投資信託を選ぶ際に、運用パフォーマンスと同じく注目したいのが信託報酬です。保有期間中に毎日発生するコストである信託報酬は、運用で得られるリターンにも大きく影響を与えるからです。
この記事では、投資信託を選ぶ際の信託報酬の目安について、ファンドの種類別に解説していきます。
目次
1.投資信託の信託報酬とは
信託報酬とは、投資信託を運用・管理してもらうために投資家が支払う経費です。信託報酬は、「ファンドの純資産総額に年率○○%をかけた額」といった形で毎日基準価額から差し引かれます。
一般的にインデックスファンドよりもアクティブファンドの方が信託報酬が高く設定されていますが、これはアクティブファンドの運用には銘柄選定などの手間がかかっているためです。
また、信託報酬はファンドによって独自に定められているため、同じ指数をベンチマークとしているファンド同士であっても信託報酬が異なることがあります。信託報酬は運用成績にも影響するものであるため、インデックスファンドを購入する際は同じ指数をベンチマークにしているファンドをいくつか比較することが大切です。
各ファンドが定めている信託報酬については、「目論見書」で確認することができます。「ファンドの費用」の記載欄にて信託報酬や購入手数料、信託財産留保額などのコストが確認できるので、投資信託を購入する前には必ず確認しておいてください。
ファンドを運用していく上で実際にかかった信託報酬は、「運用報告書」にて確認できます。運用報告書はファンドの決算ごとに発行されており、ファンドの運用成績や資産状況などが掲載されているものです。投資家が負担した信託報酬については、「費用明細」に記載されており、「○○円」といった実際の金額が確認できます。
2.ファンド種類別に信託報酬を比較
信託報酬はファンドの種類によって、およその目安が異なります。以下は投資対象別に平均信託報酬をまとめたものです(2021年4月末時点)。
項目 | カテゴリー(パッシブ/上段・アクティブ/下段) | 平均信託報酬(%) |
---|---|---|
国内株式 | 日経225連動型 | 0.4 |
国内大型グロース | 1.41 | |
先進国株式 | MSCIコクサイ(円ベース連動型) | 0.41 |
国際株式・グローバル・除く日本(F) | 1.43 | |
国内REIT | 東証REIT指数連動型 | 0.39 |
国内REIT | 0.98 | |
国内債券 | NOMURA-BPI(総合)連動型 | 0.25 |
国内債券・中長期債 | 0.4 | |
先進国債券 | FTSE世界国債(除く日本、円ベース)連動型 | 0.39 |
国際債券・グローバル・除く日本(F) | 1.21 |
引用:モーニングスター「インデックスファンドの3倍に相当するアクティブファンドのコストは正当か?=投資信託のコストとベネフィット(2)」
3.信託報酬は安さを重視すべき?
上記の表から、インデックスファンドはアクティブファンドに比べて信託報酬が低いことが分かります。これは前述の通り、インデックスファンドには銘柄選定などの運用の手間・コストがかからないためです。
インデックスファンドは、アクティブファンドよりもコストを抑えた運用が可能です。しかし、投資信託を選ぶ際にコストの安さだけに注目するのは、いささか早計といえます。
アクティブファンドは、ファンドマネージャーが適時銘柄の入れ替えを行ってくれるため、マーケット全体が下落している時でも銘柄選定によってはダメージが少なく済む例も見られます。
インデックスファンドは指数に連動するように運用されているため、マーケット全体の上下には当然同じように連動することとなります。そのため、マーケットの下落時にはインデックスファンドがなかなか回復しない中、アクティブファンドの方が早く上昇基調へと転換することがあるのです。
ただ、これはファンドマネージャーの銘柄選定の手腕にもよるため、アクティブファンドを選ぶ際には、過去に市場が大きく下落した際の立ち上がりの早さなどを確認するようにしてください。
まとめ
昨今のNISA制度の浸透から、個人投資家の間でも投資信託に低コストを求める傾向が強くなりました。長期投資を前提とする上で投資コストを抑えることは重要ではありますが、運用コストが高いアクティブファンドの中にも運用成績が優秀なファンドが存在しています。
とくにマーケットの下落局面では、市況に合わせて銘柄選定をしてくれるアクティブファンドの方が回復が早いこともあるため、必ずしも投資コストを抑えることだけが正しいとはいえません。
したがって投資信託を選ぶ際には、自身のリスク許容度や投資期間などの運用意向に合わせて信託報酬やリターン(騰落率)の比較を行うことをおすすめします。
山下耕太郎
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