つみたてNISAはやらないほうがいい?デメリットと注意点、向いている人は

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つみたてNISAは運用益に対して課税されず、まとまった資金がなくても始められるため、徐々に口座数が増えています。しかし、税の優遇が無制限に受けられるわけではなく、デメリットの理解も必要です。この記事では、つみたてNISAのデメリットや注意点とその対策、利用に向いている人などについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2022年6月4日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. つみたてNISAとは?
    1-1.つみたてNISAの特色
    1-2.つみたてNISAと一般NISAの違い
  2. つみたてNISAのデメリット・注意点
    2-1.ロールオーバーはできない
    2-2.損益通算・繰越控除ができない
    2-3.損失が出た状態で課税口座に移管すると損をする場合も
    2-4.使い切れなかった非課税枠を繰り越せない
    2-5.途中で解約すると複利効果が得られない
    2-6.金融機関によって取扱商品が異なる
  3. つみたてNISAのデメリットへの対策
    3-1.なるべく長期で運用する
    3-2.できるだけ非課税枠を使い切るようにする
    3-3.値上がりしても値下がりしても売らない
    3-4.取扱商品の選択肢の多い金融機関で口座開設する
  4. つみたてNISAをするといい人
    4-1.投資の初心者
    4-2.投資に時間をかけられない人
    4-3.まとまった資金がない人
    4-4.10年以上運用する期間がある人
    4-5.とりあえず運用をしたい人
  5. まとめ

1.つみたてNISAとは?

NISA(少額投資非課税制度)は、非課税口座内で買い付けた運用商品から発生した利益が非課税になる制度です。通常であれば、株や投資信託の取引で得た利益には20.315%の税金がかかります。しかし、NISAを利用すれば運用益に課税されず、全額を手取りにできるというわけです。

NISAには、成人が利用できる一般NISA・つみたてNISAと、未成年が利用できるジュニアNISA(2023年で終了)の3種類があります。

1-1.つみたてNISAの特色

最初に、つみたてNISAの特色を解説します。

投資方法は積立のみ

つみたてNISAはNISAの中でも積立に特化した制度で、運用商品の買付方法は積立のみです。積立投資はまとまった資金のない人でも始められます。また、積立の設定をしておくと買付は自動的に行われるため、手間がかかりません。値動きを見て購入のタイミングを考える必要もありません。

年間40万円、最長20年の非課税投資が可能

つみたてNISAの1年間の非課税限度額は40万円で、非課税投資ができるのは最長20年です。最大で800万円の非課税投資枠が利用できます。一般NISAに比べて1年間の非課税枠は少ないのですが、期間が長いのでトータルの非課税投資枠は多くなります。

投資対象は金融庁が選定した投資信託

つみたてNISAの投資対象は、金融庁が選定した長期・分散・積立に適した投資信託(一部ETF)のみです。つみたてNISAの公募株式投信の条件は、次のとおりです。

  • 販売手数料が無料
  • 信託報酬が一定以下
  • 各顧客に過去1年間に負担した信託報酬の概算金額を通知する
  • 信託期間が無期限または20年以上
  • 毎月分配ではない
  • 為替ヘッジの目的以外のデリバティブ運用は行わない

投資対象が絞られているため、どの投資信託を選んでも長期で運用すれば資産形成が期待できます。ゆえに、初心者でも取り組みやすい制度です。

1-2.つみたてNISAと一般NISAの違い

一般NISAとつみたてNISAは年間の非課税限度額や非課税期間などが異なります。

項目 つみたてNISA 一般NISA
1年間の非課税投資枠 40万円 120万円
非課税期間 最長20年 最長5年
投資対象 金融庁が選定した一定の投資信託・ETF 国内外の上場株式
国内外のETF
国内外のREIT
投資信託
投資方法 積立投資のみ 通常買付・積立投資
ロールオーバー 不可
投資可能期間 2042年まで 2023年まで(2024年から新NISAへ移行)

2.つみたてNISAのデメリット・注意点

つみたてNISAは多くの人に取り組みやすい制度ですが、デメリットや注意すべき点もあります。

2-1.ロールオーバーはできない

一般NISAは非課税期間終了後にロールオーバーが可能ですが、つみたてNISAではできません。ロールオーバーとは非課税期間が終了するNISAの資産を、翌年の非課税枠に移管することです。つみたてNISAの非課税期間終了後には、特定口座などの課税口座へ移管となります。

2-2.損益通算・繰越控除ができない

つみたてNISAにかぎらずNISAでは損失が発生した場合、他の口座の利益と損益通算できません。損益通算とは、同一年の運用益と損失を相殺することです。特定口座などの課税口座では運用益から損失を差し引いて、課税所得を少なくできます。

損益通算をしてもなおマイナスが残った場合、最長3年間翌年以降の利益から繰り越した損失を差し引けます(繰越控除)。つみたてNISAでは損益通算ができないので、繰越控除もできません。

2-3.損失が出た状態で課税口座に移管すると損をする場合も

つみたてNISAの運用資産を値下がりした状態で課税口座に移管し、その後値上がりすると、損をするおそれがあります。

つみたてNISAではロールオーバーができないため、非課税期間終了後の運用資産は課税口座に移されます。その際の取得額は、移管時の時価となります。

たとえば、つみたてNISAの投資信託の買付時の基準価額の平均が1万円で、移管時に9,000円になっていたとします。特定口座に移管後に1万円に戻ったので売却したとすると、本来の利益はゼロのはずですが、取得額の9,000円から値上がりしたことになり、課税されるというわけです。

