米国の旅行・宿泊市場で注目の株式・投信・ETFは?

※ このページには広告・PRが含まれています

コロナ感染拡大により低迷していた米国の旅行・宿泊市場に少しづつ回復の兆しがみえてきました。

2021年4~6月期決算では米国ホテル大手3社のうち2社の最終損益が黒字に転じました。業績を押し上げたのは、コロナ感染者の伸びが鈍化したことが背景にあります。8月以降はデルタ株が猛威を振るい、感染者が拡大傾向にありますが、感染拡大が収まれば再び国内旅行者数が増え関連企業の業績回復につながると考えられます。

そこで、コロナ収束後に注目される米国の旅行・宿泊市場の株式・投信・ETFなどについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年9月15日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 新型コロナ感染とワクチン接種率
  2. 米国ホテル大手の業績と株価
    2-1.2021年4-6月期業績
    2-2.ホテル関連銘柄の株価推移
  3. 注目される旅行関連銘柄
    3-1.エアビーアンドビー(ABNB)
    3-2.ブッキング・ホールディングス(BKNG)
    3-3.トラベル・アンド・レジャー(TNL)
    3-4.サウスウエスト航空(LUV)
  4. ホテルREIT
    4-1.ホスト・ホテル・アンド・リゾート(HST)
    4-2.アップルホスピタリティREIT(APLE)
    4-3.サンストーン・ホテル・インベスターズ(SHO)
  5. 旅行・宿泊業界のETF
    5-1.ETFMGトラベルテックETF(AWAY)
    5-2.デファイナンスホテル、エアライン・アンド・クルーズETF(CRUZ)
    5-3.ソニックシェアーズ・エアライン・ホテルETF(TRYP)
    5-4.アドバイサーシャアーズ・ホテルETF(BEFZ)
  6. まとめ

1 新型コロナ感染とワクチン接種率

米国では新型コロナワクチン接種率が上昇したことを背景に、新規感染者数は2021年4月から8月にかけて減りました。夏休みと重なったため、この時期には国内旅行を中心とした旅行需要が増え、ホテル業界はじめ関連企業の業績を押し上げました。

2 米国ホテル大手の業績と株価

コロナ禍による激動のさ中にあるホテル業界ですが、大手企業の業績と株価の状況について見てみましょう。

2-1 2021年4~6月期の業績

米国ホテル大手3社(マリオット・インターナショナル、ヒルトン・ワールドワイド、ハイアット・ホテルズ)が発表した2021年4~6月期決算では、マリオットとヒルトンの2社で最終損益が黒字に転じました。ハイアットは最終赤字でしたが、赤字幅が前年同期の2億3,600万ドルから900万ドルに減少しました。

*希薄化後の一株当たり純利益(EPS)はヒルトンが0.46ドル(前年同期マイナス1.55ドル)、マリオットが1.29ドルと(同マイナス0.72ドル)プラスとなり、ハイアットはマイナス2.33ドルからマイナス0.08ドルに改善しました。大手3社よりも早い時期に純利益がプラスに転じたチョイスホテルズインターナショナルは、2021年3月期の0.4ドルから1.53ドルに上昇しました。

*希薄化後の一株当たり純利益:転換社債やストックオプションなどが株式に転換された(≒発行済み株式数が増えた)と仮定した場合の一株当たり純利益のこと

大手ホテル4社の各期における純利益と希薄化後EPS

純利益(百万ドル)

銘柄 2021年
4~6月
2021年
1~3月
2020年
10~12月
2020年
7~9月
2020年
4~6月
ヒルトン 130 -108 -224 -79 -430
マリオット 422 -11 -164 100 -234
ハイアット -9 -304 -203 -161 -236
チョイスホテルズインターナショナル 85.8 23.3 7.8 14.5 -2.4

希薄化後EPS(ドル)

