米国のバリュー株を見極める方法は?人気の銘柄も解説

株を分類する方法のひとつに、グロース株とバリュー株に分ける方法があります。グロース株とは成長企業銘柄のことで、バリュー株は企業の価値が利益や資産価値に対し割安な銘柄のことです。

グロース株は短期間に株価が2倍、3倍に上昇することがありますが、バリュー株には短期間に株価が急騰することはほとんどありません。そんなバリュー株ですが良い面があります。割安であるが故に、下値硬直性があるということです。相場が過熱している状況で、暴落が起きた場合にすでに割高なグロース株は下落率がバリュー株を大きく上回ります。

バリュー株の基準としては、S&Pなどの指数のPERやPBR、配当利回りと比較し、PERやPBRが低く、配当利回りが高いことが挙げられます。企業としては成熟しているので業績の成長率が低く、そのため株価は低迷しがちです。地味なイメージのバリュー株ですが、企業によっては配当金が増額され、株価の上昇も期待できる銘柄があります。

そこで今回は従来のPERやPBR、配当利回りだけでなく、配当成長率や売上成長なども加味し、米国のバリュー銘柄を見極める方法や人気の銘柄を解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。

目次

  1. バリュー株を見極めるには(従来の方法)
    1-1.予想PERが低い
    1-2.配当利回りが高い
    1-3.PBRが低い
  2. 従来のバリュー株
    2-1.AT&T
    2-2.ベライゾン・コミュニケーションズ
  3. バリュー株の追加基準
    3-1.配当成長率が高い
    3-2.売上成長率が高い
  4. 新基準のバリュー株
    4-1.アッヴィ
    4-2.ブリストル・マイヤーズ・スクイブ
    4-3.ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス
    4-4.エジソン・インターナショナル
    4-5.上記銘柄の過去5年の標準偏差と上昇率
  5. まとめ

1 バリュー株を見極めるには(従来の方法)

バリュー株の尺度として、従来からPER、PBRや配当利回りが用いられています。これらの数値が同業他社や指数よりも高いか低いかで、バリュー株かどうかが相対的に判断されます。

1-1 予想PERが低い

バリュー株の最初の条件として、予想PERが低いことが挙げられます。PERとは、企業の純利益を発行済み株数で割った一株当たり利益を株価で除した値です。株価が純利益の何倍(何年分)買われているかを表し、低いほど割安とされています。

予想PERは予想利益率を基に算出されます。2021年7月26日時点のS&P500指数の予想PERは約23倍です。そのため相対的な基準として、予想PERが15倍未満の銘柄は指数と比較し割安な水準と言えます。

1-2 配当利回りが高い

バリュー株の特徴として、高い配当利回りが挙げられます。配当利回りは配当金額を株価で割って求めます。7月26日時点の配当利回りはS&P500指数が約1.3%、ダウ平均が約1.7%。これら指数の配当利回りと比較し、4%を超えている銘柄は高配当銘柄と言えます。

1-3 PBRが低い

バリュー株のもうひとつの特徴として、PBR(純資産倍率)が低いことが挙げられます。株価が1株当たり純資産の何倍まで買われているかを表します。小さい値ほど割安とされ、中には1倍を下回っている銘柄もあります。

理論上はPBRが1倍未満の銘柄は企業の解散価値を下回っていることになります。ただPBRはあくまでも理論的なものであり、市場では1倍を下回っている銘柄が多数あります。

2 旧基準のバリュー株

上記基準のバリュー株に該当する米国株の代表的存在がAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズです。

2-1 AT&T<ティッカー:T>

AT&Tは米国最大の電話会社で、グラハム・ベルが創業したベル電話会社が前身です。年間売上高は約19兆円、従業員数22.5万人の巨大企業です。今年7月26日時点の株価は28.18ドル、予想PERが8.69倍、PBRが1.15倍、配当利回りが7.38%、時価総額は約22兆円です。

2-2 ベライゾン・コミュニケーションズ<ティッカー:VZ>

ベライゾン・コミュニケーションズも大手通信企業です。持株会社で、子会社を通して消費者や企業に、通信、情報などのサービスを提供しています。

年間売上高は約13兆円、従業員数は1.3万人に上ります。今年7月26日時点の株価は55.78ドル、予想PERが10.5倍、PBRが2.89倍、配当利回りが4.5%、時価総額が約25兆円です。

3 バリュー株の追加基準

上記のほかにもバリュー株を見極めるための基準があります。

3-1 配当成長率

配当成長率とは配当金額の増加率のことです。米国企業では、配当金が継続的に増える銘柄が珍しくありません。中には60年以上も連続で増配している会社もあります。この手の銘柄の配当利回りは高いとは言えないものの、配当金が増加することで配当利回り(簿価基準)が上昇します。

3-2 売上成長率

売上が順調に伸びれば、配当金の原資が増加します。また、業績が成長することで株価の上昇も期待できます。従来、配当利回りが高い企業は株価の成績が指数を下回る傾向がありましたが、売上成長率が高い銘柄は指数を上回る傾向があります。

