金や銀といった貴金属は古くから投資の対象となっていました。貴金属は、それ自体に価値がある実物資産です。そのため、株式投資のように元本がゼロになる可能性は低いといえます。そうした性質の違いから、分散投資の対象や有事の際の資金避難先の有望な選択肢とされています。
そこで今回は銀を対象とした投資信託・ETFについて、銀相場の概要や投資信託、ETFのメリットデメリットを説明した上で、主な商品にも触れて行きます。銀投資を検討している方はぜひ参考にしてください。
※本記事は2020年9月7日現在の情報を基に執筆しています。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 銀の投資信託・ETFとは
1-1.銀相場の特徴
1-2.銀投資の方法
1-3. 銀の投資信託・ETFの概要 - 銀ETFのメリットとデメリット
2-1.銀ETFのメリット
2-2.銀ETFのデメリット - 国内で購入可能な銀ETF一覧
- まとめ
1.銀の投資信託・ETFとは
銀相場の特徴や銀投資の種類、銀の投資信託・ETFの概要をみていきましょう。投資商品としての銀の特徴を把握することで判断材料の1つにできます。
1-1.銀相場の特徴
銀は金と比較すると安価で、投資対象としても一定の需要があります。実際の銀の需要は、工業用が半数以上を占めており、電子部品分野や太陽光発電機器などで使用されることから、将来的な需要も見込まれています。
銀の価格は、工業用需要の変動によって値動きするという側面があり、金とは異なる値動きをすることも少なくありません。また、銀の市場規模は金と比較すると小さいため、値動きが大きくなりやすい傾向にある点には注意が必要です。
一方で、銀は農産物や原油などの商品価格と連動しやすい傾向があり、経済がインフレ状態になったときに、資産価値が減少しにくいという側面があります。
1-2.銀投資の方法
銀投資の方法は以下の3つに分類されます。
項目 | 現物投資 | 投資信託・ETF | 銀先物 |
---|---|---|---|
仕組み | 銀の現物を購入する | ファンドにお金を預けて運用をしてもらう | 自分で先物を売買する |
リスク | 価格変動リスクはあるものの、ゼロにはならない | 価格変動リスクあり。ETFは信用取引で大幅に価格が下落すると、大きな損失がでるリスクがある | レバレッジをかけすぎると損失が大きくなるリスクがある |
購入方法 | 貴金属販売会社や証券会社で購入 | 証券会社で投資信託口座・株式取引口座を開設して購入 | 証券会社で先物口座を開設して購入 |
銀投資には様々な投資方法があるため、それぞれのリスクを把握しておきましょう。なお、多くの証券会社で取り扱いがあるため、商品の購入は難しくありません。
1-3.銀の投資信託・ETFの概要
銀の投資信託・ETFでは、投資家から集めた資金をファンドが運用します。国内では、銀を扱う投資信託はETF(上場投資信託)がほとんどです。上場投資信託とは、株式市場に上場している投資信託のことで、通常の投資信託とは異なり、株式市場の開場時間中は常に値が動きます。
ETFは、銀価格や先物価格に連動して値動きをするように組成されていることが多く、銀が値上がりすればETFの価格も上昇し、銀が値下がりすればETF価格も下落するという仕組みです。ちなみに、ETFの場合は信用取引口座を開設して、信用取引の条件を満たせば信用買いや空売りが可能です。空売りであれば、下落局面でも利益を上げることができます。
2.銀の投資信託・ETFのメリット、デメリット
銀の投資信託・ETFには以下のようなメリットとデメリットがあります。両方を把握したうえで運用を検討してみましょう。以下では取引の主な対象となるETFについて解説します。
2-1.銀ETFのメリット
銀ETFのメリットは以下の3点です。少額の資金で購入できることやリスクヘッジの選択肢の1つとなりえることなど、商品の特性把握が大切です。
証券口座を開設済みなら少額資金ですぐに購入できる
国内の銀ETFは、国内の主要証券口座を開設していれば誰でも即日購入可能です。最低購入価格は1万円以下のものもあるため、大きな資金がなくても銀投資をスタートできます。
信用口座を開設すればレバレッジをかけられる
