NISA口座を使って投資信託に投資するメリットは何なのか、と疑問をお持ちの方もいるのではないでしょうか。NISA口座は投資信託の他に個別株にも投資できますが、この記事では、NISA口座を使って投資信託を始めるメリットや注意点の解説と、初心者向けの証券会社の紹介をします。
これからNISA口座を使った資産運用をお考えの方は、内容をご確認ください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、利用者ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
※この記事は2021年7月25日時点の情報に基づき執筆しています。最新情報はご自身にてご確認頂きますようお願い致します。
目次
- NISAと投資信託それぞれの特徴
1-1.NISA
1-2.投資信託 - NISAで投資信託を運用するメリット
2-1.計画的に非課税枠を運用できる
2-2.積立投信と相性がいい
2-3.ポートフォリオのリバランス - NISAで投資信託を運用する時の注意点
3-1.分配金の再投資に注意 - 証券会社選びの抑えるべきポイント
4-1.手数料が安い
4-2.投資に関する読み物や情報が充実している
4-3.ラインナップが充実している
4-4.最低投資金額 - 初心者に優しい証券会社
5-1.SBI証券
5-2.楽天証券
5-3.松井証券
5-4.auカブコム証券 - まとめ
1.NISAと投資信託それぞれの特徴
まずNISAと投資信託、それぞれの特徴について確認しておきましょう。
1-1.NISA
NISAは2014年からスタートした投資額上限付きの非課税制度で、スタート当初は100万円を上限としていましたが、現在では年間120万円を上限として投資を行うことができます。分配金や、配当金、譲渡益には通常20.315%の税金がかかりますが、NISA口座の枠内での投資であれば税金がかからない点が特徴です。
運用期間は最長5年間ですが、非課税期間が終了した保有中の資産を翌年の非課税枠に持ち越すロールオーバーを行うことで、さらに運用期間を最長で5年間延長できます(2024年以降は新NISA制度に移行)。なお新NISA移行後は、つみたてNISAへのロールオーバーも可能になります。
NISAの概要を以下の表にまとめました。
利用できる人 | 口座開設をする年の1月1日時点で20歳以上の日本在住の人 |
対象商品 | 上場株式、株式投資信託、ETF、REIT |
非課税対象 | 分配金、配当金、売却益 |
口座開設可能数 | 1人1口座 |
金融機関の変更 | 1年単位で変更可能 |
非課税投資枠 | 毎年120万円 |
非課税期間 | 最長5年間 |
投資可能期間 | 2014年~2023年まで |
1-2.投資信託
投資信託の特徴は以下の通りです。
- 少額から投資を始められる
- 運用のプロに任せられる
- 分散投資によるリスクを軽減できる
- 海外の株や資産にも投資できる
少額から投資を始めることができ、運用をプロに任せられる点は投資初心者にとって心強いシステムです。
個別株への直接投資は、銘柄の選定やポートフォリオの構築に少なくない時間がかかりますし、正しいスクリーニングができないとリスクとなってしまいます。一方で、投資信託は商品設計の時点で資産構成が考えられており、分散投資の効果も期待できます。投資信託は日々忙しく働く方や、投資初心者の方にとってメリットのある運用商品なのです。
なお、投資信託の主な手数料として、保有している間、毎日間接的に発生する信託報酬があります。安価なファンドなら年率0.1%程度で、高いものだと2%を超えるものもあります。その他、購入時手数料や信託財産留保額といった手数料が発生するものもあります。そのため、ファンドによって個別株式よりも手数料が高くなったり安くなったりする点が特徴です。
2.NISAで投資信託を運用するメリット
NISAを使って投資信託へ投資するメリットを3つピックアップしました。
2-1.計画的に非課税枠を運用できる
株式やETF、REITは基本的に数量単位で買い付けるので、購入金額を細かく設定することが難しいのですが、投資信託は10,000円単位で購入できます。そのため、NISA枠を余すところなく綺麗に使い切ることができるのです。
また口数や金額設定でなく、つみたて買い付けを選ぶと、金融機関によっては毎月100円から買い付け可能です。毎月、少額から投資できて、NISAの枠を把握しやすい点も投資信託のメリットです。
1年で120万円の非課税枠をきれいに使い切りたい場合は、投資信託をうまく活用しましょう。
2-2.積立投信と相性がいい
NISAをうまく活用することで、NISAの非課税枠を効率よく運用できます。主な活用事例として、積立投信のメリットは以下の2点です。
- 自動積立なので手間いらずで忘れない
- 時間の分散によって着実な運用が期待できる
一度設定してしまえば、毎月決まった金額で買える数量を定期的に買い付けるので、買いすぎもなく、忘れることなく積立ができます。定期的に買い付けることで、時間の分散効果が発揮され、長期運用がしやすい点も重要なポイントです。
