荏原製作所のESG・サステナビリティの取り組みは?配当情報も

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荏原製作所は、主力商品であるポンプや送風機、半導体製造装置などでインフラや産業を支える世界的メーカーです。ESGやサステナビリティに対しても意欲的な取り組みを進めている企業であり、「CO2約1億トン相当の温室効果ガス削減」「世界で6億人に水を届ける」などの目標を掲げています。

この記事では、荏原製作所のESGやサステナビリティの取り組み内容のほか、ESG・サステナビリティに関する外部評価、業績・株価動向、配当推移も解説するので、ESG投資にご興味のある方や株式投資で銘柄選定などに迷われている方は参考にしてみてください。

※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・銘柄への投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※本記事は2022年12月30日時点の情報をもとに執筆されています。最新の情報については、ご自身でもよくお調べの上、ご利用ください。

目次

  1. 荏原製作所の特徴
  2. 荏原製作所のESG・サステナビリティの取り組み
    2-1.長期ビジョンとマテリアリティ
    2-2.環境に配慮した取り組み
    2-3.社会に配慮した取り組み
    2-4.ガバナンス強化に向けた取り組み
  3. 荏原製作所のESG・サステナビリティに関する外部評価
  4. 荏原製作所の業績・株価動向
  5. 荏原製作所の配当推移
  6. まとめ

1 荏原製作所の特徴

荏原製作所(6361)は、東証プライム市場に上場するポンプの総合メーカーです。1912年に創業者の畠山一清氏が「ゐのくち式ポンプ」を手掛ける「ゐのくち式機械事務所」を創業してから約110年の歴史を持つ企業であり、1920年に取扱い製品の拡大などに合わせて現在の社名に変更されました。

荏原製作所のポンプは、おもにビルやマンションの水道などで利用されているほか、上下水道などのインフラ設備、石油精製プラントや発電所などのエネルギー関連施設でも用いられており、日本ではトップシェアの実績です。一方、アジアや北米、欧州など海外での事業も拡大中で、2021年12月期には海外売上比率が55%と半分以上を占める水準まで増えています。

荏原製作所の主力事業は、ポンプや送風機などを取り扱う「ポンプ・送風機・システム事業」以外に半導体製造に用いる装置などを取り扱う「精密・電子事業」、ごみ処理施設の建設や運営などを行う「環境プラント事業」と多岐にわたります。

また、様々な産業分野で用いられるコンプレッサなどを取り扱う「コンプレッサ・タービン事業」や、生産工程には欠かすことのできない冷凍機などを扱う「冷熱事業」などの事業も展開しています。

荏原製作所の事業は一般消費者を対象としたものではありませんが、建築設備や石油・ガスプラント、公共事業、半導体製造など幅広い業界が市場となっており、製品の製造・販売だけでなくメンテナンスでも継続的に収益を生み出している点が特徴です。

2 荏原製作所のESG・サステナビリティの取り組み

荏原製作所は2020年度に長期ビジョンを発表しており、その中でサステナビリティの実現とSDGsへの貢献に取り組んでいます。

2-1 長期ビジョンとマテリアリティ

荏原製作所は2020年度に今後10年間の長期ビジョンとして「E-Vision2030」を発表しました。その中でサステナビリティの実現や国連の定めた持続可能な開発目標(SDGs)に貢献するため、事業活動を通じて取り組むべき以下の5つの重要課題(マテリアリティ)を定めています。

  • 持続可能な社会づくりへの貢献
  • 進化する豊かな生活づくりへの貢献
  • 環境マネジメントの徹底
  • 人材の活躍促進
  • ガバナンスの更なる革新

これらのマテリアリティの実現によってSDGsをはじめとする社会課題の解決に貢献し、企業の社会・環境価値と経済価値の両方を向上させることが目標です。「CO2約1億トン相当の温室効果ガス削減」「世界で6億人に水を届ける」「売上高1兆円規模」などの具体的な成果目標を定め、実現に向けた取り組みが進められています。

