2018年ソーシャルレンディングの主なニュース振り返りと今後の予測

2018年も年の瀬が近づき、一年を振り返る時期になってきました。今年のソーシャルレンディング業界を振り返ると、良い報告もあればリスクの表面化など、様々な問題が起きた一年だったと言えます。

上半期はラッキーバンクやグリーンインフラレンディングの返済遅延問題などネガティブな話題が多かった印象ですが、下半期はどのような話題が注目されたのでしょうか。ひとつひとつ振り返ってみたいと思います。

目次

  1. maneoマーケットに業務改善命令
    1-1.maneoマーケットでは監視体制を強化
    1-2.ガイアファンディングで大幅な遅延が発生
  2. ソーシャルレンディング各社の資産運用状況が好調
    2-1.SBIソーシャルレンディングの融資残高が300億円を突破
    2-2.クラウドバンクが累計募集金額400億円を突破
    2-3.クラウドクレジットの運用資産残高が100億円を突破
  3. ソーシャルレンディング業界で初のTVCM放送開始
  4. 2019年への展望
    4-1.2018年度のクラウドファンディング全体の市場規模は2000億超に
    4-2.情報開示と監視体制の強化が望まれる
    4-3.不動産投資クラウドファンディングとの差別化
  5. まとめ

1 maneoマーケットに業務改善命令

ソーシャルレンディング業界最大手であるmaneoマーケットに対し、7月13日に金融庁から行政勧告が下されました。きっかけは、6月に発覚したJCサービスとグリーンインフラレンディングの問題です。同社は、『政治家への献金など、maneoマーケットを通じて募集した資金を投資家に提示した目的以外に流用した』として報道されました。

同時に、投資家への返済が、一斉に遅延するなど運用体制に問題があり、金融庁から業務改善命令が出されることとなりました。

1-1 maneoマーケットでは監視体制を強化

行政勧告がJCサービスではなく、maneoマーケットに下された理由は、maneoマーケットが第二種金融商品取引業免許を取得している事業者だからでした。maneoマーケットに対する行政勧告の内容は、以下の通りです。

(1)今般の法令違反及び投資者保護上問題のある業務運営について、責任の所在を明確にするとともに、発生原因を究明し、改善対応策を策定、実行すること。

(2)金融商品取引業者として必要な営業者の選定・管理に関する業務運営態勢等を再構築すること。

(3)本件行政処分の内容及び改善対応策について、全ての顧客を対象に、適切な説明を実施し、結果を報告すること

(4)顧客からの問い合わせ等に対して、誠実かつ適切に対応するとともに、投資者間の公平性に配慮しつつ、投資者保護に万全の措置を講ずること。

(5)上記(1)から(4)までの対応について、平成30年8月13日までに、進捗状況及び対応した結果について報告すること。

maneoマーケットは、いわゆるmaneoグループと呼ばれる複数のソーシャルレンディング会社と提携し、第二種金融商品取引業免許を取得していない会社に代わって、投資家に対する募集業務を行っていました。

しかし、募集代行業務において、融資先のチェックや資金の用途を管理する体制に問題があり、グリーンインフラレンディング関連の返済遅延が発生したと見られています。

行政勧告を受けたmaneoマーケットでは、内部体制及び融資先の監視強化、募集運用時のスキームの強化などを行うこととなりました。

1-2 ガイアファンディングで大幅な遅延が発生

7月に行政勧告を受けたmaneoマーケットは、翌月に監視体制などの強化を発表しました。しかし、11月中旬に、maneoマーケットのシステムを利用して募集を行っていたガイアファンディングにおいて、運用中だった全案件で大幅な遅延が発生しました。

残念ながら、11月末時点でも原因は明らかにされていません。maneoマーケットが監視体制を強化する最中、このような問題が起きてしまいました。maneoマーケットを通じて資金募集を行っていたガイアファンディングは、この時、アメリカの不動産投資案件を中心に運用を行っていました。

複数の業者が海外投資に関わることによって、不透明な資金の流れが顕在化したのか、それとも、案件自体に不備があったのか、色々な憶測を呼んでいる状態です。maneoマーケットとガイアファンディングの原因究明と、今後の対応についての発表が待たれるところです。

2 ソーシャルレンディング各社の資産運用状況が好調

ソーシャルレンディング各社の運用状況を見ると、大手を中心に順調に推移していることがわかります。

2-1 SBIソーシャルレンディングの融資残高が300億円を突破

累計募集金額600億円を突破して、maneoマーケットに次ぐ第2の規模を持つSBIソーシャルレンディング。9月18日に融資残高が250億円を突破、12月6日には11月末時点で融資残高300億円を突破したとの発表がありました。2月に融資残高が200億円を突破し、9月に250億円、11月に300億円と2018年後半にかけて大きく金額を増やすことに成功しています。

