投資信託は長期運用を前提に設計されているファンドが多くを占めています。投資家から集めた資金を細かく分散し、リスクを抑えつつ長期運用で収益を積み上げていく方針です。
しかし、投資信託は長期運用のみと決められているわけではありません。投資家の中には、短期運用で成果が出せるファンドはないかと、考えている人も多いのではないでしょうか。
当記事では、投資信託を短期で運用することについて、メリットやデメリット、短期運用に向いているファンドを紹介します。投資信託の運用方法について、様々な可能性を模索している人はご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- 一般的な投資信託は短期売買に向いていない
1-1.リアルタイムな取引ができない
1-2.短期では値動きが小さく差益が得にくい - 投資信託を短期売買するメリット
2-1.含み損を抱えずに済む
2-2.分配金の獲得のみを狙う運用ができる - 例外的に短期売買が向いているファンド
3-1.ブルベア型ファンド
3-2.分配金をよく出すファンド - ファンド内で行われる短期売買
- 投資信託の回転売買に規制
- まとめ
1.一般的な投資信託は短期売買に向いていない
前提として、投資信託はタイミングをみて売買を行う短期売買には向いていません。理由は、注文から約定までにタイムラグがあるためです。以下、2つの理由にて、投資信託の特性を紹介します。
1-1.リアルタイムな取引ができない
短期売買で利益を出すには、安く買って高く売るタイミングが重要な要素の一つです。しかし、投資信託はその日に注文を出したとしても、その日の相場が終わった後に基準価額が決定し、注文が約定するため、いくらで売買できたのかを正確に把握できません。
海外資産に投資するファンドは、国内のファンドよりも約定までに時間がかかるため、余計にタイムラグが生じてしまいます。
そのため、ファンドへの投資で短期売買をしたい場合、ETFへ投資するほうが良いでしょう。取引所でのリアルタイムな売買が可能です。
1-2.短期では値動きが小さく差益が得にくい
投資信託はリスクを分散して、長期運用を目的に資産を積み上げていく運用方法が基本です。したがって値動きが少なく、短期で売買しても十分な収益は得られません。
同じ期間で買った株と同期間のパフォーマンスを比べると、投資信託のほうが見劣りします。投資信託で収益を確保するためには、3年程度は運用を見守りたいところです。
タイミングを見計らいつつ、短期売買で売却益を獲得したい場合は、投資信託よりも株式を選んだほうが良いでしょう。
2.投資信託を短期売買するメリット
基本的に投資信託の短期売買は推奨されませんが、中には短期売買を前提としているファンドもあります。特定のファンドで短期売買を行った時に得られるメリットを2点、紹介します。
2-1.含み損を抱えずに済む
短期売買を行う時は、売買のルールをあらかじめ決めて取り組むことで、含み損を抱えずに済むメリットを得られます。ルールに従って機械的に取引を行うため、損失が限定され、大きな含み損を抱える可能性を抑えることができます。
長期運用では相場が長い下降トレンドに入った場合、ある程度含み損に耐え続けるメンタルが必要です。長期運用にも一定のルールを設けて、投資のマインドがぶれないようにしておきましょう。
2-2.分配金の獲得のみを狙う運用ができる
イレギュラーな方法ですが、短期売買では分配金だけの獲得を目標とする運用ができます。分配金の権利確定日にファンドを買い付けて、分配金の権利が確定し、決算日の翌日に分配金が入金されたら、すぐにファンドを手放す運用を行います。
投資信託は価格変動リスクを抑えているため、分配金の獲得と基準価額の変動を相殺してもプラスになるケースが多くなるのです。
収益となる金額は少ないのですが、分配金の有無の見当をつけられそうな場合は、リスクを抑えた運用として検討する価値はあります。
3.例外的に短期売買が向いているファンド
投資信託は基本的に長期運用に最適化された商品です。しかし、一部例外もあります。ブルベア型ファンドや分配金を良く出すファンドなど、短期売買のほうが向いているファンドを紹介します。
