金融商品への投資では、主に、対象とする商品を1回でまとめて購入する「一括投資」と、少額で継続的に投資する「積立投資」に分けることができます。積立投資と一括投資にはそれぞれメリット・デメリットがあるので、自身に合った投資方法を選ぶ際は、その特徴や注意点をよく把握した上で検討することが大切です。
この記事では、積立投資と一括投資の違いについて詳しく解説するので、どちらを選べばよいかで悩んでいる方は、参考にしてみてください。
目次
- 積立投資のメリット・デメリット
1-1.少額・分散投資によるリスク軽減
1-2.手間が少ない
1-3.長期継続による複利効果を期待できる
1-4.リターンが小さい
1-5.投資コストが大きい - 一括投資のメリット・デメリット
2-1.短期間で大きなリターンが狙える
2-2.複利効果は積立投資より大きい
2-3.まとまったお金が必要
2-4.リスクが大きい
2-5.手間がかかる - 積立投資が向いている人
- 一括投資が向いている人
- まとめ
1 積立投資のメリットとデメリット
まずは積立投資の詳しい特徴から確認してみましょう。
1-1 少額・分散投資によるリスク軽減
積立投資は、定期的に少額ずつ金融商品を購入する投資方法であるため、資金負担が少なく、長期継続をしやすいのが特徴です。
株式投資や不動産投資などでは、最初にまとまったお金が必要になりますが、積立投資では、サービスによって毎月100円から投資できる商品も提供されているので、生活資金を圧迫することなく行うことができます。
また、積立投資は定期・定額で中長期に渡って購入し続ける方法であるため、投資時期(時間)を分散することになり、購入価格が平準化されます。これをドルコスト平均法といい、価格変動リスクの軽減する効果が期待できます。
例えば、現在1口1万円の投資信託を10万円で一括購入する場合と、1万円を毎月10カ月にわたって購入する場合、時価の変動に応じて購入口数は以下のように変わっていきます。
項目 | 時価 | 一括投資 | 積立投資 |
---|---|---|---|
1ヶ月目 | 1万円 | 10口購入 | 1口購入 |
2ヶ月目 | 1.25万円 | ― | 0.8口 |
3ヶ月目 | 1万円 | ― | 1口 |
4ヶ月目 | 0.8万円 | ― | 1.25口 |
5ヶ月目 | 0.5万円 | ― | 2口 |
6ヶ月目 | 0.5万円 | ― | 2口 |
7ヶ月目 | 1万円 | ― | 1口 |
8ヶ月目 | 1.25万円 | ― | 0.8口 |
9ヶ月目 | 1万円 | ― | 1口 |
10ヶ月目 | 1.25万円 | ― | 0.8口 |
合計 | ― | 10口購入 (平均単価:1万円) |
11.65口購入 (平均単価:0.86万円) |
一括投資では、1ヶ月目に1万円の投資信託をまとめて購入しているので、10ヶ月目の保有口数も10口のままとなっています。その結果、最終的な評価額は1.25万円×10口=12.5万円となります。
他方、積立投資では、毎月1万円ずつと決めて購入するため、投資信託の評価額が高いときには少ない量を、安いときには多く購入しているのが特徴です。その結果、10ヶ月目の保有口数は11.65口と一括投資の場合よりも多くなり、評価額も1.25万円×11.65口=14.6万円と高くなっています。
株式などの金融商品の価格は相場の変動に応じて下落と上昇を繰り返すため、一括投資では下落時にその影響を直接受けることになります。一方、積立投資では大きく下げた場合でもその分多く買うことになるため、平均購入価格が下がり、一括投資より評価損の幅が小さく済みます。さらに時価が上昇に転じれば利益を早めに確保できるのも特徴です。
1-2 投資の手間が少ない
積立投資では毎月決まった商品を定期・定額で購入することができるので、投資の手間を少なくすることができます。積立投資のサービスを提供している多くの金融機関や証券会社では、自動買い付けの設定が可能で、支払いも銀行口座から自動的に引き落としてくれるので、入金手続きの手間もかかりません。
1-3 長期継続による複利効果を期待できる
投資で得た利益を再投資する方法を複利運用と言います。積立投資を複利で運用すると、毎月得た利益がその都度元本に組み入れられるので、長期で継続するほど複利効果の恩恵も多くなり、将来の目標額も達成しやすくなります。
一括投資でも利益の再投資が可能な金融商品で長期間運用すれば、積立投資以上の効果を期待できる場合もありますが、相場の影響を受けやすいので、元本を毀損するリスクもあります。
1-4 リターンが小さい
投資におけるリターンは、通常、投資額の大きさに比例します。積立投資は決められたタイミングで少額ずつ商品を購入する投資方法なので、上昇相場でもリターンは小さくなりやすいのがデメリットです。
例えば、10万円を一括投資した場合と毎月1万円の積立投資をした場合では、時価が20%上昇すれば、一括投資の含み益は10万円×0.2=2万円で、積立投資では1万円×0.2=0.2万円の含み益となります。
このように、積立投資は一括投資と比べて価格変動リスクの影響が小さいぶん、利益額も小さくなります。積立投資で短期間に利益の増大を図りたいときは、例えば毎月1万円の積立投資とボーナス時期に20万円の一括投資を行うなど、一括投資との併用も必要になります。
1-5 投資コストが大きい
積立投資で継続的に運用していく場合、投資コストは一括投資よりも大きくなります。一般的に金融商品の購入には、購入時手数料・運用期間中の管理費用・解約時手数料などの投資コストがかかります。積立投資では毎月の購入や長期の運用を伴うため、一括投資以上に投資コストが負担になります。
そのため、積立投資の金融商品を選ぶ際は、コストの安いものも優先して選ぶことも重要です。また、売却益や分配金に対する税金も利益の減少に繋がるため、つみたてNISAなどの税制優遇制度を活用するのがおすすめです。
