投資信託は中長期で運用するケースが多く、株式投資に比べると売却を考える機会は少なくなりがちです。売却のタイミングをうかがう機会が少ないだけに、いつ手放すべきなのか、迷ってしまう人も多いのではないでしょうか。
投資信託は購入する時のタイミングよりも、損益を確定させる売却のタイミングのほうが重要です。記事内では、投資信託の売却のタイミングについて詳しく解説しています。ファンドを手放すタイミングに迷っている人はご確認ください。
目次
- 投資信託の売却タイミング
1-1.基準価額変動やライフイベントのタイミング
1-2.景気の山と谷の見極め
1-3.ファンドの償還期限のタイミング - 失敗しない売りどきの考え方
2-1.投資の目的とゴールを再確認
2-2.自分なりの投資ルールに従う
2-3.人生のイベントから逆算 - 長期投資での売却と目標設定の考え方
3-1.長期投資の目的とゴールを考えておく
3-2.短期や中期のトレンドの波を許容する
3-3.目標とするトータルリターンに足りているか - 投資信託の売却方法
4-1.解約請求
4-2.買取請求 - まとめ
1.投資信託の売却タイミング
投資信託の売却を考えるタイミングは主に以下の3点です。
- 基準価額の変動
- 長期のトレンドに合わせる
- ファンドの償還期限から逆算する
基本的には、ライフイベントと合わせながら、自分の納得の行くタイミングで手放すのが良いでしょう。
3つのポイントについて、以下に解説します。
1−1.基準価額変動やライフイベントのタイミング
売却は、基本的に利益の確定と損切りのタイミングで行います。しかし、実際にどの程度で利益を確定、損切りしていいのかわからずタイミングを逃してしまうことは多々あります。
売却を決めるには、自分を納得させるための根拠が必要です。明確な根拠がなければ売却を延々と迷ってしまい、適切なタイミングを逃してしまう可能性が高まります。
ライフイベントに合わせて売却を考える時期を設定しておく方法は、価格変動に惑わされない良い判断基準です。時期で決めておくと基準価額の変動に左右されることがなくなります。
目標金額の設定も売却タイミングを考える上で有効です。設定した金額に到達すると機械的に手放せるため、その時の基準価額に翻弄されることがありません。
1−2.景気の山と谷の見極め
投資信託は個別株式に比べて価格変動リスクが分散され、長期運用に向いているとされています。しかし、同じファンドをずっと保有していれば成果がでるわけではありません。状況に応じて資産配分を変更する選択も必要です。
中長期の運用で売却タイミングを考える時は、景気の山と谷を意識すると良いでしょう。株式や債券は、短期的には需給関係で価格変動しますが、長期視点で見ると景気動向に沿った動きをします。
谷底へ向かう段階でリスクを限定するために、ファンドをすべて手放す選択肢もありますが、現金比率を高めつつ景気の山へ向かう段階になって、あらためて追加投資を行う方法も有効です。一方、あえて売却せずにずっとファンドを保有し続ける、という考え方もあります。
1−3.ファンドの償還期限のタイミング
ファンドの償還期限は、運用成績が良いと延長され、悪いと事前に決められた運用期間で償還されます。運用状況がひどくなると期日前の強制償還や、出金の停止なども想定されます。償還期限が近く、運用パフォーマンスが悪い場合、売却を考えるタイミングです。
2.失敗しない売りどきの考え方
売却のタイミングを考える上で重要なポイントは、自分で行った売却に納得ができるか?という点です。明確な根拠や理由がないと、後々売却を後悔することになります。迷いのない売却を行うために、明確な目的と根拠を定めておきましょう。
2−1.投資の目的とゴールを再確認
投資の目的は人それぞれです。老後の生活資金の確保、資産の取り崩し、月々の分配金の獲得など、目的やゴールによって、選択するファンドや許容リスクも異なります。
売却に迷ったときは、再度目的やゴールを確認すると良いでしょう。目的やゴールが定められていると、一貫性のある判断で売却を行うことができます。
2−2.自分なりの投資ルールに従う
価格変動リスクが高い株式やFXでは、許容できるリスクを超えたら自動的に売却する設定を組むことができます。投資信託にはオートマチックな損切りシステムはありませんが、同様のルールを設定して、守り抜けば損失を限定することができます。
自分が最初に決めたルールを守り抜くことが重要なポイントです。
2−3.人生のイベントから逆算
お金が必要になる時期があらかじめ分かっている場合、一時的にファンドを売却し現金比率を高める時期を作る方法もあります。
