老後を考えた時に、年金だけでは生活が難しいと感じて今から節約や貯金などを考えている方もいるかと思います。しかし、節約にも限界があるので、資産形成の1つである確定拠出年金を検討してみるのも選択肢の一つです。
確定拠出年金(iDeCo)を始めるためには、国民年金などと違い、自分で掛金の設定や保有する金融商品などを選ぶ必要があります。そこで今回は、老後の生活設計を考えている方へ向けて、確定拠出年金(iDeCo)の始め方について解説します。
目次
- 確定拠出年金(iDeCo)の加入条件を確認
1-1.会社員や公務員の方
1-2.自営業者や個人事業主の方
1-3.専業主婦や主夫の方 - 金融機関を選び申し込み手続きを進める
2-1.管理口座開設に必要な書類の請求と手続き
2-2.掛金の設定 - 確定拠出年金(iDeCo)で運用できる商品
3-1.元本確保型の商品
3-2.投資信託 - 確定拠出年金(iDeCo)は節税しながら運用できる
- まとめ
1.確定拠出年金の加入条件を確認
確定拠出年金は、3段目の年金制度とも呼ばれている年金制度です。iDeCoは自分自身で資産運用をする個人型年金であり、他の年金と同様に税控除が適用されるほか非課税措置もあるのが特徴です。
確定拠出年金(iDeCo)を始める際は、まず加入条件の確認を行う必要があります。
- 会社員や公務員
- 自営業者や個人事業主
- 専業主婦や主夫
各状況に応じて加入条件が変わり、毎月の掛金の上限額も変わるため、事前に必ず確認しておきましょう。
それでは加入条件と掛金上限額を3つに分けて解説します。
1-1.会社員や公務員の方
民間企業に勤めている会社員や公務員、共済加入者は、以下の資格を満たしていると確定拠出年金(iDeCo)へ加入できます。
【第2号被保険者】
- 60歳未満であること
- 厚生年金加入者
- 企業型確定拠出年金の非加入者(例外あり)
また、民間企業が定めている企業型確定拠出年金(企業型DC)に加入している会社員は、原則自身では加入することができません。しかし、企業側が確定拠出年金(iDeCo)の加入を認めている場合は、掛金の上限額は変わりますが加入できるようになります。
毎月の掛金の上限額は、第2号被保険者でも会社員と公務員および共済加入者で異なります。また、確定給付企業年金の加入有無によっても上限額が変わることもあるので、事前に企業型確定拠出年金、そして確定給付企業年金の加入有無も確認しておきましょう(給与明細や就業規則を確認する、人事部などへ聞いてみるなど)。
【条件別の月額掛金上限額】
- 企業型確定拠出年金と確定給付企業年金に加入していない:上限2万3,000円
- 企業型確定拠出年金と確定給付企業年金に加入済み:上限1万2,000円
- 企業型確定拠出年金に加入済み:上限2万円
- 確定給付企業年金に加入済み:上限1万2,000円
- 公務員(共済加入者):上限1万2,000円
1-2.自営業者や個人事業主の方
自営業者や個人事業主、フリーランスや学生など第1号被保険者は、以下の資格を満たしていると確定拠出年金(iDeCo)へ加入できるようになります。
- 満20歳以上60歳未満
- 国民年金保険料の納付免除を受けていない(毎月全額納付している)
- 農業者年金基金に加入していない
補足として、障害基礎年金受給者も加入資格を満たしているとみなされます。ちなみに農業者年金基金は、農業従事者のみに該当する制度で、国民年金に上乗せされている制度です。
掛金の上限額については、月額6万8,000円のみですので第2号被保険者の条件と比較してシンプルな内容です。
1-3.専業主婦や主夫の方
いわゆる専業主婦や主夫に該当する方は、満20歳以上60歳未満で厚生年金加入者の被扶養者の場合(第3号被保険者)、確定拠出年金(iDeCo)の加入資格を満たしています。掛け金の上限額は2万3,000円です。
2 金融機関を選び申し込み手続きを進める
加入資格や掛金の上限を確認した後は、確定拠出年金(iDeCo)の申し込み手続きの流れや内容も把握しましょう。
確定拠出年金(iDeCo)の始め方は、以下の流れで進めます。
- 運営管理機関を探す
- 口座開設手続きを進める
- 口座開設後、掛け金などの設定
- 運用商品の設定
- 運用開始
ここでは、手続きと掛金の設定など、手順を分かりやすく紹介します。
2-1.管理口座開設に必要な書類の請求と手続き
確定拠出年金(iDeCo)は、国民年金基金連合会が運営していますが、手続きや掛金の設定などの役割を果たしているのは、運営管理機関です。
運営管理機関とは金融機関のことで、証券会社や銀行・保険会社などがサービスを提供しています。また、運営管理機関に関する情報は、国民年金基金連合会が運営している「iDeCo公式サイト」でも確認可能です。