2 一括投資のメリット・デメリット
次に一括投資の詳しい特徴を確認しましょう。
2-1 短期間で大きなリターンが狙える
株式投資やFXをはじめとする一括投資では、相場が急上昇した場合など短期間で大きなリターンを狙えるのが特徴です。
例えば、100万円を1ヶ月1万円で積立投資する場合と、一括投資する場合、翌月に30%上昇しただけでも両者の差は100倍になります(積立投資の含み益3,000円、一括投資の含み益30万円)。
また、相場が低迷している時に大きなリターンが狙えるのも特徴です。相場が低い時に多額の資金で一括投資すれば、相場の回復時や高騰時には大きなリターンが得られます。一方、積立投資では毎月の掛金(投資額)は小さいため、回復時等でのリターンも小幅にとどまります。
2-2 複利効果は積立投資より大きい
積立投資でも複利効果は期待できますが、今までに得た利益を含めた一括投資のほうが投資額は大きいため、そのぶん複利効果も大きくなります。ある程度のリスクは伴うものの、より早く目標額を達成したいときは資産形成スピードの早い一括投資のほうがおすすめです。
2-3 まとまったお金が必要
一括投資は短期で大きなリターンを狙えるものの、そのためにはまとまった資金が必要です。例えば、証券取引所で公開されている上場企業の株式を購入する場合、1株5,000円の銘柄なら取引できる最低購入単位(=単元株数)は、5,000円×100株=50万円となります。
株価は銘柄によってそれぞれ異なるので、これ以下で投資できる場合もあれば、100万円以上が必要になる場合もあります。しかし、いずれにしても一月100円からでも投資できる積立投資と比較すれば、資金面でのハードルは高いと言えます。
2-4 リスクが大きい
投資資金を増やせば、そのぶんリスクも高くなります。そのため一括投資では、経済環境が悪化して下げ相場に突入すれば、含み損は積立投資と比べてかなり大きくなります。特に投資初心者の方が、このような大きな下落を経験すると怖くなって投資自体を断念するケースも少なくありません。
下落時の影響を小さくするには投資額を控えることも重要ですが、リターンも小さくなります。このように一括投資ではリスクとリターンのバランスを常に見極める必要があるので、ある程度の投資経験や知識が求められます。
2-5 手間がかかる
短期で大きなリターンを狙う場合、相場動向の見極めや、将来性・成長性の期待できる銘柄選びが欠かせません。時価の変動がリターンに直結するので、経済全般から相場に影響を及ぼす可能性のある政治情勢や社会動向、企業の状況なども個別に注視する必要があります。
このように、一括投資では、積立投資に比べて市場動向の監視等をするための時間や手間が大きな負担になる場合もあります。
3 積立投資が向いている人
積立投資は、一度の投資に大金を準備しにくい方や、毎月の余裕資金の一部等で投資したい方などにおすすめです。金融機関や証券会社によっては、100円や1,000円から利用できるサービスも提供されています。少ない金額から徐々に増やして長期にわたって継続していけば、将来の資産形成も実現しやすくなります。
また、積立投資は、あまり投資の手間をかけたくない方、将来に備えてお金をじっくりと準備していきたい方にも適しています。定期的に購入する投資対象のタイミングや金額を自由に指定することができるので、投資にかかる手間が少ない上、購入価格の平準化によるリスク低減効果も期待することができます。
そのため、投資の知識が乏しく金融商品を購入するたびに市場や銘柄分析などをしたくない方、市場や企業などの動向を常時チェックするなどの手間をかけたくない方、多額の資金による投資でリスクを高めたくない方などにも適しています。
4 一括投資が向いている人
一括投資では、短期間の時価の上昇で大きなリターンを狙うことができるので、投資してからできるだけ早く利益を確保したい方に向いています。例えば、相場が低い時にまとまった金額で購入し、相場の回復時などに一気に売りさばいて利益を得たい方などに一括投資はおすすめです。
ただし、一定程度のまとまった余裕資金を投資に回せる方や、高めのリスクを許容できる方であることが条件となります。短期で大きなリターンを得やすいぶん、元本を大きく毀損する可能性もあるので、時価変動によるリスクに耐えられる方でないと適切な運用は難しくなります。
また、一括投資では購入の度に市場や企業等の分析・評価といった作業が重要となるため、ある程度の投資の知識や経験が必要な上、それらに費やす時間も少なからずかかる点に留意しましょう。
まとめ
一括投資と積立投資はそれぞれ一長一短です。一括投資は短期のリターンを狙いやすいものの、まとまったお金が必要で、ある程度のリスクも許容する必要があります。一方、積立投資は、短期的なリターンは狙いにくいのですが、少額でリスクを抑えながら長期的に資産形成を狙うことができます。
一括投資と積立投資のどちらがおすすめなのかは、個人の資産状況や投資目的によって異なります。これから投資を始める方は、両者のメリット・デメリットをしっかりと把握した上で、自身にあった投資方法や投資対象を検討するようにしましょう。
HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム
最新記事 by HEDGE GUIDE 編集部 投資信託チーム (全て見る)
- 楽天証券、投資信託取引の評判は?メリット・デメリットを比較 - 2024年7月12日
- 楽天証券、「NISAのつみたて投資枠+クレジット決済」のメリットと注意点 - 2024年7月12日
- SBI証券、Pontaポイントの貯め方は?手続き方法とポイントの使い道も - 2024年6月13日
- SBI証券、dポイントの貯め方は?手続き方法とポイントの使い道も - 2024年5月22日
- SBI証券、Vポイントの貯め方は?手続き方法とポイントの使い道も - 2024年5月22日