ネット証券の登場は手数料の安さで大いに注目され、リアル店舗を構えて営業マンの活動で株式を売る従来の証券会社のスタイルに一石を投じることとなりました。店舗に出向くことなく証券口座が開設でき、インターネットを使って自分で発注できる点が革新的で、FXもできるなど、取り扱い商品の幅広さも持ち合わせていました。
今やネット証券はすっかり定着し、取引手数料も非常に安くなっており、各社とも差別化に苦労する段階になっています。
近年ネット証券に代わって若年層に注目されている証券会社は、スマホ証券です。ネット証券よりも投資アプリがスマートフォンに最適化され、数タップで発注できるほどインターフェイスが簡略化されています。
当記事では、投資信託の取引に使いやすいスマホ証券を紹介します。スマートフォンのみでの資産運用に興味をお持ちの方はご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年3月23日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
- 投資信託を扱うスマホ証券を比較
1-1.LINE証券
1-2.CONNECT
1-3.PayPay証券
1-4.tsumiki証券 - スマホ証券とネット証券はどう違うのか
2-1.アプリ投資に最適化されている
2-2.かんたんな投資がテーマ - 投資初心者とスマホ証券
3-1.投資の入り口として
3-2.受け身にならず情報収集も積極的に - スマホ証券の賢い使い方
4-1.急展開の状況に即対応
4-2.ポイント連携をうまく使う - スマホ証券を使う時の注意点
5-1.取扱銘柄が限定的
5-2.手数料が高くなるケースがある
5-3.情報収集面ではネット証券に劣る
5-4.NISA口座の開設やiDeCoの取扱は要確認 - まとめ
1.投資信託を扱うスマホ証券を比較
項目 | 取扱ファンド本数 | 購入手数料 | NISAの取扱 | つみたて投資 | ポイント連携 |
---|---|---|---|---|---|
LINE証券 | 33本 | 0円 | あり | 毎月1,000円から | LINEポイント |
CONNECT | 34本 | 0円 | あり | まいにち投信 | なし |
PayPay証券 | 2本 | なし | なし | 投資信託は未対応 | なし |
tsumiki証券 | 5本 | 0円 | あり | カードでつみたて投資 | エポスポイント |
1-1.LINE証券
2019年9月からスタートしたLINE証券は、20代や30代の若い世代に人気があるスマホ証券です。ターゲット層は初心者にとどまらず、中上級者の投資経験者も取り込んでいます。
取扱銘柄や商品は徐々に拡充をすすめ、執筆時点で投資信託の取り扱いファンドは33本です。スマホ証券の中ではトップクラスの取り扱いファンド数を誇っています。NISAやつみたて投資、ポイント投資やクレジットカードを使った積立投資など、幅広くユーザーの要望に応えている点も特徴的です。
投資信託や現物株式の他に、信用取引やFXにも対応しており、サービス内容はネット証券並に近づきつつあります。日頃からLINEのサービスをよく使う方にとって、メリットの大きなスマホ証券です。
1-2.CONNECT
CONNECTは大和証券グループが運営するスマホ証券です。LINE証券と同様に、スマホ証券の中では幅広い商品を提供しています。現物株や単元未満株、つみたてNISAといった基本的なサービスの他に、IPO投資、単元未満株での米国株投資、信用取引と、ネット証券に近い商品を揃えている点が特徴的です。
投資信託ではつみたてNISAを活用した、まいにち投信というサービスが展開されています。購入手数料はすべて0円です。34銘柄のファンドを取り扱っており、つみたてNISAに対応するファンドは16本となっています。
ポイントやクレジットカードとの連携はありませんが、大和証券グループが持つノウハウで運営されており、広く浅く、投資初心者にもわかりやすいスマホ証券を目指しています。今後は大和証券とのシームレスな連携も期待されます。
1-3.PayPay証券
