投資にはリスクがつきものですが、具体的なリスクや分析方法について考えたことがある人は少ないのではないでしょうか。
投資を始める時は、投資そのものについての勉強と同様に、リスクについてもしっかり学習し、理解しておく必要があります。本記事では投資信託のリスクについて、概要や分析方法を詳しく紹介します。これから投資を始めたいと考えている人は、リスクについての理解度を深めておきましょう。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※信託報酬など、課税対象となる数値はすべて税込表示としています。
目次
- 投資におけるリスクの考え方とは?
1-1.リスクとは不透明なリターンのこと
1-2.リスクとリターンは背中合わせ
1-3.投資信託の各リスクは価格変動リスクへ帰結する - 投資信託のリスク分析の方法
2-1.シャープレシオ
2-2.標準偏差
2-3.ベータ - 投資信託に内在するリスク
3-1.価格変動リスク
3-2.為替変動リスク
3-3.信用リスク
3-4.金利変動リスク
3-5.カントリーリスク - 投資信託で損失が出た時に活用できる制度
4-1.損益通算
4-2.繰越控除 - まとめ
1.投資におけるリスクの考え方とは?
日常の会話の中でリスクという言葉を使うこともありますが、投資の世界ではリスクという言葉のニュアンスが少し異なります。投資におけるリスクについて、以下3つのポイントにて説明します。
- リスクとは不透明なリターンのこと
- リスクとリターンは背中合わせ
- 投資信託の各リスクは価格変動リスクへ帰結する
1-1.リスクとは不透明なリターンのこと
金融商品のリターンとは、資産運用にて得られる収益のことです。一方、金融商品のリスクとは、リターンや損失が不確実であることを言います。
不確実性の度合いが大きいほどリスクが大きい、度合いが小さい場合にリスクが小さいと言い表します。「リスクが大きい」とは、大きな収益が出る可能性と同時に、同等の損失が出る可能性も孕んでいるということです。
投資用語としてのリスクは、一般的に使われるリスクの意味である「危険なこと」「避けるべきこと」という意味合いとは少しニュアンスが異なります。
1-2.リスクとリターンは背中合わせ
リスクは収益と損失の振れ幅のことを指しており、リターンとは背中合わせの関係です。投資にて大きなリターンを得たい場合、同等のリスクを取る必要があります。一方、リスクを最小限に抑える場合は、得られる収益も最小限にとどまります。
リスクを負わずして大きな収益を得る、ローリスク・ハイリターンな金融商品は存在しません。
1-3.投資信託の各リスクは価格変動リスクへ帰結する
投資信託がもつリスクは、カントリーリスクや為替リスク、金利変動リスクなどありますが、そのほとんどは価格変動リスクに帰結します。価格変動リスクとは、基準価額が変動するリスクをいいます。基準価額の変動によって元本を上回ることもあり、また元本を割り込む可能性もあるということです。
2.投資信託のリスク分析の方法
ファンドに内在するリスクの分析は、リスク管理が課題となる長期運用においてとても重要です。ファンドの運用成果やリスクを分析するために用いられている、代表的な指標を3つ紹介します。
- シャープレシオ
- 標準偏差
- ベータ
2-1.シャープレシオ
シャープレシオとは、リスクをとって運用した結果、安全資産から得られる収益をどの程度上回ったのかを比較するための数値です。ファンドのリターンだけに注目するのではなく、負ったリスクに見合うリターンが得られているのか、を数値化したものです。
シャープレシオの数字が大きいほど、少ないリスクで多くのリターンを獲得したと見ることができ、効率の良い運用を行っていると評価できます。一方で、負ったリスクの割にリターンが少ないと、効率の良い運用とはいえず、評価は低くなります。
シャープレシオを求める計算式は以下の通りです。
(ファンドの平均リターン-安全資産利子率)÷標準偏差
計算式の安全資産利子率には、日本では銀行間の取引に使われる無担保コールレートなどを使います。
なお、シャープレシオでファンドを評価する場合、同じカテゴリーで同じ期間運用しているファンドでないと正確な比較による評価ができません。
2-2.標準偏差
標準偏差とは、ある測定期間内のファンドの平均リターンから、月次リターンや年次リターンなどがどの程度離れているか、いわゆる偏差を求めることで得られる数値です。データの分散度合いを示す数値として用いられ、高いほどリターンの振れが大きいことを示します。
同じタイプのファンドを比較した場合、標準偏差の数値が高いファンドのほうが、予想外の結果となる可能性を秘めています。