つみたてNISAでの投信積立も有効な運用ですが、一般NISAの場合は年間の非課税枠が120万円とつみたてNISAに比べて多く、公募株式投資信託であればつみたてNISAのような銘柄の指定はありません。つみたてNISAの運用だと物足りない、という方には一般NISAの積立投信を選択してみましょう。
ただし、つみたてNISAの非課税期間は最長20年、非課税枠は年間40万円で、非課税枠の合計は計800万円とNISAよりも大きくなります。年間40万円の積立投資を15年以上続ける場合は、つみたてNISAのほうが節税メリットを享受できることもあるため、自身の投資スタイルに合わせて一般NISAとつみたてNISAどちらを活用するか検討しましょう。
2-3.ポートフォリオのリバランス
投資をする時に資産を全部一つの商品で運用すると、その対象が経営悪化や倒産などをしてしまった時に大きな損失を被ってしまい、高いリスクを負うポートフォリオとなります。したがって、例えば国内株式30%、債券40%、外国株式30%という具合に対象を分散させ、ポートフォリオを組むのが一般的です。
例えば国内株式が急騰して、構成比率が30%から60%となった場合、ポートフォリオの比率を維持するために国内株式を一部売却してリバランスを行うことが分散投資においては有効ですが、NISAの枠内だとリバランスのための売買でも非課税枠を使ってしまうので、自在にリバランスができるわけではありません。
投資信託の場合、ファンドマネージャーがリバランスを行ってくれるので、自分の非課税枠を使いながらリバランスを行う必要がなくなります。したがって、リバランスを行いつつNISAの非課税枠も活用したい場合、投資信託への投資が良い選択となるのです。
3.NISAで投資信託を運用する時の注意点
NISAと投資信託をあわせた投資は、比較的リスクを抑えての資産形成に向いていますが、いくつかのメリットがある反面、デメリットもありますので注意が必要です。
3-1.分配金の再投資に注意
毎月分配型の投資信託は、月に一度の決済により毎月分配金が支払われます。
投資信託の分配金は、普通分配金と特別分配金があり、利益から支払われる分配金が普通分配金で、元本を切り崩して支払われる分配金が特別分配金(元本払戻金)です。特別分配金はあくまでも元本の切り崩しであり、元々非課税なので、NISAのメリットが削がれてしまいます。
毎月の分配金を再投資すると、そのつど120万円の非課税枠を使って再投資することになり、効率の良い投資ができません。したがって、NISAを使って毎月分配型の投資信託へ投資するとデメリットが生じる可能性があります。
4.証券会社選びの抑えるべきポイント
NISAで投資信託を運用するメリットと注意点を理解したら、利用する証券会社を探してみましょう。すで投資をスタートしている方も、今取引している証券会社のサービス内容をあらためて確認してみてはいかがでしょうか。
4-1.手数料が安い
NISA口座での投資信託の買付は、手数料は無料です。また通常取引の場合でも、ネット証券を中心に取引手数料0円の会社も多くなってきています。
買付手数料は無料なので、信託報酬や信託財産留保額が安いファンドを多く取り扱っている証券会社を探してみましょう。ネット証券は手数料を安くしているところが多いので、ネット証券から比較検討してみるのも良いでしょう。あるいは、手数料は高くなる傾向にありますが、担当者からのアドバイスを希望するなら店頭証券が向いています。
4-2.投資に関する読み物や情報が充実している
最近では、銀行や証券会社のWEBサイトで、投資や運用商品について詳しく解説された記事が公開されています。内容を読むと、どの金融機関もしっかりとした解説記事を公開しているのですが、内容のわかりやすさには大きな差があります。
フォントが小さく、テキストが多めで専門用語が多く、内容を理解するには基礎知識が必要なものもあれば、図解が多く、表を効果的に使って理解しやすく記事をまとめている金融機関もあります。後者は人に知識を教えるノウハウに長けているので、筆者の経験上、カスタマーサポートを含めて初心者に優しい傾向が見られます。
証券会社選びの決め手に欠く場合、読み物が充実しているか、で決めても良いでしょう。
4-3.ラインナップが充実している
資産運用歴が浅いうちは、選択肢を多くもっておいたほうが無難です。投資信託はリスク高いものから低いもの、国内・外国株、債権、不動産など、投資対象だけでもいくつかの種類があり、テーマを見るとさらに数多くのファンドが存在します。運用中のファンドは約6,000本程度存在するといわれています。
すべてのファンドを取り扱っている証券会社は存在しませんが、できるだけ数多くのファンドを扱っている証券会社を選ぶほうが良いでしょう。選択肢が多いと、つみたてNISAとNISAで運用テーマを変えることもでき、運用の幅が広がります。
4-4.最低投資金額
投資には、一回で大きな金額を投資する方法と、少しづつ定期的に積み立てていく投資方法があります。運用スタイルは幅広く選択できるほうが柔軟な運用ができますので、最低投資金額はできるだけ低い証券会社を選びましょう。
ネット証券は100円から投資できる会社が多く、リアル店舗をもつ老舗位証券会社は最低投資金額が少々高くなっています。
以下、主な最低投資金額の一覧です。
SBI証券 | 100円 |
楽天証券 | 100円 |