*画像はSBIソーシャルレンディングのウェブサイトより

2017年度でようやく黒字化を達成したSBIソーシャルレンディングですが、2018年も事業は順調に推移しています。今年は2017年以上の黒字化、そして、累計赤字の解消が待たれるところです。

2-2 クラウドバンクが累計募集金額400億円を突破

maneoマーケット、SBIソーシャルレンディングに次ぐ累計募集金額を誇るのが、クラウドバンクです。11月にクラウドバンクも、累計募集金額が400億円を突破したと発表しました。発表と同時に、投資家への分配金利2%を上乗せする、大規模なキャンペーンを実施しています。

maneo関連のネガティブなトピックが多い状況下で、SBIソーシャルレンディングとクラウドバンクが順調に数字を伸ばしています。

2-3 クラウドクレジットの運用資産残高が100億円を突破

海外案件を専門に取り扱うクラウドクレジットでも、運用資産残高が100億円を突破したとの発表を8月に行いました。

クラウドクレジットの運用資産残高*画像はクラウドクレジットのウェブサイトより

海外案件を取り扱うソーシャルレンディング会社がまだまだ少ない中、日本のソーシャルレンディング市場の黎明期から、海外案件を積極的に取り扱っているクラウドクレジット。2017年末に、テレビ番組で取り上げられたことをきっかけに大きく会員数を伸ばし、運用資産残高を伸ばすことにも成功しています。

現在は未だ黒字化を達成できていないため、2018年度の決算情報に期待がかかるところです。

3 ソーシャルレンディング業界で初のTVCM放送開始

2018年度のソーシャルレンディング業界に関する明るい話題といえば、2社がテレビCMの放送を開始したことが挙げられます。

3-1 SBIソーシャルレンディングがBS放送でTVCMを放送

SBIソーシャルレンディングは、10月からBS放送でテレビCMを放送しています。放送の狙いとして、ソーシャルレンディングをもじって、『ソシャレン』という愛称を定着させようとする内容になっています。

株やFXに比べると、まだまだ市場規模の小さなソーシャルレンディング。知名度の低さが仇になって、どのような投資なのかがイメ-―ジしにくく、ソーシャルレンディング自体についてわからない人は多くいます。

ソシャレンの愛称を世の中に定着させ、どのような投資なのかをCMで流すことで、ソーシャルレンディングを身近な投資対象として広く認識させ、市場を拡大していきたいという狙いが見えてきます。

3-2 クラウドクレジットもテレビCMを放送

SBIソーシャルレンディングに先んじること1ヶ月。9月下旬にクラウドクレジットが、中京圏で一週間限定のテレビCMを放送しました。内容はソーシャルレンディングの名称を伝えると同時に、社会貢献ができる投資手法であることを多くの人に知ってもらうことを企図した内容になっています。

短期間・エリア限定のテレビCMですので、あくまでテスト的な意味合いが強いですが、地上波 テレビでCMを流した結果、多くの人の目に「ソーシャルレンディング」の文字が印象に残ったことでしょう。

テレビの媒体価値が下がったと言われる現在でも、やはり、テレビは主要なメディアであることに変わりありません。テレビCMが放送された背景には、メジャーな投資手法としてソーシャルレンディングの認知を広く図っていこうという狙いがあったと考えられます。

テレビCMで当たり前のようにソーシャルレンディングという言葉が聞かれるようになれば、株やFXに並ぶ投資として知られるようになり、今後の飛躍のきっかけとなるでしょう。

4 2019年のソーシャルレンディング市場の展望

2018年度のソーシャルレンディング業界の出来事を振り返り、改めて2019年にはどのような動きが見られるのかについても考えてみましょう

4-1 2018年度のクラウドファンディング全体の市場規模は2000億超に

12月3日に矢野経済研究所が、2017年度の国内クラウドファンディング市場に関する調査結果と将来展望を公表しました。調査によると、2017年度の国内クラウドファンディング市場規模は新規プロジェクト支援ベースで前年度比127.5%増の1,700億円となりました。

国内クラウドファンディング市場規模

そのうち、貸付型のクラウドファンディングであるソーシャルレンディングは、2017年度の国内クラウドファンディング市場において90.2%を占めており、約1534億円の市場規模となっています。

