米国など海外の株式指数やコモディティなどの先物には、日本国内からも投資することができます。先物は少ない資金で大きな運用が可能なため、投機色が強い金融商品ですが、ある程度の株式をお持ちの方は資産防衛の手段として先物を使うことができます。
今回は米国を投資対象とする先物商品について解説します。
※この記事は2021年7月16日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 米国対象の先物取引とは
1-1.日本国内で米国先物の取引が可能な証券会社 - 先物取引のメリット・デメリット
2-1.先物取引のメリット
2-2.先物取引のデメリット - 楽天証券で取り扱っている海外先物
- 株式指数先物
4-1.株式指数先物のメリット
4-2.株式指数先物のデメリット - 代替資産への投資
5-1.エネルギー先物
5-2.金属先物
5-3.農産物先物 - まとめ
1.米国対象の先物取引とは
日米間には時差があるため、米国市場の取引時間は日本と真逆となります。日本の株式市場は、米国の株式市場の影響を受けやすく、米国株が大きく下落すると翌日の日本市場も下落する傾向にあります。そのため、米国時間に自身のポートフォリオ金額相当額分の先物を売却することでポートフォリオのヘッジができます。
また、商品先物と株式指数とは相関が低いため、ポートフォリオの分散効果が期待できます。
1-1.日本国内で米国先物の取引が可能な証券会社
日本国内から個人投資家が米国対象の先物商品を売買できる証券会社としては、楽天証券とインタラクティブ・ブローカーズ証券が挙げられます。
米国先物を取引する場合、楽天証券では、総合口座のほか、国内の先物・オプション取引口座を開設した後に、海外先物取引口座を開設する必要があります。一方、インタラクティブ・ブローカー証券は米国口座(IBLLC口座)を開設すれば、海外先物の取引が可能です。
インタラクティブ・ブローカー証券は、取扱い取引商品が多いことに加え、手数料も安く、日本語での対応も可能です。しかし、口座開設時に最低100万円の入金が必要なことや、海外口座のため確定申告は自身で行う必要があることから、初心者の方には少しハードルが高い証券会社と言えます。
また、先物取引を開始するためには委託証拠金が必要です。委託証拠金は商品ごとに差し入れ額が異なり、楽天証券が取扱っている米国対象の株式先物指数の場合は、1万~1.8万ドルが必要です。開始時に資金面でのハードルが高い先物取引ですが、今回は楽天証券が取扱っている米国先物商品を中心に解説します。
2.先物取引のメリット・デメリット
先物取引のメリットとデメリットは以下の通りです。
2-1.先物取引のメリット
先物取引のメリットは、小さな資金で大きな取引ができることです。例えばS&P500ミニの値段が4,318.6ドルの場合、先物1枚当たりの約定金額は先物1枚当たり50取引単位なので21万5,930ドルです。1枚当たりに必要な証拠金は12,100ドル(発注時証拠金)なので、約定代金は証拠金の約17.85倍です。
また、売りから取引できることもメリットです。相場の下落が予想される場合には先物を売り、予想通りに下落することで利益を得ることができます。単純に先物を売却するだけではなく、自身のポートフォリオのヘッジとして先物を利用することもできるのです。
2-2.先物取引のデメリット
デメリットは、小さな資金で大きな取引ができるため、相場が思惑と反対に動いた場合には大きな損失が出るということです。また、ポジションを維持するために最低委託証拠金を維持する必要があります。そのため証拠金をすぐ補填するための資金が必要です。
相場が自身のポジションと反対方向に動き追証(委託証拠金を下回る状態)が発生した場合、期限までに追証の差し入れができないと強制的に反対売買が行われます。それでも資金不足が生じた場合には補填する必要があります。
3.楽天証券で取り扱っている海外先物
楽天証券では、海外先物を32銘柄取り扱っています(2021年2月12日時点)。米国市場に上場しているのは、株式指数先物が7銘柄、エネルギー関連が6銘柄、金属が7銘柄、農作物が8銘柄です。以下、ジャンルごとに詳しくご紹介します。
4.株式指数先物
楽天証券で取引できる米国上場の株式指数先物は、以下の7銘柄です。日経225先物はドル建てと円建ての2種類があります。
株式指数先物の詳細
銘柄 | 価格(ドル) | 呼値 | 取引単位 | 手数料(ドル) | 委託保証金(ドル) | 発注時保証金(ドル) | 約定総額(ドル) |
---|---|---|---|---|---|---|---|
ミニS&P500 | 4,318.60 | 0.25 | 50 | 4.95 | 11,000 | 12,100 | 215,930.00 |
ミニS&P500 MidCap400 | 2,611.70 | 0.1 | 100 | 4.95 | 13,500 | 14,850 | 261,170.00 |
ミニS&P Small Cap600 | 1,298.50 | 0.1 | 100 | 4.95 | 8,500 | 9,350 | 129,850.00 |
ミニ ナスダック100 | 14,670.50 | 0.25 | 20 | 4.95 | 16,000 | 17,600 | 293,410.00 |
ミニ NYダウ | 34,564.00 | 1 | 5 | 4.95 | 9,000 | 9,900 | 172,820.00 |
日経225先物 ドル建て | 27,750.00 | 5 | 5 | 4.95 | 8,000 | 8,800 | 138,750.00 |
日経225先物 円建て | 27,745.00 | 5 | 500 | 4.95 | *800,000 | *880,000 | *13,872,500 |
