つみたてNISAは継続して積み立てていくのが大切ですが、いつかは資産を現金化する日が来ます。投資を終わらせるタイミングは、目的によってケースバイケースです。この記事では、つみたてNISAの節税メリットを享受できる出口戦略について解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用・投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- つみたてNISAの特徴
- つみたてNISAの売り時とは?
2-1.お金が必要になったとき
2-2.非課税期間終了が近づいたとき - つみたてNISA非課税期間終了後の選択肢
3-1.課税口座に移管して運用継続
3-2.売却して現金化 - つみたてNISA終了時の注意点
4-1.あまりハイリスクな商品で運用しない
4-2.売却は複数回に分けて
4-3.値上がりしたからといって売らない
4-4.含み損がある状態で課税口座に移管する場合 - まとめ
1.つみたてNISAの特徴
つみたてNISAとは、積立に特化した少額投資非課税制度の一種です。年間40万円までの非課税投資枠があり、最長20年間非課税で運用できます。
20年間非課税で運用できるとはいえ、売却してはいけないわけではありません。運用資産は自分の都合で、好きなときに売却できます。
2.運用計画を立てるつみたてNISAの売り時とは?
つみたてNISAは長期の資産形成のための非課税制度です。そのため、長く積み立てるほど効果的ですが、積立資産の途中売却も自由にできます。ここでは、どんな時につみたてNISAの運用資産を売るのかを解説します。
2-1.お金が必要になったとき
子どもの進学や起業などライフイベントでお金が必要になったときは、つみたてNISAから必要な分を解約して使うのもよいでしょう。また、急な病気やけがで治療費や生活費が不足する場合、手元資金が乏しければつみたてNISAの資産を換金してもかまいません。
非課税枠がもったいないからと借金などをするより、つみたてNISAを活用する方が合理的です。
つみたてNISAは60歳まで引き出しできないiDeCoと違い、都合のよいときに引き出せます。ただし、運用資産を売却すると、その分の非課税投資枠は再利用できません。なるべく非課税投資枠と非課税期間は使い切るほうがよいでしょう。
予定がわかっていたら逆算して売却するとよい
子どもの進学など予定しているライフイベントがある場合、2~3年前くらいから現金化のタイミングを計るとよいでしょう。
仮に入学金などを納入する時期に運用資産が値下がりしたとします。そのタイミングで資産を売却すると損失が確定し、つみたてNISAのメリットがなくなってしまいます。
取り崩す時期が近づいたら、運用状況を確認しましょう。その際に大きく値上がりしているようであれば、必要な分を解約して利益確定させるのも賢明なやり方といえます。
2-2.非課税期間終了が近づいたとき
つみたてNISAの20年の非課税運用期間終了が近づいたときに、大きく値上がりしている場合は売却を検討してもよいでしょう。つみたてNISAの非課税投資は長期で続けるほど効果的なので、最長の20年間運用を続けるのが望ましいといえます。
ただし、非課税期間終了時に含み損がある状態ではつみたてNISAのメリットがなく、避けたいところです。そこで、非課税期間終了の2年から3年前になったら、運用成績を確認してみましょう。その際の選択肢として次のような考え方を参考にしてください。
- 投資対象がハイリスクな投資信託で大きく値上がりしているようであれば、売却して利益確定してもよい
- あまりハイリスクでないバランスファンドなどは値動きの振れ幅が大きくないため、運用期間終了まで継続してもよい
3.つみたてNISA非課税期間終了後の選択肢
一般NISAは積立期間終了後に、翌年の非課税枠に資産を移行(ロールオーバー)できます。しかし、つみたてNISAにはロールオーバーの選択肢はありません。20年間の非課税期間終了後の積立資産の取り扱いを確認しておきましょう。
3-1.課税口座に移管して運用継続
つみたてNISAの非課税期間(20年間)が終了すると、運用資産は特定口座や一般口座などの課税口座に移管されます。移管にあたっての特別な手続きは必要なく、移管後は引き続き運用が可能です。課税口座に移管する際、運用商品の取得価格は移管時の時価となります。