2-2 環境に配慮した取り組み

環境面での2030年度に向けた取り組みとして、温室効果ガス総排出量の2018年度比26%削減や水の合理的な使用、廃棄物の国内における再資源化率95%以上の維持などの「環境目標2030」を策定しています。

温室効果ガス削減については、設備の省エネ運転や低CO2電力の調達拡大などによって2021年度は11%の削減(2018年度比)に成功しています。今後は、工業炉などのエネルギー消費が多い施設の更新や太陽光発電設備の導入拡大などによって、更なる削減に向けた取り組みが進められる予定です。

水の使用については、水の再使用や漏水対策によって前期比で使用量の削減に成功しており、今後も漏水対策の継続や工業用水の循環利用の推進により、継続的に取り組む予定です。

産業廃棄物の再資源化については、2021年度は国内97.1%と目標達成しており、今後も廃棄物分別の徹底や処理委託先の見直しを進めることによって、目標達成に向けた取り組みが進められます。

2-3 社会に配慮した取り組み

荏原製作所では、途上国向けの浄水・給水ビジネスモデルの創出や半導体製造装置の進化による未来社会実現への貢献など、社会に配慮した取り組みも進めています。

例えば、ケニアで学校の敷地内に太陽光発電で飲料水などを作る施設を開設し、学校への無償提供や地域コミュニティへの販売などができる浄水・給水ビジネスモデルを創出しており、この取り組みは外務省開催の第5回ジャパンSDGsアワードで特別賞を受賞しています。

また、未来社会の実現に向けて高性能かつ省エネルギーな半導体製造のための製造装置開発を進めるなど、技術力を活かした取り組みも進められています。

このほか、人材の活躍推進に向けた取り組みも進行中です。年功によらない人材の登用や性別・国籍などにとらわれず多様な人材を登用するダイバーシティの推進などを進めており、併せて社内研修制度の充実や働き方改革による就業環境の整備などにも取り組んでいます。

2-4 ガバナンス強化に向けた取り組み

コンプライアンスやリスクマネジメント体制の構築などコーポレートガバナンスの強化に向けた取り組みも積極的に進めています。

荏原製作所では、取締役会の実効性向上と監督機能を強化するため10名の取締役のうち7名が社外取締役です。その中には女性の取締役も3名含まれており(2022年12月30日時点)、社内外を問わず豊富な知識と経験を有する多様な意見を取り入れることで、コーポレートガバナンス体制の強化を図っています。

コンプライアンスについては、社内の通報窓口の整備などにより不祥事を未然に防ぐ取り組みが進められており、コンプライアンス意識を浸透させることによってハラスメントを未然に防ぐよう図っています。

また、ガバナンス強化に向けて海外子会社を含めたリスクマネジメント体制の構築も進められています。長期的なリスクである地球環境や気候変動、短期的なリスクである自然災害や為替変動など様々なリスクに対して、全社で迅速に報告・連絡・判断ができるような体制作りが進められています。

2-5 荏原製作所のESG・サステナビリティに関する外部評価

荏原製作所は、全世界8,500社以上を対象にESGへの取り組みやリスク管理能力を格付けしている米MSCI社の「MSCI ESGレーティング」において上位2番目の評価となる「AA」(ダブル・エー)を獲得しています。

また、国内の評価も高く、女性活躍推進への取り組み状況が優良な企業に与えられる「えるぼし」の最高位に認定されているほか、従業員の健康などに配慮した取り組みを実践している企業として「健康経営優良法人」にも認定されています。

荏原製作所のESG・サステナビリティに関する主な外部評価は以下の通りです。

指数算定会社 指数
S&P Dow Jones Indices(米国) S&P/JPXカーボン・エフィシェント指数
FTSE Russell(英国) FTSE4Good Index Series
FTSE Blossom Japan Index
FTSE Blossom Japan Sector Relative Index
MSCI(米国) MSCIジャパンESGセレクト・リーダーズ指数
MSCI日本株女性活躍指数(WIN)
SOMPOアセットマネジメント(日本) SOMPOサステナビリティ・インデックス