貸付型クラウドファンディング市場比率

2018年度は、前年度比20.3%増の2,044億円の見込みとなっており、引き続き市場は拡大される予測が出されています。

4-2 情報開示と監視体制の強化が望まれる

多くの投資家が望むのが、融資先の社名など、ソーシャルレンディング投資に関する情報開示と監視体制の強化です。6月に金融庁から、ソーシャルレンディング会社に向けて、投資家保護の観点でこれまで匿名だった融資先の社名を公開する通達が行われました。

金融庁からの指導を受け、ソーシャルレンディング各社は2019年以降、融資先の名前を明らかにするのか、それとも、これまで通りに匿名のまま案件を組成するのか、選択を迫られることになります。

投資家たちはソーシャルレンディング各社の情報開示方針を見て、投資家に対して誠実な対応を取る会社を選ぶことになるでしょう。同時に、融資先で資金が適切に投下されているのか、融資先で展開される会社の事業が妥当なのか、監視体制の強化も望まれます。

4-3 不動産投資クラウドファンディングとの差別化

ソーシャルレンディングと類似する投資サービスとして、不動産投資型クラウドファンディングがあります。現在、有名なところとしては、ソーシャルレンディングも手がけており上場企業のロードスターキャピタルが運営しているオーナーズブックや、東証マザーズ上場企業GA Technologiesが運営するRenosy、そして、この11月からサービスを開始したCREAL(クリアル)などがあります。

今年の8月10日にオーナーズブックが不動産投資クラウドファンディングで「秋葉原オフィスビル」の募集を開始した際は、開始数分で2億6,500万円満額の募集を完了し、投資家の間でも大きな話題となりました。

不動産投資型クラウドファンディングは、投資後、自動的に分配金が振り込まれるという、ソーシャルレンディングと類似した特徴があります。しかも、『不動産特定共同事業法』に則って運営されているため、融資先の会社や運用物件、担保物件などの詳細が明らかにされるといった違いや、運用終了時にキャピタルゲインが上乗せされる可能性があること、逆に運用終了時に損失が発生した場合には一部を事業者が負担する優先劣後スキームを採用しているサービスが多いなどの違いがあります。

CREALの管理画面*CREALの会員登録後に閲覧できる案件詳細画面

*CREALの優先劣後スキームのイメージ

情報開示の面や投資家保護の面においては、ソーシャルレンディングをはるかに上回るものがあり、投資家は開示された情報をチェックしながら、自分で安全性や妥当性を判断して投資できるようになっています。

不動産投資型クラウドファンディングは、上場企業など社会から高い評価を受けている企業や資金力のある会社が運営しており、投資家からの信頼を集めることに成功しています。ソーシャルレンディング業界がこれ以上の成長を遂げていくためには、不動産投資型クラウドファンディングに劣る点を補うとともに、勝る点を見つけていかなくてはいけないでしょう。

ただし、投資家の視点として利用しやすい投資手法が増えるのは、願ったり叶ったりと言えます。ソーシャルレンディング、不動産投資型クラウドファンディング、それぞれに分散投資をしても良いでしょうし、より安全な方、より収益性の高い方を求めていく選択肢が増えることは大変喜ばしいことです。

まとめ

2019年にソーシャルレンディング業界で伸びていく会社は、投資家からの信頼性と安全性を確保できた会社になることが予測されます。例えば、SBIソーシャルレンディングは今年後半に、いくつかの返済遅延を発生させましたが、速やかに投資家に対して詳細を連絡、担保物件を売却や競売にかけることで元本に近い金額の返済を行っています。

それに対し、maneoマーケット経由で募集されていたグリーンインフラレンディングは、投資家への返済が滞ったままであり、ラッキーバンクもほぼ同様の状況です。信頼を集めるソーシャルレンディング会社とは、必ずしも貸し倒れを起こさない会社ではなくなっています。

これまでにクラウドクレジットも貸し倒れを起こしたことはありますが、投資家からの信用を損なっているわけではありません。事前に貸し倒れリスクを投資家に説明し、分散投資を呼びかけるなどの情報発信を丁寧に行うなどの取り組みなどもあって、今も順調に投資家の登録数を増やしています。

リスクを積極的に開示し、問題が起きたときも素早くリカバリーできるソーシャルレンディング会社、損失に対してリカバリー力のあるソーシャルレンディング会社、スピーディーに対応して投資家の損失を最低限に抑える努力をするソーシャルレンディング会社などが、2019年に大きく数字を伸ばしていくでしょう。

投資家軽視の姿勢が明らかで自社の利益ばかりを優先するようなソーシャルレンディング会社は、多くの投資家から信用を損ない、好条件で募集をかけても資金が集まらなくなるでしょう。

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