2022年2月3日、NYダウは518.17ドル下落し、5日ぶりに反落しました。Meta(旧フェイスブック)の決算が失望の内容になり、投資家がリスク回避の動きを強め、ハイテク株を中心に下げがきつくなったからです。
ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数も5営業日ぶりに反落し、前日比538.729ポイント(3.7%)安の13,878.818で取引を終了しました。この記事ではMeta株が暴落した背景と、今後の見通しについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※2022年2月25日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。
目次
1.Meta株の急落
米国株式市場はマイクロソフトやアップルの好決算を受けて「リリーフ・ラリー(安心相場)」に入る兆しをみせていましたが、先行きは再び不透明になりました。
Metaが示した2022年1~3月の売上高見通しは、前年同期比3~11%増となりましたが、市場予想を下回りました。Metaは株価急落で約2,300億ドル(約26兆円)分の時価総額を失ったのです。1日の損失額としては、2020年9月のアップル(1,800億ドル)を上回り、過去最大となりました。
2.ライバルのTikTokの人気が高まる
1分未満の短い動画を共有するサービス「TikTok(ティックトック)」の人気が高まったことも、Metaの収益を圧迫しました。TikTokは世界中で若年層の支持を集め、配信する広告も増加しています。TikTok運営会社ByteDanceの2021年の売上高は584億ドルとなり、前年より70%も増加しました。
さらに、2021年12月末時点のTikTokアプリの月間利用者は35億9,000万人となり、3ヶ月前より1,000万人増えています。一方、Facebookの1日あたりの利用者は19億2,900万人で、3ヶ月前より100万人減りました。
TikTokの人気が高まっていることを受け、Metaも自社で運営する画像共有アプリ「Instagram(インスタグラム)」で、TikTokと同じような機能の「リールズ」を強化する予定です。
しかし、リールズの強化は短期的にMetaの収益に逆風になる可能性があります。リールズは広告への対応が遅れているからです。リールズに利用者が流れると、既存のサービスの利用が減る可能性があり、利便性の低下を避けながら広告を増やすことが課題となりそうです。
3.Metaショックの原因
米国株式市場で史上最大の時価総額消失となった「Metaショック」は、収益の95%以上を占めるネット広告事業が失速したことが原因です。きっかけは、アップルが2021年4月にスマートフォンなどでプライバシー保護機能を強化したことです。利用者が承認しないと、アプリの利用状況を外部企業が分からないようにしたのです。
Metaは主力の交流サイト(SNS)「フェイスブック」などでこの機能に依存してきたので、追加型(ターゲティング)広告の効果測定が低下。他社に広告が流れたため、2022年は100億ドルの減収要因になるとしました。
Metaの株価急落を受け、アマゾン・ドット・コムやアルファベットなど広告に依存するほかのネット企業の株価も下落しました。しかし、アマゾン・ドット・コムの広告事業は好調で、グーグルの持ち株会社であるアルファベットも業績は堅調です。
Metaの広告事業はアップルに依存する形で運営されてきましたが、他社は独自に利用者を把握しやすいサービスを展開してきたことが理由です。グーグルは検索サービスを利用者が使う際に入力したキーワードに関連する広告を表示するのが主力事業で、アマゾン・ドット・コムは利用者の商品購入履歴を広告に活用しています。
また、ツイッターは利用者に関心がある話題を選んでもらい、広告やコンテンツの表示に活用する取り組みを強化しています。
プライバシーの意識が社会で高まり、個人情報をいくらでも使える時代が終わりを迎える中、消費者の利便性をキープできる技術を開発できるかどうかが各社の命運を握っているのです。
4.高PER銘柄は売りが継続する可能性が高い
インフレの高止まりを受け、FRB(米連邦準備制度理事会)は金融引き締めに舵を切り、金利が上昇しやすくなっています。2022年1月のCPI(消費者物価指数)は前年同月比で7.5%の上昇となり、1982年2月以来約40年ぶりの高水準となりました。
ゴールドマンサックスは、FRB(米連邦準備制度理事会)が年内に0.25%の利上げを7回実施するとの見通しを示しています(参照:Bloomberg「ゴールドマン、0.25ポイントずつ年内7回の利上げ見込む-CPI受け」)。
金利が上昇すると、高PERのハイテク株は売られやすくなります。PERの逆数である益回りが低いので、債券の利回りと比較した場合、相対的な割高感が目立つようになるからです。
とくに、ペイパルやネットフリックスなどPER(株価収益率)が他よりも高い銘柄は売りが優勢になっています。新型コロナウイルスの感染拡大が本格的に始まった2020年3月から2021年末までの平均PERを見てみると、ペイパルは46倍、ネットフリックスは53倍となっています。ハイテク株比率の高いナスダック総合株価指数の構成銘柄の平均は31倍なので、両銘柄のPERはかなり高くなっているのです。
一方、マイクロソフトやアップルなどはPERが30倍程度で、株価の下落率は限定的となっています。グーグルの親会社のアルファベットは20倍台で、成長株というよりはバリュー株として評価されています。
Metaの予想PERも20倍台ですが、将来の成長鈍化が嫌気されています。Meta株に関しては金利上昇懸念よりも、今後の業績がどうなるのかに関心が集まりそうです。
まとめ
Metaの今後の業績がどうなるかは、「次世代のインターネット」とみられている「メタバース」を巡る競争の行方が重要です。Metaはメタバース関連事業の損益の公開を始めました。2021年はVR端末などの売上高が前年の2倍の22億7,400万ドルとなりましたが、営業赤字は101億9,300万ドルとなっています。
Metaはメタバース事業に今後も積極的に投資を続ける考えですが、本格的な収益化をいつ実現できるのかが今後の課題となりそうです。
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山下耕太郎
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