ネット証券で口座開設をする人が増えましたが、実際に運用を始めるまでに悩む人も少なくありません。自己判断で資産運用をするのが難しい場合、プロのアドバイスを受けるのも選択肢の一つです。
アドバイスを受ける方法はいくつかありますが、それぞれにメリットも注意点もあります。この記事では資産運用のアドバイスを受ける方法について解説します。自分に合った相談先を見つけるための参考にしてください。
※本記事は投資家への情報提供を目的としており、特定サービスの利用を勧誘するものではございません。投資に関する決定は、ご自身のご判断において行われますようお願い致します。
目次
- 【資産運用の相談先①】銀行
1-1.銀行に相談するメリット
1-2.銀行に相談する場合の注意点 - 【資産運用の相談先②】独立系FP
2-1.独立系FPに相談するメリット
2-2.独立系FPに相談する場合の注意点 - 【資産運用の相談先③】店頭証券会社
3-1.店頭証券会社に相談するメリット
3-2.店頭証券会社に相談する場合の注意点 - 【資産運用の相談先④】IFA
4-1.IFAに相談するメリット
4-2.IFAに相談する場合の注意点 - 【資産運用の相談先⑤】ロボアドバイザー
5-1.ロボアドバイザーのメリット
5-2.ロボアドバイザーの注意点 - まとめ
1.【資産運用の相談先①】銀行
銀行では預金だけでなく、資産運用の相談をすることもできます。銀行の店舗に出向くと、投資信託や貯蓄型保険など金融商品の勧誘を受けることも少なくありません。金融商品の販売は、銀行にとって大きな収益源となっているからです。
1-1.銀行に相談するメリット
最近では土日祝日も営業する店舗を設けるなど、仕事を持つ現役世代への利便性にも注力する銀行が増えました。
お金の預け先として信頼できる
資産運用の相談先として銀行を選ぶ理由は、銀行への信頼や安心感が考えられます。銀行で取り扱う保険や投資信託で、預けた資産が適正に保全されないような心配はまず無いでしょう。個人経営のFPや全国規模でないIFAでは不安な人には、銀行の信用は重要なポイントとなり得ます。
自分の資産状況に合った提案が受けられる
メインバンクであれば自分の資産状況を把握できるため、状況に合った運用アドバイスが期待できます。資産運用のアドバイスを受けるには、資産状況や個人情報を相談先に開示する必要があります。むやみに個人情報を知られたくない人であれば、資産運用の相談は取引銀行にするのが安心という方もいるでしょう。
1-2.銀行に相談する場合の注意点
銀行は身近に利用できる運用の相談先ですが、メリットばかりでもありません。
手数料が高め
銀行では、同じ金融商品でも手数料がネット証券などよりも高くなる傾向にあります。最初から手数料が高い金融商品を勧められるケースもあります。
また、最低投資額についても、ネット証券では100円程度から買える商品が、銀行では数千円からと高めになることがあります。銀行の主要な顧客が高齢者や富裕層なので、コストを気にする人や少額投資をしたい人には使いにくい面もあるのです。
担当者が変わる
銀行は組織も大きいため、人の異動が多くなります。そのため、担当者変更も頻繁に行われる可能性があります。慣れ親しんだ担当者に長く相談したい人にはデメリットです。
取扱商品が少ない
銀行の投資商品のラインナップは、証券会社などに比べると少ないケースがほとんどです。たとえば、つみたてNISAで購入できる投資信託は173本(2021年10月25日時点)ですが、銀行ではそのうちの10本程度しか取り扱っていない場合があります。
投資対象の選択肢の少なさは、銀行のデメリットといえます。
店舗に出向かなければならない
銀行で資産運用相談をするなら、基本的に店舗に行かなければなりません。土日祝日に営業する店舗が増えたとはいえ、小さな子どもがいる人などにはハードルが高いこともあるでしょう。IFAなどではオンライン面談を実施している会社もあり、銀行の利便性には改善の余地があるといえます。
2.【資産運用の相談先②】独立系FP
ファイナンシャルプランナーとは、お金についての幅広い知識を持った専門家です。独立系ファイナンシャルプランナーは特定の金融機関に属さず、中立的な立場で客観的なアドバイスをしてくれます。金融商品の販売をするFPと、相談のみのFPがいます。
2-1.独立系FPに相談するメリット
独立系FPは顧客の人生設計をベースに、問題解決のアドバイスを行います。金融商品を販売する場合も、問題解決のための実行支援のためなので、無理な勧誘などはありません。アドバイスを受けながらネット証券などで、自分で金融商品を購入することも可能です。信頼できるFPが見つかれば、長くお金のアドバイスを受けられます。
2-2.独立系FPに相談する場合の注意点
独立系FPは個人で営業する人が多く、人によって得意分野が異なります。住宅ローンが得意なFPや資産運用が得意なFP、相続が得意なFPなどさまざまです。また、金融商品を扱わないFPは相談料が収入源なので、アドバイスを受けるのにお金がかかります。
