投資信託とETF(上場投資信託)は、個人が分散投資をするための金融商品です。どちらも資産形成のために有効活用したい商品ですが、どのように使い分ければいいのでしょうか。今回は投資信託とETFのそれぞれの特徴、使い分けのポイントについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2021年6月14日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- 投資信託とは
1-1.投資信託のメリット
1-2.投資信託のデメリット - ETFとは
2-1.ETFのメリット
2-2.ETFのデメリット - 投資信託とETFを比較
3-1.取り扱う金融機関は?
3-2.買付の方法は?
3-3.取引や保有にかかるコストは?
3-4.取引の利便性は? - 投資信託とETFの使い分けは?
4-1.資産形成期の使い分け
4-2.リタイア後の運用はETF中心で - まとめ
1.投資信託とは
投資信託は、投資家からお金を集めて、運用のプロであるファンドマネージャーが株式や債券で運用し、その成果を還元する金融商品です。少額で積立投資ができるなどの利便性があり、長期の資産形成に適しています。
1-1.投資信託のメリット
投資信託には資産形成に役立つ、以下のようなメリットがあります。
少額からの投資が可能
投資信託の最低投資金額は金融機関によって異なります。概ね数千円から購入でき、中にはSBI証券や楽天証券など100円から買い付けできる証券会社もあります。このように少額から購入ができるため、資金の少ない学生や就職したての社会人でも投資を始められます。
積立投資ができる
投資信託は少額からの積立投資ができます。毎月1万円ずつのような定時定額購入の設定をすると、自動的に買い付けされるのです。定時定額購入によって購入単価が平均化されて、高値掴みを避けられます。また、自動的に買い付けられるため、買いのタイミングに悩むこともありません。
1-2.投資信託のデメリット
一方、投資信託にはデメリットもあります。
タイムリーに売買できない
投資信託の買付注文時にはいくらで購入できるかがわかりません。投資信託の基準価額は前営業日現在のものです。買付の注文をして、当日の基準価額が確定してから購入金額が決まります(ブラインド方式)。
2.ETFとは
ETFとは、取引所に上場されているインデックスファンドです。ETFも投資信託の一種ではありますが、異なる特徴を持っています。最近は株式だけでなく、REITや金など投資対象も幅広くなってきました。
2-1.ETFのメリット
始めに、ETFのメリットについて解説します。
取引所でリアルタイムに取引できる
ETFは上場されているため、市場が開いている時間はいつでも売買ができます。投資信託と違い、買値や売値がはっきりした状態で取引できることが特徴の1つです。
保有時のコストが安い
ETFは投資信託に比べて、保有中のコストである信託報酬が安い傾向にあります。たとえば、以下は日経225をベンチマークとするファンドの信託報酬の比較です。
商品 | 信託報酬(税込) |
---|---|
ETF(MAXIS日経225上場投信) | 0.275% |
投資信託(eMAXIS日経225インデックス) | 0.44% |
ETFは株式のように市場で取引するため、短期の値上がり益も狙えます。しかし、信託報酬が低いため、長期での運用にも適しています。
信用取引ができる
ETFは株式同様に信用取引ができます。信用取引とは、証券会社に担保を差し入れることにより、その担保価値の約3倍の取引ができる仕組みです。自己資金以上の取引ができますが、その分損失リスクも大きくなるので注意が必要です。
特別分配金がない
ETFの分配金には、元本を取り崩して支払う特別分配金はありません。ETFにも分配金が出る銘柄があります。しかし、ETFの分配金は、株式の配当金や債券の利息から経費を差し引いた金額がプラスでないと支払われない仕組みです。
特別分配金は投資元本を減らしてしまうため、運用効率が悪化します。そのため、特別分配金のないETFの仕組みは分配金型の投資信託に比べてメリットがあると言えます。
2-2.ETFのデメリット
ETFのデメリットも確認していきましょう。
金額指定での買付ができない
ETFの買い付けは金額を指定する方法ではできません。投資信託は口数単位の買付以外に、金額を指定した買付が可能です。しかし、ETFは一部の証券会社を除いて、口数での買付しかできません。
売買手数料がかかる
ETFの取引には購入時、売却時ともに証券会社ごとに決められた手数料がかかります。投資信託には購入時手数料がありますが、最近ではノーロードの商品が多くなりました。また、売却時には信託財産留保額という費用がありますが、引かれない商品が増えています。
分配金の再投資が自動でできない
ETFの分配金の再投資は一部の証券会社を除いて、自動ではできません。投資信託では、分配金の「受取」と「再投資」が選べるようになっています。しかし、ETFで受け取った分配金は自分で再投資しなくてはなりません。
さらに、金額指定の買付ができないため、分配金が買付の金額に満たない場合は、すぐには再投資できません。複利効果を得るためには不利な特徴です。
積立投資が難しい
ETFの定時定額購入に対応している証券会社は一部の証券会社に限られ、積立投資の環境は整っていません。積立は自動でなく、自分で買付をする手間がかかります。
3.投資信託とETFを比較
投資信託とETFの違いを比較してみましょう。
項目 | 投資信託 | ETF |
---|---|---|
取扱金融機関 | 証券会社・銀行・郵便局など | 証券会社 |
取引方法 | 随時、販売会社口数または金額単位で注文 | 取引時間中に指値・成行で注文 |
取引価格 | 注文後に確定する当日の基準価額 | リアルタイムの取引価格 |
購入時手数料 | あり(ノーロードが多い) | あり(証券会社ごとに異なる) |
保有時のコスト | 信託報酬 | 信託報酬 |
売却時手数料 | 信託財産留保額(ない場合も多い) | あり(証券会社ごとに異なる) |
積立投資 | 可能 | 一部の証券会社のみ可能 |
分配金の自動再投資 | 可能 | 一部の証券会社のみ可能 |
3-1.取り扱う金融機関は?
