エネルギーや食料の価格が高騰し、世界的にインフレ圧力が高まっています。この記事では、原材料価格の上昇が、株式市場にどのような影響を与えるのかについて、2022年5月時点の動向を踏まえて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 原材料価格の高騰でインフレ懸念が高まる
- インフレと株価の関係
- スタグフレーションの恐れ
- 原材料高騰で注目されるリサイクル関連銘柄
- 食品スーパーにも注目
5-1.神戸物産(3038)
5-2.スーパーバリュー(3094) - まとめ
1.原材料価格の高騰でインフレ懸念が高まる
主要先進国でのワクチン普及を受け、コロナ禍に伴う経済活動への制限措置が緩和されたことで、経済活動が再開されています。しかし、消費需要に対して供給が追いついておらず、世界的にインフレ懸念が高まっています。
また、今年2月のロシアのウクライナ侵攻によって商品価格が急騰。世界銀行は4月26日、ウクライナでの戦争が1970年代以来の「最大の商品市場ショック」を引き起こすと警告しました。
そして、同じ日に発表された「商品市場見通し」によると、紛争による混乱は、天然ガスから小麦、綿花にいたるまで、さまざまな商品の大幅な価格上昇につながるとしました(参照:BBC「ウクライナ侵攻で「過去50年で最大の価格ショック」=世銀」)。
私たちは、1970年代以来の高インフレ時代を迎えようとしているのです。
2.インフレと株価の関係
インフレとは、モノの価値が上がり、お金の購買力が下がることです。そして、インフレにはいくつかの種類がありますが、主に需要の増加によって起こる「デマンド・プル・インフレ」と、生産コストなどの経費の増加によって起こる「コストプッシュ・インフレ」に分けることができます。
デマンド・プル・インフレは、投資、消費、公共投資などに対する需要が供給を上回る場合に起こります。デマンド・プル・インフレの時は景気もいいので、企業業績も好調です。ですから、株価も上昇し、株式市場にとってプラスの要因となります。
一方のコストプッシュ・インフレは、原油や銅、鉄などの材料費、原料費、燃料費などが上昇することによって起こります。コストプッシュ・インフレが日本を襲ったのは、1970年代のオイルショックの時でした。
3.スタグフレーションの恐れ
コストプッシュ・インフレは、「スタグフレーション」を引き起こす恐れがあります。スタグフレーションとは、インフレ(インフレーション・物価上昇)と景気後退が同時に起こる現象です。
景気後退で賃金が上がらず、しかし物価は上がるという状況は、消費者にとって非常に厳しい経済状況になります。また、企業業績も上がらないので、株価にとってマイナスの要因となります。
現在の日本ではデマンド・プル・インフレになるとは考えにくく、コストプッシュ・インフレからスタグフレーションの状態になる恐れがあるので注意が必要です。
4.原材料高騰で注目されるリサイクル関連銘柄
原材料価格の高騰によって日本株全体ではマイナスの影響が強いものの、恩恵を受ける業界もあります。たとえば、日本には小型家電や産業廃棄物の中に眠っている金(ゴールド)が6,800トンあるといわれており、世界でも有数の都市鉱山です。
したがって、金価格が上昇すると、産業廃棄物から金などの貴金属を抽出・精製するリサイクル業者の株価が上昇する可能性が高くなるのです。
リサイクル関連銘柄としては、サニックス(4651)や住友金属鉱山(5713)、松田産業(7456)などがあります。
5.食品スーパーにも注目
食料品価格も上昇を続けています。天候不順などで原材料費が高騰していることに加え、コロナ禍からの回復に伴い、輸送費も増加しているためです。食品メーカーの間では、「値上げをしないと商売が続けられない」という危機感が大きくなっています。
カゴメは4月1日、家庭用トマトケチャップなど計125品目の調味料を値上げしました。トマトケチャップは7年ぶりの値上げとなります。
また、コカ・コーラボトラーズジャパンホールディングス(CCBJH)は5月に出荷量の多いペットボトル入り清涼飲料を5〜8%値上げし、6月には日清食品や東洋水産など即席麺大手も主力商品を約3年ぶりに値上げする予定です(参照:日本経済新聞「食品、5月以降も値上げラッシュ 原材料費や輸送費響く」。
このように食品価格の上昇が続くと、消費者はより低価格の商品やコストパフォーマンスの高い商品を求めるようになると予想されます。そこで、「食品スーパー」に注目し、関連銘柄を紹介します。
5-1.神戸物産(3038)
神戸物産は、冷凍食品などを販売するフランチャイズの「業務スーパー」を展開しています。直接仕入れにより中間マージンをカットすることで、ローコストオペレーションを実現しています。また、世界各地に350以上の協力工場を持ち、本国から直接輸入することで、低価格での販売を可能にしているのです。
さらに、テレビ番組やSNSなどの各種メディアにより、来店客数は堅調に推移しています。
5-2.スーパーバリュー(3094)
埼玉と東京に拠点を置く食品スーパー。ホームセンター(HC)との複合店舗も運営しています。また、一部店舗では雑貨の販売も行っています。低価格販売で利益率は低いものの、販管費も安いローコスト経営が特徴です。
まとめ
欧米に比べれば、日本でのインフレ懸念はあまり高まっていません。しかし、原材料高騰や円安によって、今後は日本でもインフレへの対応が必要になってくるでしょう。日本株全体ではマイナスの影響が大きいものの、インフレで業績が伸びそうな銘柄に投資し、インフレヘッジしておくことは有効だと考えられます。
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山下耕太郎
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