクチャを持つとともに、イーサリアムメインネットのセキュリティを借りることもできます。 - イーサリアムとの互換性
イーサリアムのサイドチェーンとして存在するので、イーサリアムと完全な互換性を持っています。そのため、イーサリアムエコシステムへのアクセスが容易に行えます。 - カーボンネガティブ
Polygonは2022年4月に「Green Manifesto」を発表し、2022年中にカーボンネガティブなチェーンへ移行することを発表しました。この辺りの環境への配慮とReFiとの関わりについては後ほど詳しく解説します。
Polygonはこれらの特徴を持つことから、大企業での採用が多いことでも知られています。スターバックスオデッセイやNike、ディズニー等でのweb3プロダクトの基盤として利用されています。それは高速なトランザクションと低いガス代と高度なセキュリティに加え、環境への負荷が低いことも大きな理由となっています。実際にスタバはその発表の中でPolygonチェーンを採用した理由を環境負荷を考えた結果とハッキリとコメントしています。大企業もカーボンニュートラルが求められる中で、Polygonはweb3領域においてその需要を満たすために注力していることがわかります。
Polygonの変遷
続いて、ここまでの変遷を見ていきます。元々Polygonは「Matic Network」という名称で2017年に設立され、2020年にメインネットがローンチされました。その目的は、イーサリアム上でのトランザクションを高速化し、より多くのトランザクションを効率的に処理することです。その後、ブロックチェーン技術とイーサリアムエコシステムの進化と共に、Maticのビジョンも拡大しました。この成長と変化を反映させるために、2021年にMatic Networkは「Polygon」として再ブランディングされました。
2023年6月には「Polygon2.0」と題した発表が行われました。これはPolygonの次のロードマップを示すものであり、ゼロ知識証明を活用したブロックチェーン基盤「Polygon zkEVM」の拡大や独自トークンを「MATIC」から「POL」へと変更させるなど、幾つかの大きな指針が示されました。
また、「Polygon zkEVM」を基盤として、ゼロ知識証明を活用したイーサリアムのL2チェーンの構築ソリューションとして「Polygon CDK」が発表され、それを利用してAstarが「Astar zkEVM」を構築することを発表し話題となりました。
設立から変わらないのはイーサリアムをインターネットの規模に引き上げること(イーサリアムエコシステムの拡大)で、Polygon2.0の発表でもそのミッションはブレずに語られていました。
PolygonとReFiの関係
ではここからはPolygonとReFiの関係について見ていきます。
先述した通り、Polygonは環境問題の解決に非常に力を入れています。まずはPoSを採用した高速なトランザクションと低コストのガス代によって、そもそもの電力消費が少ないことが特徴として挙げられます。そして、それに加えて2022年4月に「Our Green Manifesto」と題したブログを公開し、カーボンネガティブなチェーンとなることを約束しました。
Polygonはこの発表の中で、ブロックチェーンが次なるインターネット基盤となることへの期待と共に、人類が気候変動や環境破壊に向き合う必要があることを説明しました。よって、Polygonはブロックチェーンプロジェクトの中でも模範的な存在となることを目指し、気候変動に前向きなブロックチェーンとなる最初のブロックチェーンとなるよう取り組んでいくことを宣言しました。宣言以降、Polygonの専用ページ上にPolygonエコシステムにおける毎日の電力消費量とCO2排出量換算が表示されています。これらをオフセットしてカーボンネガティブとします。
そして、積極的にReFiプロジェクトへアプローチし、基盤チェーンとしての採用が加速しています。NoriやKlimaDAO等のReFiを代表するプレイヤーもPolygonを採用しています。
ReFiプロジェクトのミッションは、再生可能エネルギーの普及と環境保護など社会課題の解決です。そのため、ブロックチェーン自体も環境にやさしい特性を持っていることが望まれます。
Polygonの特徴は、ReFiプロジェクトの環境保護という目標と一致しています。ReFiプロジェクトが、自らのミッションと矛盾する高エネルギー消費のプラットフォーム上で展開されるのは皮肉なことです。そのため、Polygonのような環境にやさしいブロックチェーンは、ReFiプロジェクトにとって理想的な場となり、親和性が高いです。
ReFiプロジェクトと採用するブロックチェーンの関係
以上、Polygon自体の概要とReFi文脈から見るPolygonとの親和性について解説してきました。最後に「ReFiプロジェクトと採用するチェーンの関係」について整理します。ReFiは、ブロックチェーン技術の進展と共に、近年のエネルギー・金融業界における注目のトピックとなっています。ブロックチェーン技術と再生可能エネルギーは、一見相反するもののように感じられるかもしれません。
現在のブロックチェーンエコシステムはエネルギー消費の問題に直面しています。これは特にビットコインのようなPoWを使用するチェーンに顕著です。これらのネットワークのエネルギー消費は一部の国々のそれを上回るとも言われており、持続可能性という観点からは大きな課題となっています。その問題点が指摘され、イーサリアムもPoSへ移行するなど、電力消費の問題は是正されつつありますが、以前として問題は存在します。
ReFiプロジェクトがブロックチェーン技術を活用する際の最大の課題は、この矛盾です。ReFiプロジェクトが、エネルギーを大量に消費するプラットフォーム上で動作するのは、その目標と相反してしまいます。 しかし、Polygonのようなブロックチェーンはその答えを示しています。PoSやその他のエネルギー効率の良いコンセンサスメカニズムを採用することで、ブロックチェーンの持つセキュリティや分散性といった利点を維持しつつ、エネルギー消費を大幅に削減することが可能です。また、Polygonの他にもNEAR ProtocolやKYOTO Prototolといったカーボンネガティブで気候変動対策に注力するチェーンも続々と誕生しています。
環境保護と技術革新は必ずしも相反するものではありません。むしろ、Polygonのようなプラットフォームを通じて、両方の目標を同時に追求することが示されています。ReFiの未来を築くためには、ReFiプロジェクトがPolygonのような環境にやさしいブロックチェーン技術の採用を深めていくことが不可欠です。この相互作用により、次世代の金融とエネルギーのエコシステムが持続可能なものとして発展していくと予想されます。
mitsui
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