米国株価指数先物に投資するメリット・デメリットは?取扱証券会社も

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バブル崩壊以降の日本株式市場が低迷する一方で、米国株式市場は拡大し続けています。株価成長を予想するうえで重要な経済成長力をみても、日本は超高齢化が進んでいることもあり高経済成長は期待できませんが、米国はまだ成長余力があるため株価成長も期待できるといえます。

2021年7月21日時点での世界の株式時価総額は約115兆ドル(約1京2600兆円)です。このうち米国株式市場が49.5兆ドル(5,460兆円)で世界最大。これは日本株式市場の約6.67兆ドル(735兆円)の約7.4倍という大きさです。米国市場の時価総額は世界の約43%を占め、米国株式市場の動向は世界各国の株式市場に影響を与えるため常に注目されています。

1990年1月上旬の米国S&P500指数は約350pt、TOPIXは2,870ptでしたが、2021年7月21日時点ではS&P500指数が約4,360pt、TOPIXは約1,900ptとなっています。S&P500指数は12.45倍に上昇しましたが、TOPIXは以前の水準を回復していません。

米国株式に投資するには、現物株や投資信託、ETFなど様々な方法があります。今回は、米国株式指数先物にフォーカスをあて、メリット、デメリットや取引方法などについて解説します。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年7月22日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。

目次

  1. 先物取引とは
  2. 先物のメリット
    2-1.少額で大きな取引ができる
    2-2.売りから取引できる
    2-3.短期間で大きな利益を狙うことができる
    2-4.一日24時間取引ができる
  3. 先物のデメリット
    3-1.大きな損失が発生する可能性がある
    3-2.特定口座が使えない
    3-3.期限の設定がある
    3-4.現受けができない
    3-5.追証(おいしょう)が発生することがある
  4. 米国株価指数先物取引ができるネット証券
    4-1.大阪上場のNYダウ先物取引(円建て)
    4-2.米国市場の米国株式指数取扱い証券会社
  5. 先物の比較的低リスクな取引手法
    5-1.カレンダースプレッド
    5-2.ロング・ショート
  6. まとめ

1 先物取引とは

先物取引とは将来の一定の期間(3月、6月、9月、12月物が主)に、現時点で購入(売却)した価格で取引することを約束する取引のことで、期日までに反対売買することで決済できる取引です。期限が決められているため、先物は中心限月と言って集中的に取引される銘柄が3ヵ月ごとに移動します。

商品先物の決済には現受け(金など対象商品の現物を受け取る)ができますが、株式指数先物は差額決済が主です。

2 先物のメリット

先物取引のメリットは以下の通りです。

2-1 少額で大きな取引ができる

先物のメリットは少ない金額で大きな取引ができることです。

大阪取引所上場のNYダウ先物(円建て)取引を履行するための必要証拠金(先物取引を始めるための預入金)は15万3,700円(2021年7月26日時点)です。NYダウ先物の取引単位は100円なので、NYダウが3.5万ドルの場合、想定元本は3.5万ドル×100円×1単位=350万円に相当し、必要証拠金の約23倍に相当する金額の取引ができます。

例えば、楽天証券が取り扱っている米国株式指数先物は下記表の6銘柄です。取引に必要な証拠金は想定元本が大きいため約1万ドル~1.8万ドル必要ですが、18倍前後の取引ができます。

楽天証券が取扱う米国株式先物

銘柄 *価格 取引単位 約定総額(ドル) 取引証拠金(ドル) 倍率
E-mini S&P 500(Dollar) 4,359.50 50 217,975.00 12,100 18
E-mini S&P Mid Cap 400 2,644.50 100 264,450.00 14,850 18
E-mini S&P Small Cap 600 1,309.10 100 130,910.00 9,350 14
E-mini NASDAQ-100 14,928.50 20 298,570.00 17,600 17
E-mini Dow($5) 34,709.00 5 173,545.00 9,900 18

*2021年7月22日時点

2-2 売りから取引できる

先物は売りから取引することができます。株価が何らかの要因で下落しそうな場合に先物を売却することで、保有株のヘッジをすることもできます。

2-3 短期間で大きな利益を狙うことができる

先物1単位にはそれぞれ取引単位が設定されており、E-mini S&P Mid CAP 400やE-mini S&P500 Small Cap 600については100倍に設定されています。つまり、少ない金額で大きな取引ができるため、思惑通りに相場が動けば短期的に大きな利益を得ることができます。

2-4 一日24時間取引ができる

楽天証券が取り扱っている先物は、24時間取引可能な電子取引システムGLOBEX(CMEグループ運営)に接続しているため、いつでもリアルタイムで取引ができます。

一方、大阪上場のNYダウ先物(円建て)の取引時間は、東京時間の午前8時45分~午後3時15分及び午後4時30分~翌朝5時30分です。つまり、米国の取引時間をほぼ網羅(米国冬時間は日本時間の朝6時まで)しています。

3 先物のデメリット

一方、先物取引には以下のようなデメリットもあります。

3-1 大きな損失が発生する可能性がある

先物最大のデメリットは、相場が思惑と逆に動いてしまった場合に大きな損失が発生する可能性があることです。損失が膨らむと、追証(おいしょう=追加の保証金)が取引所から請求され、期限までに入金する必要があります。期限までに入金できない場合には、強制的に反対売買が執行されます。

また、ロスカットルール(強制決済)が設定されているため、大きな損失が発生した場合は、建玉(たてぎょく=ポジション)が強制的に決済されます。損失金が補えない場合には不足額が請求されます。