PayPay証券は前身の株式会社One Tap BUYから続くスマホ証券です。2021年の2月に商号変更し、現在のPayPay証券に生まれ変わりました。取引に最適化されたスマホアプリを使うことで、3タップで株式売買ができることを強みとしています。簡潔さをアピールポイントとして運営をスタートしました。
PayPay証券では、2021年の9月21日から投資信託の取り扱いをスタートしました。執筆時点の取り扱いファンドは、PayPay証券オリジナルファンド「Oneグローバルバランス」と、「未来の世界 ESG」の2本で、購入手数料はいずれも0円です。NISA口座の対応は現在行っていません。
つみたて投資やポイント投資について、明記がなかったので直接詳細を問い合わせてみたところ、今の時点ではいずれも未対応とのことでした。PayPayマネーを使った買付とつみたて投資については、現在検討中との返答でした。
PayPay証券は株式投資を中心にスタートしたスマホ証券です。投資信託や投資信託の積立投資についてはこれから取り組む動きがあるようです。PayPay銀行や決済サービスとの連携も注目ポイントです。
1-4.tsumiki証券
tsumiki証券はエポスカードとの連携に特化したスマホ証券です。エポスカードの利用が前提となりますので、エポスカードがないと取引できません。
「投資はじめてさんにぴったりの資産づくり」というキャッチコピーを掲げており、ターゲット層は、これから投資を始める初心者に絞っています。エポスポイントを使いつつ、費用の負担を抑えつつ資産形成ができることもアピールされています。
投資信託の取り扱いファンドは4つです。積立金額は月100円からで、つみたてNISAも対応しています。
エポスカード利用の延長線上にあるスマホ証券で、投資信託の積立以外の商品はありません。とてもシンプルなスマホ証券です。長期の資産形成に興味はあるものの、その他の投資には興味がない方や、普段からよくエポスカードを使う方にはtsumiki証券を活用できるでしょう。
2.スマホ証券とネット証券はどう違うのか
スマホ証券とネット証券は、インターネット上で発注を行う点に変わりはありませんが、最適化されたアプリとわかりやすさに違いがあります。以下解説します。
2-1.アプリ投資に最適化されている
スマホ証券は、スマートフォン一つで取引が完了できる点に強みがあります。
パソコンでの取引がメインとなるネット証券のスマートフォン用アプリは、パソコン取引の延長線上にアプリが設定されています。一方でスマホ証券のアプリは、口座解説から取引まですべてスマホだけで完結できる仕組みが整っています。
スマホ証券のターゲットとするユーザー層は、主にこれから投資をスタートする若者層です。スマホでの取引に最適化されたアプリをリリースし、気軽に投資に参加してほしい、という狙いがあります。
2-2.かんたんな投資がテーマ
スマホ証券はこれから投資に取り組みたいと考える若者層をターゲットとしているため、わかりやすさや簡単さをメインに訴求しています。
基本的に株式は単元株100株を取引の基準として、需要に応じてミニ株投資などが別途設定されていますが、スマホ証券の場合、最初から1株単位、100円からの投資が簡単にできるように設定されています。
投資にはある程度の初期費用が必要というイメージを、単元未満株の投資をメインに据えることで払拭しハードルを低くしているのです。
3.投資初心者とスマホ証券
投資をこれから始める方にとって、スマホ証券の利用にはどのようなメリットがあるのでしょうか。ポイントは使いやすさと、投資の入り口としての役割です。以下2つを解説します。
3-1.投資の入り口として
スマホ証券は口座開設から取引までの難易度が低く、気軽に投資できる仕組みを整えています。自力で投資のことを調べつつ、実際に投資を行いながらステップアップするには、スマホ証券はぴったりでしょう。
スマホ証券のアプリで確認できる情報や、活用できるツールには制限がありますので、物足りなくなってきたらネット証券など、利用範囲が広い証券会社へ移行すると良いでしょう。
3-2.受け身にならず情報収集も積極的に
資産運用の基本は情報収集です。投資の世界は、自己責任が基本的な考え方となっていますので、自分にあったさまざまな情報を収集し、ある程度分析する力が必要です。