4 新基準のバリュー株

配当成長率や売上成長率を基準に見た主要バリュー米国株の一例をご紹介します。

4-1 アッヴィ<ティッカー:ABBV>

アッヴィは、米国の神経系疾患など特殊治療を要する分野の薬品を手掛ける医薬品メーカーです。従業員数は4.8万人、年間売上高が約5兆円の大企業です。

株価が117.80ドル、予想PERは9.37倍、PBRが10.4倍、配当利回りが4.4%、時価総額は約23兆円です。過去5年の配当成長率は18%、5年の平均売上成長率も18%と成長過程にあります。

4-2 ブリストル・マイヤーズ・スクイブ<ティッカー:BMY>

ブリストル・マイヤーズ・スクイブは世界的なバイオ医薬品会社で、医薬品や栄養サプリメントの開発と販売などに従事し、年間売上高は約5兆円です。

株価が67.70ドル、予想PERは9.0倍、PBRが4.05倍、配当利回りが2.9%、時価総額は16.5兆円です。過去5年の配当成長率は4.9%、5年の平均売上成長率が23%と成長過程にあります。

4-3 ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス<ティッカー:WBA>

ウォルグリーン・ブーツ・アライアンスは世界最大のドラッグストアチェーンで年間売上高は約15兆円、従業員33万人の大企業です。

同社の株はダウ工業株30種平均に採用されており、株価が47.25ドル、予想PERは9.8倍、PBRが1.8倍、配当利回りが4.0%で時価総額は約4.5兆円です。過去5年の配当成長率は5.3%、5年の平均売上成長率が3.4%です。

4-4 エジソン・インターナショナル<EIX>

エジソン・インターナショナルは子会社を通じ、発電所事業を世界各地で手掛けています。

売上高は1.5兆円、従業員が1.3万人です。時価総額は約2.3兆円、株価が55.5ドル、予想PERは12.61倍、PBRが1.42倍で、過去5年の配当成長率が7.1%、5年平均売上成長率が4.0%です。

上記6銘柄のデータ(2021年7月26日時点)

銘柄 株価 (ドル) PBR(倍) 予想PER(倍) 配当利回り(%) 過去5年の配当成長率(%) 5年間平均売上成長率(%)
AT&T 28.18 1.15 8.69 7.38 1.72 2.03
ベライゾン・コミュニケーションズ 55.78 2.89 10.60 4.50 2.12 2.18
アッヴィ 117.79 10.40 9.37 4.41 18.01 18.16
ブリストル マイヤーズ スクイブ 67.69 4.05 9.07 2.90 4.92 23.29
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス 47.25 1.83 9.78 4.04 5.36 3.34
エジソン・インターナショナル 55.49 1.42 12.24 4.78 7.16 4.01

4-5 上記銘柄の過去5年の標準偏差と上昇率

2016年7月28日から2021年7月27日の5年間におけるS&P500指数の上昇率は102.5%です。これに対し、従来のバリュー銘柄基準として取り上げたAT&Tやベライゾン・コミュニケーションズの上昇率はベライゾンが26.6%、AT&Tに至ってはマイナス12.2%です。

AT&Tの過去5年の株価平均は28.88ドル、高値が35.25ドル、安値が22.39ドル、標準偏差が2.44ドルでした。つまり。過去5年のうち68%の株価が26.44ドルから31.32ドルの間で推移していたことになります(平均28.88ドル±標準偏差2.44ドル)。

結果的に高利回りの要因として考えられるのは株価の低迷です。現状の配当金が維持されれば利回り狙いの株価としての妙味はあります。しかし、株としての魅力には欠けてしまいます。

一方、配当成長率や売上成長率を従来のバリュー株基準に追加した銘柄のなかには、指数の上昇率を上回る銘柄もあります。アッヴィの上昇率は123%と、S&P500指数の102.5%を20ポイント以上上回りました。

アッヴィの過去5年の平均値は76.84ドル、高値が118.67ドル、安値が44.28ドル、標準偏差は17.82ドルでした。標準偏差のレンジは59.02ドルから94.66ドルです。期待値が高い銘柄ほど標準偏差が大きくなります。同社の配当成長率や売上成長率はともに高いことが背景にあります。

5年間(2016年7月28日~2021年7月27日)の上昇率や標準偏差

銘柄 価格(ドル) 過去5年のリターン(%) 平均値(ドル) 高値 (ドル) 安値 (ドル) 標準偏差(ドル)
AT&T 28.20 -12.22 28.88 35.25 22.39 2.44
ベライゾン・コミュニケーションズ 56.20 26.61 48.68 59.96 35.92 6.7
アッヴィ 117.96 123.4 76.84 118.67 44.28 17.82
ブリストル マイヤーズ スクイブ 67.49 4.55 52.23 68.53 39.93 6.73
ウォルグリーン・ブーツ・アライアンス 46.82 -31.8 57.45 78.7 32.37 11.89
エジソン・インターナショナル 57.15 -11 59.76 73.68 40.56 6.15

まとめ

バリュー株はグロース株のように短期での上昇は期待できないものの、割安な水準に放置されているため相場全体の下落時に強みを発揮します。注意点は投資家の多くが配当金目的で投資しているため、配当金が減額されると株価が大きく下落することです。

企業が成長していれば、配当金の減額リスクは抑えられます。そのため、従来の予想PERやPBRが指数より低く、配当利回りが高いという条件に、配当成長率や売上成長率を加えることでバリュー株の中でも株価の上昇に期待がもてる銘柄に投資できるのです。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。