標準偏差はファンドの価格変動リスクを測定する時に使われます。あくまでも過去の成績に基づいた数値であり、未来を占うものではありません。
2-3.ベータ
ベータは、それぞれのファンドが日経平均やTOPIXなどのベンチマークに対して、何倍の動きをしているか、を測定した数値です。ベンチマークに対してファンドがどの程度反応するのか、を見る数値ということもできます。
例えば、TOPIXに対してファンドの値動きが1.2倍の場合、相場上昇時にファンドはTOPIXよりも20%高くなる一方で、相場下落時には20%余計にマイナスになることを表しています。
3.投資信託に内在するリスク
投資信託をはじめとする運用商品に内在するリスクを一通り確認しておきましょう。
3-1.価格変動リスク
有価証券の価格が変動し、保有資産に影響を与えるリスクです。投資信託の場合、基準価額の変動が価格変動リスクに該当します。
価格変動リスクは金融商品のリスクの代表的な存在です。他のリスクの多くは最終的に価格変動リスクに帰結します。価格変動リスクは一般的に、国内外の政治や経済、企業の業績などの影響を受けます。
3-2.為替変動リスク
円と外国通貨の為替レートは日々変化しています。外国の株式や債券、不動産などへ投資する場合、為替変動の影響を受けます。
一般的にファンドを買い付けた時よりも円高になると基準価額は下落します。為替ヘッジありのファンドでは、為替変動リスクを抑えることができますが、逆に円安の恩恵を受けることはできません。
3-3.信用リスク
信用リスクは、有価証券の発行体である国や企業などの経済情勢や税務状態にかかわるリスクです。発行体の倒産などによって決められた分配金や償還金が減額されることがあります。
一般的に信用リスクが高い国や企業は、利率が高く設定されていることが多くみられます。
3-4.金利変動リスク
金利の変動が債券価格に及ぼすリスクのことをいいます。一般的に金利が上昇すると債券価格は下落し、金利が下落すると債券価格は上昇する傾向があります。
政策金利の変動によって、債券ファンドの運用成果に影響が出ることもありますので、注意が必要です。
3-5.カントリー・リスク
投資対象国や地域にて、政治や経済情勢によって市場に混乱が生じた場合や規制が発動された場合、ファンドの運用に支障がでたり、一時的に基準価額が予想外の変動を見せたりすることがあります。
新興国では、市場規模が小さかったり経済基盤が整っていなかったりすることが多く、先進国に比べてカントリー・リスクが高くなる傾向があります。
4.投資信託で損失が出た時に活用できる制度
株式投資信託や株式などの運用商品には、その年に損失を出してしまった場合でも、税務申告によって節税できる制度があります。
投資信託で損失が出た時に活用できる制度は以下のとおりです。
- 損益通算
- 繰越控除
4-1.損益通算
損益通算をすると、株式投資信託や上場株式、株式の配当金、分配金や公社債の利子などの損益と合算して計算することができます。投資信託の譲渡損を他の運用商品の譲渡益や利子などと合算することで、課税対象金額を圧縮できるため、節税になる仕組みです。
同じ金融機関の特定口座に複数の運用商品を預けていて、源泉徴収ありに設定している場合、自動的に特定口座内で損益通算が行われます。一方、複数の金融機関に金融商品をあずけている場合や、一般口座、源泉徴収なしの口座では確定申告が必要です。
厳密に言うと損益通算は節税手段であり、損失のカバーではありません。損失を出しただけで終わらない救済措置の一環です。
4-2.繰越控除
繰越控除は、損失が出た場合、3年間損失を繰越しつつ、各年の株式譲渡益と相殺することで節税できる制度です。
確定申告にて繰越控除を選択すると、翌年から3年間損失を繰越できます。3年間繰越控除を行う場合、その年ごとに繰越控除を申請しなければいけません。
損益通算と繰越控除を使うと、他の金融商品で利益が出ていても、損益を相殺しつつ節税できます。
まとめ
投資信託のリスクとは、基準価額の変動幅のことをいいます。上振れと下振れのリスクが介在するため、ある程度の収益を狙う場合は同等の損失の可能性を負わなければいけません。
リスク管理の方法として、シャープレシオや標準偏差、ベータなどの指標による分析があります。いずれもファンドの運用を分析するために重要な数値です。
また、損失が出た場合、節税による救済措置が用意されています。損失を軽減する措置ではありませんが、損失を無駄にしないために押さえておきましょう。
sayran
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