*表示のみ円
(2021年7月16日締め時点)
4-1.株式指数先物のメリット
株式指数先物は少ない委託保証金で大きな取引ができるため、思惑どおりに相場が動けば短期間に大きな資産を築ける可能性もあることがメリットです。例えばミニS&P500の1枚は指数50単位に投資したことになり、指数が100ドル上昇すると5,000ドルの利益が発生します。
そのほかのメリットとしては、ポートフォリオ・ヘッジが挙げられます。米国の株式市場は経済統計のデータやFRB議長の議会証言などで大きく変動します。なんらかの要因で株式指数が下落すると、翌日の日本市場も下落する傾向にあります。
そのため米国の取引時間中に、自身のポートフォリオが日経225との連動性が強い場合には日経225先物を、S&P500指数と連動性が強ければS&P500ミニを、ポートフォリオの相当枚数を売却することでポートフォリオをヘッジすることができます。
4-2.株式指数先物のデメリット
デメリットとしては、相場が思惑と反対に動いた場合には、追証が発生してしまう可能性があることが挙げられます。なお、追証に必要な資金を補填できない場合は強制的に反対売買が執行されます。さらに、不足額を返済する必要があるため、注意が必要です。
5.代替資産への投資
代替(オルタナティブ)投資とは、債券や株式などの伝統的な資産とは異なる資産へ投資することです。具体的には、商品・不動産・インフラへの投資等が挙げられます。例えば株式だけを保有した場合、株が下落するとポートフォリオの資産も目減りしますが、値動きの相関が低い資産を組み入れることでポートフォリオの下落を軽減することができます。
下表に株式指数との相関係数(過去1年)を示しました。エネルギーや穀物との相関が高い数値となっています。そのため、代替資産を株式ポートフォリオに組み入れる場合には、相関関係の弱い天然ガス、金、銀がリスクヘッジとしては適していると言えます。特に金は株式指数との相関がマイナスのため、株価の下落時には上昇が期待できます。
株式指数と各商品の相関係数
銘柄 | 日経平均 | TOPIX | ダウ平均 | S&P500 | ナスダック |
---|---|---|---|---|---|
日経平均 | 1.00 | 0.98 | 0.89 | 0.88 | 0.93 |
TOPIX | 0.98 | 1.00 | 0.94 | 0.93 | 0.94 |
ダウ平均 | 0.89 | 0.94 | 1.00 | 0.99 | 0.94 |
S&P500 | 0.88 | 0.93 | 0.99 | 1.00 | 0.96 |
ナスダック | 0.93 | 0.94 | 0.94 | 0.96 | 1.00 |
原油 | 0.82 | 0.88 | 0.94 | 0.95 | 0.89 |
ガソリン | 0.84 | 0.90 | 0.96 | 0.96 | 0.89 |
ヒーティング | 0.84 | 0.89 | 0.95 | 0.95 | 0.89 |
天然ガス | 0.33 | 0.42 | 0.55 | 0.61 | 0.58 |
金 | -0.82 | -0.82 | -0.70 | -0.69 | -0.72 |
銀 | 0.19 | 0.21 | 0.31 | 0.32 | 0.30 |
銅 | 0.87 | 0.91 | 0.96 | 0.95 | 0.89 |
トウモロコシ | 0.79 | 0.84 | 0.94 | 0.94 | 0.86 |
小麦 | 0.77 | 0.77 | 0.84 | 0.83 | 0.79 |
大豆 | 0.88 | 0.92 | 0.97 | 0.96 | 0.91 |
大豆油 | 0.75 | 0.83 | 0.94 | 0.94 | 0.85 |
大豆ミール | 0.92 | 0.91 | 0.89 | 0.87 | 0.87 |
楽天証券で取扱いのある商品は、エネルギー先物、金属先物、農作物先物の3種類です。それぞれの特徴をみていきましょう。
5-1.エネルギー先物
楽天証券で取引できるエネルギー先物は、原油、ミニ原油、ガソリン、ヒーティングオイル、天然ガス、ミニ天然ガスの6種類です。
エネルギー先物の特徴
- 政治的リスクが高い
- 景気が良くなると需要が高まり価格が上がりやすい
5-2.金属先物
楽天証券で取引できる金属先物は、金、ミニ金、マイクロ金、銀、ミニ銀、銅、ミニ銅の7種類です。
金属先物の特徴
- 中央銀行の動向に左右される
- 景気の影響を受けやすい
- 新興国の動向などに左右される
5-3.農産物先物
楽天証券で取引できる農産物先物は、トウモロコシ、ミニトウモロコシ、小麦、ミニ小麦、大豆、ミニ大豆、大豆油、大豆ミールの8種類です。
特徴
- 天候の影響を受ける
- 政治情勢の影響を受けやすい
まとめ
先物の利用の仕方は、投機とヘッジの2種類です。株価下落時にはヘッジとして利用ができます。投機として利用する場合、思惑通りに市場が動けば大きな資産をつくることができますが、反対方向に動いた場合には資産を失いかねません。そのため、投機として利用する際には、ロスカットルールを作るなど無理のない取引をするように心がけましょう。
また委託保証金を維持するためには資金が必要となるため、初心者の方はまず現物投資から始め、馴れるに従って先物取引を検討するようにしましょう。
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藤井 理
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。
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