原油高騰による株価への影響は?日米市場と世界経済の動向も

2022年3月、原油価格は2021年3月対比で約2倍に上昇しました。原油価格の上昇は、原油を基に精製されるガソリンやプラスチックなど幅広い製品価格の引き上げにつながるため、インフレをもたらします。急なインフレは経済の混乱を招くため、中央銀行は利上げ政策でインフレを抑制します。

株式市場にとっては、企業の資金調達コストを引き上げてしまうことや、イールドスプレッド(10年国債の利回りと益利回りの差)の拡大要因となるため、マイナス材料です。

今回は、原油高騰による日米株式市場や世界経済への影響について解説します。

※2022年3月29日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 原油価格高騰の背景
  2. 株価への影響
  3. 政策金利
    3-1.CPI
    3-2.中央銀行の金融政策
  4. 中央銀行の金融政策
    4-1.米国
    4-2.日本
  5. 米国株は割高、日本株は割安
  6. 世界経済への影響
  7. まとめ

1 原油高騰の背景

原油価格は、年初の1バレル当たり76.08ドルから、2022年3月8日には同123.7ドルを付け、執筆時点では100ドル台で推移しています。

原油高騰の要因としては、2つ挙げられます。新型コロナワクチン接種率の高まりを背景とした経済活動活発化にともなう原油需要の拡大。もうひとつは、ロシアのウクライナ侵攻による各国のロシア産原油の禁輸です。

2 株価への影響

原油価格上昇は、株式市場にとってネガティブ材料となります。原油は幅広い製品に使われているため、多くの製品サービスの価格が上昇しインフレを引き起こす可能性があるからです。

インフレが起きると、中央銀行はインフレを沈静化させるため政策金利を引き上げます。金利上昇は、企業が融資を受ける際の金利コスト負担増につながることから、企業活動にブレーキがかかり、株式市場にマイナス材料となります。

3 政策金利

中央銀行の目的は「物価の安定」と「金融システムの安定」に貢献することです。物価の安定は、経済が持続的に成長を成し遂げるうえで不可欠な基盤です。物価が高騰すると、通貨の価値が下がるため、通貨不安につながりかねません。そのため、中央銀行は政策金利をコントロールし、物価の安定を目指します。つまり、物価上昇は政策金利を引き上げる要因となります。

ここで、中央銀行が金融政策を判断する上で重視しているCPI(消費者物価指数)の動向をみてみましょう。

3-1 CPI(消費者物価指数)

CPI(消費者物価指数)は、日米ともに原油価格高騰により押し上げられています。米国と日本のCPIの詳細について見てみましょう。

米国CPI

2022年2月の米国CPIは前年同月比7.9%上昇、変動の大きいエネルギーと食品を除いたコアCPIは同6.4%上昇でした。いずれも1982年台以来の上昇幅となっています。

エネルギーや中古車価格の上昇が寄与し、エネルギーは同25.6%上昇(ガソリン:同38%上昇、重油:同43.6%上昇)しました。

日本

2022年2月のCPIは前年同月比0.9%上昇、生鮮食品を除く総合指数は同0.6%上昇しました。ともに6カ月連続で上昇しています。エネルギー価格は1981年1月以来の高い伸びを記録しました。光熱費、ガソリン価格の上昇のほか、生鮮食料品価格の上昇がCPIを押し上げた主な要因となっています。

ハウス栽培が中心の野菜や果物のほか、ガソリン価格高騰を背景とした運送費の高騰なども影響しています。前年同期比の上昇率でみると、まぐろが16.9%、たまねぎ66.3%、いちごが18.7%、調理カレーが16.1%、エネルギーでは都市ガス代が22.9%、灯油が33.5%、ガソリンが22.2%という伸びでした。

今後、CPIはさらに上昇する可能性があります。企業の価格転嫁が進んでいないためです。国内企業物価指数(CGPI)の2022年2月速報値は、前年同月比9.3%上昇と大幅に上昇しました。上昇に大きく寄与したのは、石油・石炭製品(同34.2%上昇)です。

すでに一部の食料品などは値上げが徐々に始まっていますが、本格的な価格転嫁が進み消費者物価が上昇すれば、日本銀行が金融政策の転換を迫られることになる可能性があります。

4 中央銀行の金融政策

中央銀行の目的は「物価の安定」と「金融システムの安定」に貢献することです。物価の安定は、経済が持続的に成長を成し遂げるうえで不可欠な基盤です。物価が高騰すると、通貨の価値が下がるため、通貨不安につながりかねません。そのため、中央銀行は政策金利をコントロールし、物価の安定を目指します。

つまり、物価上昇は政策金利を引き上げる要因となります。米国と日本の政策をみていきましょう。

4-1 米国

米連邦公開市場委員会(FOMC)は3月の定例会合で、政策金利を0.25%引き上げました。40年ぶりの高いインフレに対応するため、年内予定されている6回の会合すべてで利上げを実施することが示唆されました。6回利上げされれば、2022年末には政策金利は2.0%に設定されることになります。