銘柄 2021年
4~6月
2021年
1~3月
2020年
10~12月
2020年
7~9月
2020年
4~6月
ヒルトン 0.46 -0.39 -0.8 -0.28 -1.55
マリオット 1.29 -0.03 -0.5 0.31 -0.72
ハイアット -0.08 -2.99 -2 -1.59 -2.33
チョイスホテルズインターナショナル 1.53 0.4 0.14 0.26 -0.04

2-2 ホテル関連銘柄の株価推移

新型コロナの世界的な感染拡大が始まった2020年1月3日時点の株価を100とした場合、2021年9月15日時点の水準はヒルトンが120.03、マリオットは95.73、ハイアットが84.64、チョイスホテルズインターナショナルは118.49という水準です。ヒルトンとチョイスホテルズインターナショナルの株価は年初の水準を上回る水準まで上昇しています。

3 注目される旅行関連銘柄

旅行関連の銘柄として、以下の銘柄も注目されます。

3-1 エアビーアンドビー(ABNB)

エアビーアンドビーは宿泊や体験の予約サイトを運営しています。2021年4~6月の売上高は、前期比約4倍の13.35億ドルです。純利益はマイナス6,800万ドルと依然マイナスですが、前年同期のマイナス5.75億ドルから大きく改善しています。

3-2 ブッキング・ホールディングス(BKNG)

ブッキング・ホールディングスはオンライン旅行会社です。2021年4~6月の売上高は21.6億ドルと前年同期の3.4倍に拡大しました。純利益は1.22億ドルと前年同期のマイナス1.67ドルからプラスに転換しました。

3-3 トラベル・アンド・レジャー(TNL)

トラベル・アンド・レジャーは貸別荘やリゾート施設の運営会社です。2021年4~6月の売上高は7.97億ドルと前年同期3.43億ドルから倍増しました。純利益は1.64億ドルの赤字から7,200万ドルの黒字に転換しました。

3-4 サウスウエスト航空(LUV)

大手格安航空会社サウスウエスト航空の2021年4~6月期の決算は、売上高が前年同期比の約4倍にあたる40億800万ドル(前年同期は10億800万ドル)、純利益は3億4,800万ドルと前年同期のマイナス9億1,500万ドルから大きく改善しました。

増収増益の要因は、旅客数が前年同期の約5倍に相当する2,615万人(前年同期525万人)に増加したためです。コロナ感染が収束に向かえば国内旅行の需要が高まるため、国内線を中心に運営している同社にとってプラス材料と考えられます。

4社の2021年4~6月期の売上高と純利益

売上高(百万ドル)

銘柄 2021年4~6月 2020年4~6月
エアビーアンドビー 1,335.19 334.77
ブッキング・ホールディングス 2,160.00 630
トラベル・アンド・レジャー 797 343
サウスウエスト航空 4,008 1,008

純利益(百万ドル)

銘柄 2021年4~6月 2020年4~6月
エアビーアンドビー -68.21 -575.58
ブッキング・ホールディングス 122 -167
トラベル・アンド・レジャー 72 -164
サウスウエスト航空 349 -915

なお、4社の株価は、新型コロナ感染拡大以前の水準を既に回復しています。2019年末の株価を100とすると、2021年9月15日時点ではエアビーが119.47、ブッキング・ホールディングスは115.03、トラベル&レジャーが117.19、サウスウエスト航空は88.07です。

4 ホテルREIT

続いてホテルREIT(不動産投資信託)の概況です。

4-1 ホスト・ホテル・アンド・リゾート(HST)

ホスト・ホテル・アンド・リゾートは北米のほか、イタリア、スペイン、ベルギー、オランダで「リッツ・カールトン」「ウェスティン」といった高級ホテルの所有・管理を行っています。2021年4~6月期の純利益はマイナス61百万ドルですが、前年同期のマイナス3.52億ドルから大きく改善しています。

4-2 アップルホスピタリティREIT(APLE)