2-4.使い切れなかった非課税枠を繰り越せない

つみたてNISAでは、その年度で使わずに残った非課税枠を翌年以降に繰り越せません。今年24万円しか買い付けなかった場合でも、翌年の非課税枠は40万円のままです。

2-5.途中で解約すると複利効果が得られない

つみたてNISAは時間を味方にする投資法です。途中で解約すると複利効果を十分に得られません。複利とは運用益を元本に組み入れて運用していく方法で、期間が長いほど資産を増やす効果を期待できます。

つみたてNISAは、複利運用の妨げになる分配金の頻度が少ない投資信託だけが選ばれるなど、長期の資産形成を考えた仕組みです。運用資産はいつでも引き出し可能ですが、長期保有のメリットを知っておきましょう。

2-6.金融機関によって取扱商品が異なる

つみたてNISAの投資対象は、206本の投資信託と7本のETFです(2022年4月26日時点)。ただし、これらの投資信託・ETFの全部を、口座開設した金融機関で扱っているとはかぎりません。中には、10本程度しか扱っていない金融機関もあるので注意が必要です。

3.つみたてNISAのデメリットへの対策

つみたてNISAのデメリットを避けて、資産を増やしていく方法を解説します。

3-1.なるべく長期で運用する

つみたてNISAはもともと長期運用が前提であり、できるだけ長く続けることが望ましいといえます。非課税期間終了時や売却時に損失が生じていると、非課税メリットが生かせません。着実に運用益を得ていくには、つみたてNISAの仕組みを生かして長期でコツコツ積み立てていくのが得策です。

将来資産がいくらになるかの保証はありませんが、分散投資によるリスク低減や複利の恩恵による資産形成が期待できます。

3-2.できるだけ非課税枠を使い切るようにする

つみたてNISAでは使わなかった非課税枠を翌年以降に持ち越せません。できるだけ多くの資金を運用に回せば、まとまった資産作りが見込めます。ゆえに、年40万円の非課税限度額は、なるべく余らせないほうが有利です。

つみたてNISAでは1,000円程度の少額投資も可能ですが、家計を見直して無理なく続けられる金額の設定をしましょう。

3-3.値上がりしても値下がりしても売らない

つみたてNISAは長期の資産形成のための制度なので、一時的な値動きで売却しないようにしましょう。多少値上がりしたからといって売ってしまっては、複利効果が得られなくなります。また、値下がり時は同じ金額でたくさんの口数を買い付けるチャンスです。

短期的な価格変動が気になる人は、あまり頻繁にチャートなどを確認しないほうがよいでしょう。運用状況の確認は頻繁に行わなくても問題ありません。

3-4.取扱商品の選択肢の多い金融機関で口座開設する

つみたてNISAの口座開設をするなら、なるべく多くの投資信託を取り扱う金融機関を選びましょう。金融庁が選定した投資信託のうちの数本しか取り扱わない金融機関には、自分が買いたいものが無いかもしれません。

金融機関の変更は可能ですが、手間もかかります。つみたてNISAの投資信託のラインナップを確認してから口座を開設しましょう。

4.つみたてNISAをするといい人

つみたてNISAには若干の注意点はありますが、比較的多くの人が取り組みやすい制度です。ここでは、特につみたてNISAに適した人を解説します。

4-1.投資の初心者

つみたてNISAは投資経験のない人でも取り組みやすい配慮がある制度です。投資対象は金融庁が選んだ長期・分散・積立に適した商品であり、初心者でも低リスクに始められます。また、積立に特化しているので、買付のタイミングに悩む必要はありません。

最初は損をしても問題ない少額から始めるとよいでしょう。運用のリスクに慣れたら積立額を増やし、本格的な運用を始めるのも一つの方法です。

4-2.時間をかけられない人

仕事や家事・育児で投資にかける時間が限られている人にも、つみたてNISAは利用しやすい制度です。一度、積立の設定をすると、毎回の買付は自動で行われます。チャートを見ながら買付のタイミングを考える必要はありません。

長期保有が前提なので、積立の設定をすれば後はほぼすることはなく、忙しい人でも無理なくできる投資なのです。

4-3.まとまった資金がない人

まとまった資金がなく一括投資ができない人でも、つみたてNISAなら投資ができます。積立投資は毎回一定額を継続して積み立てていく方法なので、まとまった資金は必要ありません。つみたてNISAの最低投資額は金融機関によっては100円からなので、誰でも無理のない金額で始められます。

できる範囲の積立をコツコツ続ければ、やがて大きな資産への成長が期待できます。

4-4.10年以上運用する期間がある人

つみたてNISAは時間を味方に付けてリスクを軽減する運用方法なので、10年以上の長期で運用できる人に適しています。値動きのある投資信託で運用していくので、期間が短いと複利効果やリスク軽減効果が上手く機能しない可能性があるからです。

長期運用の目安としては10年以上が望ましいといえます。教育資金や老後資金の準備で10年以上時間がかけられる人は、つみたてNISAを有効活用できるでしょう。

4-5.とりあえず運用をしたい人

投資に特に目的はないがお金を増やしたい人にも、つみたてNISAは有効です。現状の超低金利下では、預貯金でお金は増えません。余剰資金をとりあえず銀行に預けているような人は、つみたてNISAを活用すれば将来大きな差が出る可能性があります。

まとめ

つみたてNISAはまとまった資金と手間と時間がかからない、誰でも取り組みやすい投資です。10年以上の投資期間があれば、コツコツ積み立てていくことで資産形成が期待できます。これから始める人はいくつかのデメリットや注意点を押さえてから、取り組みを検討するとよいでしょう。

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松田 聡子

明治大学法学部卒。金融系ソフトウェア開発、国内生保を経て2007年に独立系FPとして開業。企業型確定拠出年金の講師、個人向け相談全般に従事。現在はFP業務に加え、金融ライターとしても活動中。 保有資格:日本FP協会認定CFP・DCアドバイザー・証券外務員2種 運営サイト : 経営体質改善のヒント