3.【資産運用の相談先③】店頭証券会社
ネット証券では対面でのアドバイスは受けられませんが、店舗のある証券会社では運用に詳しい担当者から直接説明を聞けます。運用初心者の方にとって証券会社のカウンターは行きにくいかもしれませんが、運用に特化した担当者がいる金融機関といえます。
3-1.店頭証券会社に相談するメリット
店頭証券会社は長年、金融や投資のプロとして経験を積んだ人の集団です。店頭証券会社の主な顧客はリタイアした人や富裕層ですが、一般の顧客にもメリットはあります。
取り扱う金融商品の種類が多い
店頭証券会社では株式や投資信託だけでなく、あまり出回らない既発債など、さまざまな有価証券を取り扱っています。うまく活用できれば、幅広い運用商品に出会えるでしょう。知識レベルが高い担当者もいるほか、提供する投資情報の質や量は他の金融機関より優れている傾向にあります。
IPO投資をする人にメリットが大きい場合も
IPO株(新規公開株)は初心者でも取り組みやすい株式投資です。IPOに当選するには、主幹事証券に口座を持つ人が相対的に有利です。IPOの主幹事になるのはネット証券ではあまりなく、大手店頭証券がほとんどを占めます。特に多いのは、野村證券やSMBC日興証券などです。
IPO投資を考えているなら、大手の店頭証券で口座を開くという選択肢もあります。ただし、当選確率を上げるにはまとまった資金を口座へ入金する必要があるので、多額の現金を持っていない人には抽選確率が平等な証券会社を選ぶほうが良い場合もあります。
3-2.店頭証券会社に相談する場合の注意点
店頭証券会社でアドバイスを受ける際には、注意点もあります。
担当者が変わる
店頭証券会社には営業店のネットワークがあり、定期的に営業店の社員が入れ替わります。そのため、なじみのある担当者がある日突然、別の人に変わる可能性があるのです。
アドバイスをする人と受ける人の相性は重要な要素なので、担当者が気に入らなければ、取引は続かなくなるケースも考えられます。
手数料が高め
店頭証券は店舗や従業員などへの経費がかかるため、同じ金融商品でも手数料がネット証券よりも高くなる傾向にあります。また、最初から手数料が高い金融商品を勧めてくるケースもあります。勧められた金融商品はすぐに買わず、自分にとってメリットがあるかを調べて考えてから決断しましょう。
しつこい勧誘を受ける可能性がある
証券会社は有価証券の販売が主たる業務なので、商品の勧誘も多くなりがちです。頻繁に電話がかかってくるなど、勧誘を迷惑に感じるケースも見られます。
4.【資産運用の相談先④】IFA
ネット証券に口座を開設しても何を買っていいかわからない人には、IFAからアドバイスを受ける選択肢があります。IFAとは、銀行や証券会社から独立して活動している運用のアドバイザーです。一般的にIFAからアドバイスを受けるのに相談料はかかりません。
IFAは金融商品の販売手数料を収入源としています。金融機関から手数料を受け取るといってもノルマがあるわけではなく、顧客本位の提案が意識されています。具体的なIFAにはファイナンシャルスタンダード(楽天証券所属IFA)やFan(楽天証券・SBI証券所属IFA)などがあります。
4-1.IFAに相談するメリット
IFAに資産運用のアドバイスを受けるメリットには以下のようなものがあります。
資産運用に精通した金融のプロから直接アドバイスを受けられる
IFAのアドバイザーは、証券会社などの金融機関の勤務経験者がほとんどです。資産運用全体や金融商品にも精通しているプロからマンツーマンでアドバイスが受けられるのは、投資に不安を感じる初心者には心強いでしょう。
豊富な金融商品から提案を受けられる
IFAの多くは大手ネット証券などと提携しており、たくさんの金融商品を取り扱っています。自分一人では選びきれない金融商品も、IFAのアドバイスで最適な組み合わせを提案してもらえます。
運用だけでなくライフプランをトータルに見据えたアドバイスがもらえる
IFAも金融商品の仲介を行いますが、銀行や証券会社と大きく異なるのは「販売ありき」ではない点です。解決すべき顧客の問題があり、解決のツールとして金融商品を提案するのです。そのため、ライフプラン全体を考えたアドバイスが受けられ、本当に必要な金融商品を提案してもらえます。
信頼できる担当者から長期的にサポートを受けられる
銀行や店頭証券会社の担当者が気に入っていても、転勤で別の担当になってがっかりするのはよくあることです。金融機関の担当者は知識レベルもさまざまで、満足できない場合もあるでしょう。一方、IFAには基本的に転勤がないので、同じ担当者のサポートを長期に受けられます。
オンライン相談など利便性が高い
IFAは全国には拠点がないところが多いのですが、その分オンライン面談などで全国の顧客に対応している会社もあります。また、土日祝日の相談に対応するIFAも多くあります。オンラインセミナーを行っているIFAもあるので、まずは気になるIFAのセミナーを受けてみるのもよいでしょう。