たとえば、20年間に800万円の積立を行い、終了時の時価が1,000万円になっていたとします。その場合、課税口座での取得価格は1,000万円となるため、つみたてNISAの運用益には課税されないというわけです。
3-2.売却して現金化
非課税期間が終了したつみたてNISAには、売却して現金化するという選択肢もあります。課税口座に移管せずに売却した場合、運用益が出ていても課税されません。また、売却は非課税期間終了を待たずに、任意のタイミングでできます。
売却を考えるのであれば、なるべく利益が多く出る時期を見計らいましょう。ただし、あまり早くに売却すると、資産形成効果や非課税メリットが十分に生かせません。売却する場合でもなるべく長く運用するほうがよいでしょう。
4.つみたてNISA終了時の注意点
最後につみたてNISAの一部を売却したり、全額を売却したりする場合の注意点を解説します。
4-1.あまりハイリスクな商品で運用しない
つみたてNISAの運用対象には、あまりハイリスクなものを選ばないのが賢明です。
つみたてNISAはリバランスがしにくい
一般的な積立投資では、運用益が出るとリバランス(売買による資産の入れ替えを行い、ポートフォリオのバランスを再調整すること)によって一部の利益を確定します。しかし、つみたてNISAでリバランスを行うと、売却分の非課税枠が再利用できません。
長期の運用ではリバランスができたほうが良いですが、つみたてNISAでリバランスをすると非課税枠が失われてしまうのです。途中でリバランスをせずに長期運用をすると、市場の暴落局面で大きな損失を被るリスクが高まります。
ハイリスクな運用商品の値動きに注意
特にハイリスクな投資対象では売却のタイミングでの値下がりを避けるべく、値動きに注意する必要があります。リバランスが自動的に行われるバランスファンドなどを選ぶほうが値動きの振れ幅が少なく、元本割れのリスクも低くなるでしょう。
4-2.売却は複数回に分けて
売却を考えるタイミングで運用資産が大きく値上がりしていた場合、できれば売却は数回に分けましょう。運用商品の売却のタイミングの判断は難しく、さらに値上がりする可能性もあるからです。最高値で売却しようと欲張らず、ほどほどの価格で利益を確定させましょう。
4-3.値上がりしたからといって売らない
つみたてNISAの運用中に資産が値上がりしても、使う予定がないなら売却しないほうが良いでしょう。つみたてNISAの運用は長期・分散・積立で、リスクを軽減しながら複利効果で資産を育てる方法です。
値上がりして利益確定を考えるのは、近い将来お金を使う予定があるときや運用期間が近づいて来た時となります。それ以外は値動きを気にせず、コツコツと積立を続けるのが良いでしょう。
4-4.含み損がある状態で課税口座に移管する場合
つみたてNISAの非課税期間終了時には、運用資産を売却しなければ課税口座に振り替えられます。課税口座への移管時に元本割れをしている場合、注意が必要です。
移管時の時価が取得価格に
課税口座への移管時には運用資産の取得価格を時価とするため、利益が出ていればつみたてNISAでの運用益には課税されません。しかし、元本割れの状態で移管する場合、取得価格が時価に書き換えられるのはデメリットです。
たとえば、つみたてNISAで40万円分の元本が移管時に30万円に値下がりしていたとします。移管時の取得価格は30万円に書き換えられます。
課税口座に移管後、40万円に値を戻したので売却すると、本来の損益はプラスマイナスゼロのはずです(手数料等は考慮せず)。しかし、取得価格は30万円で損益計算をするため運用益は10万円となり、ここから20.315%が課税されるのです。
つみたてNISAはロールオーバーできない
一般NISAであればロールオーバーで値上がりを待つことができますが、つみたてNISAではできません。非課税期間が終わりに近づいたら運用状況を確認し、場合によっては利益確定をしてもよいでしょう。
まとめ
つみたてNISAは長期投資のメリットを生かし、非課税期間終了まで運用するのがベターです。しかし、売却も自由にできるので、ライフイベントで必要になったときには必要な分だけ売却して運用を継続できます。売却時期が近づいたら運用状況を確認し、状況に応じて利益確定をしてもよいでしょう。
松田 聡子
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