マネックス証券 | 100円 |
SMBC日興証券 | 1,000円 |
LINE証券 | 1,000円 |
野村證券 | 1,000円 |
5.初心者に優しい証券会社
手数料が安く、ラインナップが充実しており、かつ初心者の方に向けた資産運用の読み物が充実している証券会社を4つピックアップしてみました。(※証券会社のサービス内容などは2021年8月時点の情報です)
5-1.SBI証券
SBI証券の強みをあえて2つに絞ると以下の通りです。
- 売買手数料の安さ
- 取扱銘柄の多さとサービスの充実度
2021年8月現在、株式の取引手数料は1日の約定代金100万円以下で無料となっており(アクティブプランの場合)、投資信託の買付手数料はすべてのファンドで無料です。取り扱いファンドの数も約2,600本用意されており、十分な選択肢が用意されています。
ポイントプログラムも充実しており、投信マイレージサービス現在の投資信託保有金額に対して月0.01~0.2%相当のTポイントを獲得できます。ポイントは、現金に交換したり、商品や新たな投資信託の買付にも使えます。積立投信もポイントの対象なのでうまく活用したいところです。
5-2.楽天証券
楽天証券は、取引手数料、サービス内容、取り扱い銘柄の多さなど、全方位にわたってバランスの取れた内容にまとまっており、初心者にやさしい証券会社です。
株の取引手数料は2020年の12月7日から定額制プランを引き下げ、1日100万円までの取引は手数料無料となりました。投資信託の買付手数料はすべてのファンドで無料です。楽天証券の取り扱いファンドも2,600本を超えており、ラインナップは十分と言えます。
楽天証券独自の強みは以下の2点が挙げられます。
- 楽天ポイントプログラムの充実
- トレードツールや日経新聞が無料
楽天ポイントは楽天証券だけでなく、楽天市場、楽天銀行などあらゆる楽天のサービスで発生するポイントで、楽天証券の投資信託買付にも使えます。楽天証券で株や投信の買付をする時にも貯まり、楽天銀行の口座と連携すると楽天銀行の適用金利がアップします。また積立投信を行うことでSPU対象にもなり、楽天市場で貰えるポイントが1%アップします。楽天のサービス内で大きなシナジー効果が得られることは、楽天証券の大きな強みです。
加えてマーケットスピードなどの高性能ツールが無料で使え、アプリから日経新聞を無料で読むことができる点もポイントです。
5-3.松井証券
松井証券の初心者に優しいポイントは2点です。
- 投信買付手数料無料の先駆け
- 仕組みが複雑なファンドは扱わない
- ロボアドバイザーが利用できる
松井証券は、今では当たり前になりつつある投信買付手数料無料を最初に始めた証券会社です。
仕組みがわかりにくい仕組債やヘッジファンドタイプ、通貨選択型のファンドはあえて取り扱いがありません。内容がわかりにくいファンドでは、知らない間に損していたということもあり得ますので、初心者のうちは避けたほうが無難です。内容がわかりにくくハイリスクなファンドがないのは、初心者の方にとってはうれしいポイントです。
他にも、ロボアドバイザーの「投信工房」は初心者にとって心強い味方です。8つの質問に答えるだけで投資信託の推奨ポートフォリオを作成、リバランスの管理まで行ってくれます。投信工房の対応は他社のラップ口座と同じなので、無料で対応してくれるのはお得なサービスだと言えます。
投資信託以外では、株式、信用取引とあわせて1日50万円までの取引であれば手数料無料です。
5-4.auカブコム証券
auカブコム証券は、KDDIグループがカブドットコム証券に出資する形でできたMUFGグループの証券会社です。auカブコム証券のメリットは以下の通りです。
- 手数料が安い
- ファンドが豊富に用意されている
- 各種ツールが高機能でスクリーニングがしやすい
- 信用取引の証拠金として投資信託が使える
他のネット証券と同じく、投資信託の買付手数料は無料です。取り扱いファンドは1,000本台なので、楽天証券やSBI証券と比べて少ないのですが、それでも多くのファンドから選べる規模です。
auカブコム証券は高機能ツールが豊富で、取引や資産運用について詳しく解説した記事が用意されています。これから本格的に投資を初めてみたい方は、auカブコム証券のサイトで勉強を進めるのも良いでしょう。投資信託以外の運用についても、動画を含め細かく解説されています。
まとめ
NISAで投資信託を運用するメリットは、120万円の非課税枠を余すところなく使うことができ、公募株式投資信託から制限なく選ぶことができる、という点です。
つみたてNISAは長期の計画的な運用に適していますが、対象ファンドが指定されており、上限は年間40万円までとなっています。一方、NISAは株式投資信託であればファンドに制限がなく、リスクが高いファンドへも投資できます。
投資信託はキリのよい金額で買付できますので、120万円をあますことなく使い切る運用ができる点もメリットの一つです。リスクが高いファンドへの投資に挑戦したい方は、NISAを使うと非課税枠のメリットを享受できます。
つみたてNISAと使い分け、バランスの良い資産運用を目指しましょう。
sayran
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