4-2.IFAに相談する場合の注意点
IFAの利用者は増えてきましたが、注意すべき点もあります。
銀行や証券会社に比べて社会的信用が低い
IFAは金融機関から独立しているため、会社規模がそれほど大きくなく、知名度もまだありません。そのため、取引に不安を感じ、躊躇する人もいるでしょう。しかし、IFAは金融商品仲介業者として金融庁に登録されており、透明性の高い取引を行う義務があります。
また、IFAが顧客から直接金銭を預かることはありません。IFAを通じて購入した金融商品は、金融機関の資産とは分けて管理されるので、IFAや金融機関が経営破綻しても顧客は影響を受けません。
IFAごとに経営方針が異なる
IFAは対象とする顧客層や主に販売する金融商品などの経営方針が、会社ごとに異なります。顧客のライフプランに沿って長期的なアドバイスをするIFAもあれば、株式の仲介を主たる業務にしているIFAもあるのです。
自分に合ったIFAを探すには、IFAが主催するセミナーに参加してみると大まかなイメージはつかめるでしょう。その上で個別相談をして、納得できたら提案を受ければよいのです。
5.【資産運用の相談先⑤】ロボアドバイザー
対面相談ではありませんが、ロボアドバイザーも資産運用のアドバイスをしてくれるサービスの一種です。ロボアドバイザーのサービスでは、人工知能(AI)が資産運用の提案や、運用の代行をしてくれます。
資産運用の提案までをしてくれるタイプを「アドバイス型」、サービス側で運用までしてくれるタイプを「投資一任型」といいます。アドバイス型のロボアドバイザーには、松井証券が運営する「投信工房」などがあり、資産運用をお任せできる投資一任型には、WealthNavi(ウェルスナビ)やTHEO+docomoなどがあります。
5-1.ロボアドバイザーのメリット
ロボアドバイザーには、対面サービスにはないさまざまなメリットがあります。
売り込みをされない
店頭証券会社やIFAなどの対面型のサービスで金融商品の提案を受けると、断りにくい場合もあるでしょう。しかしロボアドバイザーから資産運用の提案を受けても、気が進まなければ実行しなければいいだけです。断るのが苦手な人にはロボアドバイザーは利用しやすいサービスです。
対人サービスよりコストが低い
アドバイス型のロボアドバイザーのほとんどが無料で利用でき、投資一任型のロボアドバイザーも預かり資産の1%程度(年率)のコストで利用できます。投資一任を対面で受けられる「ファンドラップ」のようなサービスでは、預かり資産に対して2%から3%の手数料がかかるのが一般的です。
ロボアドバイザーは、対面サービスよりもローコストで利用できるのです。
手間がかからない
投資一任型のロボアドバイザーは、ユーザーが提案を承認すると実際の運用も行ってくれます。自分で運用をする場合、金融商品の買い付けや売却を適切なタイミングで行わなければなりません。仕事や育児に時間を取られる人にとって、ハードルが高いと感じることもあるでしょう。
ロボアドバイザーは最新のアルゴリズムに基づいた運用を行うので、手間をかけずにリターンが期待できます。
少額から投資ができる
ファンドラップのような対面型の投資一任サービスでは、最低投資額が数十万円以上の場合がほとんどです。しかし、投資一任型のロボアドバイザーなら1万円程度、アドバイス型のロボアドバイザーなら100円から始められるサービスもあります。少額でも分散投資によるリスク軽減が図れるのは、ロボアドバイザーのメリットです。
5-2.ロボアドバイザーの注意点
ロボアドバイザーには注意点もあります。
短期間で大きな利益を狙う方法ではない
ロボアドバイザーの運用手法は、長期・分散による複利効果を狙うやり方です。そのため、短期間で大きく資産を増やしたい人には向きません。長期投資や分散投資でリスクを軽減しつつ、資産を育てていく地道な方法です。
元本保証ではない
ロボアドバイザーには最新の金融工学に基づいたアルゴリズムが搭載されていますが、元本割れを起こす可能性もあります。しかしどんな投資にもリスクはつきものなので、過度に恐れる必要はありません。
人間の感情に左右されない仕組みに基づいて運用してくれるので、知識のない人がやみくもに運用するより堅実なリターンが期待できます。
まとめ
資産運用のアドバイスを受けられる先はさまざまあり、それぞれにメリットや注意点があります。自分がどんな点を重視しているかによって、最適な相談先は異なります。
商品の勧誘を受けたくなければロボアドバイザーや独立系FP、ワンストップで投資も保険もサポートしてほしければIFAなどが選択肢となるでしょう。この記事を参考に候補を絞り、相談したい先にコンタクトを取ってはいかがでしょうか。
松田 聡子
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