加入手続きを行いたい運営管理機関が決まった場合は、申込後に金融機関から送付される加入申出書に必要事項を記入し、指定された添付書類と共に返送します。
そして一定期間の審査を経て問題がなければ、口座開設手続きが完了となります。
2-2.掛金の設定
口座開設後は、運用商品を選び掛金の設定を行った上で、運用を開始します。
掛け金は毎月5,000円以上と定められていて、1,000円単位の設定が可能です。掛け金を設定する際は、生活に直接影響のない余剰資金から捻出しましょう。ここで言う余剰資金とは、収入から生活費や生活費以外で極めて必要となる費用(住宅購入資金など)を差し引いて余ったお金のことです。
確定拠出年金(iDeCo)は老後の資産形成を行うための制度ですが、今の生活を必要以上に切り詰めないよう無理のない範囲で運用するのも大切です。
3.確定拠出年金(iDeCo)で運用できる商品
確定拠出年金(iDeCo)で運用できるのは、元本確保型と投資信託と呼ばれる2種類の商品です。商品自体に大きな違いがあるので、今後リスクをどの程度許容できるのか、よく考えた上で選ぶことをおすすめします。
それでは元本確保型と投資信託について紹介します。
3-1.元本確保型の商品
元本確保型は、支払い満期となった際、これまでに支払った金額に利息あるいは配当金を乗せて受け取ることができる商品です。具体的には、定期預金と保険商品を指します。
定期預金を選択した場合は、満期まで毎月一定額預金額を積み立てます。そして、満期になったらこれまでの元本と利息を受けるという仕組みになります。
つまり普通預金と同じく、自身が預け入れた資金に利息が上乗せされます。市場金利の状況と約定日(契約日)で設定される金利は変わりますが、約定以降は固定金利で運用されます。
満期は主に1年ですが原則自動継続ですので、特別な理由で解約申し込みをしなければ60歳や65歳を迎えるまでなど長期運用も可能です。
保険商品も元本を保証するものです。ただ、定期的に利息の変わる仕組みや、以下のような年金の受け取り方を選べるタイプもあるなど、商品によって細かな違いはあります。
【受け取り方の例】
- 確定年金:あらかじめ設定した期間に毎月定額で年金を受け取る
- 終身年金:契約者が生きている限り年金を毎月定額で受け取れる
3-2.投資信託
投資信託は、運用会社が投資家から集めた資金を株式や債券などへ投資し、運用益を投資家へ分配する商品です。
元本保証がないため、一定のリスクとリターンが常に存在します。また、リスクとリターンのバランスは、市場や景気、運用会社の運用方針などによってファンド(商品)ごとに変わります。ですので、必ずしも一まとめにリスクの高い・低い商品とはいえません。
確定拠出年金(iDeCo)で投資信託を選ぶ場合は、ファンドの仕組みや市場について勉強することも必要となるでしょう。取り扱っている商品は金融機関によって異なるので、申請前に各金融機関の商品を比較検討するのが大切です。
4.確定拠出年金(iDeCo)は節税しながら運用できる
確定拠出年金(iDeCo)の主なメリットは、普通口座で取引を行う株式投資や投資信託と異なり、税制面で優遇されている点です。
毎月積み立てる掛金は所得控除の対象となり、さらに運用益は全て非課税です。ですので、税負担を考慮する必要はありません。さらに、満期後の受け取り時には、公的年金控除なども適用されます。
ただし、金融機関へ支払う口座管理手数料や途中解約(特別な理由)による損失リスク、そして投資信託は元本保証なしといった注意点もあります。
老後にどれだけ年金を受け取る必要があるのか、そして確定拠出年金(iDeCo)でどの程度リスクやコストを許容でき、どれだけ節税しながら運用したいのかを考えた上で、掛金の設定や運用スタイルを判断しましょう。
まとめ
確定拠出年金(iDeCo)は老後の資産形成が可能な商品です。また、掛金の拠出による税控除や運用益の非課税というメリットもあるので、税負担を抑えながら運用することができます。
さらに将来の年金受け取り時にも控除が適用されるので、満期後の税負担についても一定程度抑えることが可能となっています。
主な注意点としては、商品や金融機関ごとに手数料コストが発生する点や、元本保証型の商品のみ運用している場合でも、商品の切り替えや途中解約による損失の可能性も挙げられます。なお、投資信託は元本が変動するため、定期預金・年金保険とは運用方針など各性質が異なります。
確定拠出年金(iDeCo)を始める際は、公式サイトで運営管理機関を探し、申し込み手続きと振込口座の申請、掛金や商品の設定を行いましょう。
節税しながら老後の生活資金を構築したい方は、確定拠出年金(iDeCo)も検討なさってみて下さい。
菊地 祥
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