また、ウクライナ問題等が解決すれば、中央銀行が高インフレに対応するため政策金利の利上げ幅を引き上げる可能性があります。

4-2 日本

日本銀行はインフレターゲット政策をとっており、「物価が安定的に2%ずつ上昇するまではマイナス金利政策を続ける」と宣言しています。

2月CPIは2%という目標に達しませんでしたが、原油・原材料価格上昇や円安進行を背景に価格転嫁が始まっているため、2022年4月以降のCPIは2%に近づく可能性が高まっていると言えます。

そのため、2022年4月以降のCPIの値が注目されます。物価が安定的に2%ずつ上昇する状況になれば、日銀の金融政策が転換点を迎える可能性が高いと考えられます。

5 米国株は割高、日本株は割安

利上げは株式市場にマイナス材料となります。株式指数の水準を読み取る手法にイールドスプレッド分析があります。株式市場のイールドスプレッドは、10年国債の利回りから株式益利回り(1株当たりの利益÷株価=株価収益率(PER)の逆数)を差し引いて求めます。

相対的にイールドスプレッドが小さいほど株式(指数)が割安、大きいほど割高とされています。政策金利の引き上げは10年国債の利回り上昇の要因となるため、利上げ局面において株式指数が割高傾向になります。

それでは、日米主要株式指数のイールドスプレッドを見ていきましょう。

5-1 米国株式市場

2022年3月17日時点のイールドスプレッドは、ダウ工業平均が-3.37%、S&P500指数が-2.93%、ナスダック100指数が-1.85%です。新型コロナ感染拡大が意識された2020年1月から2022年3月17日までの平均値は、それぞれ-3.74%、-3.29%、-2.32%です(下表参照)。

現在の株式指数の水準をイールドスプレッドから判断すると、イールドスプレッドが縮小傾向にあるため、株式指数に割高感があると見られます。

指数/年月日 イールドスプレッド(%) 変化幅(%)
2022/3/17 2020年1月から2022年3月17日
ダウ工業平均 -3.37 -3.74 0.37
S&P500指数 -2.93 -3.29 0.36
ナスダック100指数 -1.85 -2.32 0.47

5-2 日本株式市場

2022年3月17日時点のイールドスプレッドは、日経平均株価が-6.03%、TOPIXが-7.41%、です。新型コロナ感染の拡大が意識された2020年1月から2022年3月17日までの平均値は、それぞれ-5.32%、-6.33%です(下表参照)。

現在の株式指数の水準をイールドスプレッドから判断すると、イールドスプレッドが拡大傾向にあるため、日本株には割安感がありそうです。

指数/年月日 イールドスプレッド(%) 変化幅(%)
2022/3/17 2020年1月から2022年3月17日
日経平均株価 -6.03 -5.32 -0.71
TOPIX -7.41 -6.33 -1.08

6 世界経済への影響

経済に与える影響は、原油生産国にはプラス、原油輸入国にとってはマイナス要因です。

原油生産国であるサウジアラビアの2022年GDP成長率予想(政府予想)は、7.4%(21年成長率予想は2.9%)と大幅に上昇しました。

一方、原油輸入国にとっては、原油高騰はガソリンや合成樹脂など幅広い製品価格を押し上げ、経済成長の妨げとなります。特に原油の輸入依存度の高い日本、ドイツ、イタリア、韓国などには、スタグフレーション(経済成長が停滞する中での物価上昇)のリスクが潜んでいます。

日本ではガソリンや灯油の急騰が社会問題となっています。地方では、自動車は生活必需品のため、ガソリン価格の上昇は家計の圧迫につながり、景気の低迷を招きます。

企業においても原油高がコスト増加に繋がり、利益を圧迫します。帝国データバンクの調査によると、2022年末までに原油価格が1バレル当たり100ドルに上昇した場合、企業の経常利益が約1兆5,530億円減少するとされています。

まとめ

原油価格の上昇は、株式市場や経済にとってマイナス材料です。原油は、幅広い製品の原材料に使われるため、製品価格の引き上げに繋がります。製品価格が上昇すると、急激なインフレを抑制するために、中央銀行が金政政策の舵を金利の引き上げ方向にとる可能性が高まります。

金利上昇は、イールドスプレッドの拡大につながることも、株式市場にはネガティブ材料です。

今後も経済動向は大きく変わる可能性があり、株式市場も大きく影響を受けるリスクがあることに注意が必要です。動向を注視しながら株取引を検討してください。

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藤井 理

藤井 理

大学3年から株式投資を始め、投資歴は35年以上。スタンスは割安銘柄の長期投資。目先の利益は追わず企業成長ともに株価の上昇を楽しむ投資スタイル。保有株には30倍に成長した銘柄も。
大学を卒業後、証券会社のトレーディング部門に配属。転換社債は国内、国外の国債や社債、仕組み債の組成等を経験。その後、クレジット関連のストラテジストとして債券、クレジットを中心に機関投資家向けにレポートを配信。証券アナリスト協会検定会員、国際公認投資アナリスト、AFP、内部管理責任者。