3 荏原製作所の業績・株価動向

以下は過去5期分の売上高と営業利益、親会社の所有者に帰属する当期利益(グループ企業の親会社持ち分などを加算した利益)をまとめた表です。

(単位:百万円)

決算期 2017年12月 2018年12月 2019年12月 2020年12月 2021年12月
売上高 381,993 509,175 522,424 523,727 603,213
営業利益 18,115 32,482 35,298 37,879 61,372
当期利益 9,531 18,262 23,349 24,473 43,616

荏原製作所は、2021年12月期からIFRS(国際財務報告基準)を適用しています。日本基準だった2020年12月期以前と単純比較はできないものの、売上高は過去5年間で約1.9倍に伸びています。

2021年12月期は、売上高と営業利益で過去最高を更新するなど業績は好調です。営業利益を売上高で割った営業利益率は2017年12月期の4.7%から10.2%へと改善するなど、効率的に利益をあげています。

2022年12月期は、半導体製造用の装置などで部材調達難による出荷遅れなどが生じていますが、海外でのポンプ事業が好調なことや新型コロナウイルスの影響が緩和されてきたことにより、売上高6,700億円および営業利益675億円と過去最高を更新する見通しです。

続いて株価動向を確認してみましょう。以下は2018年以降の同社の四半期決算期末の終値をまとめた表です。

(単位:円)

項目 3月末 6月末 9月末 12月末(期末)
2018年 3,865 3,445 3,920 2,471
2019年 3,120 2,924 2,877 3,325
2020年 2,057 2,525 2,843 3,370
2021年 4,515 5,470 5,550 6,390
2022年 6,840 5,080 4,735

2018年〜2019年までは2,500円から4,000円のレンジで緩やかに下落する展開となっていましたが、2020年3月には新型コロナウイルスの影響で一時1,715円をつけるなど月末終値も2,057円と大幅に下落しています。

その後、株価は上昇に転じており、2022年3月末には6,840円と2年で約3.3倍の大幅な上昇を記録しました。これは、2021年12月期の決算が売上高や営業利益などで過去最高を更新し、営業利益率が10%を超えるなど順調な業績と収益力アップが主な要因です。

また、廃プラスチックを再資源化する独自の技術なども有しているため、ESGの観点から今後の受注が増加するという思惑や、これまで好調であった半導体市場への売上高増などが期待された上昇との見方ができます。

しかし、2022年の第2四半期以降は供給過多との見方もある半導体関連株の下落や急騰した反動などもあり、2022年12月30日の終値は4,200円と調整局面に入った値動きとなっています。

4 荏原製作所の配当推移

配当推移についても確認しておきましょう。以下の表は過去5期分の同社の配当推移をまとめたものです。

項目 年間配当額 中間 期末 配当性向
2017年12月期 45円 30円 15円 48.0%
2018年12月期 60円 30円 30円 33.3%
2019年12月期 60円 30円 30円 24.8%
2020年12月期 90円 30円 60円 35.4%
2021年12月期 163円 50円 113円 35.2%

年間配当額は増配傾向となっており、2017年12月期の45円から2021年12月期は163円まで増配されています。2022年12月期は中間85円、期末85円の年間170円予想となっており、3期連続で増配見込みです。

荏原製作所では、連結配当性向35%以上を目標としており、2020年12月期(35.4%)や2021年12月期(35.2%)のように今後も好調な業績に合わせた増配なども期待されている銘柄です。

まとめ

荏原製作所は東証プライム市場に上場しているポンプの総合メーカーであり、数年の業績は好調かつ2022年12月期も売上高や営業利益で過去最高の更新を見込んでいます。ESGやサステナビリティに対しても積極的に取り組んでおり、国内外のESG指数にも多数採用されるなど外部機関からの評価も高い企業です。

なお、ESG投資を検討する際は、取り組み内容のほか、株価動向や株主還元などの情報も参考にすることが大切です。

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HEDGE GUIDE 編集部 株式投資チーム

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