3-1.ブルベア型ファンド
相場の上昇時や下落時に、値動きの2倍の収益を目指すファンドをブルベア型ファンドと呼びます。ブルベア型ファンドの中には、3倍などより激しい値動きをするファンドもあり、相場の動きが安定しない時は、利益を狙って多くの投資家が投資しています。
ブルベア型ファンドは、相場が上下どちらかの方向に強く動いている時限定で投資するファンドです。ファンドの特性上、長期保有していると少しづつ資産が目減りしていくという注意喚起が公式にされています。したがって、ブルベア型ファンドに投資する時は、例外的に短期売買を心がけるようにしましょう。
なおETFでも、同じタイプのレバレッジ、インバース型ファンドが提供されています。急激な相場変動時の対応を考慮すると、投資信託よりもETFを選んだほうが良い場合もあります。
3-2.分配金をよく出すファンド
前の項で少し触れましたが、運用の成績がよく、分配金を出す可能性が高いファンドを見定めて、分配金の獲得のみを目標として投資する方法もあります。分配金の権利確定日に受け渡しが完了するように買い付けて、決算日の翌日に分配金が入金されたらすぐに解約する方法です。
立て続けに高い普通分配金を出し続けているファンドをピックアップして、ピンポイントな売買を行います。普通分配金の有無や、分配金を出す傾向を見定めるための経験が必要ですが、価格変動リスクを抑えつつ、分配金の利益をピンポイントに獲得でき、ローリスク・ローリターンな運用ができます。
投資したいファンドがない時に、余裕資金で挑戦するのもよいでしょう。
4.ファンド内で行われる短期売買
投資信託は資産を分散して低リスクで長期運用というスタイルを基本としています。しかし、投資家がファンドを長期保有していても、ファンドが構成銘柄を短期売買していたら、投資家も短期売買していることと同じになります。
投資信託の保有を通じて長期運用したいと考える場合、頻繁に銘柄を売買しないファンドを見つける必要があります。組入銘柄を長期保有しているか、確認するための指標は運用報告書に記載されている「売買高比率」です。
売買高比率は、一定期間中における組入資産の売買合計金額を、同じ期間中における投資信託の平均純資産総額で割って求められる数字です。数字が高いほど、積極的に組入銘柄の入れ替えを行っているということになります。
売買高比率は、バランス型ファンドに似たアクティブファンドへ投資する時に、注目したい数字です。
5.投資信託の回転売買に規制
投資信託の回転売買とは、購入手数料を稼ぐために、ファンドの短期売買を進める営業手法です。銀行などの窓販では、社内の評価基準に沿って購入手数料が高いファンドを勧める傾向があります。
例えば購入手数料3%のファンドを年3回売買して、9%の手数料を獲得するような算段です。投資信託を買う原資が1億円と想定すると、手数料は1年間で900万円です。
顧客からの信用が前提とされる販売手法でしたが、金融庁の指導が入り、あからさまな回転売買はできなくなりました。しかし今でも一部の銀行では、購入手数料が高い金融商品を勧奨する方針をとっているケースもありますので、投資信託や保険商品を勧められた時は購入手数料をよく確認するようにしましょう。
まとめ
投資信託は細かい分散投資によって、低リスクで長期運用ができるよう設定された運用商品です。ほとんどのファンドは、短期売買に向いていません。しかし、相場が上下どちらかに強く動いている時に真価を発揮するブルベア型ファンドは、例外的に短期売買が推奨されます。
イレギュラーなケースとして、分配金のみの獲得を狙う運用でも短期売買を活用することもあります。
とはいえ例外的なケースを除いて、分散投資を駆使しながら運用コストを抑えつつ、長期運用で資産を積み重ねるのが投資信託の運用の基本です。できるだけ長期視点で資産形成の計画を立てるよう心がけましょう。
sayran
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