株の相続、評価額はどう算出する?現金・不動産との評価の違いも比較

被相続人が保有している株式も、現金や不動産と同様に遺産分割の対象となります。そこで主に気になるのは「いつ時点の評価額で相続するのか」という点でしょう。

株式のように日々価格が変動する資産は、評価方法が複数存在しています。この記事では、株式の相続時の評価方法や税金対策について解説していきます。

※実際の税務処理や個別の判断等につきましては、税理士や最寄りの税務署等にご確認をお願い致します。
※2022年6月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 株式を相続するときの評価額の計算方法
    1-1.上場株式は4つの株価から最も低いものを適用してよい
    1-2.非上場株式は会社の規模によって計算方法が異なる
  2. 現金や不動産による相続との違い
  3. まとめ

1.株式を相続するときの評価額の計算方法

株式の相続時の評価方法は、「上場株式」と「非上場株式」で異なります。それぞれ詳しく解説します。

1-1.上場株式は4つの株価から最も低いものを適用してよい

上場株式を相続する場合は、「被相続人が亡くなった日の最終価格」をもとに評価額を求めます。ただし、以下の3つの株価が死亡時の価格を下回る場合は、最も低い株価を基準とすることが可能です。

  • 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額
  • 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額

ここでいう「課税時期」は、被相続人が亡くなった日を指しています。具体的な例で考えてみます。

  1. 被相続人が亡くなった日の最終価格……1,500円
  2. 課税時期の月の毎日の最終価格の平均額……1,400円
  3. 課税時期の月の前月の毎日の最終価格の平均額……1,200円
  4. 課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額……1,000円

この場合、最も価格が安いのは④の「課税時期の月の前々月の毎日の最終価格の平均額」です。そのため、このケースで適用される基準の株価は1,000円となります。

なお、この4つの価格については、証券会社が発行する「残高証明書」に記載されていることが一般的です。

1-2.非上場株式は会社の規模によって計算方法が異なる

被相続人が会社を経営していた場合などは、非上場株式を相続することがあります。非上場株式の評価額は、「原則的評価方式」もしくは「配当還元方式」によって求められます。

原則的評価方式では、企業を総資産額や従業員数などで「大会社」「中会社」「小会社」の3つに区分し、それぞれ異なる計算式で評価額を算出することが特徴です。適用される計算方式は以下の通りです。

会社規模 計算方式
大会社 類似業種比準方式
中会社 類似業種比準方式
小会社 類似業種比準方式と類似業種比準方式の併用

一方、配当還元方式では、その株式を保有することによって得られる配当金をもとに評価額を求めます。配当金の利回りは10%で計算するため、比較的算出が簡単な方式です。

ただし、原則的評価方法・配当還元方式どちらを用いる場合でも、算出は税理士へ依頼するようにしてください。とくに原則的評価方法については、会社の財務情報をもとに計算する煩雑なものであるため、自分で判断せずに専門家に正確に算出してもらう方が無難です。

なお、2018年以降は「非上場株式の贈与税の納税猶予及び免除制度」が活用できるようになりました。非上場株式の贈与を受けた場合、先代経営者(被相続人)が亡くなるまで贈与税が猶予もしくは免除になるという特例です。

猶予や免除が受けられるのは会社の後継者に限られるなど、いくつかの制限はありますが、ゆくゆくは会社を引き継ぐ予定がある場合は、こういった制度も有効活用してください。なお、この特例措置を利用するためには、2023年3月31日までに「特例承継計画」を提出する必要があります。

2-2.非上場株式は新制度も活用する

また、2018年以降は「非上場株式の贈与税の納税猶予及び免除制度」が活用できるようになりました。非上場株式の贈与を受けた場合、先代経営者(被相続人)が亡くなるまで贈与税が猶予もしくは免除になるという特例です。

猶予や免除が受けられるのは会社の後継者に限られるなど、いくつかの制限はありますが、ゆくゆくは会社を引き継ぐ予定がある場合は、こういった制度も有効活用してください。なお、この特例措置を利用するためには、2023年3月31日までに「特例承継計画」を提出する必要があります。
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2.現金や不動産による相続との違い

株式による相続と、現金や不動産による相続では税制上どのような違いがあるのでしょうか。

まず、不動産による相続では、様々な税制上の優遇があります。「小規模宅地等の特例」では、被相続人が住んでいた住宅を相続する場合、最大80%まで評価額が圧縮されます。

上場株式を相続する場合、評価額は株価に基づいて算出されるため、大幅に評価額が圧縮されることはありません。不動産の相続で優遇措置を活用できる場合は、株式での相続よりも相続税が抑えられるケースもあります。

一方、現金で相続する場合、不動産のような優遇措置はありません。また、相続資産の価値も変動しないため、相続後のことを考えると配当金を受け取れる株式の方がメリットはあるかもしれません。値上がりによって利益を得られることも株式のメリットのひとつです。

ただし、相続人によっては「変動する資産を相続したくない」「現金の方が分かりやすくていい」という人もいるでしょう。株式を保有している場合は、いずれ相続する家族の意向を前もって確認しておくことも大切です。

まとめ

株式での相続は、株価に基づいて評価額が算出されます。非上場株式の場合、会社の財務状況が良ければ、思いのほか評価額が高くなる可能性もあります。

相続人が株式を相続して困ることのないように、なるべく早いうちから評価額の算出や制度の利用などの検討を進めるようにしてみてください。

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山下耕太郎

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011