投資信託は、あくまでも投資商品であるため、その価値が大きく変動することもあります。そして、損失が大きくなることを避けるため、損切りを行うこともあるでしょう。しかし、「損切りのタイミングっていつ?」という疑問も少なからず聞かれます。実際に損切りのタイミングを見誤った場合、さらに損失が大きくなる可能性もゼロではありません。
そこで本記事では、投資信託の損切りの定義やそのタイミングを見極める5つのポイント、注意点について触れて行きます。
目次
- 投資信託の損切りとは
- 投資信託の損切りタイミング5つ
2-1.価格の変動が許容を超えている
2-2.投資・資産の配分を見直したい
2-3.純資産総額が減少した
2-4.購入価格を下回った
2-5.運用成績がよくない - 損切りの際の注意点
3-1.解約できない期間がある
3-2.解約から返金までは最短で3日かかる
3-3.手数料を無視できない - まとめ
1.投資信託の損切りとは
損切りとは、損失を抱えた状態で損失額を確定させ、それ以上に損失が広がらないようにすることです。ロスカットとも呼ばれており、投資信託だけでなく株式などでもよく使われるワードです。
例えば、一度大きく下落した投資商品は、短期間で回復することは通常では考えにくく、長期保有するほどマイナスが膨らんでいく可能性が出てくることになります。その際に、損切りを行うことで資産の減少を防ぐことが可能です。
損切りとは反対に、利益を確定させるために売却することを利確と呼びます。投資信託などで利益を出すためには、この利確の判断が最重要です。仮に、購入した投資信託が大幅に上昇したとしても、利確をしなければ意味がありません。
そして、損切りをせずに価値が下がったままの投資信託や投資商品を保有し続けることを塩漬けと呼びます。これは投資を行う人の判断にもよるものの、投資商品は価格の変動が激しく、回復傾向を見せることもあります。そのため、一時的な損失が出ても保有し続けることも珍しくありません。
損切りと塩漬けは、投資信託でも判断が難しいといわれるものの、2つとも損失が膨らみ続けて相場から退場してしまうことを避けることが目的であることを意識しましょう。
2.投資信託の損切りタイミング5つ
ここでは、投資信託の損切りタイミングとなる5つのポイントを解説します。損切りのタイミングは、たとえ現状で損失が出ていなくても、運用結果を考察しながら思考することが重要です。
2-1.価格の変動が許容を超えている
投資信託においても、どこまでの利益の減少であれば許容できるかといったルールを投資を行う前に決めておくことが重要です。そして、その金額や資産の減少率などを加味し、自分が決めたルールから逸脱している場合は、損切りを行いましょう。
投資信託を購入する際は、標準偏差や資産の規模などによって商品を決めるのがセオリーです。しかし、どのような場合でも損失が生まれる可能性はあると想定して運用することが重要です。
2-2.投資・資産の配分を見直したい
投資や資産の配分を変更したい場合も、損切りのタイミングだといえます。例えば、投資信託の対象には以下の種類があります。
- 株式
- 債権
- 不動産
- 資産複合
そして、運用目的などによってこの配分を変えていきます。例えば、不動産と債権で5:5の割合で運用していたものの、これに株式を加える際には3:3:4などと配分を決め直す必要があります。
また、資産の内訳で預金など元本保証のものを増やしたい場合なども、損切りのタイミングだといえます。ライフステージや市況の変化などに伴って、安全資産の割合を増やそうと考えるタイミングも出てくると思いますが、その際も資産の組み替えによって今までの損失を確定し、これ以上の資産の減少リスクを回避するということになります。
2-3.純資産総額の減少
純資産総額の減少は、投資信託の損切りタイミングの指標にできます。純資産総額は分配金の発生によって減少することもあるものの、減少し続けている場合などには損切りをおすすめします。
特に、一般的な指標である30億円以下となった場合は、金融機関の採算が合わず運用が停止される可能性もあるため、損切りを検討しましょう。満期まで運用されずに運用停止となった場合には繰り上げ償還が行われることとなり、ほとんどの場合損失につながるため、注意が必要です。
2-4.購入価格を下回った
投資信託を含む投資商品は、利益を比較的簡単に確認することが可能です。投資信託では基準価額が購入時よりも下回っていた場合、損切りを検討することも必要です。
金融市場の動きなども考慮する必要があるものの、基準価格が下がりつづけている場合、今後も利益を確保できない可能性があります。そのため、ある程度長期間保有が目的で購入した場合でも、基準価格の動向には注意が必要です。
2-5.運用成績がよくない
投資信託は、前述したように取り扱う商品の傾向はある程度決まっています。そして、投資信託はファンドマネージャーによって運用されることから、リターン率などもファンドによって異なります。
この場合、取り扱う商品の傾向が他の投資信託と同様であっても、比較してリターン率が著しく低い場合などは損切りがおすすめです。加えて、投資信託の価額が指標とうまく連動しているかどうか、指標を上回っているかといったことも把握できるため、一定期間ごとにチェックすることも重要です。
3.損切りの際の注意点
投資信託の損切りを行う場合の注意点について触れていきます。手数料だけではなく、売買の制度まで考慮したうえで運用していく必要があるといえるでしょう。
3-1.解約できない期間がある
投資信託を解約できない期間はクローズド期間と呼ばれ、選択する投資信託によってそれぞれに設定されています。この期間中は、通常通りの運用であれば、病気や生計の破綻などの事情でなければ解約することができません。
クローズド期間の確認は契約前にも行われるものの、運用期間中でも自分がどのような商品を持っているのかは口座の管理画面などで容易に確認できます。そのため、クローズド期間については事前に確認しておくほか、保有中の商品のクローズド期間を把握していない場合は、今一度確認をしておきましょう。
3-2.解約から返金まで最短で3日
投資信託の損切りを行う場合、解約の注文を行ってから実際に解約が完了するまでには最短でも3日ほどかかることに注意が必要です。
また、解約申し入れが受理されるタイミングは、その日か翌日になります。仮に翌日に処理された場合、申し入れ日から価格が変動している可能性もある点には注意が必要です。
3-3.手数料を無視できない
投資信託の解約時には、商品によって信託財産留保額と呼ばれる手数料が設定されていることもありますので注意が必要です。仮に損切りを検討している商品に信託財産留保額が設定されていた場合、投資信託の基準価額から所定の割合(一般的には0.3%程度)で金額が差し引かれます。
信託財産留保額はそれぞれの投資信託によって設定されているもの・設定されていないものに分かれており、契約前に発行される目論見書などに記載されているため、よく確認したうえで契約を行いましょう。
まとめ
投資信託の損切りのベストなタイミングは、投資家がどの程度の損失が出たら損切りするのかを設定したことを前提として、下記の項目に該当した場合だといえます。
- ファンドの運用実績が良くない
- 基準価格がマイナスになり続けている
- 純資産総額がマイナスになっている
レアパターンではあるものの、全てが合致するようであれば、損失が拡大する可能性が高いため損切りを検討しましょう。また仮に含み損が出ていたとしても、回復が見込める場合には塩漬けという方法もあるため、基準価額の推移やファンドの運用実績もチェックしたうえで判断が必要です。
また、投資信託を解約する場合、すぐには解約できず、返金までに日数を要することには注意が必要です。加えて、クローズド期間の設定がある投資信託は、3ヵ月や1年などある程度の期間は解約を行うことができないため、契約前に確認しておきましょう。
損切りのタイミングと注意点をふまえたうえで、投資信託を運用することをおすすめします。
鈴原 千景
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