日本の利上げタイミングはいつ?注視すべきポイントや金利上昇後の動きを解説

※ このページには広告・PRが含まれています

2023年2月時点において、欧米を中心に世界では利上げを行っている国が多いものの、日本では金融緩和政策を継続しています。ただ、国内でもインフレ圧力が高まる中、日銀がいつ利上げをするのかがマーケットでも注目されるようになってきています。

この記事では、日本が利上げするタイミングと、注目ポイントについて解説します。

※2022年2月3日時点の情報をもとに執筆しています。最新の情報は、ご自身でもご確認をお願い致します。

目次

  1. 2022年12月の日銀政策金融会合と長期金利の動き
  2. 日銀の利上げはいつ?注目ポイント
    2-1.国内の賃金動向
    2-2.海外の景気
  3. 金利上昇で日本株はどうなる?
  4. まとめ

1.2022年12月の日銀政策金融会合と長期金利の動き

2022年12月20日、日銀は長期金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げました。日銀が長期金利の上限を引き上げた直後は、一時0.4%程度に落ち着きましたが、市場での長期国債の売り圧力により再び上昇し、2023年1月13日についに0.5%の上限を越えたのです。

日銀は長期国債の買い入れを増やすことで金利上昇を抑えようとしていますが、将来の金利上昇(国債価格の下落)を見越した投資家の国債売りが止まりません。昨年12月の日銀の上限引き上げは日銀が市場の圧力に負けたと言われていますが、市場も日銀との第2ラウンドに突き進もうとしているようです。

黒田総裁の任期は4月8日、雨宮正佳副総裁と若田部昌澄副総裁の任期は3月19日に満了となります。黒田総裁の後任には経済学者の植田和男氏が起用される予定です。植田氏の舵取りにより、大規模な緩和を続けてきた日銀の金融政策の行方が決まります。

ただ、当面の金融政策については、黒田総裁の任期が満了する4月8日まで、現行の「長短金利操作付き量的・質的金融緩和」を継続する可能性は高いと考えています。

2.日銀の利上げはいつ?注目ポイント

日銀がいつ利上げするかを判断するには、以下が重要な材料だと考えています。

2-1.国内の賃金動向

賃金の上昇は、インフレ圧力になります。そして、インフレを抑制するために、日銀が金利を上げる可能性が高まります。

ただ、労働組合の中央組織である連合は、2023年の春闘(春季労使交渉)で3%程度のベースアップと定期昇給と合わせた5%の賃上げを求めていますが、現状の水準ではかなり厳しいので、賃金上昇によるインフレ圧力の懸念は少ないと考えられます。

2-2.海外の景気

米連邦準備理事会(FRB)は、2022年12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、利上げ幅を前回の0.75%から0.5%に縮小しました。また、欧州中央銀行(ECB)も12月に0.5%に縮小しています。

インフレ率は依然として高い状況にあるものの、利上げが景気を過度に冷やす恐れがあるからです。ただ、欧米が利下げに転じる兆しは見えません。欧米で金利上昇が続くようだと、日本にも金利上昇圧力がかかる可能性は高いと考えています。

米国や欧州の主要な中央銀行の動向は、日本銀行の金融政策に大きな影響を与えます。日銀は、国内の情勢だけでなく、海外の情勢も総合的に判断して、政策を修正するかどうか決める必要があるからです。

ただ、少なくとも今年前半は欧米を中心に景気の減速が予想されるため、4月以降の新体制の下で日銀が直ちに緩和を解除する余地はあまりないと考えています。

3.金利上昇で日本株はどうなる?

日本の株式市場では、金利上昇に対する警戒感が強まっています。日銀の追加政策修正観測は後退しましたが、円金利の水準は依然として高くなっています。金利上昇の恩恵を受ける銀行株の上昇は目立つものの、日本国債との相対的な割高感や円高が株価全体を圧迫しそうです。

ニッセイ基礎研究所では、日銀が1%までの金利上昇を許容した場合、日経平均株価は24,000円を下回る可能性もあると試算しています(参照:ニッセイ基礎研究所「もし日銀が利上げしたら日経平均はいくら下落するか」。

日本では2012年のアベノミクス以降、過去10年間、日銀の大規模な金融緩和により低金利が続いたため、金利と株価の関係についてはあまり意識されてきませんでした。しかし、4月に日銀の黒田東彦総裁の任期満了を控え、イールドカーブ・コントロール(YCC)など金融政策の枠組みを変更する憶測もでてきているのです。

日本でも金利が上昇すると「イールド・スプレッド」が意識される可能性があります。イールド・スプレッドとは株式と債券の利回り差を指し、それぞれの利回りを比較して相対的な割高・割安を判断するための指標の一つです。

債券と株式のイールド・スプレッドは、長期国債の利回りと株式の配当利回り(=年間配当金÷株価)または株式益回り(=1株当たり利益÷株価)と比較します。イールド・スプレッドが縮小すれば株式は割高になり、リスクの高い株式から債券への資金移動が進みやすくなります。

また、米国市場を通じての日本株の警戒材料は、円高です。円金利の上昇が小幅であっても、米国金利の上昇が一服もしくは低下すれば、円高(ドル安)要因として作用するからです。

いずれにせよ、日本の金利の上昇は日本株にとってマイナス要因となるので、警戒が必要だと考えています。

まとめ

新しい日銀総裁も決まり、日本での利上げ議論も活発化しそうです。日本の金利引き上げは株式や為替市場にも大きな影響を与えるので、2023年の重要な注目イベントとなるでしょう。

The following two tabs change content below.

山下耕太郎

一橋大学経済学部卒業後、証券会社でマーケットアナリスト・先物ディーラーを経て個人投資家・金融ライターに転身。投資歴20年以上。現在は金融ライターをしながら、現物株・先物・FX・CFDなど幅広い商品で運用を行う。ツイッター@yanta2011