ETFの取扱は証券会社に限られます。一方、投資信託は証券会社以外に銀行や信用金庫、JAバンク、郵便局などの金融機関で購入できます。
3-2.買付の方法は?
投資信託は金融機関を通じて随時申し込め、金額・口数いずれかを指定して買い付けます。ただし、いくらで買えるかはその日の基準価額が決まってからでないとわかりません。
これに対し、ETFは取引所の開いている時間内に指値または成行で注文します。よって、売買が成立すると、価格はその場でわかります。
3-3.取引や保有にかかるコストは?
ETFの売買には証券会社ごとに決められた手数料がかかります。保有中には信託報酬がかかります。投資信託の購入時の手数料は商品ごとにあるものとないものがあり、同じ商品でも金融機関ごとに異なる場合があります。最近ではノーロードの商品が多くなりました。
保有中にはETF同様に信託報酬がかかります。売却時には信託財産留保額がかかる商品がありますが、ほとんどの商品でかからなくなっています。
一般的にはETFの信託報酬は投資信託より安い傾向にあります。また、売買手数料は下がってきていて、安い証券会社を選ぶとそれほど大きな負担ではなくなってきました。一方で投資信託の手数料は商品ごと、金融機関ごとに幅があり、高いものでは4%くらいの商品があります。
3-4.取引の利便性は?
投資信託は金額指定の買付や定時定額購入、分配金の再投資など取引の利便性が整っています。そのため、初心者や投資に手間や時間をかけたくない人にも活用しやすい金融商品です。
ETFの取引量は増加していますが、投資信託では一般的なサービスが、ごく一部の証券会社でしか受けられない状況です。ETFはどちらかというと手間が受容できる、投資経験のある人に適した金融商品と言えます。
4.投資信託とETFの使い分けは?
投資信託とETFにはそれぞれの長所・短所があります。どちらも長期の資産形成に適した金融商品です。両方の「いいとこどり」のできる使い分けかたについて解説します。
4-1.資産形成期の使い分け
20代から50代の働いていて収入のある時期は、ライフイベントごとの資金を準備しなくてはなりません。それらの資金のうち、教育資金や老後資金など運用期間が長期にわたるものは、投資信託やETFでの準備が適しています。
まずは毎月の収入から一定の金額を、投資信託での積立投資でコツコツと準備します。そして、ボーナスなどまとまった金額が投資できるときに、ETFをスポット購入するとよいでしょう。
4-2.リタイア後の運用はETF中心で
リタイア後は現役時代に積み上げた資産を取り崩すようになります。長生きリスクによる資産の枯渇を防ぐために、無理のない範囲で運用を続けていきましょう。積み上げた資産を長期に保有することが前提の場合、コストの低いETFに移すのも選択肢の1つです。
まとめ
投資信託もETFも長期的な資産形成のために、利用しやすい金融商品です。投資信託は少額投資や積立などに利便性が高く、万人向きの金融商品です。ETFは分散投資をローコストで実行するのに適しているため、少しの手間がかけられる人にはメリットがあります。取引方法の違いやコスト面などそれぞれの特色を理解して、自分にとってメリットのあるものを取り入れていきましょう。
松田 聡子
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