景気後退は、投資や資産運用に大きなリスクをもたらします。景気後退になると、株価や物価も下落し、投資家の心理も悪化するからです。しかし、景気後退は必ずしも投資の敵ではありません。むしろ、市場の乱高下や不安定さを利用してチャンスを掴むこともできます。
この記事では、景気後退に備えた投資・資産運用のポイントについて解説します。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定商品・ファンドへの投資を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 景気後退時の資産運用は債券や現金の比率を増やす
- 景気サイクルを見極めるにはどうしたらいい?
- リスクを軽減するために分散投資する
- 株式ではインカムゲイン狙いの高配当株に投資する
4-1.日経平均高配当株50指数とは - まとめ
1.景気後退時の資産運用は債券や現金の比率を増やす
景気後退時には、株式市場やその他のリスク資産が下落しやすくなります。一方、債券や現金は安全資産として重要な役割を果たすことがあります。このような状況下では、個人の投資目的やリスク許容度に応じて、債券や現金の保有を見直す必要があるのです。
債券や現金を保有することで、投資家はポートフォリオに安定性をもたらすことができます。一方、株式市場やその他のリスク資産は、一般的に景気後退期に下落し、投資家に大きな損失をもたらす可能性があるので注意が必要です。
しかし、投資家が債券や現金に投資することは、リスクが低い=リターンも低いことを意味します。したがって、ポートフォリオの保有比率は、個人の投資目的とリスク許容度に基づいて決定する必要があります。
2.景気サイクルを見極めるにはどうしたらいい?
景気サイクルとは、経済活動の周期的な変動のことです。景気は常に上昇するわけではありませんが、常に下降するわけでもありません。
一般に、景気循環は4つの段階に分けることができます。
- 回復期:不況を脱し、経済が回復し始める段階
- 好況期:経済が順調に拡大する段階
- 景気後退期:景気がピークを過ぎ、下降に転じる段階
- 不況期:景気が悪くなる段階
これらの局面は、金融政策や需給バランスなど様々な要因によって変化します。また、株式や債券などのパフォーマンスも各局面で異なります。
例えば、景気回復局面では株式市場は上昇し、好景気局面では金利やインフレ率の上昇により債券市場は下落する傾向があるのです。
一方、景気後退局面では、株式市場、債券市場ともに下落する傾向があり、不況期には、金利、インフレ率の低下により債券市場は上昇する傾向があります。
3.リスクを軽減するために分散投資する
景気後退時には、株式市場や不動産市場などの特定の資産クラスが大きく下落する可能性があるので、資産の分散が大切です。
資産の分散とは、異なる資産クラス、産業、地域への投資を組み合わせることでリスクを分散し、投資全体のリターンを最適化することを指します。
景気後退期には、特定の資産クラスが大きく下落することがあります。例えば、株式市場が下落した場合、株式に投資したポートフォリオ全体がマイナスになる可能性があるのです。しかし、債券や不動産など異なる資産クラスに分散されたポートフォリオであれば、株式市場の下落に耐え、全体的なリスクを軽減することができます。
分散投資には、異なる資産クラス、産業、地域などへの投資が含まれます。例えば、株式、債券、不動産投資信託(REIT)、商品(コモディティ)、通貨、代替投資(ヘッジファンドやプライベート・エクイティなど)など、様々な投資商品に分散投資することが可能です。
また、個別銘柄も適切に分散する必要があります。例えば、同じ業種の企業に投資する場合でも、複数の企業に分散投資することで、業績不振や経営不振のリスクを分散できます。同じように、地域別では、国内だけでなく国際的な投資を行うことで、リスクを分散できるのです。
資産の分散は、投資家がリスクを適切に評価し、分散することによってリターンを最適化するために不可欠な戦略の一つになります。ただし、ポートフォリオの過度な分散はリターンを低下させる可能性があるため、バランスを取りながら適切に分散を行うことが重要です。
4.株式ではインカムゲイン狙いの高配当株に投資する
景気後退時には、高配当株などのインカムゲインを狙った株式の購入も有効です。株価が下落しても配当狙いの買いが入りやすくなるからです。ただ、景気後退で業績が悪化すると配当が減る(減配する)可能性もあるので、必ず業績を確認してから購入するようにしてください。
4-1.日経平均高配当株50指数とは
2022年は、配当利回りの高い「高配当株」に関心が集まった年でした。日経平均株価が年間9%下落する中、日経平均高配当株50指数は2021年末から20%上昇し、好調なパフォーマンスとなりました。
日経平均高配当株50指数は、日経平均株価のうち配当利回りの高い50銘柄で構成される株価指数で、配当利回りが高いほど指数中のウエイトが大きくなる配当利回り加重方式で算出されています。
日経平均高配当株50指数の予想配当利回りは4~5%で、日経平均株価の予想配当利回り(2.36%)より高く、安定した収益を求める投資家には魅力的な指数となっているのです。日経平均高配当株50指数の過去10年の値動きは、以下の通りです。
出典:日経プロフィル
2022年に同指数は大きく値上がりしましたが、2023年になっても勢いが継続しています。そして、同指数に連動するETF(上場投資信託)の「NEXT FUNDS 日経平均高配当株50指数連動型上場投信(1489)」もあります。野村アセットマネジメントが運用するETFで、日経平均高配当株50指数にほぼ同じウエイトで投資します。
また、三菱UFJ国際投信が運用する「日経平均高配当利回り株ファンド」は主として日経平均株価採用銘柄の中から、予想配当利回りの上位30銘柄を選びます。そして、流動性を勘案して銘柄ごとの組入比率を決定するファンドです。
こうしたETFや投資信託を通じ、高配当株に投資するのも良いでしょう。
まとめ
景気悪化に備えた投資・資産運用のポイントは次の通りです。
第一に、資産を分散させることが重要です。一つの銘柄や投資先に偏ることなく、複数の投資先に分散して投資することでリスクを軽減できます。
第二に、長期的な視野で投資を行うことです。景気後退期には株価や不動産価格が下落することもありますが、時間の経過とともに回復する傾向があります。
また、リスク資産と安全資産のバランスを保つことも重要です。リスク資産には株式や不動産などがあり、安全資産には国債などの債券や預金などがあります。両者をバランスよく組み合わせることで、リスクを軽減することができます。
景気後退は不可避な現象ですが、それを恐れるだけではなく、自分のメリットに変えることができます。また、投資のプロセスにも注意が必要です。自分で投資を行う場合は、投資の基礎知識や情報収集能力を高めるようにしてください。
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山下耕太郎
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