一般的な家庭では30代〜40代の間にマイホームの購入や、子供の教育資金のため、出費が多くなりがちです。50代以降では、投資に回す資金の余裕ができ、セカンドライフへ向けてのあらたな資産形成を計画する方もいるでしょう。
これに合わせて、30代〜40代のタイミングで一度ゴールを設定し、現金比率を増やしつつ、50代以降で資産を改めて再編成する考え方も一つです。若い世代と老年世代では、許容できるリスクに違いがあるため、資産運用を前半と後半に分ける考え方は理にかなっています。
3.長期投資での売却と目標設定の考え方
5年や10年以上の中長期運用では、長期視点で運用成果を判断する必要があります。目的やゴールの長期計画を立てておけば、目先の価格変動に翻弄されることはなくなるでしょう。
以下、長期運用での売却の考え方を紹介します。
3−1.長期投資の目的とゴールを考えておく
すぐに使わない資産をとりあえず運用にまわす、という考え方も良いのですが、できれば明確な目的やゴールを設定しておきたいところです。以下、想定される中長期運用の目的をピックアップしました。
- 老後の生活資金に充てる
- 子供の教育資金
- 家を建てるときの頭金
- 余裕資金のプール
もっとも多い目的は「老後資金に充てる」「とりあえず投資信託にあずけてプールしている」の2つではないでしょうか。子供の教育資金では、学資保険やジュニアNISA(投資可能期限は2023年まで)の活用が有効です。
明確な目的とゴールを設定しておくと、許容リスクを設定しやすくなります。保有資産には使用用途をラベリングしておくと良いでしょう。
65歳ゴールの理由
「長期運用と言うけど、何歳をゴールとしたらいいのか」という疑問をもつ人も多くいるのではないでしょうか。現状の日本の社会情勢を鑑みて、長期運用のゴールは65歳が良いとされています。
65歳まで再雇用で働くケースでは、65歳以降の年金受給と合わせて資産の取り崩しを考えることになります。65歳以降では給与収入はなくなりますので、長期運用で増やした資産を毎月分配金ありの投資信託に切り替えて、資産を緩やかに取り崩しつつ年金を受給しながら分配金をもらう運用も有効です。
セカンドライフの資産計画では、投資信託以外の資産運用も考えつつ、出来る限りリスクの少ない資産運用を検討しましょう。
3−2.短期や中期のトレンドの波を許容する
短期や中期の視点でみると、株価の大幅な下落に遭遇することがあります。過去を振り返ると、おおよそ10年に1度くらいの頻度で、市場の大暴落が起きています。
たまに起きる暴落に正しく対処できるか?という点が、長期運用のもっとも難しいポイントです。一度すべて現金にしてしまうと、再度の投資タイミングがわかりにくく、結果として運用を止めてしまうケースがよくあります。
株価の推移の歴史を考えると、長期運用では株価の大暴落を許容したほうが良いでしょう。
3−3.目標とするトータルリターンに足りているか
目標とするトータルリターンを設定すると、ファンドのパフォーマンスを測るのに役立ちます。
インフレによる資産の目減りの防止は、長期運用のテーマの一つです。したがって、目標トータルリターンを設定する場合、日銀が目標に掲げている物価上昇率をベンチマークにすると良いでしょう。
現在、目標は2%とされているため、トータルリターン2%以上をベンチマークとし、パフォーマンスを測定します。消費者物価指数をチェックし、インフレの状況を確認することも重要です。
4.投資信託の売却方法
投資信託の売却方法は、解約請求と買取請求の2種類です。
4−1.解約請求
投資家が委託会社に直接解約の請求を行います。信託財産の一部だけ解約することもできます。解約すると解約した金額の分、ファンドの信託財産が減少します。
4−2.買取請求
投資家が証券会社や銀行などの販売会社へ、投資信託の受益証券を買い取るように請求する方法です。買取請求では、ファンドの信託財産は減少しません。販売会社は買い取った受益証券を他の投資家へ売却するか、委託会社へ買取を請求します。
まとめ
投資信託の売却を考える上で重要なポイントは、目的やゴールと自分なりのルール設定です。目的が決まれば、運用期間や許容できるリスクを明確に決めることができます。ライフイベントに合わせて運用期間を設定しておくと、目の前の基準価額の変動に左右されず、売却のタイミングに迷うことも少なくなるでしょう。
長期運用では、景気の大きなトレンドとインフレ率の把握がポイントです。最低限、物価の高騰に対抗できる程度の運用成果を維持できるよう、ファンドのパフォーマンスを見極めましょう。
sayran
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