不動産投資型クラウドファンディングは、契約類型によって「任意組合型」「匿名組合型」「賃貸型」の3タイプに分類されます。それぞれ特徴やメリット・デメリットが異なるため、内容を理解したうえで資産運用に活用するファンドを選択することが大切です。
本記事では、不動産投資型クラウドファンディングの3つの契約類型の違いについて紹介します。
目次
1.不動産投資型クラウドファンディングとは
不動産投資型クラウドファンディングとは、一般の投資家から出資を募り、事業者がその資金をもとにして不動産の取得・運営を行い、それによって得られた利益は各投資家に分配される仕組みの金融商品です。
不動産投資型クラウドファンディングでは事業者に運営を任せられるため、通常の不動産投資における修繕や入居者管理などが不要で、手間やコストを省きながら不動産に投資することができます。
2.不動産投資型クラウドファンディングには3つのタイプがある
不動産投資型クラウドファンディングは「不動産特定共同事業法」という法律の下に生み出されました。そして、同法上によって3つの契約類型が認められています。
- 任意組合型
- 匿名組合型
- 賃貸型(賃貸借型)
不動産投資型クラウドファンディングは、契約の種類によって上記3つのタイプに分類されます。特徴やメリット・デメリットが異なるため、それぞれをよく理解したうえで、自分に合ったタイプを選択してみましょう。
2-1.任意組合型
任意組合とは、複数の投資家が出資したうえで「共同で事業を行うことを約束する契約」のことをいいます。任意組合契約では、事業者も含めたすべての組合員が1つの組合契約を結びます。
また、任意組合には現物出資型と金銭出資型という2つのタイプがあり、不動産投資型クラウドファンディングではほとんどが金銭出資型となります。
任意組合型では投資家と事業者は対等
任意組合契約では、投資家と事業者において共同で事業を行うことを約束します。そのため、事業から発生する損益がどこに帰属するかという点において、投資家と事業者は対等な立場となります。
任意組合型の不動産投資型クラウドファンディングでは、任意組合員である投資家が事業者に業務の執行を委任し、事業者が「業務執行組合員」として事業運営を行います。
また、組合の業務の執行は組合員の過半数によって決定するなど、投資家にも運営に対する権限が存在します。ただし、契約上で業務の執行を何人かに任せている場合、委任した人数の過半数で決定されます。
任意組合型の不動産登記上の特徴
任意組合型では、基本的に不動産の所有権を組合員(投資家と事業者)が共有することになります。また、現物出資型では、組合員が出資を行ったうえに、組合に対して現物出資の登記を行います。つまり、投資家が不動産を実際に保有することになります。
一方、金銭出資型では、不動産登記を行わないという選択が可能です。登記を行う場合は投資家がコストを負担します。
任意組合型は無限責任
任意組合型の大きな特徴の1つが、出資割合に対して無限責任を負うということです。そのため、事業運営によって損失が生じた場合、出資金以上の債務を抱えてしまう可能性があります。
例えば、出資額100万円、出資割合1%、1億5,000万円の債務が発生した場合、1億5,000万円×1%=150万円となり、出資額100万円に対して150万円の債務が発生することになります。
任意組合型の不動産投資型クラウドファンディングを利用する場合、無限責任であることに注意が必要です。
任意組合型は持分割合に応じて不動産を所有できる
任意組合型では、組合員が持分に応じた不動産を所有することになり、税務上は現物不動産を保有しているのと同じ扱いとなります。
不動産を相続・贈与する場合、相続税の評価額は不動産の実勢価格(不動産が売買される価格)の約7割程度になる傾向にあります。このような現金と不動産評価の価格差を利用し、課税額の減額を検討することが可能です。
2-2.匿名組合型
匿名組合とは、出資の際に利用される商法上の契約の一種で、商法第535条に「当事者の一方が相手方の営業のために出資をし、その営業から生ずる利益を分配することを約することによって、その効力を生ずる」と規定されています。
投資家は事業者に対して出資を行い、見返りとして事業の収益を分配してもらう権利を得ます。出資したお金は事業者に帰属し、事業者は出資をもとに不動産の取得・管理・運営などの事業を行い、不動産の売却益や賃貸収入などの収益を投資家に分配します。