スマホ証券は、投資初心者をターゲットとしているため、親切丁寧なナビゲーションが用意されています。案内の通りに進めていけば取引ができますが、収益までは確約されていません。今後、自分で納得のいく長期の資産形成を行うためにも、投資の世界に興味をもち、みずから色々な情報を収集し、分析する力をつけていきましょう。
4.スマホ証券の賢い使い方
スマホ証券を賢く、合理的に使うための2つのポイントを解説します。
4-1.急展開の状況に即対応
手軽で簡単な取引が強みのスマホ証券ですが、機動的な取引がしやすいというメリットもあります。株式やETFの取引では、地政学リスクやイレギュラーな出来事により、即対応することで損失の回避や、収益を獲得することができます。
スマホ証券の画面の使いやすさや、少ない操作で発注ができる点は、機動的な取引をおこなう人にとっては大きなメリットとなるでしょう。
4-2.ポイント連携をうまく使う
近年ではポイントを使った投資が注目されつつあります。スマホ証券では、LINE証券、tsumiki証券などでポイントを現金代わりとして運用可能です。特にLINE証券は、関連サービスから発生するポイントをつかって、資産運用と連携させる効果的な活用方法ができます。
現在メインで使っているポイントサービスを資産運用に使える場合、日頃から使うサービスをある程度集中させると、より高い相乗効果が期待できるでしょう。
5.スマホ証券を使う時の注意点
わかりやすく便利なスマホ証券ですが、注意すべき点もあります。
5-1.取扱銘柄が限定的
スマホ証券は、ネット証券や店舗を構える証券会社と比べて取扱商品の数が比較的少ない傾向があります。
例えばネット証券大手のSBI証券や楽天証券は2,500件程度のファンドを揃えていますが、2022年3月時点で、LINE証券は厳選された33件のファンドのみ取り扱っています。同じインデックスを対象とするファンドでも、いろいろな運用会社が運用していますので、投資信託の選択肢は可能な限り多いほうが良いのです。
スマホ証券で主要なファンドのみに投資して、ポイントなどをうまく使いながら資産形成を続けるのも良いのですが、他のファンドへ投資してみたくなったら、ネット証券を検討するのも良い選択です。
5-2.手数料が高くなるケースがある
スマホ証券では、1株など単元未満株の取引が簡単にできる強みがありますが、単元未満株への投資は単元株よりも手数料が割高になりがちです。ただし、投資信託は購入手数料なしのノーロードとしているスマホ証券も多いため、投資信託を使った資産運用に関しては手数料面でのデメリットはありません。
株式取引を行う場合、ネット証券の単元未満株投資を活用したほうが良い場合もあります。
5-3.情報収集面ではネット証券に劣る
各スマホ証券のサイトを確認すると、シンプルなUIで操作感は良いのですが、投資に関する情報や読み物のコンテンツは多くありません。対してネット証券のSBI証券や楽天証券などは、投資初心者への教材のような読み物や、経済のニュース、トレンドなどかなり充実しており、情報収集と分析が簡単にできます。
スマホ証券で投資をスタートする時は、自分で情報収集をして、ある程度の分析を行うよう心がけておきましょう。
5-4.NISA口座の開設やiDeCoの取扱は要確認
つみたてNISAを使った長期運用を考えている場合は、スマホ証券がNISA口座やiDeCoに対応しているか、事前に確認しておきましょう。スマホ証券では、現状NISAやiDeCoに未対応の会社もありますので、事前の確認は必須です。
まとめ
近年あたらしい投資スタイルの一つとして、スマホ証券が注目されています。主な特徴は、スマホひとつで口座開設から取引まで行うことができ、最小限の操作で済むように設計された親切なUIです。
主に投資未経験の若者層を対象として、初心者でも気軽に投資できることを意識して作られています。1株、100円からの少額投資にも対応しており、投資には多額の初期費用が必要というイメージを覆すサービスを提供しています。
ハードルが低く、気軽に投資できる反面、投資信託の取扱ファンドが少なかったり、NISAやiDeCoに対応していないスマホ証券もあったりしますので、利用するときは自分の希望する利用スタイルに合っているかどうかは押さえておきましょう。
sayran
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