銀ETFのうち、信用取引に対応しているものであれば、信用口座を開設することで手持ちの資金以上のETFを購入可能です。信用取引の最低保証金である30万円を担保とする場合は、ETFを100万円分購入できることになります。このように小さな資金でも大きなロットでの投資を実現可能です。
また、信用口座では買いだけでなく、空売りも可能です。銀が高値をつけたときに空売りを行い、その後価格が下落すれば、利益を出せる可能性があります。ただし、レバレッジ取引にも空売りにもレバレッジ倍率(証拠金額に対する購入額の倍率)が高いほど相応のリスクが伴う点には注意が必要です。
リスクを分散できる
貴金属マーケットは、株式市場や為替市場とはある程度の相関はあるものの、局面によっては値動きが大きく異なります。金は、株式市場が下落する有事の際に上昇しやすい傾向にあり、銀も金の値動きと同様の動きをすることが多いことから、戦争や経済制裁など地政学的リスクヘッジの1つの手段として選ばれるケースも少なくないといえます。
銀などの貴金属ETFは、株式や債券を対象とした投資信託のリスクヘッジとしての役割を果たすものです。
2-2.銀ETFのデメリット
銀ETFのデメリットについて触れていきます。
大きく値が動くことがある
メリットにもなり得るのですが、銀のETFは時として値動きが大きくなります。例えば、純銀投資信託(ETF)では、新型コロナウイルスの感染が拡大した2020年2月下旬から3月後半にかけて大きく値を下げ、3月19日には1日の値幅が620円ほどの変動を記録しました。
その日の最高値は4,610円であるため、100口購入をしていた場合、最大瞬間風速では6万2,000円の含み損を抱えることになります(手数料は考慮していません)。
そして、同銘柄は2020年9月7日現在、1口8,550円と大きく上昇を遂げています。これだけを見れば、値動きが大きくハイリターンが狙える銘柄といえるものの、反対に損失を被るリスクは無視できません。
2020年9月時点で高値をつけている
銀価格は、2020年3月を底値として、短期間で急上昇を見せており、価格は2倍となりました。さらなる上昇も期待されますが、高値圏にあることから大きな下落も想定されます。現在の高値の理由は、新型コロナウイルスの感染拡大による世界的経済の低迷から脱却するための経済施策への期待にあります。
また、もともと銀のニーズの6割は工業用であり、銀の工業需要の回復も期待されることから価格が上昇傾向にある状態です。この上昇相場がさらに続くことも十分に想定できますが、高値圏では値動きが激しくなる傾向もあり注意が必要だといえます。
3.国内で購入可能な銀ETF一覧
国内証券会社で購入可能な銀ETFは以下の通りです。
項目 | 【1542】純銀上場信託(現物国内保管型) | 【1673】WisdomTree 銀上場投資信託 |
---|---|---|
最低買付金額 | 8,490円 | 26,520円 |
信託報酬 | 0.55% | 0.49% |
総資産額 | 78億8,000万円 | ― |
現物の受け取り | 一定口数保有で可能 | なし |
管理会社 | 三菱UFJ信託銀行 | ウィズダムツリー・マネジメント・ジャージー・リミテッド |
特色 | グラム円単位の銀地金の理論価格との連動を目指すETF | ロンドン地金市場協会の企画に基づく銀地金に投資して、銀価格との連動を目指すETF |
※最低買付金額は2020年9月4日現在
※純資産総額は2020年7月31日現在
2020年9月7日現在、国内で購入可能な銀のETFは上記2銘柄のみです。純銀上場信託とWisdomTree銀上場投資信託を比較すると、純銀上場信託のほうが取引は活発です。信託報酬に大きな差はないものの、最低買付金額などからニーズに合った方を選択しましょう。
まとめ
銀は新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした、経済刺激策の期待、需要の高まりなどから大幅に価格が上昇しており、投資家の注目を受けています。銀への投資方法の中でも、手続きが簡単で手軽に行えるのがETFの購入です。
銀価格は高値圏にあることから、下落リスクはあるものの、信用取引であれば空売りも可能です。市場の動きを注視しながらポジションを変更すると良いでしょう。
鈴原 千景
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