3-2 特定口座が使えない

先物は特定口座を使うことができないため、取引口座は一般口座になります。特定口座の場合、確定申告に必要な資料は証券会社が用意してくれますが、一般口座にはその制度がありません。確定申告用の資料(売買履歴など)は自身で作成する必要があります。

3-3 期限の設定がある

先物には期限が設定されているため、その日までに決済をする必要があります。利益が出ていれば良いのですが、決済日までに反対売買(差金決済)をする必要があります。含み損が発生した場合も、含み益に転じるまで保有し続けることはできず、決済日までの保有に限定されます。

3-4 現受けができない

金や穀物を買建て(先物を買った場合)した場合の決済方法には、反対売買する方法と、金や穀物の現物を受け取る方法があります。しかし、株式指数については現受けをすることができません。よって、選択肢は反対売買(差金決済)のみです。

3-5 追証(おいしょう)が発生することがある

株式指数先物は変動が激しいことに加えレバレッジが効いているため、相場が思惑と反対に動いてしまった場合には大きな評価損が発生する場合があります。時には証拠金額を上回る損失が発生し、追加の証拠金が請求(追証)されます。

追証には期限があり、それまでに入金しない場合、強制的に決済されてしまいます。そのため、自身でロスカットルールをつくり損失額をコントロールする必要があります。

4 米国株価指数先物取引ができるネット証券

日本から米国株式指数先物に投資する方法は、大阪取引所上場のNYダウ先物(円建て)に投資する方法と、海外市場に上場している先物に投資する方法の2つです。

個人が海外市場に上場している先物に取引する場合は楽天証券やインタラクティブ・ブローカーズ証券などに限られます。

4-1 大阪上場のNYダウ先物取引(円建て)

インターネットを利用し、NYダウ先物取引を個人向けに取り扱っている証券会社には、SBI証券、auカブコム証券、光世証券、松井証券、フィリップ証券などがあります。NYダウ先物を取引する場合は、総合口座のほか、先物・オプション口座を開設する必要があります。

大阪上場のNYダウ先物取引は円建てのため、為替のリスクを心配する必要がありません。また夜間取引ではリアルタイムに取引ができるため、米国市場の醍醐味が体験できます。

4-2 米国市場の米国株式指数取扱い証券会社

個人向け、海外市場上場の株式指数先物を取り扱っている証券会社は限られており、楽天証券とインタラクティブ・ブローカーズ証券などがあります。

楽天証券で取り扱っている米国株価指数先物は5銘柄(E-mini S&P 500、E-mini S&P Mid Cap 400、E-mini S&P Small Cap 600、E-mini NASDAQ-100、E-mini Dow($5))です。委託証拠金額は銘柄により異なりますが、手数料は1枚あたり4.95ドルです。なお、委託証拠金は市場動向により変動するため、注意する必要があります。

インタラクティブ・ブローカーズ証券は幅広い銘柄を取り扱っています。日本語対応が可能ですが、英語表記が多いため英語が苦手な方には取り扱いにくいかもしれません。

5 先物の比較的低リスクな取引手法

先物取引にも比較的低リスクな取引手法があります。それは、市場の歪みを狙うカレンダースプレッドとロング・ショートという取引手法です。

5-1 カレンダースプレッド

カレンダースプレッドとは、同じ原資産の限月間(例えば9月限と12月限)における価格差に注目して行うスプレッド取引のことです。片方の限月を買い、もう片方を売るため、大きな利益は狙えませんが、リスクを抑えることができます。

5-2 ロング・ショート

ロング・ショートは2銘柄間でおこなう取引で、割高な銘柄を売り、割安な銘柄を買うという手法です。取引をするにあたっては、各資産の相関を調べる必要があります。連動性が高い銘柄を組み合わせることでリスクを回避することができるからです。

相関係数とはマイナス1からプラス1までの値で、相関の強さを表しています。マイナス1に近いほど負の相関関係が強く(反対の動きをする)、プラス1に近いほど正の相関関係が強い(同じ動きをする)という意味です。

楽天証券が取り扱っている米国先物指数6銘柄の相関係数(1年間)は0.9を上回っているため、強い相関関係にあることが分かります。

ロング・ショートとは、これら6銘柄のうち2銘柄間のスプレッドの推移を分析し、平均値とのかい離(価格差)に注目した取引です。価格差が広がった場合に、割安な銘柄を購入して割高な銘柄を売却し、価格差が縮小したところで反対売買しポジションを解消するという取引手法です。正の相関関係にある2銘柄の売りと買いを同時にするため単純な売買よりはリスクが軽減されます。

楽天証券米国株式先物指数の相関マトリクス

銘柄 S&P 500 S&P Mid Cap 400 S&P Small Cap 600 ダウ平均 ナスダック100
S&P 500 1.00 0.97 0.96 0.99 0.97
S&P Mid Cap 400 0.97 1.00 0.99 0.98 0.95
S&P Small Cap 600 0.96 0.99 1.00 0.96 0.95
ダウ平均 0.99 0.98 0.96 1.00 0.94
ナスダック100 0.97 0.95 0.95 0.94 1.00

まとめ

先物は小さな資金で大きな取引ができるため、短期的に大きな利益を狙うことができます。一方、思惑と反対に動いた場合には、大きな損失が出る可能性もあります。

まずは、NYダウ先物(円建て)を値動きが比較的小さな東京時間に取引し、徐々に米国時間デビューをするのが無難です。先物取引を始めるにあたっては、自身でロスカットルールを作り厳格に守るようにしましょう。

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藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。