不動産特定共同事業法に基づく不動産クラウドファンディングで、多く用いられている契約方法が匿名組合型です。
匿名組合型では投資家の権限がない
匿名組合契約では、投資家は匿名組合員として出資を行います。ただし、投資家は重要事項や運用方針の決定に携わる権限を持ちません。事業者は独立性を維持されるので、事業の運営に集中することになります。
また、匿名組合契約では投資家と事業者の「二者間の契約」となり、双方が1対1で契約を結びます。それぞれの投資家が独立して事業者と契約するため、投資家が組合員として他の投資家とつながることはありません。
匿名組合型の不動産登記の特徴
匿名組合型では、投資対象不動産の所有権は事業者に帰属することになり、不動産登記も事業者が行います。投資家は出資する代わりに収益を得る権利を得ますが、不動産登記を行うことはありません。そのため、不動産登記簿上に投資家の名前が載ることはありません。
匿名組合型は有限責任
匿名組合契約では、契約が満了した際に、事業者は投資家に対して出資金を返還する義務があります。仮に、運営事業で損失が発生した場合、投資家の責任は有限となっており、出資金以上の債務を負うことはありません。
匿名組合型は不動産を所有することが出来ない
匿名組合型は不動産を実際に所有するのではなく、出資により収益を得る権利を得ていることになります。匿名組合契約に基づく不動産小口化商品では投資家は不動産を所有しておらず、出資した金額がそのまま相続税の評価額となります。
そのため、匿名組合契約での不動産投資型クラウドファンディングでは、不動産を所有した場合に受けられる税制上のメリットを受けることが出来なくなります。
2-3.賃貸型(賃貸借型)
賃貸型(賃貸借型)とは、複数の投資家が投資対象不動産の持分を購入してから、事業者と賃貸借契約を結び、投資家の所有する権利を事業者に貸し出したり、不動産賃貸を委託したりする契約をいいます。
事業者は賃貸した物件を運営し、賃貸収入や投資運用での利益を各投資家に分配します。また、物件の所有権は出資している投資家の間でのみ共有されるため、投資家は不動産を保有することになり、分配金は不動産所得とみなされます。
賃貸型の特徴
賃貸型では、投資家が不動産の持分を保有するため、不動産登記簿に投資家の名前が記されることになります。
また、賃貸型における利益は税制上不動産所得となるため、条件を満たせば青色申告時の65万円の特別控除が受けられる可能性があります。
一方、不動産投資型クラウドファンディング市場において賃貸型の商品は非常に少なく、一般の方にとって投資できる機会が限られているのが現状です。
3.任意組合型と匿名組合型の比較
不動産投資型クラウドファンディングを利用する場合、任意組合と匿名組合の特徴や違いを理解しておきましょう。下記、それぞれの違いをまとめた表です。
任意組合 | 匿名組合 | |
---|---|---|
責任の範囲 | 無限(出資比率に応じる) | 有限(出資分のみ) |
不動産登記 | あり(現物出資型) なし(金銭出資型) ※業務執行組合員が代表して行う |
なし |
経営上の権利 | あり | なし |
匿名性 | なし | あり |
出資金額 | 100万円以上が多い | 数万円から |
不動産投資型クラウドファンディングを利用する場合、不動産の所有を希望する場合は「任意組合契約」のファンド、リスクを抑えて手間を掛けずに運用することを希望する場合は「匿名組合契約」のファンドの利用を検討してみるといいでしょう。
ただし、任意組合契約の場合、無限責任となることについては、十分に考慮しておきましょう。
まとめ
今回は不動産投資型クラウドファンディングの任意組合型、匿名組合型、賃貸型の違いについて紹介しました。
同じ不動産投資型クラウドファンディングでも、契約類型によって特徴が大きく異なります。特に、任意組合型では実際に不動産を所有することができるメリットがあるものの、無限責任となり債務が発生する可能性があるということは、理解しておく要があります。
不動産投資型クラウドファンディングでの投資を検討している方は、本記事で紹介した3つのタイプの違いについて理解し、自分に合ったサービス・ファンドを探してみましょう。
山本 将弘
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