ヒルトンやマリオットなどの高級ホテルを所有し、米国内35州で215のホテル、約2.8万室を所有。株価は9月15時時点で15.28ドルです。2021年4~6月の純利益は20.28百万ドルと、前年同期のマイナス78.24百万ドルからプラスに転じました。3銘柄の中で、年初来上昇率が唯一S&P500を上回っています。

4-3 サンストーン・ホテル・インベスターズ(SHO)

西海岸、フロリダ州、ルイジアナ州、イリノイ州などを中心に、ヒルトンやハイアットなど18のホテルに9,147室の客室を所有して運営しています。

2021年4~6月の営業収益は117.21百万ドルと、前年同期の11倍となりました。一方、純利益はマイナス35.11百万ドルと前年同期のマイナス1.18億ドルからは減少したものの、依然マイナスです。

項目 上昇率(年初来) 価格(ドル)
HST 11.14 16.26
APLE 19.05 15.35
SHO 5.38 11.94
S&P500 18.02 4,432.99

※株価:9月17日時点

5 旅行・宿泊業界のETF

トラベル関連のETFの特徴としては、投資対象銘柄数が30~60銘柄と少ないことや、経費率が比較的高いことが挙げられます。今回はETF4銘柄を紹介します。

5-1 ETFMGトラベルテックETF(AWAY)

ETFMGトラベルテックETFのベンチマークは、プライム・トラベル・テクノロジー指数(PTRAVEL)です。投資対象はエアビーアンドビー、ブッキング・ホールディングスなど世界中の旅行テクノロジー系の旅行関連36銘柄です(2021年9月15日時点)。経費率は0.75%、資産額は2億7232万ドル。

5-2 デファイナンスホテル・エアライン・アンド・クルーズETF(CRUZ)

ベンチマークはブルースターグローバルホテル・エアラインズ・アンド・クルーズ指数(BCRUZ)です。2021年9月14日時点の保有銘柄数は53銘柄で、上位保有銘柄と保有率は、マリオット:9.09%、ヒルトン:7.61%、デルタ航空:7.02%、サウスウエスト航空:6.29%、カーニバル:5.89%と、上位5銘柄でファンド全体の約36%を占めています。経費率は3銘柄中最も低く0.45%、資産額は12.4百万ドルです。

5-3 ソニックシェアーズ・エアライン・ホテルETF(TRYP)

ベンチマークはソラクティブ・エアライン・ホテル・クルーズ指数(SOLAHCLN)です。2021年9月14日時点の保有銘柄数は62銘柄で、上位保有銘柄と保有率は、ヒルトン:5.52%、マリオット:5.23%、ライアンエアー:4.81%、ロイヤル・カリビアン・クルーズ:4.59%、デルタ航空:4.59%と、上位5銘柄でファンド全体の約25%を占めています。経費率は0.75%、資産額は4.8百万ドルです。

5-4 アドバイサーシャアーズ・ホテルETF(BEFZ)

ホテルやリゾート施設に投資をしているETFで、2021年9月15日時点で33銘柄に投資をしています。組み入れ上位銘柄は、ブルグリーン・バケーションズ・HD:6.59%、レッド・ロック・リゾーツ:6.22%、ゴールデン・エンターテイメント:5.81%、センチュリー・カジノス:5.5%、ボイド・ゲーミング;5.48%と、上位5銘柄で全体の約30%を占めています。経費率は0.79%と3銘柄中最も高く、総資産額は8.5百万ドルです。

まとめ

新型コロナ感染拡大に伴い2020年は各国でロックダウンが実施されたため、人の往来が止まってしまいました。しかし、ワクチン接種が進むにつれ人々の移動が徐々に再開されています。

足元では、米国の旅行・宿泊市場が徐々に回復しています。まだ本格的な回復とは言えないものの、新型コロナ感染が収束に向かえば米国内旅行関連企業の業績改善が見込める可能性が高いでしょう。業績の改善は株価反騰の可能性を秘めています。

The following two tabs change content below.

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。